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左利きの”喪失”は、右利きの2倍を超える説

きのう、大切にしていた急須を割ってしまった。

真夜中に急に「掃除欲」がわいてキッチンを片づけだしたのが運のつき。シンクにあったラフロイグの空き瓶を倒したら、ピタゴラスイッチのような的確さで急須を直撃し、取っ手が折れたのだった。

真夜中の失敗は、誰のせいにもできないからツライ。急須のお葬式をあげたいぐらいにショックだ。今なら弔辞読める。心臓マッサージしたら蘇生しただろうか。しねぇだろうな。そのぐらいの分別はある。

どうしてそんなに執着するのかというと、これは左利き用として特別につくられたものだからだ。左利きは、日本の生活で肩身がせまい。「オレちがメインストリームだ」と言わんばかりに、右利きマジョリティが構築した無邪気なスタンダードの下で、泣いている。

電車の自動改札は、左側からもタッチできるようにしてくれ。ファミレスのスープ用おたまは、よそいづらいんじゃ。定規の目盛りも逆にしてくれたら、0から線が引けるのに。などなど、迫害っぷりを挙げればキリがない。あ、試しに右利きの方は、家の急須を左手で持って淹れてみてください。すごい淹れづらいから。

お茶好きなのに、そのフラストレーションが10年近くあった。独立してから、池袋の東武百貨店で常滑焼の左取っ手を注文したのだ。やっと手に入れた「左手ファースト」の世界。うれしくてバレないようにスキップしながら帰った。

そんな楽園を自ら壊したのだ。自己嫌悪で発狂しそうだ。神奈川には左利き専用ショップがあると聞く。本物のユートピアだ。東の方角に土下座して頭をこすりつけ、なんとか正気を保つ午前2時。

カラス雑誌「CROW'S」の制作費や、虐待サバイバーさんに取材しにいくための交通費として、ありがたく使わせていただきます!!