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なぜ路上で1万人に絵を無料でプレゼントしてきたのか

僕は2007年から
世界の路上で絵を無料プレゼントする
「無料絵画」という活動をしていて、
現在1万人以上の方にプレゼントしてきました。


Hand made Free ring (ハンドメイドの無料指輪)
Why? (なんで?)
1. everyone will be happy.(みんなが幸せになるから)
2. nice feeling to make people happy.(人を幸せにするのは嬉しいから)
3. no one will be poor from giving.(与えることができれば誰も貧しい思いしないから)

Thank you very much.(ありがとうございます!素敵な1日を)


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なぜこんなことをやり続けているのか?

今回はその理由についてお話ししてみたいと思います。


なぜ無料? ①ブルーオーシャンを狙うため

一つは、
絵画の価値を上げていくことに飽きたからです。
飽きたというか、つまらないなと思ったんです。

せっかく人生を大博打にかけて
芸術の道を選んだのに、
みんなと同じように
作品の価値をあげる競争に参戦したら
埋もれて終わりだろうと思ったんです。

そりゃこの資本社会、
どれだけ価値がつくかで勝敗が決定するのは
目に見えていますので、
価値がつくように
いろんなサービスを追加したり、
エンターテイメントを追加したり、
希少性を高めたりとかして、
数字の価値を上げているのがこの世界ですが、

芸術家が仕事をするのであれば、
その真逆をしなければいけません。

芸術家の仕事は、
「現代に足りないものを補う」
「見えないものを見えるようにする」
「忘れていたものを思い出させる」
そういった仕事です。

価値を増やす正義もあれば、
価値を減らす正義もあるわけです。

価値が増え、プラスに向かおうとする資本社会とは逆に、
マイナスに向かい、ゼロに向かう力や美学も同時に大切だよと
いうことを伝えたくて、「無料絵画」を始めました。


「無料絵画」を始めたきっかけ

1番最初のきっかけは、
イギリス・ロンドンのトラファルガー広場で、
無料の指輪を作っているお兄さんに出会ったのがきっかけです。

師匠

彼はおもむろに赤い絨毯を路上に引き、
何も言わずに座り込み、黙々と慣れた手つきで指輪を作り始めました。
すると、ゾロゾロと たくさんの女性が彼を囲んでいくんです。

なんだろう?と思って近寄って見てみると、
太い針金で、その場で、たくさんの指輪を作っており、
それを無料でプレゼントしていました。

Hand made Free ring (ハンドメイドの無料指輪)
Why? (なんで?)
1. everyone will be happy.(みんなが幸せになるから)
2. nice feeling to make people happy.(人を幸せにするのは嬉しいから)
3. no one will be poor from giving.(与えることができれば誰も貧しい思いしないから)

Thank you very much.(ありがとうございます)

僕は資本主義の真逆を行く無料経済のスタイルにとても感動しました。

「僕もやりたい!」

そう強く感動したものですから、
僕は何を無料で提供できるかなと考えた時に、
「指輪は作れないけど、絵なら描ける」と思って、
絵を無料でプレゼントすることにしました。

ニューヨークと東京とバンコクでの路上でやってみたところ、
どこも反響は盛況でしたよ。


なぜ無料? ②芸術本来の力を発揮するため

芸術だからこそ、
既存のレールではなく、
真逆のことをしてみることができるし、
「芸術だからこそ」という言い訳が効くのが
芸術の素晴らしいところです。

でも、
本当に自由で、かっこいい生き方をしたくて僕は芸術家になったのに、
そんな芸術家の世界にも
すでに資本社会が蔓延しており、
お金がないと生きていけなくて、
美大を出てないと評価されなくて、
展覧会やったり有名な美術館で展示をしないと認められなくて、
というような見えないレールが
すでに張り巡らされていた現実を目の当たりにした時に、
「 芸術の世界ももうつまんなくなってるのかよ!?」
と僕は絶望してしまいました。

でも、 芸術に絶望は付きものだし、
そこを偉大な芸術家たちが切り拓いてくれたから
今日の芸術があるわけです。

勇敢なる先輩たちが
その絶望を希望に変え、
情熱の炎を 燃やし続けてきてくれたからこそ、
令和を生きる僕の元にまで
芸術の火が、希望の光が、神聖な炎が届きました。

だからこそ、
芸術に絶望して諦めるのではなく、
そのさらに先の希望を作ろうと決意した時に見えてきたのが、
「無料絵画」だったのです。

今日の芸術の世界には、
すでに無数の見えないレールやルールが張り巡らされています。

それでも、
そんなルールや既存の概念をぶち壊してきたのが芸術であり、
それこそが芸術の本来の魅力です。

じゃあ現代、僕はどんな芸術を作ることができるのかな?と考えた時に、
思いついたのが「無料絵画」でした。

ニューヨーク、タイムズスクエア

思考は至ってシンプルで、
みんなが向かっている方向性の真逆を進めば、
それは自ずと新しい力になります。

レッドオーシャンに入らずに
ブルーオーシャンを狙う。

みんながお金を稼ごうとして、
みんなが必死で人に好かれようとして、
みんなが 必死に部屋で飾りたくなるような絵を 書いて、
みんなが必死でお金を稼ごうとしているこの世界の中で、
全く逆のことをすれば、
それは価値が生まれるだろうという考えです。

しかし、そこにこそ「本質的なテーマがある」ということも裏付けなくてはいけません。


なぜ無料? ③巨匠たちの後押し

そこで3つ目の理由が知の巨匠たちによる後押しです。

マルセル・モース

民俗学の父と言われたマルセルモースは「贈与論」の中で、
「ポトラッチ」
「《元来は消費・贈与の意》北アメリカ太平洋岸のインディアン社会に広くみられる、
威信と名誉をかけた贈答慣行
主催者は盛大な宴会を開き、
客に蓄積してきた財物を惜しみなくふるまって自らの地位と財力を誇示し、
客もその名誉にかけて他の機会にそれ以上のもてなしをする。」
引用:コトバンク

を知った時、「これだ!」と思った。


レヴィ=ストロース

人類学者、レヴィ=ストロースの「悲しき熱帯Ⅱ」の中で、
「酋長(未開の民族の村長)になる条件は気前がよくて器用な人」
という話があるのですが、
その話を聞いた時にも
「これだ!」
と思いました。

気前よく、どんどん大盤振る舞いして、
自分の財産やイイと思ったものを プレゼントしていくんです。

その心意気にみんな惚れ、
人が集まり、
それは伝染し、
喜びや尊敬で繋がる
美しい共同体が生まれます。

僕はそれを目指したいです。

レヴィ=ストロースは中沢新一さん経由で知りました。
レヴィ=ストロースもマルセルモースに劣らず巨人なので、
「この二人を味方につけたらもう大丈夫だろう笑」
と勝手に安心しまして、無料絵画をどんどん進めることができるようになりました。


岡本太郎

僕がマルセルモースに出会ったきっかけは、岡本太郎です。

岡本太郎との出会いが僕の人生を変えました。
僕の芸術家 の才能を気づかせてくれたのが彼です。
そして、彼の師匠こそマルセルモースでした。


坂口恭平

僕の芸術家人生に大きく影響を与えてくれたのが坂口恭平さんです。
彼も「0円ハウス」という 0円の家を作るところから活動がスタートしており、
それを見た時も僕は強烈に感動し、共感し、羨ましいと思ったのもあって、
「僕も0円でできる何かを作りたい」
と思ったキッカケも、僕の背中を大きく押してくれました。


ピカソ

ピカソが高級レストランに行った時に、
レシートに自分のサインをして支払いを終了したという逸話がありますが、
何かそういう軽やかさ、 ユニークさ、気前の良さ、起用さ、大胆さ、豪快さ、
そういったのが僕はとても好きだし、心地がいいので、
そういったことを芸術と絡めながらやっていきたいと思ったのも
無料絵画のきっかけです。

そんな情熱の系譜で、
巨匠たちという百万力の見方をつけた僕は、
もっといい気になって、
無料絵画をどんどんやるようになりました。

最大で 1日で3万円稼ぐ時もありましたし、
マイナス50円になる時もありましたが、
たくさんの人に出会って、
目の前で笑顔になってくれたり、
泣かれたり、
ハグされたり、
驚かれたりする表情を見る時は
なんとも幸せで楽しいんです。

絵を描いてきてよかったな。
0円でやってみてよかったな。
今日来てよかったな。
毎回そう思います。

そんな体験もとても楽しいので、
ついつい時間があれば路上に出ています。



お客さんの反応

  •  感動して強くハグしてくれた学生

  •  隣に座って人生論を展開してくれたお父さん

  •  黙って見逃してくれた黒人警察官

  •  絵のお礼に詩を即興でプレゼントしてくれたアーティスト

  •  お礼の賛美を目の前で歌ってくれたグアム島のシャーマン

  •  「壁画描かない?」と誘ってくれたアーティスト(その壁画は今もニューヨークにあり、彼とは友達に)

  •  「俺のギャラリーで展示会やらないか?」と誘ってくれたギャラリー経営者

  •  「私にお金はないけど、私のコネであなたを有名にしてあげるわ」と言ってくれたアートディーラー

  •  コーヒを差し入れてくれた美人お姉さん

  •  「私のインスタアカウントであなたを紹介させて」と言ってくれたインフルエンサー(紹介されると僕のインスタフォロワー数が80から2200に)

  •  「あなたは素晴らしい才能を持っているから協力させてちょうだい」と言ってくれたキューレター

  •  「お前みたいなクールなやつ見たことないぜ!」と激賞してくれた青年

  •  「俺が住む街は治安が悪いからこんなことをやってる人は初めて見たよ。最高だね!」と言ってくれた黒人

  •  「ニューヨークにはあなたが必要よ」と言ってくれた美人歌手

ほんとに嬉しいリアクションを毎回いただけるからこそ、
それが楽しくて、また 路上に行きたくなっちゃうんです。

東京は路上が厳しいので、
警察とイタチごっこなんですが、
まあ、それぐらいはしょうがないので、
そこはお互い理解し合いながら付き合ってまして
なんかそういうのも楽しいんですよね。

路上の仲間たちも増えて、
みんな試行錯誤しながら、
監視カメラを見ながら、
法律の縫い目を塗って、
みんなお金を稼いで、
結構楽しそうにやってるんです。

彼らを見てると、
なんて真っ当な人間なんだろうと僕は思いました。

ハリウッド通り

目に見えない透明なルールや法律に
がんじがらめになって動けずに、
会社の中や常識の中でしか生きられない人たちを見ていると、

路上で働く人たちは、
自分で考え、
自分で働ける場所を探し、
自分で仕事を作り、
どうやったら財布を開けてもらえるかを考え、
その合間を縫って
自分らしく自由に生きようとしています。

僕はその姿の方が
すごく人間として健全に見えたんです。
とても健康的で、
人間本来のあるべき姿で、
美しいなと思ったんです。


日本衰退の理由は路上の活気のなさ

それは、世界中の路上で働く人たちを見ても思いました。

彼らが路上でいて、
いい香り、元気な声、面白いエンターテイメントを してくれているからこそ、
路上が活気立ち、
通りすぎる人が笑顔になり、
人間の活気が
その路上に湧き上がるのです。

世界中の都市にあるその路上の活気を目の当たりにした時、
日本の経済衰退の原因が1つはっきりとわかったんです。

それが「路上の活気のなさ」です。

品川駅

「昔は元気があったのに、最近の日本は元気がないなー」
とみんなよく言います。

「街中を見てもみんな疲れ果てている人ばかりで全然元気がない」
という意見をよく聞きにしますが、
それはみんなの元気が会社やオフィスや建屋内などの室内だけに閉じ込められているからで、
活気が外に溢れてないからなんです。

活気が外に溢れるということは、
不特定多数の人が それを目撃することができるようになります。
その活気に触れる機会が多いほど、「活気があるなー」となるので、
そこは単純計算で、路上の活気が失われすぎた象徴として
「最近の日本は元気ないなー」という感想が生まれるわけです。

管理社会が発達していく中で、
同時に失われてしまったのが「路上の活気」です。

路上の活気の一番のいい所は、
「セレンディピティ」です。

「(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。
また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。
平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。」
引用:wikipedia

偶然の出会い、偶然の幸運、偶然の発見、偶然の交流、
これが人生の醍醐味でもあるのに、
それを削除する方向に人類は向かっています。

つまらん。
どうして人類はこうも愚かなのでしょうか。
なぜ破滅の方向へ向かうのでしょうか。

このままではいけません。
こうゆう時は芸術家の出番です。

では、どうするか?
まずは、時間と 区間を設けた「路上の解放」です。
行政や警察に相談し、
何時から何時まで、
この場所の
この時間なら
誰でも路上で活動していいですよ
という解放の区分を決めることです。

うるさい音楽、火を使う、スペースを大きく使う、
そんな人たちには細かい必要最低限のルールを設けたうえで、
無料で路上を解放するということが必要になってきます。

そして、それはすでに全国でやっているところもたくさんありますので、
それを参考にしながら、これからもどんどん解放の場所を大きくしていきたいなと思います。

矛盾していますが、路上の規制が厳しい都市に住む人にこそ路上の活気が必要なので、
難しいかもしれませんが、都市の人ほど行政と折り合いをつけて実現したいなと思っています。


ニューヨークの路上事情

ニューヨークはそこら辺はさすがに先を行っていました。
ニューヨークにはすでに路上で働く人たちの組合(Street Vendor Project)があり、
専属弁護士もいて、行政と折り合いをつけながら、
決められた時間内と空間内では営業がオッケーと言う規定が設けられています。
詳しくは僕の著書「路上ワークの幸福論」に記載していますので、
もし興味のある方は読んでみて下さい。

その組合のミーティングで、みんなの前で僕の想いを発表したら
拍手喝采になってとてもうれしかったので、そのスピーチをここでシェアさせてください。

「 みなさんはじめまして。僕は日本からやってきたアーティストです。
僕は今路上で働く人たちを取材しています。
なぜかというと、皆さんが美しいと思ったからです。
皆さんが路上に出なくなれば、ニューヨークの路上はものすごく殺風景で、味気のない、冷たい路上になっています。
でもあなたたちが笑顔を作り、香りを作り、エンターテイメントを路上で作っているからこそ、
路上に人間の活気が溢れ、みんなの心を癒してくれているんです。
あなたたちは美しい。あなたたちがいなくなればこの街は終わってしまうでしょう。
いろいろ大変なこともあるかと思いますが、負けずに頑張ってください。応援しています!」


路上で働くサンプルを知る

2つ目は、「路上の働き方のサンプルを知る」ということです。
「自分はそんなの恥ずかしくてできない」と思う人が大半かもしれませんが、
意外とやってみたらあっという間にできるもんですよ。笑

最初のお客様の対応が終わるまでは緊張しますが、
それ以降は緊張もほぐれて、あとは自然体で営業できるようになります。

まーでもそこまでの行動が、確かに重いかもしれませんが、
そこは、路上で働く人たちのたくさんのサンプルを見たり、
「自分はこれをやってみたい!これだったらできる!」
みたいなことを見つける所から始めてもいいかもしれません。

「路上で働くことができない俺ヤバい!」
「路上で働いたことがない自分ダサい!」
みたいな危機感を感じるのも行動を始める理由になりやすいです。

サンプル探しは僕の本が参考になりますので
ぜひ手に取ってみてください。

世界の路上で働いてる人たち100人以上をインタビュー取材して
写真でまとめていますので参考になるかと思います。

路上だと自分が社長なので


  • 値段設定も自分でできるし

  • 経理も自分でできるし

  • 場所も自分で選べるし

  • スケジュールも自分で決めれるし

  • 初期投資も小さくて済みますし

  • 10代の人もすぐに始められるし

  • 全部自分で決められる

と言うところも気楽で良いところです。

やってみて本格的にやりたくなれば
店舗構えてもいいし会社にしてもいいし
そこも自由です。

納税の義務はあるので、そこはしっかりしたいと言う人はすればいいし
したくない人はナーナーにしてもいい。(現金交換だから申告しなければバレないので)


無料絵画のカッコよさ

以上のような理由があって、
無料絵画の活動を続けています。

多分ジジイになってもやってるんじゃないかな。。

お気に入りの絵を0円でもらえて
自分の気の向くままに部屋に飾って
楽しめるなんて嬉しくないですか?

僕は絵の力を知っているので
それが0円で部屋に持ち込めると思うと
こんなに大盤振る舞いで気前のいいアートははないと思うんです。

0円だから飽きたら捨ててもいいし、押し入れに隠してもいいから、ハードルがとにかく低い。

なのに絵からは泉の如くエネルギーが溢れ、
パワースポットが部屋の中にできる。

その気前の良さとカッコよさが
アート本来の役割や可能性を示してくれていると僕は思います。

描く側の問題もあります。
0円だからといって、
適当に 手を抜いた絵を書いてしまうと、それはつまらない。
かと言って、100万円規模の 入念に魂を込めた絵を毎回書くとなると、
それもまた時間との配分が合わない。

ということで、ちょうど折り合いをつけた、いい感じの、 ちょっと力を抜きつつ、
でもしっかりとした深いメッセージと、大切な想いと、色彩に富んだ、
美しいパワースポットのような絵をこれまで描き続けてきました。
せっかく日本人なので、漢字やひらがなを使ったメッセージを添えたりとかして
外国人も楽しんでいただけるよう心がけて作っています。

「2枚もらっていい?」という人もいるし、
「悩むなー!」っていう人もいるし、
部屋に絵を飾った写真を送ってくれる人もいるし、
絵をみんなそれぞれの方法で楽しんでくれています。

ニューヨークでやった時は、
「こんなことやってる人見たことない!you最高だよ!」
と多くの人が喜んでくれ、 これはいけるなという手応えを感じたからこそ、
また早くニューヨークに行って、これでデビューしたいなー
なんていう野心も密かに溜まってます。

なので、もしどこかの路上で 僕に出会う時があれば、
ぜひ声をかけてくださいね。
ぜひあなたのお気に入りの絵を受け取ってください。

その時が来るのを楽しみにしています。

それでは今回はこの辺で。

ありがとうございました。
素敵な1日を♪

ニューヨーク、タイムズスクエア


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