明転。

下手から、土木工事の作業員風の男が2人歩いてやってくる。
2人とも、手には大きなスコップをもっている。
歩きながら、会話をしている。

A　   あれ？こんなところに、こんな大きい池なんかありましたっけ？
B　   ああ、この辺、地殻変動が多いから、最近できたんじゃない？
A　   結構、いろんなサイズの穴があるんですねー
B　   ああ、モグラも成長していくからな

舞台中央あたりで止まって話始める。

A　   いやー。僕、モグラ叩きをやるの、初めてなんですよ
B 　え？　マジで？　最近、多いけどなー
A 　あー、たしかに、仕事の依頼は多いみたいですけど、なんか怖くって、今までやってこなかったんですよねー
B 　そっかー。まあ、でも、そんな難しいもんじゃないよ。俺がモグラをおびき寄せる笛をふくからさ。出てきたところをコイツでボカーンよ

B、スコップでモグラを叩くマイム。

A 　え？　モグラって、笛でおびき寄せるんですか？
B 　えー？　なに？　お前、事前に説明受けてないの？
A 　いやー、説明は受けたんですけど、なんかよくわかんなくって
B 　しょーがねーなー

B、ズボンのポケットから笛を出す

B 　ほら、これを吹くんだよ

B、笛を吹く。ぷっす―――――。かなり低音の音がでる。

A 　なんか……。思ったより音が低いんですね
B 　まあ、土の中にいるモグラに聞かせるんだから、こんなもんじゃないか？
A 　っていうか、今、笛、吹いていいんですか？　モグラ来ちゃうんじゃないですか？
B 　ああ、大丈夫、大丈夫。結構しつこく吹かないと来ないから
A 　あ！

A、下を見る。Bもつられて下を見る。
A、足元を均すように足を動かす。

A 　ミミズだ
B 　まあ、ミミズがでてくることもあるよ
A 　……あの、そもそもなんですけど
B 　ん？　なに？
A 　なんで……、その……、モグラを叩くんですか？
B 　え？　そりゃあ、お前……。ポイントがもらえるからだよ
A 　ポイント……？　なんのポイントですか？
B 　そりゃあ、Tポイントだよ
A 　Tポイント……。モグラを叩いたらTポイントもらえるんですか？
B 　そうだよ。……逆にさあ、お前、ポイントってどうやって作ってると思ってたの？
A 　いや、そりゃあ……。コンビニとかでお金払ったら、そのオマケみたいな感じで
B 　いやいや……

B、あきれたような仕草。

B 　いや、お前、そのコンビニとかでお前に渡されるポイントはどこで作られるのって話だよ。 俺たちがモグラを叩いてポイントを作って、コンビニとかTSUTAYAとかに渡してんだよ？
A 　へー。なるほどー。そうだったのか。
B 　そうなんだよ。世の中、うまいことできてるんだから
A 　勉強になります。……うわっ！

A、後ろに飛び退く。B、下を見て、眉をしかめる。

A 　めっちゃ、ミミズ集まってるじゃないですかー。うわー……。気持ち悪い……
B 　こんなもんだよ。じゃあ、始めるか？

B、適宜、地面を指さしたりしながら段取りを始める。

B 　ほら、ここに穴があるだろ？多分、この穴からモグラがでてくるから、でてきたら、思いっきり、ぶっ叩け。叩く力は強ければ強いほどいい。
A 　強く叩いた方がポイントが稼げるんですか？

B、ニヤリと笑う。

B 　お前もわかってきたじゃねえか。あと、そうだな。せっかく二人いるから、お前はあっちの穴を見張ってくれ

A、B、スコップを構えて、下を見つめる。少し間をあける。

A 　先輩
B 　ん？
A 　笛を吹いてください
B 　ああ、悪い悪い

B、笛を吹く。長めに。
プッス――――――――――――――――――――。
少し間をあけて、ゴゴゴゴゴゴと地鳴りが始まる。
地面が揺れているため、A、B、ふらふらする。

A　 な！なんですか、コレ！
B 　わからん！


暗転。


キシャ――――！！！と謎の動物の鳴き声。



了