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VUCA時代に必要な支援を 起業、創業支援をしている財前英司さん

起業、創業の支援をしている財前英司さんにお話をうかがいました。

< 経歴 >
関西大学から出資を受けた事業会社を設立し、主に大学内における資材・物品調達事業に対するシステムソリューションの提供などにより、売上の拡大、成長を実現。

その経験を元に2016年に開設したSTARTUP CAFE OSAKAの立ち上げメンバーとして携わり、引き続きコーディネーターとして、イベント、セミナーの企画、運営、起業相談、メンタリングを実施中。

記者:財前英司さん(以下、財前 敬称略)は今どんなことに取り組まれていますか?

財前:今取り組んでいること、やっている事業としてはスタートアップ、起業とか創業の支援をしています。具体的には学校法人関西大学と株式会社TSUTAYAが関西大学梅田キャンパス内に「スタートアップカフェ大阪」をオープンし、そこで支援しています。

個人が個別化、多様化していく時代に必要な支援を

記者:なぜスタートアップ、起業や創業支援をはじめたのですか?

財前:これからの世の中がどういう流れになるのかを考えた時、2020年に小学校の新学習指導要領が実施され、大学センター試験に代わって、大学入学共通テストが実施される予定です。それ以降の2025年とか2030年がどうなっていくか?っていうと益々個人にフォーカスが当たっていき個別化されていくと思うんですね。色々なことがカスタマイズされて、マス教育ではなく個別になっていく。

 そうなった時に、個人が何を学んで、何を身につけて、どういう活動をして、何が好きで、どういうことに感動するのか?いわゆるポートフォリオって言われていますけど、今後はポートフォリオが可視化されていく社会になってくると思っています。

 そのような状況の中で我々が何ができるのか?自分でどう生きていくかっていうところの職業とかキャリアでいうと、そこはキャリアセンターに行けば就活の相談に乗ってもらえる。これから個人がますます個別化していったら、価値観も多様化していくわけじゃないですか。そうすると自分で起業したいとか、自分でNPO法人創りたいとか、そういう人がいても相談できる所がないのが現状です。そういう時代が益々強くなってくる時に、ここでそのような支援ができたらと思いやりはじめました。

弱い結びつきでオープンな支援を

財前:それと大学は基本クローズド。それは教育とか研究というのは国とか政治とかから圧力を受けずに自由が守られていないとだめだから。そこからそれぞれの大学がもつ建学の精神のような所を大事にして、それぞれが有益な人材を生み出すことでクローズドだった。

 今後、個人の価値観の多様化や、社会がVUCAの時代になると言われています。複雑で曖昧な時代になってきて、明確な答えだけでなく、そもそも問題がわからなくなってくる。何をどうすれば、ビジネスで言えば何を売ればよいか。作っても売れないから考えてる。そこではそもそもの問いの設定、イシューといわれているものが大事になってきます。例えば「自分は何者か?」「なぜあなたがするのか?」「なぜあなたはそれをするのか?」「なぜぼくがやるの?」みたいな問い、イシューの追求です。

クローズドの部分は大学本体がやってるので、せっかくここを創るのであればオープンにしようというのがありました。

 オープンにするために大切なのが弱い結びつきです。具体的に何か解決すべき課題がある時は、強い結びつきの方がチームが威力を発揮する。強いつながりでそれぞれが役割分担して、明確な目的とか目標とかがある時は非常に有効です。ただ社会が複雑になってきているし、正解がないし、個人の価値観が多様化していく中では、強いつながりをつくることが逆に身動きしにくくなってくると経営学で言われています。弱い結びつきの強さっていうのがあるんです。弱い結びつきこそが、実は色々な知ってる事とか、新しい情報を得たりとか、自分が住んでる世界とは別の情報が入ってきたり、価値観が入ってきたりすることが起きやすいことが実証されている。弱いつながりこそが結果的に強くなってくる。なので、緩い人脈の方がいい。何か新しい事を生み出す時は不連続が起きてイノベーションが起きるから、弱いつながりで顔見知りとか、連絡が取れるとか、普段何か一緒にやってるわけではない、そういうつながりの方が多様な情報が入ってきて、そのこと自体が自分が設定するイシューや問いにつながりやすくなるみたいなことが言われています。

 ますます個が自立してくると、大学生の価値観も多様化してきます。自分はこう生きるのが幸せだとか、自分はお金を稼ぎたいという人もいれば、成長で選ぶ人もいるし、ベンチャーで働こうとする人もいる。社会人でも週末の起業とか、2枚目の名刺とか色々なことが言われていて、副業も解禁されていく。このような流れを3年前位に思っていました。なのでそういう所をオープンにして支援しようって思いました。

 起業の支援は普通、インキュベーションと呼ばれるもので、クローズドにしてそこで育んでいく。確かにそのやり方は有効。ただオープンにというところが非常に少なかったので、ここにそういうのを創ろうということでTSUTAYAさんに声をかけて、一緒にスタートアップカフェをやっているというのが今の仕事です。

Q,今後の夢や目標はありますか?

財前:今の仕事を通じて思うのは、起業したり、新しい事を始める時ってリスクがあるじゃないですか。リスクがあるんだけど、それが許容されるような、あなたはあなたでいいんだよっていう多様性が認められて実現できる場所みたいなものになっていけばよいなと思っています。

 失敗すると日本社会はネットとかでも自分と関係ないのに色々なことが許容されなくなってきている。許すまじみたいな。そこは凄く逆行したいなと思っています。犯罪はダメですけど、何をやっても許される、失敗が許容されるような社会。罪を憎んで人を憎まず。だから失敗してもよいではなく、またやり直せたり、人間だからミスすることもあるので、ミスしても許容されるような社会っていう。そういう世の中になる一隅。隅っこだと思うけど隅っこを照らすようなことをやっていきたいなと思っています。自分と違う所、人と違う所に関して今は寛容性が少ないと思っています。個人にフォーカスがあたり、問いが大事になってきて、いざそれをやろうと思った時に、そういうことを気にせずにやれるような所になればいいなと思っています。

Q,そのために意識していることはありますか?

財前:基本的には起業の話でいえば、ビジネスのアイデア自体に良いも悪いもないんですよね。すべて基本的にはいいねと話している。その上で、とはいえビジネスというのは需要と供給の話なので、そこに関する話はします。ただ基本的にはここに来る人、相談する人たち、アイデアに関しては否定しません。わからないから。良いかどうかなんて。みんながダメっていってることもうまくいくこともありますし。そこは基本否定せずに尊重する。そこかな。意識しているのは。ここにいるメンバーも尊重してやっています。

Q,AI時代を楽しむ秘訣を読者へお願いします。

財前:AIは今あるデータを分析して、解析して解を出すのが得意です。何かを創ったりとか創造したりするのはできない。無いものに関してはそれを解析する元がないので。AIは解析する元があって、そこから法則性を見つけたりとか元データが必要なんです。そこから学習させていって処理していく。

 だからこそ過去の延長線上からの未来ではなく、AIにはできない、自分がやってみたいこと、創造してみたいことを自分で生み出すみたいなことが大切と思います。AIはそれに近い、それっぽいことはできます。ただ、そうじゃなくて、自分たちが創りたい未来みたいなのを描いて、そこからじゃあ自分はどうするかなとかをAIはできません。どういう未来を描くか?自分たちがこうしたい、こうありたいみたいな将来や未来を自由に描いて、それで今何をするかを決めればいい。それを多様性とか、それは無理だとか言う話じゃなくてそう思うのは自由だしAIにはできないこと。

 問い、未来、イシューとよばれているところでこれが描けるかどうか。そこは自分の問題意識だったり自分のやりたいことだったり、自分がどう生きていきたいかってこと。だからこの時代になって益々そこが重要になってくる。自分がどうしたいか、自分がどういう問いを設定するかが大事になってくる。

 自分たちがやりたい未来を描いて、そこからかえってくることがAI時代にめちゃくちゃ大事だなと思います。自分たちがこうしたいっていうのを、そこに向かってどう生きるのか?そういう思考が必要なんじゃないかと思います。

記者:財前さん。今日は本当にありがとうございました!

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編集後記

今回インタビューの記者を担当した山口&磯原です。

日本は起業する人が少ないと言われています。
起業を支援するだけでなく、失敗を許容するような場が増えていった時にどんどん自分の創りたい未来にチャレンジする人が増えていき、その積み重ねによって日本全体が素敵な社会になることを感じました。

今後の更なるご活躍を期待しています!

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。

https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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