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なぜテレワークがうまくいかないのか

答え:マネージャーがバカだから。

とはいえ、これで終わっては記事にはならない。確かに、究極的に言ってしまえば、仕事を差配するマネージャーの無能ということに帰結するのだが、実のところ、日本の企業において数名~10名程度をまとめているマネージャー層というのは、マネージャーとしてのスキルも試されていないし、怪しげなクソの役にも立たない心構えや、部下とお話するスキル、もっと早い段階にやっておくべきSWOTやロジックツリーみたいな研修しか受けていない。

そこで、この記事では私の持っている知見をもとに、仕事をどう差配するのかという観点から、なるべく手垢のついた、つまり評価の安定した、ただ、あなたの会社のマネージャーはたぶん知らない手法というのを検討したい。

マネージャーは何をやっていないのか

普通の事務などを行う職場を考えてみよう。椅子に座ったマネージャーは、実はあなたやあなたの同僚が抱えている仕事量をそれほど把握していない。せいぜい、傍目に忙しそうだな、そうでもないな、今月は残業してるな、してないな、程度しか見ていないことが珍しくない。そうやって、事務所でなんとなく見た状況で、上から降ってきた仕事を振って、あるいはルーチンワークを割り当てている。

そして、マネージャーはあなたの仕事の内容をそれほど分かっていないことが多い。もちろん、マネージャーも過去経験し、その業務に精通していることもあるが、そうではない、よくわからない仕事を振っているような例も珍しくはない。もしあなたが、職場でちょっと変わった仕事、例えば、エクセルでピボットテーブルを使って数値を分析するような仕事(残念なことに、日本の普通の会社では、ピボットテーブルは特殊技能である)をしていたとすれば、恐らくマネージャーは全く意味のわからない仕事をやっているようにしか見ないだろう。もし、分かってくれるなら、それは大変すばらしい職場だ。

そして、このような、実際に働いている人のことが良く分からないし、あるいは、ちょっと難しいことも分からないという、全く機能していないマネジメントはある企業で大惨事を発生させた。2014年のすき家大量閉店問題である。

すき家の報告書にはこう書かれている。

すき家においては、労働生産性・効率性を高めるため、「労時」ないし「労時売上」(店舗従業員(社員・アルバイトを含む。)1人当たりの1時間当たりの売上金額)なる指標が導入されている。労時は、まず基本シフトを作成する際に用いられる。具体的には、本部が予測する一定期間の売上高を本部が定める一定金額(以下「設定労時」という。)で割ることにより、当該期間において投入可能な労働時間が決定され、これに伴い、各時間帯の投入可能な従業員数が決定される。そして、各店舗従業員は設定労時を上回ることを目標として日々稼働するのが実態となっている。
かかる労時は、毎月、Z社の取締役会に対して報告されているだけでなく、現場においても、簡易な管理指標として用いられている。したがって、現場のマネージャー及びクルーの中には、労時売上を意識して稼働する者が多い。
その結果、AMは、自らサービス残業を行い、クルーに対しても実際の労働時間をデイリー勤怠報告書に記録しないよう求める実態が認められる。
(2014-07-31 「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会 調査報告書 19p)

この報告書では、店を絶対に閉めないこととともに、この労時売上という単純な指標を経営幹部から末端まで全社で執拗に追いかけてきたことが報告されている。そして、労災や労働基準監督署の指導、従業員へのアンケートから上がってくる問題などが上層部まで報告されず、あるいは上層部まで報告されることがあっても無視され、最後には内部監査の報告として上がっても、そのことを代表者は覚えてもいなかったと報告書には書かれている。

しかし、無能なマネージャーを責めても仕方ない。彼らは教えてもらえなかったし、仕事を差配するなどという地味な作業より、部下のメンターになるみたいなカッコいい(そして全く意味のない)マネジメントが正しいとして言われてきたのだから。次からは、具体的な手法を見てみよう。

カンバンという管理手法

ソフトウェア開発の現場で生み出され、非常に原始的だが、簡便で、バカにでもすぐわかる、カンバンというタスク管理手法がある。アナログでやるためには、ホワイトボードとポストイットが使われる。下の画像は最も単純な形のカンバンである。

CC-BY-SA-3.0 Rakuten, Inc.

一番左がToDo、つまり、やるべき仕事・着手可能な作業。そして、真ん中がDoing、つまり作業中のもの。ここにはスタッフの名前も書かれ誰が何をやっているかが一目瞭然である。一番右のDoneが終わった作業。これで何が終わっているのかがすぐわかる。

もちろん、カンバンはもっと複雑にできる。着手してはならない作業を入れる欄や、期末などある時期になったら着手する作業を入れる欄、ルーチンで定期的に行う作業を入れる欄など、考えればいくらでも出てくるし、それは実際の作業に合わせてうまく作っていくのが一番である。

とはいえ、当たり前だがアナログのカンバンはリモートワークでは使えない。そこで、ウェブサービスのカンバンの代表的なものとしてAtlassianのTrelloというサービスがある。これは、人数無制限で1チーム10枚までのボード(カンバン)が無料で提供されている。

(C) Atlassian

見た目は、アナログのカンバンとほぼ同じで、操作方法もポストイットを剥がして貼り付けるのと同じように、ドラッグ&ドロップでできる。また、個々のタスクに人を割り付けたり、日付を設定してカレンダーで表示したりといった機能も入っており、かなり便利なウェブサービスとなっている。とはいえ、筆者は別にAtlassianの営業マンでも、アフィリエイトもやっていないのでこれ以上の説明は避けておく。

恐らく、一般的な事務の職場などでは、このぐらいのツールで十分な効果を発揮すると思われる。しかし、カンバンというツールでは、タスクの依存関係や締切り、そこから導かれるクリティカルパス、タスクの時間見積や実績管理までは困難である。そこまでやろうというと、もっと高度なツールが必要になってくる。

プロジェクトマネジメントツール

実は、こういったタスク管理の集大成として、プロジェクトマネジメントという概念がある。これは、大規模長期間にわたるプロジェクトの実行の知見を集約したもので、世界的な資格として認められている。

また、ソフトウェア業界を中心に、現代のプロジェクトマネジメント手法として、明確なゴールを定めずに、徐々に完成度を上げていく、アジャイルという手法も存在する。

これらの手法についてこの記事で説明することは長くなるので避けるが、こういったプロジェクトを支えるツールの代表的なものとしてRedmineというツールが存在する。

Redmineはチケットという単位でタスクを管理し、それに依存関係や締切り、割り当てなどを設定し、ガントチャートや一覧表、カンバンなどで表示することで上級マネージャーから中間マネージャー、個々のタスクを担うスタッフまで、やるべきことや、現在の状況が分かるようになっている。

もちろん、単なるカンバンツールより複雑ではあるが、フリーソフトで無料であり(サーバーにインストールするのは面倒かもしれないが)、もし複雑なプロジェクトを運営し、タスクを管理しなければならないなら、まずプロジェクトマネジメント手法を学んだあとに、検討する価値はあるだろう。

補遺:本物のバカ向けのツール

先日、NHK以下の報道があり、Twitterなどで大いに批判されていた。

もちろん、労働時間管理というのは様々な面から重要ではあるが、イチイチ画面を監視したり、デスクの前に居るかどうかを確認するのは、全く意味が無い。単に、タスクの分解や依存関係の管理、各スタッフの処理しているタスクを管理できない無能を晒しているだけである。

こんなのは「働きぶり」を見える化しているのではなく、単に「椅子に座っているか」「仕事をしているフリができているか」を可視化しているに過ぎず、全く意味が無い。まさに、これは、本物のバカ向けのツールである。

いつもありがとうございます!