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AIにマンガ絵を描かせてみて気づいたこと

前提

私はお絵描き歴29年の趣味でマンガ絵を描く人間である。であると同時に、大学では情報工学を学んだ、情報テクノロジーに親和性のある人間である。今は無職だが、前職はプログラマだった。
そんな人間なので、絵とAIの関係についてはちょくちょく気にかけてきた。
最近はMidjourneyやStable Diffusionを始めとした画像出力AIが話題になっている。
この分野、とても進歩が速いと感じる。
5年くらい前はAIによる自動着彩や自動ペン入れ技術が出てきたという話だった。
それが今は絵が丸ごと出てくる。
これを速いとみるかどうかは人次第だと思うが、個人的には速いと感じる。そもそも、大学で情報工学を学んでいた20年前にはAIが絵を描く時代は私が生きているうちにやってくるとは思ってもいなかった。
ただ、そういう新テクノロジーは試してみたい。
Stable Diffusionをローカルに構築したので、GTX1650をぶん回し続けて3日ほど。概算だが700~800枚くらいは絵を描かせたと思う。
ここでStable Diffusionでイメージを出す設定の話をするのは他の人に任せようと思う。
私は、絵を描いてきた人間という立場でこの技術を使ってみて感じたことを書こうと思う。

絵を出力させて気づいたこと

絵を出力させていくと、当然出来上がった絵を選定していくことになるし、理想を目指して微調整していくことになる。その過程で気が付いたことがある。
それは、私は私の理想の絵をあまり分かっていなかったということだ。
私は自分を萌え絵を描く人間だと思っていたが、AIに様々な女の子の絵を描かせてみた結果、典型的な萌え絵より、もう少し青年マンガ誌よりの絵柄のほうが好きなのだとわかってきた。
今まで出力した中で、一番好きだと思った絵がこちらだ。

Stable Diffusionが生成した絵

これはプロンプトだけで生成した画像で、加筆や修正を一切していないし、img2imgも使っていない。これがいいと思ったので、これを生成したプロンプトを基本にして出力の調整を繰り返している。
また、モチーフについても、誰それが何かをしている絵ではなく、人物がカメラを意識しているポートレート調のものが好きなのだとわかった。これについては今までも何となくそう思っていたけれど、AIの絵を選定していてより強く実感したというところだ。
総じて、AIを見つめるということは、自分を見つめることなのだと思った。

では、これからAIとどう付き合うか

これについて、私の中では現時点の答えが出た。AIが出力するイメージを発想の補助輪にするというものだ。
AIにとにかくいろんな出力をさせてみると、いい雰囲気を出すSEED値が見つかる。

いい雰囲気だと思ったStable Diffusionの出力

こういう出力を得たら、これを元に絵を描くのがいいと考えたのだ。
そうして実際にAIの出力を元絵にして描いてみたのが、次の2枚になる。

AIが出力したイメージを元に描いた絵その1
その1の元イメージ
AIが出力したイメージを元に描いた絵その2
その2の元絵

私が絵を描いていて一番苦戦するのは、色塗りを含めた雰囲気づくりである。そういう苦手なところはAIの力を借りて、AIが苦手なマンガ的人物描写は自分でやろうというのが現時点での答えだ。

でも、これから先は…?

現時点ではAIが得意な雰囲気作りはAIの力を借り、AIが苦手なマンガ的人物描写は自分でやろうと思っている。
だが、これから先はどうだろう?このAIの進歩の速さから考えると、マンガ的人物描写もAIが的確にこなすようになるまで、あと2年かからないかもしれない。
そうなったときに、私はどのように絵を描くようになるだろうか?
例えば、最初に載せたStable Diffusionが生成したマンガ絵のポートレートであるが、この絵の雰囲気を保ったまま自分で絵を描こうとは思わない。
もうちゃんと整合性のある描写をされた人物が写っているからだ。
現時点ではこのポートレートは奇跡的な1枚だと思うが、このレベルのマンガ絵が当たり前に出てくるようになった時、私はどうするだろうか?
AIに絵を描くのを丸投げしてしまうのか、それともAIに出力させるのも含めて絵からまるっきし離れてしまうのか。
AIが絵を描くことについて、否定的な感情を持つ人は多いだろう。私は今はたまたまそう思わないでいるが、これから先はわからない。
自分より絵がうまい人がほとんどの人にはいるだろうが、そうした人がいることが絵を描く気持ちを折ることは少ないと観察できる。そうでなければ絵を描く人は今のようにたくさんいたりはしないだろう。それがなぜかというと、自分より絵がうまい人に対して嫉妬心がないわけではないが、同時に尊敬の念も成立するからである。
だが、仮にAIが自分よりもうまい絵を描いたとしたらどうだろう?AIに対して人間に対するのと同じだけの尊敬の念を抱けるだろうか?
私は人よりもコンピュータが好きだという自覚はあるが、それでもAIに対して人間と同等の尊敬を持てるかというと、それは正直否である。
そのときに、絵を描くことを好きなままでいられるだろうか?
AIが当たり前にマンガ絵を描けるようになる頃には絵を描き続けて30年を超えていると思うが、それだけ自分の血肉になっている趣味でも諦めてしまうのだろうか?
それはその時にならないとわからないし、その時はたぶんかなり近い。
ただ、それでも絵を描き続ける自分でいたい。

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