クルマの日記

 僕はクルマで会社まで通勤している。クルマは便利である。歩かなくてよい。

 就業後、会社の先輩に話しかけられる。今日、うちまで送ってってくれない? たしかに雨だし、徒歩はイヤなのだろう。いいですよ!と気軽に答えた。

 へー、渋いクルマだね。
先輩にそう言われた僕のクルマは黒くて四角くて外国製である。メーカーなどはわからないし興味がない。目がチカチカしない色味で乗り心地がよければ充分である。
まあ、乗ってください、と先輩に言うが、彼女はなかなかクルマに乗りこまない。どうかしましたか、と訊ねると、どうも、助手席のシートに置いてあるものが気になってしまうらしい。


ああ、これですか。ヒヨコですよ。

なんで……? ヒヨコ? ぬいぐるみとかじゃないよね? これ。生のやつじゃん。

かわいいでしょ? まあ、気にせず座ってくださいよ。

いや、ヒヨコいるから座れないよ。どけるなりしてくれないと。

大丈夫っすよ!うちのヒヨコ丈夫なんで!


すると、先輩はなにかをあきらめたように雨の中を一人で帰っていった。
僕はそんな先輩の背中に、お疲れさまでした!と声をかける。

さてと!いくか!相棒!
助手席のヒヨコに声をかける。
ヒヨコはぴよぴよ鳴く。
僕たちのドライブのスタートである。

最後まで読んでくれてありがとー