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ヘルシンキでヘアサロンをオープンした話、やっと雇用契約を結んだ頃のこと。

最初のポップアップを終えてしばらく・・。空気が冷たくなり出した夏の終わり頃、梅沢さんからメッセージが届きました。

「みんなで作戦会議しました!」

という言葉に添えてあるのは、家族団欒か?と見紛う穏やかなお顔が並ぶ集合写真。次回ポップアップにいらっしゃる予定の美容師さん達が梅沢さんを囲んだ一枚でした。

この空気感の正体を、私はその時まだ分かっていなかったのだと思います。「楽しそう!」くらいな軽い気持ちで私も盛り上がっていました。その時写真に写っていらした美容師さんのお一人はその後、梅沢さんのフィンランド移住に伴い、原宿の梅沢さんのお店JEFFを引き継がれました。もうお一人はコツコツを修行を重ねられ、今年の夏から同じく原宿でご自身のお店を構えられる予定です。

美容師さんの世界に私が惹きつけられる理由

の1つが特殊にも見える職業価値観なのです。厳しい下積み時代があって、経験や実績による上下関係がお客様にまで数字で示される世界。(ディレクターズカット、スタイリストカット・・とかお値段で明確に線引きがありますもんね。)今はこうした上下関係や働き方も少しずつ変わってきているのかもしれませんが、それでもいわゆる会社員とは全く異なる価値基準にすごく興味があるのですよ。美容学校を卒業されて国家資格を取得されたらすぐに現場・・・というのも、最短で考えればとってもお若い方が即活躍することのできる世界です。料理人や大工さんなんかもそんなイメージがありますが、とにかく私の経験してきた感覚では想像もできないお仕事の様子に興味があるのです。

そんな下心(?)で梅沢さん達を眺めても、全く見えてこない「厳しい師弟」感。実際にヘルシンキにいらした皆さまにお目にかかると、お仕事を離れれば「兄貴と兄弟姉妹(?)」な雰囲気。ポップアップ営業日には「出来るだけ梅沢さんのお仕事から学びたい」という皆さんのポジティブな熱意が現場に溢れていました。

「あれ?叱咤がなかった・・鬼の形相の梅沢さんはどこ?」

第2回のポップアップが2017年秋に無事終了した後、お祭りのように楽しくすぎた日々を振り返ってハッとし(て拍子抜けし)たことを今でも覚えています。今なら分かるのです。梅沢さんは後輩の美容師さん達に純粋に経験を分けてあげたかったんだ、と。そこから何を学ぶか、どう生かすかはそれぞれの才能に託したかったんだろう、と。そこにあったのは先人からの厳しい指導というより、美容師さん同士の親愛に近いものだったのだと思います。

それから続くポップアップ開催の度、毎回本当に素晴らしい美容師さん達がヘルシンキにいらしてくださいました。そもそも、航空券と宿泊代を自分で負担した上で、数日間ボランティアでヘアカットをしにいらっしゃるわけですから、ものすごい慈愛に満ちた方々なわけです。その後の皆さんのご活躍を拝見するにつけ、この慈愛は美容というお仕事にまっすぐ注がれていたのだな、といつも思います。

中にはですね、1日のボランティアのために、貴重なお休みを使って2泊の弾丸でいらした強者もいらしたのですよ。しかも「視察のお客様ですか?」と言いたくなるほど北欧の社会福祉にお詳しい!よくよくお話を伺うと「家族が幸せに暮らせる社会、働き方。そこにあるべき美容室の姿。」という視点でご自身とご家族、そして将来お店で出会うお客様のあるべき姿をじっくり考えていらっしゃったのです。(すごい!)

他にも・・。日本国外でも経験を積まれて、どう見てもすごい努力を重ねていらっしゃるのに「いえいえ、まだまだです。」と謙虚におっしゃる美容師さんとか。梅沢さんと同じ日に現場に出られることをこっそりめちゃくちゃ喜ばれていた美容師さんとか。皆さんに何となく共通項がありました。梅沢さんのお仕事を1年と少し側で見てきた今なら理解できますが、この共通項は梅沢さんの美容に対するまっすぐな姿勢に通ずるものだったのだと思います。梅沢さんの気持ちに呼応する方々が、ヘルシンキに集ってくださったのです。

2017年に2回、2018年に2回。お忙しい中負担をおしていらしてくださった皆さんと、たくさんの出会いを導いてくださった梅沢さんに本当に感謝しています。

2018年の8月に

JEFF HELSINKIの運営母体となる株式会社を設立しました。2018年10月にポップアップ営業を終えた後、梅沢さんに就労ビザ取得用の書類についてお話をして、未来の店舗候補を下見に行きました。その後、梅沢さんとうちのオフィスで打ち合わせをした時のことを思い出します。

「ここでできないかな?サロン。うたちゃんのオフィス、この空気良いよ。」

え?えー!!洗髪台のせの字もないここに?サロンを作るの?総工事?ところで私の事務所はどこに行くの?どういうこと?空気ってなに?

キョトンとした後に湧き上がる、お腹の底からアッハッハッと笑いたくなるような感情。初めて梅沢さんと奥様と飲みに行った時に「お店やろう」と即決した時のあの感じ。キタキタキタ・・と内心武者震いするような面白さが込み上げてきました。

梅沢さん、裏切らない人です。この一声をきっかけに、原宿とヘルシンキを結ぶ怒涛の開店準備マラソンが始まりました。


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