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作業効率アップ! Studio Oneでベロシティの差を縮める方法

MIDIキーボードからリアルタイム入力やステップ入力したはいいけど、ベロシティの差がありすぎってことありませんか?

ソフト音源のベロシティカーブなどをいじって調節したものの、やっぱりピアノとは感覚が違って、なんかいまいち強弱をコントロールできないなんてことは結構あると思います。

クオンタイズはクオンタイズ50%(「Alt」と「Q」を同時押し)という機能があるからいいけど、ベロシティの差って困るんだよなーって思っている方いませんか?

さあどうしましょう。

え? 1音1音ベロシティを設定する? たしかにそれでもできます……が、それだと時間かかりすぎてしまいますね。納期にも間に合わないかも⁉ しかも面倒くさすぎる。途中で投げたり、てきとーになったりしてしまいがちです。

え? 全部同じベロシティにしちゃう? たしかにそれでもできます……でもねえ……それはケースバイケースでいいときもあるけど、通常、人間的な演奏を求める場合はよくないですよね。テクノでも強弱はあった方が、メリハリができます(まあ、あえて全部同じベロシティにそろえるなんてこともあるとは思いますが)。

じゃあ、どうするのか?

てなわけで今日はMIDI編集でベロシティの差を縮める方法について解説していきます。
※この解説ではWindows 10を使っています。


ステップ1 ベロシティの乗算

その方法とは、ずばり、ベロシティの圧縮機能を使うことです!
ここではまず、あるトラックの全部のノートを一気に調節するやり方で説明します。
※全てのトラックの全てのノートを一気に調節するわけではありません。

note用 ベロシティの差1


はい、画面上部にベロシティに差のあるノートが並んでいますね。わかりやすくするために、極端な差にしました。それぞれの値はド=40、レ=80、ミ=60です。

画面上部にあるアクションを左クリックして「ベロシティ」を選択します(「ベロシティをフリーズ」でもなく、「ベロシティを復元」でもないですよ)。
そうすると、下のような画面になります。

note用 ベロシティの差2

「可算」、「乗算」、「すべてを次に設定」とある中から、「乗算」の左にある穴みたいな丸を左クリックして選択します(バージョンによっては「圧縮」と表示され、何倍かではなく比になっていると思いますが、基本的な考え方は同じです。「圧縮」と表示されている人は比に置きかえて続きを読んでください)。

それから右の数値を設定します。ここでベロシティの数値を何倍するかが決まります。画面のように0.50なら0.5倍になります。もし、0.75なら0.75倍、0.64なら0.64倍にといった具合です。
この解説ではわかりやすく0.5倍でやります。
そしてOKを左クリック。

すると、
ド 40 → 20  
レ 80 → 40
ミ 60 → 30
と変化します。全てのベロシティが0.5倍になりましたね。

この乗算で入力した数がそのまま差を何倍するかを決めることになります。1より大きい数値を入力すると、逆に差が拡大します。注意してくださいね。
ただ、それを狙って行う手もあると思います。なんだかベロシティに差がなさすぎて、平坦だと感じる場合に使えます。


ステップ2 ベロシティを上げる

これだけだとただ3つの音が弱くなっただけなので、ここから「ctrl」と「A」を同時押しして、すべてのノートを選択したあと、画面左側にあるベロシティの数値を左クリックして、好みの数値を入力し「enter」を押します。
さしあたり、ドを最初の数値である40に戻しました。

note用 ベロシティの差3

ここで全てのノートがプラス20されました。ここでいくつプラスされるかは、いくつからいくつまで上げるかによって変わります。
20から40なら、40ひく20で20プラス。
20から50なら、50ひく20で30プラスといった具合です。

ではここで各ノートがどうなったかを、先ほどの変遷に書き加えて見てみましょう。

ド 40 → 20 → 40
レ 80 → 40 → 60
ミ 60 → 30 → 50

パンパカパーン! やりましたね! 
ドのベロシティは最初の値と同じだけど、他のベロシティは下がって、差が縮まりました。
ドとレの差が40から20に、
ドとミの差が20から10に、
レとミの差が20から10に、
変化しました。
差が全部0.5倍になっています。

ステップ1、ステップ2で全てのノートに×0.5+20をしたのです。
これによって、差が0.5倍になったんです。
ステップ1の乗算で入力した数がそのまま差を何倍するかを決めることになります。

またステップ2では、とりあえずドを元の40にしましたが、レの元のベロシティを基準にしてレを80にするために全体を+40、つまりドを60にする考え方もあります。
すると、ド=60、レ=80、ミ=70となりますね。もちろんそれでも差は、元の0.5倍です。

他にも間をとってドを50くらいにしてみようなどといった考え方もできますね。
そして、そこから微調整すればいいのです。


範囲を選択して部分的に行う

さっきは全てのノートを調節しましたが、範囲を選択して行うこともできます。
パッセージごとに調節したり、気になる小節だけ修正したりするときに便利です。

乗算する前に左クリックを押しながらマウスを動かしてノートを選択します。または、修正した箇所のはじめのノートを左クリックしたあと「Shift」を押しながら「▶(→)」を押していってノートを選択します。
そこからアクションをクリックするかノートを右クリックしたあと、ベロシティの画面を出します。それ以降は同じです。


なんでこれで差が縮まるの?

ここから、中学レベルの数学を用いて、理由を説明したいと思います。
そんなもん絶対嫌だという人は、この章は飛ばしても大丈夫です。次の章を読むのに支障はありません。

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ここにベロシティの異なる2つのノートがあると仮定する。

ベロシティの低い方のノートの値をyとすると、両者の差がzの場合、ベロシティの高い方のノートの値はy+zと表せる。

両方ともベロシティをb倍すると、
それぞれ、by、by+bzとなる。

そこから両方ともベロシティをc増加させると、
各々、by+c、by+bz+cとなる。

両者の差を求めると、
(by+bz+c)-(by+c)
=bz

よって、元はzだった差がbzになり、b倍されたことになる。

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だからbが0.5なら差が0.5倍に、bが1.2なら差が1.2倍になるんですね。

こんなことをする以前にすぐに理由がわかった人もいると思いますが、気になる人のために一応書いてみました(汗)
私自身、最初「あれ? なんでこうなるんだ」と思い、ちょっと考えてしまったんです。

でも、仕組みがわかれば、当たり前のことなんですよね。
上の証明の式でいうと、b倍した時点で、差もb倍されています。そうすると、そこからいくらプラスしようと、同じ数をプラスする分には差はそのままなんですね。

こんなところで数学を使うとは思いませんでしたが、個人的には生活の中で数学が活かせると結構楽しいです。

コンプをかけるのとは違うの?

コンプをかけるのとは違うのかと思った人もいるかもしれませんね。
結論からいうと、違うんです。

ベロシティは強弱を担っていますね。ここで注意したいのは音の強弱とは単に音量の大小ではないことです。
例えば、ピアノ音源で同じ音程でベロシティが100の音と5の音を鳴らしたとします。この場合、普通は音量を同じにしても異なる音が鳴ります。
強く弾いた音と弱く弾いた音では、音の質が違うからです。

だから、コンプで音量差を少なくするのとは違うんです。全部コンプで調節というわけにはいきません。
ベロシティも調節し、コンプでも調節し、といった具合にやるといいと思います。

このテクニックをどう活用するか

このテクニックのよいところは、全て同じベロシティにするときと違って、自分のタッチの感じは残しつつ、修正できる点です。人間的な演奏でありながら、整えるといった感じですね。

1回やって差を縮めたけど、差がまだありすぎるという場合、もう1回やってさらに差を縮めてみましょう。
その際、乗算の数値を変えてもいいですね。
例:
最初0.5倍でやったけど、もうちょっと差を縮めたいな。でも、2回目も0.5倍だとやりすぎだから、今度は0.8倍くらいでやってみよう。

また、1回目を0.5倍でやってみたけど、差が縮まりすぎてなんだか変だから、元に戻して乗算の数値を変えてやり直すこともできます。
例:
最初0.5倍でやったけど、縮めすぎちゃったな。戻して、今度は0.7倍でやってみよう。

もちろん、1回目をやったあと、戻さないで乗算で1より大きい数をかけて、ベロシティを下げるといった調節方法もあります。

そうして差を縮めたあと、気になる音があれば、個別に調節すればいいのです。
結局、個別に調節するんかいって話ですが、最初から1音1音調節するよりも、効率的だと思います。

こうしたプロセスは、彫刻のつくり方と似ているのかもしれませんね。
彫刻では、まずは粗くだいたいの形をつくってから、細かく削っていくのが基本だと聞きました。
この「まずは粗くだいたいの形をつくってから」という過程が、今回解説したテクニックの部分にあたると思います。

ちなみに最初はこの乗算の機能は、ただ単に可算と違うやり方でベロシティを上げたり下げたりするものだと捉えていました。

でも、ある日ベロシティを調節しているときに、このテクニックを思いつきました。「必要は発明の母」とはよくいったものです。
乗算をしたあとで、ベロシティを上げることでこんな使い方ができるんだというのは大きな発見でした。「こんな使い方ずっと昔から知ってたわい」という人もいるかもしれませんが……(汗)

単純な機能を組み合わせることで、まだまだ効率アップするテクニックが眠っているかもしれません。

それではまた!


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