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自立型自習に必要な「読んで理解する基礎的な力」①-教育のための科学研究所のRSTから学んだこと【Aflevering.152】

 子どもたちの教育に関わる上で、何を大切にすれば良いのかについて考えたことをまとめています。私が教育に携わる者として、そして子育てをする親として、子どもたちにどんな力をつけさせてあげるのが良いのか、自分が受けてきた教育とこれから目指したい教育の狭間で迷っていました
 そんな時に、新井紀子氏の『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』『AIに負けない子どもを育てる』の両著書が、悩んでいた私に一筋の光をさしてくれました。今回は、これらの著書を読んで感じたことをいくつかの記事に分けて記録しておきたいと思います。

つまらなかった学生時代の勉強

 私は昨年まで高校社会科の教員でしたが、自分が学生の頃は教科書にある太字もしくは欄外の人物名や出来事の名前を追いかけるような勉強ばかりしていました。社会科の勉強に対しては、どちらかというとただの暗記科目というイメージが強く、歴史や地理、公民の内容自体を楽しむということはほとんどありませんでした。
 しかも、この「キーワード検索」のような勉強法は、AIが得意とする分野に当たるらしく、私たちは到底敵わないとされています。

学生時代にしていたかつての勉強法

 中学生になると、授業では先生が黒板に書いたことをノートに写し、じっと机に座ってひたすら先生の話を聞くことに退屈さを感じながら、時には平常点のために手をあげて発表していました。
 また、定期テストがせまってくると、毎回自作の穴埋めプリントを作成し、直前にキーワードを一気に詰め込んでいました。そんな方法を続けながら、定期テストではそれなりに点数が取れるものの、本質的な理解はできていません。
 そのため、中学での実力テスト、やがては高校入試、高校での定期テスト、そして大学入試に進むにつれてその勉強法が通用しなくなっていきました。
 高校卒業後、大学受験のために1年間過ごすことになり、その間、国語や数学においては、正しく理解することが求められていたので、多少は読む大切さに気づいていたかもしれません。しかし、それまで暗記の勉強法に頼りすぎてしまった私にとって、もはや「教科書をじっくり読んで書かれていることを理解する」という基本的な学習ができないまま大学生になってしまいました。

学習法への疑問

 私は大学生になってから、やっと歴史を学ぶ面白さに気づくことができました。そして、高校現場で考える楽しさを伝えたいと思って高校教員になりました。
 しかし、これまでに自分が行ってきた勉強法と、自分が目指したい授業に乖離があることに苦しんでいました。「日本の入試は結局は暗記でしょ?」「まずは大学に入らないことにはどうしようもないから、とにかく覚えやすい方法で暗記して入試を突破してから、そういった本質的な勉強をすれば良い」という投げかけにどう答えて良いのかいつも悩んでいました。

 確かに私も、暗記という勉強法で、ある程度の結果を出すことができたという経験があります。
 しかし、その勉強法には限界があると感じていました。そして、暗記の勉強法を続けてしまうことによって、文章の中身を吟味したり、文章を深く理解し議論することが苦手になってしまうとも思っていました。
 とは言っても、「正確に理解することを重視した授業」に取り組んでいきたいけれど、まだ私には自信がありませんでした。そんな時に出会った本が、新井紀子氏の『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』『AIに負けない子どもを育てる』でした。この2冊を読んで、私の中にあった「学習のあり方」に対する疑問が晴れたのです。

本を読んで何が変わったのか

 2冊の著書を読み、私が学生時代に行なっていた勉強法は、今の時代には合わないことがはっきりと理解できました。また、私が教育現場で取り組みたいと思っていた「暗記するためのテクニックではなく、教科書に書かれている内容を理解することやそれについて考えたことを共有する授業」を目指して良いということを示してくれました。
 教科書に書かれていることを理解する力は、誰もが当たり前に持っているとされているのですが、意外にもその力が不足しているのです。それに気づき、基本的な読む力を付ける方が、むしろ日本の入試においても有利に働くことにつながり、その後も自分で学ぶ力を持ったまま先に進むことができるということが分かりました。

 新井氏の著書では、「RST(リーディングスキルテスト)」により教科書の本文自体が読めていない子どもたちが増えていることが分かり、その原因についてもいくつか言及されています。その原因とは、社会生活の変化であったり、教育現場で新しい授業の方法が導入されたことだと書かれており、とても興味深い考察が述べられています。
 今も子どもたちの学習をサポートする仕事をしている私にとって、基礎的・汎用的読解力(読む力)が重要であるという結論には、とても勇気づけられました。

 次回からは、もう少し具体的に自分が考えたことについてまとめていきたいと思います。

<参考文献>
・新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報、2018)
・新井紀子『AIに負けない子どもを育てる』(東洋経済、2019)

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