チャットノベルはもうかるのか? 1 そもそもいくらかかるの?

チャットノベルはもうかるのか?というまえに、まず、チャットノベルはいくらで作れるのだろうか?
既存の紙の小説だと以下のような原価がでている。
★原価紹介サイト
https://matomabooks.jp/shuppanblog/2018/04/07/shuppangenka/
https://www.kotsulog.com/entry/2017/07/06/173000

だがこの原価、よく考えると肝心なところが抜けている。
そう、小説家自身が小説を書くコスト、もっと端的にいうと執筆コストが書かれていないのである。
さて、まずこの小説家自身の製造コストを計算しよう。
まず必要なのはパソコンである。
昨今でメモリその他が満足にあり、まともに使えるノートパソコンだと新品でも5万円から、中古だと1万円というケースもある。
とりあえずここは5万円の新品とする。
だいたいOSのアップデート対応と内部のSSDの寿命などを考えると3年(36ヶ月)は使える。
なので1ヶ月のコストは5万/36≒1,400円である。
次に原稿を書くソフト。
こちらはGoogle Docsなら無料である。
さて、これに設備費用として小説を書くスペースのコストがかかる。
コワーキングスペースで書くと仮定する。
1日8時間だと都心部だと1,500円程度がコワーキングスペースの利用費である。
1ヶ月月20日作業するなら30,000円。
更にコワーキングスペースへの交通費。
往復500円として20日で10,000円。

すると設備に要する原価は41,400円となる。
これに小説家の人件費がかかる。
社会保険その他を含め30万円とする。
すると341,400円が1ヶ月の経費になる。


さて、1日8時間月20日作業するとして、月に160時間作業時間が存在する。
この内設定(ストーリーの大枠と舞台、キャラクターなど)の検討決定や取材に20時間、
執筆に100時間、依頼者からのリテイク対応(校閲対応)に20時間、依頼者との打ち合わせに20時間を使うと仮定する。
ここで執筆速度だが、下記サイトによるとプロは1時間3000文字、森博嗣氏は1時間6000文字、西尾維新氏は1時間2500文字とある。ここは西尾氏に合わせて2500文字とする。
★執筆速度サイト
https://masterpublish.com/speed/
https://www.arupakano.com/entry-sippitsu-sokudo
すると1ヶ月25万文字となる。
下記サイトによればミステリ小説は1冊20万文字程度なので1ヶ月で1.25冊のペースである。
★文字数サイト
https://masterpublish.com/qa01/
上記経費/1.25で1冊の経費273,120円が出る。
つまり作家は273,120円の原価をかけて小説を1冊書いているのである。
1文字あたりのコストは273,120/200,000で1.3656円である。
日本語の場合全角文字を使うことが多く1文字で2バイトなので1バイトあたりの費用はさらに半分の0.6828円。1000バイトだと682.8円のコストが掛かっている。

出版社サイドの場合、実は上記の小説家の執筆コストを計上しているのではなく、印税や雑誌掲載料を払っている(単行本書き下ろしの場合は印税のみ)。
なので小説家からすると印税・雑誌掲載料が上記コストを上回れば黒字、さもなくば赤字である。
シナリオはまた異なって、文字数でのコスト支払いとなる。シナリオ会社やシナリオライターに執筆依頼すると1000バイト1,000~2,000円程度の見積もりが出るがコストを考慮すると妥当な金額だろう。


出版社側は印税・雑誌掲載料に上記原価紹介サイトにあるような表紙デザインやイラスト費、編集者人件費、印刷費(電子書籍の場合は配信フォーマットへの変換費と配信担当者の人件費など電子配信費)などを加えて小説製造コストとしていると考えていいだろう。

ではここで本題のチャットノベルに入る。
まず、チャットノベルとはどのような形式なのか、を定義する必要がある。
というのは単純にチャットと言ってもテキストと静止画というわけではなく、
peepのようにチャット内に実写の動画を入れている作品やTANZAKのようにルビをふる作品などがあるからである。
ここでは一旦テキストと静止画で形成されるケースを想定する。
また、連載で複数話掲載されている作品も多いが、計算をシンプルにするため1話のみとして計算を進める。
分量は10分程度で読めるボリュームとする。
またキャラクターは3名とする。

チャットノベル配信までに必要なコストは以下の通りとなる(プラットフォームを自社運営している場合はそのコストも掛かるがここでは省略)。

・チャットノベル原稿料
・イラスト制作料
・編集者人件費
・電子配信費

最低限これがかかると考えていいだろう。
ではチャットノベルで執筆するべきものはなにか?
もちろん小説本編も必要だろう。
しかし、よく見てみるとそれ以外に必要なものがある。
例えばTELLERでは小説の作品説明と作者プロフィールとがある。
Balloonにも類似のものがある。
これも執筆してもらう必要がある。
紙の小説の場合、この種の説明文は原稿じゃないからと無料で書いてもらっていたが、原稿料払ったほうがいいだろう。

ボリュームとして1吹き出し平均20文字程度として、200吹き出しで4,000文字。
だいたい1吹き出し3秒程度で読むので(自動再生機能のあるサービスもこれくらいのスピード)10分程度。
作品と小説家の説明文がそれぞれ100文字程度として合計4,200文字、8,400バイト。

これをシナリオ扱いでの計上として見積もりを出すと上記の平均値、1000バイト1,500円として原稿料12,600円。

次にイラスト。
このイラスト、小説家とイラストレーターが打ち合わせて作成する必要がある。
もちろん小説家が自分で描く、あるいは自身で撮った写真を使う、というのなら話は別だ。もっともその場合は小説家にイラスト費や撮影費を払う必要も出てくる。
ここではイラストレーターが作成するということで計上する。
ではどれだけのイラストが必要なのか?
大体のチャットノベルサービスでは作品の表紙画像がある。
これがまず1枚必要。
それと小説中の画像(現実のチャットではスタンプとか写真に相当する)。
これは作品により数が異なる。
小説中のアイコンも意外に重要だったりする。
これがあるからチャットへの没入感が出てくる。
ただしBalloonやアメリカ系のサービス(Hookedなど)は小説中のアイコンがない。

それと肝心なのが小説家自身のアイコン画像。
これはBalloonにもある。
小説家自身が顔出しOKなら写真を送ってもらう手もある。
NG、あるいはイラスト希望ならイラストレーターさんに描いてもらうことになるが小説家自身で持っていることもある。
ここでは全て新規執筆として計算する。
アイコン以外のイラストを表紙1枚と作中20吹き出しにつき1枚で10枚、合計11枚。
なお作中イラストのうち8枚はスタンプ画像とし、2枚は写真をイメージしたイラストにする。
表紙イラストは1点2万円、作中イラストはスタンプが1枚2000円、写真的イラストが1枚1万円。合計56,000円
アイコンはキャラクター3人に作者1人、合計4人分で4枚。1枚1000円。合計4,000円。

よってイラスト制作料合計6万円。

なおイラスト制作時間だが、相応の画力があるイラストレーターの場合1日(8時間)で2万円相当の仕事をするので3日(24時間)である。ただし打ち合わせ時間を含まないので打ち合わせを含むと5日、営業日5日だと1週間かかると考えたほうがいい(他案件と平行だとさらにかかる)

次に編集者人件費。
上記の執筆スピード計算からすると小説家は打ち合わせ抜くと2時間程度の執筆時間で済む。ただし、打ち合わせがこまめにかかる(イラストレーターとの打ち合わせやチェックがかかる)。

イラストレーター側の5日間に合わせて編集者の拘束時間がかかると考えると1人1ヶ月(20に血)30万円としてその1/4、75,000円である。

ラストの電子配信費。
これについては現状、本マガジンでも下記の記事で述べたが有料なのはフォレストページ+のみ。これも10作品までは無料。
ここは無料配信できる範囲でフォレストページ+,プリ小説、NOVELDAYS、Balloon、TELLERの5サービスで投稿することにする。
★チャットノベル投稿機能比較記事
https://note.mu/yoshikun/n/n2472d6c0807f
下記記事で計上したチャットノベルの執筆速度から逆算する。
★チャットノベル執筆速度記事
https://note.mu/yoshikun/n/nb0f149da0527

投稿するテキストや画像の投稿件数をカウントする。

吹き出し200個+小説中画像10枚+表紙画像1枚+小説説明1点+キャラクター設定3人+アイコン画像3人=投稿218件
プリ小説、NOVELDAYS、フォレストページ+は投稿1件につき15秒として54.5分、1時間弱。
小説家アカウントを登録するのに(メールアドレスなど登録情報は事前に小説家と打ち合わせでヒアリング決定するとして)5分とすると概ね1時間。
BalloonとTELLERはスマホのみでしか投稿できず投稿1件で30秒程度と約2倍の時間を要するので2時間。
合計7時間。
概ね1日作業なので日当2万円。

よって合計12,600+60,000+75,000+20,000=167,600円
ここには校閲やプロモーション費用などは含まれていない。
なので各種用語や文法などのチェック(校閲)や小説自体のプロモーションを行うには別途費用を要することは意識しておきたい。

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