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大阪〜博多600km徒歩の旅(25)山口県山陽小野田市〜下関市

大阪から博多へ 山陽道600km徒歩の旅
第25ステージ
山口県山陽小野田市〜山口県下関市(26km)

出発から25日目。いよいよ、大阪から続いてきた「山陽道」に決着をつけるときがきた。

原稿を書き終えたあと、下関駅10時31分発の山陽本線に乗って、11時に埴生駅到着。そして埴生駅から2km歩いて、昨日のゴール地点「ドライブインみちしお」に戻ってきた。ここから20km以上を歩いて、また下関駅を目指す。

国道2号線はしばらくバイパスになっていたので、すぐ横にある下の道を通った。車通りがほとんどなく歩きやすいが、印象的な景色もそれほどなかった。

前半の10km区間で思い出せるのは、木屋川という大きめの川を渡ったことと、その川のそばにブロッコリー畑があったことくらい。

ただ、その間、いろんな連絡が入って、頻繁にメッセージやメールのやりとりをしていた。北九州で会いたいと言ってくださった方との連絡、とある偉い方がぼくに興味を持ってくださっているという連絡(福岡でおもしろいことが起こるかも?)、さらによく知る出版社から、書籍のご相談もいただいた。まだ依頼ではなく何も決まっていないが、とても嬉しいお話だった。この旅が終わったら打ち合わせの予定。

やがて長府駅近くになると、ニトリやゆめタウンなど大型店舗が現れ始めた。この近くにある「味納」でランチにすることにした。昨日、戸田さんに教えてもらったお店だ。「バナナマンのせっかくグルメ」でも紹介された人気店とのことだった。普段は行列ができるらしいのだが、この日は13時半過ぎだったからか、混み合っていたものの、カウンター席にはすぐ座れた。

「フライ盛合せ定食」を注文。量が多いと聞いていたので、ごはんは普通盛りに。それでもかなりの量があった。あとで隣の人のごはんを見て、大盛りにしなくて良かったと思った。食べ切れない。フライもおいしく、満足できるランチだった。

14時半に出発。下関駅まで、ラスト13kmを歩く。

「ボートレース下関」を越えてしばらく歩いていたら、突然「中村さん!」と呼び止められた。振り返ると、後方から女性が走ってきた。なんと昨日につづき、またもやラジオ(エフエム山口「COZINESS」)を聴いてくださった方だという。ぼくのXを見ながら、位置を予測して探してくれたようだ。

ぼくからしたら、奇跡なのだ。縁もゆかりもなかった山口を歩いていて、二日連続で知らない人から話しかけられるということが。少しお話したあと、差し入れをくださった。やまももさん、ありがとうございました!

さらに進むと、海沿いの道に入った。本州と九州とをつなぐ関門橋は目の前に迫っていた。関門海峡の雄大な景色が広がる、素晴らしい道だった。

いよいよあと1km弱で関門橋の真下に差し掛かるというタイミングで、突然ぼくの前に車が止まった。

なんだろう、と思って見ていたら、なんとまた昨日の戸田さんが車から出てきた。思わず心の中で、「暇かよ!」と叫んでしまった(笑)

連絡もなく突然やってくるから驚いた。おもしろいからいいのだけど、「歩く関所」みたいな人だ。彼をスルーして下関を通過することはできない。下関を訪れた他の方からも同様の「被害」が報告されているので、ぼくは「私人捕獲系YouTuber」というあだ名をつけてしまった(事実、ぼくは2日連続で捕獲されている)。ただし通常の関所では通行人がお金を払うが、この戸田さんに捕まると、下関の良い場所に連れていってくれ、親切にしてくれるという、なんだかありがたい存在である。

実際、車から出てきて彼が言ったのは、

「この先に良いカフェがあるんで、ちょっとコーヒー休憩しませんか」

だった。要するに、ただの良い人なのである。

カフェへ行く前に、関門橋をバックに戸田さんに記念写真を撮ってもらった。「ようやくここまで来たんだなあ」と橋の向かいの九州を眺めた。

*****

ここで少し、ぼくの人生に影響を与えた大切な経験について語らせてほしい。

大学3年生の夏休みに、横須賀から鹿児島まで自転車で旅することに決めたのは、地図への疑問がきっかけのひとつだった。

ぼくは大学生になっても、「日本地図って、本当に正しいのだろうか?」という疑問をかすかに抱いていた。おそらく正しいのだろう。だけど、確かめたことはない。

だから一冊の地図帳とともに自転車を漕いで、横須賀から九州までの道がちゃんと地図通りにつながっているのかどうか、自分の目で確かめてみたかった。

ただ、初めての長いひとり旅に、両親は心配した。とはいえ、こまめに連絡をするのも嫌だった。そこでぼくは、旅に出る直前にブログを開設した。

「毎日ここに旅の様子を書くから、それで安否確認してて」

そのように伝えて、2009年8月12日の朝、横須賀を出発した。

1日100km前後を走り、街を観光し、眠い目をこすりながら毎晩ブログを書いた。下手な文章だったけど、書くのはすごく楽しかった。

その日起きた出来事、目にした美しい景色、人から受けたやさしさや親切。そういうものをなんとか言葉にしようと、疲れた身体で深夜までもがいた。

すると、家族や一部の友人にしか伝えていなかったブログなのに、なぜか読者が増えていった。気付けば1日300PV。ブログってすごいなと思った。「個人的な旅なのに、こんなに多くの人が読んでくれてるの!?」と興奮した。知らない読者からの「頑張ってください」「応援しています」というコメントが励みになった。

出発から13日目、ついに本州最西端の下関に到着した。関門海峡を眺めながら、「道は本当に、地図通りにつながっていた」と実感した。その当たり前の事実に、ぼくは深く感動した。

また、各地で様々な人との出会いがあり、みな親切にしてくれた。思わぬ出来事も含め、とにかく毎日が楽しくて仕方なかった。ぼくは日々の出来事と自身の感動を、率直にブログに書いていった。

旅の終わりに、見知らぬ女性からメッセージが届いた。

「中村さんの挑戦を見ていて、私も知らず知らずのうちに諦めてしまっていた夢があったことを思い出しました。その夢に向かってもう一度挑戦してみようと思います。ありがとうございました」

はじめは、感謝される理由がわからなかった。誰かを励まそうなんて一切思っていなかったし、ただ好きなことをやっていただけだから。

だけど結果的に、人の背中を押せていたんだと気付けた。

好奇心の赴くままに行動を起こせばいいんだ。自分の純粋な欲求を満たすこと、好きなことを一生懸命やることが、他者貢献につながるんだ。

人生における重要な学びを得た気がして、今度は自分が感動する番だった。

****

ぼくが現在も「旅と書くこと」に取り組んでいるのは、15年前にこういう原点とも言える出来事があったからだ。そしてとりわけ「下関から眺めた関門海峡」は、ぼくにとって象徴的な景色になっている。

あれから15年。当時の感情や感動を思い出しながら、同じ場所で、写真を撮ってみた。

その後、戸田さんに案内されたのは、関門橋から数百メートル歩いたところにある「uzuhouse」。関門海峡に面したオシャレなゲストハウス兼カフェで、2階の空間は最高だった。内装もオシャレだし、窓の向こうはすぐ関門海峡で、大きな船が頻繁に行き交っている。ぼくの地元・横須賀でも東京湾に面したカフェはあるが、ここまで間近に船は通らない。関門海峡の狭さがもたらした、稀有な光景だった。

都内にあったら女性客で溢れる人気のカフェになりそうだが、この日はぼくと戸田さんの2人だけ。絶対におかしいと思う。

それにしてもこの戸田さん、明日は関門海峡の狭いトンネル人道で居眠りして通せんぼしてくるのではないかと懸念している。「ちょっとポケモンの笛買ってくる」とポストしたら、「カビゴン扱いwww」と返ってきた。よくわかりましたね(笑)

「uzuhouse」を出て、向かいにある赤間神宮をお参りした。まるで竜宮城のような外観。

その入り口にはふぐのポストもあった。

戸田さんと別れ(コーヒーご馳走様でした🙏)、ラスト3kmを歩く。18時過ぎ、下関駅に到着した。

咳が出て辛かったけど、なんとか山陽道を歩き切ることができた。ここまで歩いた総距離は592kmに達していた。これは奇遇にも、前回歩いた東京から大阪までの総距離とまったく同じだった。ただし今回は、まだ博多までの区間が残っているから、最終的に650kmは超えるだろう。

下関から博多までの行程は以下のとおり。

2月3日:下関〜小倉
2月4日:小倉〜黒崎
2月5日:黒崎〜宗像(東郷駅付近)
2月6日:宗像〜博多

門司〜小倉間は海沿いの199号線、小倉〜博多間は基本的に国道3号線沿いを通る予定。道中、お気軽にお声がけください。

風邪で辛いが、あともうひと踏ん張りである。残り4日かけて、ゴールの博多を目指す。

<今日の費用>
電車賃 510円
ランチ 1000円
夕食 726円
ホテル 7670円
乾燥機 200円

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