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「好き」が心を動かす〜ポケモンからカタカナを学ぶ娘【Aflevering.181】

 私の娘は現在6歳で、オランダ現地の学校に通っています。この冬休みにカタカナが少し読めるようになりました。それは教科書でもドリルでもなく、最近大好きになったポケモンによって促されたのです。

 彼女は4歳の時にオランダに来ました。家庭では日本語を話し、学校ではオランダ語で学んでいます。そんな彼女は今「ポケモン」に夢中です。かつて初代ポケモンに大ハマりしていた私にとっては、まだブームが続いていたのかと驚きました。どうやら学校でポケモンカードが流行り出し、そのカードを友達からもらったことが始まりだったようです。

私にとって懐かしの「ポケモン」

 娘が初めて友達からもらったポケモンカードを私に見せてくれた時、そのポケモンの名前を言うと「お父さんもポケモン知ってるん!?」と驚きの表情でした。どうやらポケモンが日本発祥だとは知らなかったようです。それから、ポケモンのことについてポケモン図鑑を使って一緒に調べたり、アニメを一緒に見るようになりました。
 すると、学校から帰ってからのアニメタイムや、大好きなお絵描きも全てポケモンに変わりました。そして、私が幼い頃聞いていた「ポケモン言えるかな?」という歌も聞かせてみると、興味津々であっという間にポケモンに詳しくなっていきました。

 すぐに飽きるかなと思っていたのですが、もう少し彼女のポケモンブームは続きそうです。また、学校で流行っているみたいなので、ポケモンがきっかけで学校の友達といろんなおしゃべりをしてくれたら良いなと思います。オランダの小学校ではマイノリティになる彼女にとって、日本の文化の一部として誇りに持てる部分であってほしいと思います。

ポケモンを日本語学習に活かす

 私は、娘がせっかくポケモンが好きになったのなら、それをカタカナや数字なども一緒に学べないかと考えました。ポケモンを使って娘に日本語をどのように学んでもらえば良いか、以下のように考えていろんな問いかけをしてみました。

ポケモンのタイプ:仲間分けの練習(まとめる言葉と具体例)
ポケモンの名前:カタカナの読み(興味があればどれだけでも読む)
ポケモンの技:語彙力の強化(かえんほうしゃの「火炎」と「放射」、じこさいせいの「自己」と「再生」などの意味を一緒に考える)
→ポケモン図鑑を使って調べる(メチャクチャ一生懸命読んでいました)

 娘は時間があればポケモンのことを私に聞いてきたり、分からない時は一緒に調べたりしていました。そして、次第に詳しくなるにつれ、私は教えてもらう側に回って色々と質問することにしました。すると、カードや図鑑で調べながら、一生懸命に文字を読んで説明しようとするのです。

ゲームは家族の団欒、そして日本語の学びの一部と考える

 この冬休み、私たちは自宅で過ごすと決めたので、ニンテンドースイッチを購入することにしました。かつて、近所で遊びに行かせてもらったお家で娘がポケモンのゲームをさせてもらって以来、スイッチを欲しがっていたので、このタイミングで購入しようと決めました。
 そして、ゲーム機を購入するのは娘が生まれてから初めてだったので、予め時間などのルールをみんなで話し合ってから購入することにしました。

 また、ゲームは家族で楽しむものというイメージを持ってもらうために、ゲームの時間はみんなでゲームを楽しむことにしました。

 海外なのでソフトを購入すると日本語では遊べないのですが、ダウンロード版にすると日本語でも遊ぶことができます。ダウンロード版をいくつか購入して冬休みはみんなで楽しみました。

ポケモンのゲームでストーリーの展開やカタカナ、数字を学ぶ

 ポケモンのソフトは「ポケットモンスター レッツゴーピカチュウ」にしました。これは、私が約24年前に遊んだゲームのリメイク版でもあり、私自身も興奮してしまいました。

 ゲームには協力プレイなどで一緒に遊ぶことができるので、家族みんなで遊ぶことができます。さすが任天堂です。ポケモンを一緒に捕まえたり、バトルのお手伝いができるので一緒に遊ぶことができました。

 しかし、RPGのゲームをしていると、話を聞いていなくてどこにいけば良いのか分からなくなったり、レベルが不足して先に進めないことなどがあります。初めてゲームをする娘にとっては試練だらけでしたが、それをゲームの中の情報集めをするとうまくいくというアドバイスをもらってからは、必死にキャラクターのセリフを読んだり、ポケモンのレベルを見て大小の比較をしたりしました。

・ゲームの中にある日本語学習
 ストーリーの展開やセリフ:日本語の文章を読む練習
 ポケモンのレベル:数字の読み方と数字の大小の比較

娘の日本語能力の変化

 娘は数字が少し苦手でした。というのも、オランダ語の数字の読み方が特殊なため、娘は日本語とオランダ語の数字の読み方が混乱していました。例えば、24は日本語で「にじゅうよん」になりますが、オランダ語だと「よんとにじゅう」と読みます。その辺りが混ざってしまい、12を「にじゅういち」と言ったりしていました。
 しかし、ポケモンのレベルを何度も何度も一緒に読むようになってから、少しずつ正確に読めるようになってきました。もし、ドリルなどで数字を無理やり読ませていてもできるようになっていったかもしれませんが、彼女自身が楽しみながら習得できたのは良かったと思っています。

 また、私がどう学んでもらおうかと悩んでいたカタカナは、もうほとんど読めるようになりました。これは、ポケモンのおかげです。偶然このタイミングでうまくカタカナを一通りは理解することができました。ちなみに、スムーズに書くのはまだまだ難しそうですが、ある程度読めるようになったのでよしとしています。

生活の一部に学習がある、自然に学べるのが最も効果的

 私がオランダに来たばかりの頃、娘の日本語をどのように維持して良いのかが分からず、少し強引に日本語を勉強する時間をとったりしていました。しかし、娘があまり気が進まずに嫌がったりする様子を見て、あまりこれを続けるのは良くないかと思い、妻と話し合って方法を変えることにしました。

こちらからやってほしいことがあったとしても、それを押し付けるのではなく「子どもの学ぶタイミング」を待つことにしたのです。今回は、ポケモンがカタカナを学ぶきっかけを与えてくれました。
 そのタイミングが来た時の子どもはとてつもない勢いで吸収していきます。無理やり学ばせることは、精神衛生上良くないということと、学習に対して「受け身」にさせ「自分で判断する機会を奪って」しまったり、学ぶことが「つまらないもの」や「我慢しなければならないもの」と捉えてしまいかねないので止めることにしました。そして、今は夫婦で子どもをよく観察し適切なタイミングで適切な刺激を与えるようにしています。

 自分の好きなものであれば、初めは読めなかったり理解できなくても、知りたいという好奇心がわからない苦痛に勝ることで、辛抱強く目の前のことに取り組むようになります。

 この冬は、どうしようか迷っていたカタカナの学習を、偶然ポケモンによって学ぶことができました。それは、私たちが押しつけたのではなく、そのタイミングで適切な環境を用意したということです。これからも、娘には学んでほしいことが出てきたとしても、子どもをよく観察し適切なタイミングを待ちたいと思います。
 今回の経験を通して、大人が先に動くのではなく、その子一人ひとりのタイミングを見てから、こちらが動くことの大切さを改めて感じました。
 これからも親として、子どもの興味の「スイッチ」をよく観察し、うまく刺激を与えることで学習にも繋げるサポートしていきたいと思います。

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