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「ユートピア」 湊かなえ著 集英社文庫

『青い空に白く輝くさざなみは、空に恋する海の手のひら。わたしをあなたの元へ連れて行って。高く伸ばしたその先端は、だから、翼のかたちに似ているのかもしれない』・・・これは、主人公の一人陶芸家の星川すみれが、東京から地方都市の鼻崎町に越して来たときに書いたお店のポップです。岬の先端は、おそらく鼻の形に似ているのでしょう。でも、彼女にとっては翼なのです。


すみれは、この町には小さな気づきが必要と考え、土地の土を使って焼いた陶芸品を「花咲焼き」と名付けました。

彼女と、転勤族の妻相葉光稀、地元商店街の仏具屋の妻堂場菜々子が主人公です。そこに交通事故で足の不自由な菜々子の娘久美香と、久美香を可愛がる光稀の娘彩也子と言う天使のような少女たちが登場します。

美しい理想的なユートピア。そこで展開される物語は欺瞞に満ちています。


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