琵琶湖一周してきた話。

 表題の通り、琵琶湖を一周してきた。
 ホントにノリで。必ずや、といった決意からでは別段ない。
 私にはGWの有用な使い途が分からぬ。
 まぁ、でも、なんか一昨年くらいから「GWは2日3日かけてのんびり琵琶湖一周とかしてみたいですね~」とか4月になったら言っていた気がするので、そういう意味では人生のトロフィーを一つ取得してきた、ぐらいのノリ。だからホントにノリ。そんなに大きな目標とかがあった訳じゃなくて、若気の至りの残滓ぐらいの感覚。

 乗ったのは50ccのAF34ライブディオ。
 因みに原付で一日に一番長く走ったのは25歳だったかの、名古屋駅から箕面市までの205kmとかそんなので、その時は……当時のガラケーのナビだったのでキチンと距離の計測とかできてた自信はないけれど、そのくらい。
 かかった時間は……確か夜の便で引っ越しの集荷が来て、それを見送ってから19時過ぎくらいから手荷物一つでドルルンとAF27スーパーディオに跨って、箕面市の実家に着いたのが2時とかそのくらい。だったから……7時間くらいだったのかな。

 原付バイクによる下道走行なんてのはどんなに頑張っても実時速30km/hとかなので(だから大阪市から神戸三宮までちょうど1時間くらいで着ける)、途中でコンビニに寄ったりなんかしながらでもそのくらいにはなるのか。
 明確に目的地を決めずにぶらりと……例えば大阪市内からちょっと能勢の山伝いを走りたいな、とか思いながら朝10時くらいから出て往復100kmも走ったら昼食も込みで帰宅が15時とか、若干のブレはあるんだろうけれど。


 面倒なので写真の類は乗せないので、基本的に文字と、スクショを撮った位置情報とかから大体どのへんに居たかを、雑感と共に自分用の備忘録として残しておく事にする。


■5/2

・11:37 走行距離:0km
 大阪市内の自宅からはいよーいスタート。
 荷物は極力少なめに生きたいので仕事に持っていくような小さな鞄に、インナーと下着類、それとタオル一枚、スキンケアとヘアケア用品と、スマホ用の充電器とモバイルバッテリーだけ詰めてドルルン。
 一応、事前に心底雑な下調べはしてあって、どうも琵琶湖周辺の街にはちゃあんと24h営業のネカフェもあればガソリンスタンドも点在しているのは知っていたのでもう気楽なもんよ。こういうのが単身の強みだなと再確認。


・12:16 走行距離:10km
 大阪府箕面市に入る。
 まぁそんなくらいの時間と距離よな。もう少しあったかなと思ったけれど、案外メーターを見るとジャスト10kmしか進んでなかったりする。この辺は交通量も正直あるかなと。


・12:52 走行距離:24km
 大阪府高槻市の三島丘交差点。
 国道171号線を走っていれば自動的に高槻市に着く。
 営業をしている時なんかもよく通った道だったので、そうそうこのくらいからこういう感じの町並みで……なんて、眺めながら。


・14:17 走行距離:44km
 途中昼食で20分ほど使って、京都市に入る。
 iPhonenの位置情報には「向日市-森本町」とある。
 写真には日本サーモエナーという企業さんの看板が見える。

 因みに昼食は松のやさんでカツ丼を食べている。
 こいつなんか気付けばカツ丼食べてるな。まぁいい。


・14:39

 京都東寺の写真を撮っている。
 如何にも分かりやすい京都市内という趣き。
 が、まぁ意識的にはまだスタート地点にすら到着していないので、残念ながら特別な感慨はない。2020年末には悪縁を断つべく安井金比羅宮に原付で来ていたので、その時の方がよっぽど京都の町並みを眺めながら走っていた気はする。
 

・14:54 走行距離:54km

 京都市東山区。
 分かりやすく書くと京都-滋賀間の山道がこの辺り。
 この区間を走るのは23歳くらいの頃に一度、滋賀の堅田でダーツバーをやっている友人に会いに行った時以来だろうか。標識に比叡山とか書かれていてワクワクした記憶があるんだけれど、どうも今回は見なかった。気のせいだったんだろうか。


・15:10 走行距離:60km

 大津市追分町。
 国道1号線を走る山道の途中。正直もう大津市だから滋賀県なのかと少し驚いた。イメージ的には山道を超えて少し開けた頃に滋賀県に入るものだとばかり思っていたので、今iPhoneの写真に登録される位置情報を見ていると楽しいものがある。


・15:28 走行距離:69km

 いわゆる琵琶湖の一番南に到達。
 日本精工株式会社大津工場とある。ふっと右を見ると東側には琵琶湖があり、その向こう岸にまた町並みが並ぶのが見え、否応なしに「巨大な湖」である事を感じさせられる。
 湖の周りは風防用に木が並んでいるが、その間には地元の方が釣り竿を垂れている様子なんかも見受けられて、そういえば私が大好きなバンドのベーシストが琵琶湖でバス釣りをしていたなと思いだしたりもした。

 ともあれようやくスタート地点に到着だ。
 正々堂々と、時計回り開始。


・16:18 走行距離:80km

 釣具屋さんなんかが並ぶ町並みを抜け、大津駅を抜け、琵琶湖の競艇場を抜けて、……湖岸道路というものがあるらしいのでそこを走って風を感じながら走るのも良いなと思ったが、単純に道の広い国道を走りがち。
 私はそういえばちょうど10年前、営業をしていた頃に同僚であり友人であった男とこの土地に来た事があったな、と思い出す。駅近くのラウンド1なんかを見てようやく思い出せた。
 彼は今でも元気にしているだろうか。
 まだ音楽やってると良いな。
 もう俺の事なんかどうでも良くなっててもいいからさ。きみはぼくのかがやけるほし


・16:45 走行距離:89km

 温泉街で有名な雄琴を通過。
 因みに地理的にはすぐ西側に牛若丸で有名な鞍馬山があったりする。
 大津市も地方都市のご多分に漏れず、10~20kmも走ればそこには長閑な田園風景が並んでいるのが見られる。
 西を向けば田んぼ、東を向けば琵琶湖。なんとも風情のある……GWに一人でトロトロ走るには最適と呼んで差し支えないだろう、実に牧歌的な風景がしばらく続く。


・17:45 走行距離:122km

 滋賀県高島市。
 写真を載せないので面倒でなければ地図を見て欲しいんだけれど、湖西では一番開けている都市部と呼べる区域がここに当たるのではないだろうか。この辺りで(地味に何度かしているが)しっかり再度給油。ついでに私も久しぶりにエナジードリンクなんて飲んでしまう。
 日も傾き始める頃合いだけれど、ここで宿を探すにはまだ早い気もする。さりとて湖北はガソリンスタンドやネカフェの類もあまり見かけないので、ここからぐるりと湖北を超え、湖東にある長浜市まで走ってから考えようかな、と、考える。
 3時間も走れば着くだろう。22~23時頃に宿を取れば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり走ろう、と持ちまえの呑気さを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出しながら再度エンジンをキックする。一度、二度、三度……よし始動。


・18:29 走行距離:140km

 湖北に入り、絶景の湖岸道路を悠々と走る。
 走行中の私からすれば右後ろの方向に日はゆっくりと沈み始めるが、つい20mも先には広々とした琵琶湖が広がっている。海よりも少し穏やかに感じられる湖面とそこから寄せられる風は、昼間には少し厚着に感じられた服の上からでも涼しさが感じられる。
 先に目を向ければ湖沿いに人里の灯りがぽつぽつと見え、「自分が今からそこに向かって走っていくのだ」と思うと、どこかRPGのフィールド画面を遊んでいるような気持ちになって、心がまた踊る。

 「0.4km先 奥琵琶湖パークウェイ」
 「奥琵琶湖パークウェイは20時~翌8時まで通行禁止」

 という標識が見えたが、私はこのままこの美しい湖岸を心ゆくまで堪能し、湖沿いを走るので一切問題はない。わざわざ風情に欠ける山道を、こんなところまで来て好き好んで走るものか。と鼻で笑う。


・19:09 走行距離:158km

 西浅井町菅浦。
 湖岸の道ってばなんか途切れてるわ。
 正確には砂利道が続き、その先には鉄板を渡しただけの橋のようなものが見えるが、地図を確認しても道はそこで途切れているのでそういう事なのだろう。

 そういう事なら仕方ない……物理的に道がないのなら、先程の奥琵琶湖パークウェイというのが山を突っ切る最短ルートとして存在するらしいな……む、雨もパラパラと……? と思いながら引き返したところ、私の見ている前で職員さんが道路の柵を閉めていた。
 時計を確認すると20時にはまだ少し早いが、まぁ、そういう部分をあげつらってどうこう言うのも無粋か……と更に引き返す。

 「恋人の聖地 奥琵琶湖パークウェイ展望台」
 という看板が癪に障る。50ccは二人乗りできないし、これはそういう旅ではないので、どちらにせよ今回は無縁の施設だ。フン……。


・19:42

 結局、来た道を引き返して迂回。国道8号線を走って西浅井町祝山という土地のコンビニの前で一服。
 「ようこそ子宝、安産のまち 西浅井町」
 という看板が駐車場に立っている。
 温かいコーヒーで暖を取り、そろそろ単三電池で動くタイプのモバイルバッテリーをスマホに取り付け、少し身体を伸ばすなどの休憩を経て再度エンジンをキック。一度、二度、三度……これがかからない。

 すわ、こんな奥まった土地で不動か……? と思うが、落ち着いてキックを繰り返すとエンジンの唸りは聞こえる。が、純粋にアイドリングが安定しない。かかって数秒もすればスン……と止まる。
 それでも10分ほど根気良くキックを続け、なんとかアクセルを駆使してアイドリングを安定させる。感覚としては数秒の停車でエンストするので、信号待ちなんかでも小刻みにアクセルを捻ってエンジンを意識的に回してやる事で走行が可能になっている。

 とにかく開けた土地、街に。
 そこでならまだ宿もあるだろうし、最悪ロードサービスも呼びやすいだろう。
 湖北のトンネルを幾つか抜けて、長浜市まで走ろうと再度決意。
 風情ありますね山道!!! ぼく山道だいすきですよ!!!!


・20:38 走行距離:180km

 滋賀県長浜市に無事到着。
 さすがにそろそろお腹も空いてきたので、近江ちゃんぽんなるものが名物のちゃんぽん亭というチェーン店に入る。ちゃんぽんと聞くとリンガーハットさんのような長崎の食べ物というイメージが強いけれど、どうも琵琶湖周辺の近江でも人気の食べ物らしい。
 「近江ちゃんぽん新時代!」
 「ゴイゴイスープにゴイゴイ酢ーーー!」
 アンバサダーのダイアンという芸人さんのパネルがある。
 ダイアンといえば「オッドタクシー」というアニメで芸人役として出演していたあの二人組だろうか? それにちゃんぽんというのはそこまで何度も食べた訳ではなかったけれど、お酢をスープに入れるという食べ方は恥ずかしながら初めて知った。

 食べてみた。
 美味しかった。
 元々和風の薄味のスープに、味変の酸味がマッチして、思いの外コクコクと飲めてしまう。
 身体が疲れているのもあるのかも知れないけれど、舌先にピッと刺激があると五感が冴えるというか……この食べ方はまたどこかでやりたいと思う。

 因みに今回の旅で食べたのはマジで松のやさんのカツ丼とこのちゃんぽん亭さんの近江ちゃんぽんだけなので、グルメ旅的な側面は一切ない。
 目的は「なんか走る」こと。
 琵琶湖一周して楽しかったという思い出、人生のトロフィーを一つ取得してなんとなく楽しい気持ちに浸る事に主眼を於いているので、美味しいものが食べたい時の旅とはマジでなんか一線を画した何か(雑な表現)だと再度ご理解頂きたい。


・21:11 走行距離:193km

 見えないエンストとの戦いは続く。
 何が怖いかってキチンと道路の左端に寄れていない時にエンストからの追突コンボだ。それはさすがに後ろを走っているドライバーさんに申し訳無さすぎるので、極力、意識してド左端を走る。それでもたまに急に吹け上がりが悪くなってみるみる内に速度が落ちていき……必死にアクセルを小刻みに回すとまたなんとか復活して……という事が二度ほどあった。
 「もう正直休もう。次、ネカフェ見えたらそこ停めるわ。ここ、街だし、最悪明日の朝に不動を確認したらロードサービスでも何でも呼ぶわ」
 そんな事を考えながら──考えながら──3件ほどネカフェをスルーして、なおも走る。

 私にはまた、小さく新しい目標トロフィーが浮かんでしまったから。
 走行メーターに目を向ける──。


・22:46 走行距離:241km

 滋賀県野洲市。
 単日走行距離の最長記録を更新。
 10年前に走ったAF27の記録を塗り替える。

 しかしここにきて事態が好転してきたのか、つい2、3時間前ほどまであれほど気になっていたエンストがこの辺りから全く起こらなくなる。行こう。機体の恢復と共に、わずかながら希望が生れた。機械に奇跡が宿る事は有り得ないが、ここに来てようやく運が向いてきたのかも知れない。
 日付が変わるまではあと1時間と少し。
 正直、安牌を取るならここで一泊するというのが最善手ではあるだろうが、やはり、おまえAF34は真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい!
 ここで一泊して、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、自己記録の更新を志さなければならぬ。
 いまはただその一事だ。走れ! AF34あいぼう


・22:56 走行距離:245km

 滋賀県栗東りっとう市に。
 栗東市といえば競走馬のトレーニングセンター、略してトレセンのある市ですね。あとここから一瞬だけ道を間違えて東南の甲賀市に向かって走り出しそうになってたので慌てて引き返して軌道修正したよ。ズキュンズキュン走り出すところだったよ。アホか。
 標識の「甲賀市」に直感的にマズい事を悟れたのは今回何度も書いている名古屋-箕面間で通った事のある土地だったのと、その時ちょうど
 「甲賀って言ったら忍者の里! 琵琶湖の南ら辺走ってんのか今~!」
 とか言ってたのを未だに覚えていたからだったりする。経験が生きたな。


・23:38 走行距離:260km

 滋賀県草津市。
 もう正直琵琶湖全然見てないなという事に気づく。というのも、国道8号線をゴォォと南下しているとところどころ側道の標識に「○○市内」という表示があって、恐らくそちらに向かえば湖岸の市街地に着けたんだとは思うんだけれど、なんというかもうこの時点で湖岸を走ろうという事から「AF34に乗ってどのくらいまで距離が伸ばせるのか」に執心し始めていたので。
 そもそもこの時間になれば湖を見るも何もナァ……という気持ちも正直あったりはしたけれど。

 気付けば琵琶湖一周の旅はAF34との長距離走の旅にすり替わっていたんだと思う。じゃなきゃエンスト云々を抜きにしてもどこかで休んでたんじゃないかな私。「単日走行距離」みたいなのにこだわり始めてた気がするし……あと、たぶんこのまま数時間も走れば普通に自宅に着くでしょ、って目算が立ったのもあったんだろうか。


・23:43 走行距離:263km

 琵琶湖一周達成。
 もうこうなったら60kmも走れば帰られるしなぁ、という、そんな気持ちになる。


■5/3


・01:05 走行距離:300km

 大阪府高槻市に帰着。
 高槻市の国道171号線沿いのレッドバロン~市役所前を通る頃には妙に「帰ってきた感」が湧いてくる。これは名古屋からの帰りの時に感じた気持ちと全く同じだったりもする。
 いや、その時はマジでガラケーのナビで「今どこら辺走ってるの!?」って思いながら、か細い50ccのライトだけで真っ暗の中をトロトロ走ったりもしていたので。


 GWの深夜の国道171号線ともなれば暴走族とも遭遇してしまうのだけれど、なかなかない貴重な体験だった。人数は2~30人くらいだろうか? 歳のほどはハイティーンから、それでも上は20代中~後半くらいに思える。

 とにかく皆で流すのが目的なんだろうなぁと思わせるゆっくり走行。
 後ろを走るクルマが何台か、露骨に別の道に曲がって迂回するの様子も。

 思い思いにエンジンを吹かしてリズムを取り、私は少し後ろを着いて走る形になったんだけれど、とにかく音以上に排気ガスの匂いがキツい。もう37歳ともなれば「警察沙汰にならないように。それと何より怪我しないように」という気持ちがぐるぐる頭を巡るのだけれど、それも大阪府に入る頃にはどこかのコンビニに集まったようで、その横をスーッと抜けて終了。

 騒音だってある。なので迷惑行為はもちろん良くないし、すべきではないのだけれど……せっかくの若い頃なんだし、人様にご迷惑をおかけしない範囲、形であるのなら仲間たちと楽しい青春の瞬間を送って欲しくもある反面、それでも徒党を組んでの暴走行為は、うーん……。

 まぁ、度が過ぎれば警察も来てくれるだろうし、何より怪我のないように、変な話、安全に留意して楽しくツーリング(で良いのかな)してくれればいい……いや良くはないけれど、お目溢しくらいあってもバチは当たらないんじゃないかな……と私個人は思う。

 ところでおじさんはもう300km走っててそろそろ疲れてきてるんだ。


・1:50 走行距離:317km

 帰ってきたぜ箕面市愛しのこの町まで。
 国道171号線沿いのドン・キホーテ箕面店前である。

 この10後にウッカリ48km/hで18㎞/hの速度超過でお巡りさんに止められてキップ切られなければ最高の思い出の一つになったんだけれど、あぁ、いや、ある意味で俺の人生の行動に一つアホなオチをつけてくれてありがとうって気持ちすらある。いややっぱりない。アホか。
 ムチャクチャ悔しかったんですが、箕面警察がしっかりとお仕事なさっている事と、この悔しさをバネにもう一度改めて安全運転に努めようと思います。いや7,000円払う事になったの凄く悔しい。7,000円のホテル泊まったって考える事にするよ。でも悔しいよ。アホか。アホか。ひどく赤面したわ。


・2:48 走行距離:333㎞

 帰宅。
 さすがに空気イスみたいな姿勢で15時間以上走っていたので太腿の内側が張った感じがする……のと、やっぱり太腿が冷えッ冷えに冷えていたので寝る前にお風呂にじっくり浸かって、そこから少しストレッチもして、寝る。



 自分用の備忘録なので特にオチはつけない。
 「私がAF34と相棒になるための旅だった」とでも記しておく。

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