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【第16話】「田舎⇔東京ぐらし」は始まったばかり②

 瀬戸内海の島に移住してきて、4カ月が過ぎた。東京への出張も3回やってみて、どうにか型も定まってきた…ように思う。

 ここいらで一旦、総括しようじゃないか。あくまで暫定だけど、半年前までうじうじ悩んでいた自分や、これから田舎暮らしを検討している人たちに何かレポートを送りたい気分なんだ。

 本当は、養蜂見学に誘われてハチに刺された話とか、ウクレレ披露した話とか、カンジタの薬買った話とか、もっともっと書きたかったこともあるんだけど、光陰矢の如しな毎日で結局ブログも1カ月放置してしまった。ちゃんとまとまった記事にしようと思ってたら、ついつい書きそびれた。

 「姥捨て山」の婆さまじゃないけどさ、小さい枝でもちょいちょい落としていく必要があるんだろう、今は。


■移住して良かったこと

①屋外で「火」がのびのび使える、歌も、踊りも

 この間、収穫祭をやったんですよ。同じ畑をやっている3人だけのささやかなものだったけど。

 家の前にバーベキューコンロ出して、畑で採れたナスやトウモロコシ、ついでにいただいたサザエももくもく焼いた。旨すぎて酒も進むし気分良くなったら歌いたくなってきて。でもカラオケボックスなんて当然ないから、音楽はタブレットからYouTubeの歌を拾ってきて流し、歌詞はスマホで検索してその画面見ながら熱唱した。そのまま家の前で、山に囲まれてさ。ウルフルズとかSEX MACHINEGUNSとか矢野まきとか。腹から声出したなぁ。

 なんかね、すごく気持ちよかった。

 それと夕暮れ時、浜辺に焼きそばとお酒持って行って、誰もいない桟敷で二人宴会やった。暗くなってからは花火もやってさ、両手いっぺんに2本持ったり富豪使いしながら夫が波打ち際で踊るんだ。ぎこちない動きなんだけど、暗闇に浮かぶ肉体と光の軌跡が美しくて、はかなくて。

 外で火を自由に焚けるってのが、こんなに清々しいことだと思わなかったなぁ。池袋に住んでいた時は、近所の公園で花火一発かました途端にお巡りさんがすっ飛んできた。こっそり通報されてたらしい(笑)

②夫婦感が増した 

 初めて出合う体験、もどかしいこと、美しいことなどを共有しているときなんかに、「あ~、そういえば結婚して夫婦になったんだ」とシミジミ感じることがある。正直、移住前までその実感は薄かった。こっちでは家の修復や畑の作業など、金で解決できることが少ないから、夫婦で共同作業しないと乗り越えられないことが多いからでしょうな。

 夫もこれまで以上に大事にしてくれてる気がする。

 子どもでも育てりゃ自然とそんな感じになるんだろうが、この感覚が持てたことを大事にしたい。特別な理由がない限りは、「最初は別居で」なんて言わずに、スタートから共にしたほうが絶対いいよ!

③昔と今との繋がりを肌で感じられる

 大三島をはじめとした近隣の島には、水軍の名残がまだ息づいている。

 水軍の守り神とされた大山祇神社では、今も宝物館で、源義経や弁慶たちが使った武具を気軽に見ることができるし、大山祇神社と深い関係にあった越智という苗字の人がまだたくさん住んでいる。

 昔と今の繋がりを肌で感じることができるんだ。

 去年の本屋大賞をとった小説『村上海賊の娘』は、この辺を拠点とした海賊について描かれたものなんだけど、今も大島(大三島の隣の隣にある島)の人たちはまさに海賊気質を受け継いでいる感じ。漁船の装飾も他の島より気合い入っているし、櫂伝馬(小型の木造船、10人ほどの水夫が力を合わせて漕ぐ)のレースも他の島とは違い、立ったまま漕ぐ血気盛んなスタイル。

(これは大三島の櫂伝馬レース、座って漕ぐ。祭のときは、もっときれいに装飾してお稚児さんみたいのを乗せるらしい)

 「大島には当り屋がいるらしい」とか、後はここに書けないぐらい週刊実話的な怖~い噂話を耳にしたりもするけれど、そんなところも含めて面白いなぁと思う。だってそれが本当だとしたら、荒くれ者の血が脈々と受け継がれてるってことじゃない?

 子どもの頃、「おばあちゃん家が田舎の子」とか「方言が抜けない子」に憧れたことがある。なんかルーツを持っている感じでうらやましかったんだろう。ウチは、父方の実家が埼玉の住宅街で、母方が東京の下町。しかも片方の祖父母は養子で、その先をあまり遡れない。自分が生まれ育った土地には当然愛着あったけど、身体に流れている血との結びつきはほとんど感じることはなかったなぁ。

■意外と大丈夫だったこと

①仕事は、そこかしこから湧いてくる

 ここはいずれ詳しく書こうと思ってるんだけど、フリーランスでも何とかなります。たぶん移住前の地で頑張ってきた人なら、移住先でもニーズがあるよ。

 特に大三島の場合は、チャレンジングな移住者も多い。新しいアイデアでモノを生み出す人、起業する人もいたりで刺激を受けっぱなしだ。

 今の自分は、島内で2割、東京からの仕事で8割といったところ。収入は移住前よりまだ少ないが、今までやってみたかった新しい体験をたくさんさせてもらっている。青写真では、1年後ぐらいには移住前の収入を超す予定だ。

 あと、島の人はいくつも仕事持ってたり、以外な業務でちょいちょい稼いでいたりする。例えば雑草刈りでもギャラは発生するし、役場の宿直のバイトもある(確か一晩8000円と聞いたような…)。そういうことを組み合わせて楽しく暮らしている人もいるし、海の幸・山の幸、食べ物はいくらでもある。

 今では「失業しても食うに困ることはないなぁ」と、妙な安心感が心に1本の串を通しております。この安心感のパワーはすごいと思う。

②長距離移動はそんなに疲れない

 東京までの距離800Kmと知ってからは、戻るのが億劫になるかもと心配していたが、ルートや乗り換えさえ把握してしまえばそんなに疲れなかった。むしろ移動中はうたた寝したり、好きなラジオの録音聴いたり、のんびりできる貴重な機会でもある(田舎暮らしは忙しいのだ)。

 タダで泊めてくれるシェアハウスや友人宅もできたので、本当にありがたい。一泊目はそれなりに緊張したけど、慣れてからはすごく安らかな気分だし、快適な時間を過ごさせてもらっている。うれしいことに人との出会いも濃密になり、仕事やプライベートに良い影響も出てきた。

 都会のいいところは、労力をお金で解決できるところだと身に染みて分かった。飲み食い、移動、荷物の預かり、エトセトラ。だからよく「遠路はるばる疲れるでしょ」と労わってもらうんだけど、大丈夫です! むしろ(まだ慣れない)島の生活よりラクかもしれない。


■まだダメなこと

①やっぱり虫こわい

 我が家は、集落の一番端にある。周囲は山で木々がわんさか浸食してきているので、他の生き物とのバトル最前線なのだ。何も戦う必要はないのだが、初夏はスズメバチ、梅雨~現在はムカデ(家の中では1日1~2匹現れる)、先月までは家の前で(誇張ではなく)200匹ほどの羽蟻がなぜか集団死していたり…。

 で、今のトレンドは、虻だ。車のエンジンふかしてると5~6匹が親の仇のようにたかってくるんですよ。人間の血吸うんだって、ミツバチに刺されるより痛いんだって! ひょえ~(><)

 ムカデは家の周りに殺虫の粉撒いているので、家で見るのは死体。ハチや虻の対策も実践しているので、どなたからも刺されたことはないけど……やっぱり怖い!! 寛ぐはずの部屋や庭で気を抜けないのは、地味にストレスっす。

 ここは本当になんとか克服しないと。カラス克服したみたいに「ムカデ可愛い~」とか言える次元に到達できるといいのだが。虫愛づる姫君とかナウシカとか、ほんと尊敬するわ!

☆ 

 もう思いつくままに垂れ流しちゃったけど…、そういう訳で過去の自分よ、移住計画している貴方よ、移住は何とかなりますっ!(説得力ないけど) いいところも葛藤するところも含めて、すごく面白いよ!(これは胸を張って言える)

                               (続く)

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