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Column #11 晩秋のノマドワーカー

12/12発売・ファーストアルバム「青木慶則」の先行販売のライブを11/18に行ったので、すでに手にしている人はいると思うけれど、まだ全国発売はしていないので、前回同様、内容については避けておきたい。

でもすでに受け取ったリスナーのみなさんや、いくつかの音楽雑誌のインタビューでライターさんに意見を聞く限り、シンプルな弾き語りではあるものの、楽曲の精度を高く評価してもらえている。今後長く歌い続けていけるものとして誇りを持っていよう、そんな想いで身を引き締めているところ。

今はそのファーストアルバムの宣伝をどんどんしていかなくてはいけない時期だ。しかしフリーになり、時間があまりにも足りない状況がいまだに続いている。時間もそうだし、人手が足りないというのもある。

ありがたいことに、CM音楽などいろんな仕事を各方面からオファーしていただき、平行して進めているため、うまく頭が切り替えられないときも多い。いわゆるデスクワークだけなら、移動途中のカフェやファミレスを利用することが多くなってきた。

そう、最近の僕は、今さらながら「ノマド(遊牧民)」な日々を堪能している。落ち着けそうな店を見つけては、普段は音楽制作にも使っているMacBook Proを開いて、資料を作ったりメールを送ったり。

このコラムもそうだ。所用からの帰りの電車の中で今日が月末であることに気が付いて、最寄りの駅からの家路を踏みとどまった。そういえば前回は漫画喫茶だったな。

今はケンタッキーにいる。実際はマクドナルドに行くことの方が多いが、どちらにせよ都内や近郊の店はいつも混んでいる。スターバックスはもっと混んでいて、少し待って座った場所が、参考書を開く受験生と隣り合わせであることも多い。

駐車場無料&ドリンクおかわり自由なファミレスは一番ありがたい。ピークさえずらせば居心地は最高で集中力も高まるが、2時間を超える場合はスイーツを頼まないと店員さんに申し訳ない。

外の仕事がないときは自宅でも出来るのだけど、以前も書いたように午後の遅めの時間は、幼稚園から帰って来た息子による仕事へのディフェンスが、予測不可能な形で襲ってくる。パソコンの前に居座り始める猫に似ているかもしれない。

ノマドスタイルで作業をしていると、仕事に集中しつつも、まわりの人の話し声がたまに気になる。例えば女子高生同士の会話。想いを寄せて親しくしている「彼」のまわりに怪しい「女」がいるらしく、「〇〇にしか話してないからね」と添えながら、知り得たことをあらいざらい報告している。しかし散漫な情報ばかりで、対策を練る傾向は見られない。

理数系の男子学生の会話。人体を構成する分子や原子の役割について、それぞれ得意分野が分かれるらしく、一方が一方にわかりやすく解説している。「なるほど、その瞬間に結合と収縮が始まって取り込まれるわけだ!」何を話しているのかちっとも分からない。でも彼らのあいだで発生した豊かなシナジー効果は、スパークする光のように鮮明に伝わってくる。

彼らの会話の頭上から降り注ぐのは、クリスマスソングたち。12/23のクリスマスライブで何を歌おうか、つい意識してしまう。その日は都内での初めてのワンマンライブ、かつ今年最後のライブになるのでは。この1年のことをどんな風に振り返られるかな。そしてどんな言葉でそれを伝えられるだろう。

ファーストアルバムの話に戻すと、宣伝に協力してくれている人たちに一任していることは滞りなく進んでいるものの、自分でやらなくちゃいけないおとが後手後手になってしまっている。年が明けても、リリースから時が経っても、プロモーション期間はなるべく伸ばしていきたいと思う。

ただ、いかんせん自分を売り込むことがいまだに不器用だ。マゴマゴしているうちにフライヤーを織り込むべきライブは過ぎてしまうし、SNSもストレートに発信するばかりで、どんどん増えていく便利な機能には立ち遅れてばかり。

しかしいつまでもそんな甘い考えじゃ駄目だな。かつてスタジオにこもってばかりだったブライアン・ウィルソンも、今はカフェから何かをつぶやいたりもするわけで。周りが心配になるくらいいっそのことしたたかに生きようと、この晩秋の街の片隅で、小さく宣言をする。

1st Album「青木慶則」12/12 ついに発売 !!! ↓