見出し画像

中学生はつらいよ

『男はつらいよ』とは言うけれど、女もつらい。もっと言えば、人生はつらい。

……と私に言われるまでもなく、人生は簡単なものではなく、わりとつらい。そして、つらさを詰め込んだ人生の中でも、中学生の頃が一番つらい気がする。

実際、息子のことでお世話になっているカウンセラーの先生も、こうおっしゃていた。

「発達障害のお子さんに限らず、多くのお子さんが中学時代にいろいろあって、苦しむんですよね。でも、高校に進学すると、みんな本当に楽になるんです」

思春期を向かえる中学生は、ホルモンのバランスの乱れなどでどうしても心身が不安定になる。だからさまざまな悩みを抱えやすいし、ついつい他人の目を気にしてしまう。そこから羞恥心やら虚栄心やら自己顕示欲やらがムクムクと生まれてしまい、さまざまな不安やトラブルを抱えてしまうのだが、そんな苦しみや悩みを親には話せない(話しにくい)のが、中学生だ。

そのおかげで、いわゆる「中二病」的な考えに陥ったり、「自分すごい!」と「自分全然ダメ」の間で揺れ動いたり、他人に対して攻撃的になったり、差別的になってしまう――それがカウンセラーの先生が言う「中学生つらい説」だ。

また、公立中学校の場合、小学校の仲間がそのまま進学するのも「中学生つらい説」を助長させているらしい。小学校でのいじめやいじりやキャラ設定が、そのまま中学校に持ち込まれ、それを払拭できないまま3年間を過ごすハメになると考えたら、中学生から遠く離れたアラフォーの私だって発狂したくなる。

しかし、高校は違う。自分の好みや学力に合った学校を選べるし、小学校・中学校が同じだった生徒も少ない。つまり、これまでの自分をリセットして学校に通うことができるのだ。しかも、高校生は中学生ほど他人に興味があるわけでないので、まわりの目をあまり気にせずに、比較的のびのびと学校で過ごすことができる。

私の息子も、そんな「中学よりも高校が楽」を実感している一人だ。特に息子は、「高校は勉強が楽」と言っている。どうも中学までの勉強は、純粋な勉強ではない気がしていたらしい。

たとえば、中学校の数学のテストでは「たかしくんが出発した30分後にお兄さんが家を出発する」といった、「これって数学じゃなく国語じゃね?」と言いたくなるような問題が多く出題される。これがADHDで読解力が低い息子にとっては、つらくてつらくて仕方なかったらしい。

しかし、高校の数学は違う。三角関数や微分積分、動く「点P」といった、純粋に「数について考える」数学だ。たかしくんもお兄さんも存在しない、まさに名前のとおりの「数の学問」だ。

数学だけでなく、物理や生物などの理系科目や、英語や国語、現代社会などの文系科目でも、「正解だけど、字をきれいに書かないから×」とか「プリントの整理ができてないからマイナス○点」などと言われないのが、本当に本当に楽だという(でも、プリントの整理はちゃんとした方がいいと思う)。

息子からこの話を聞いて私は、「中学までは、学校は勉強を学ぶ場ではなく、『お行儀』とか『先生を怒らせないコツ』とか『クラスメイトから嫌われずに過ごすコツ』などを学ばされる場所だってことだよなぁ」と思ってしまったし、この傾向はこれからも変わらないんだろうなぁと、軽く絶望的な気分になってしまった。

これからは卒業のシーズンに入り、楽しかった中学生活との別れに涙する人もいれば、「つらい中学校生活にやっとさよならできる!」とよろこんでいる人もいると思う。

後者の人は、本当にお疲れさまでした。高校では中学校とはまったく違う仲間がいるだろうし、あなたと気の合う人だってきっといるはずだ。そして、本当に勉強したかったことを学べるかもしれないからね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?