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ありがとうロコ・ソラーレ

今朝のイギリスとの決勝戦ではロコ・ソラーレ本来の良さを出せなかったけれども、日本カーリング史上初の銀メダルに心からおめでとうと言いたい。

ロコ・ソラーレはリザーブの石崎選手を除く4人全員が北海道北見市の出身だ。吉田姉妹と鈴木夕湖選手は北見市常呂町で小さい頃から一緒にプレーしていた仲間である。そんな小さな町から、世界に羽ばたき、銀メダルを獲得した。本当にかっこいい。

今大会、ぼくは予選リーグの9試合と準決勝、そして決勝と、日本代表の全11試合をライブ観戦した。家にいるときはテレビで、コワーキングスペースやカフェにいるときはネットで。予選の日程がわかった時点でスケジュール登録し、そこには仕事が入らないようにした。1試合約2時間半だから、この2週間で結構な時間を試合観戦に費やしたことになる。

でも、だからこそ今回の銀メダルに至るまでの感動もひときわ大きかった。

試合が終わるたびにロコ・ソラーレの選手たちに魅了されていき、YouTubeでいろんな映像を観た。昨年の代表決定戦では、北海道銀行フォルティウスと激闘を繰り広げた。先に3勝すれば代表権獲得というゲームで、ロコ・ソラーレはまさかの2連敗を喫し、窮地に追い込まれた。

その試合のあと、「喜怒哀楽すべての感情を100%出すのが私たちらしいんじゃないか」という話し合いがなされたという。ここから潮目が変わった。ロコ・ソラーレは見事3連勝し、涙で代表権を掴んだのだった。

吉田知那美選手と鈴木夕湖選手は常呂中学校の同級生で、その頃から同じチームに所属していた。2006年3月、彼女たちが14歳のとき、当時のオリンピック代表チームだったチーム青森(19歳の本橋麻里さんが所属)を破る快挙があった。

そのときの映像を観ると、「この頃から既に銀メダルへの道のりは始まっていたんだな」と感じる。今日の試合後、鈴木選手が「銀メダルにはなったが、日本で勝ち取ったメダルなのかな」と話していたが、まさに日本カーリング界が一丸となって手にしたメダルなのではないだろうか。

今大会、素晴らしいシーンがいくつもあったが、個人的にとくに印象深いのは、予選リーグのスイス戦の第7エンド、最後の一投の場面だ。この日、藤澤選手は重要な局面でなかなか良いショットが決まらず、かなりナイーブになっている印象だった。

うまく決まれば2点、という大事な一投。投げる直前、彼女は「そろそろ決めたい!」と素直な心境を声に出した。するとスキップの二人から「大丈夫、さっちゃん」と声がかかり、奥の吉田知那美選手からは「さっちゃん時間あるから大丈夫だよゆっくり投げて」と温かい言葉が。

そして藤澤選手はプレッシャーに打ち勝ち、見事なショットを決めた。ホッと安堵した様子で、涙ぐみながら笑顔がこぼれた。その藤澤選手に対し、吉田知那美選手は試合中とは思えないほどの大笑いをした。もちろん彼女のもともとの性格もあるだろうが、でもこの「必要以上の笑い」には、大きな愛を感じた。藤澤選手をさらに勇気づけ、安心させる笑顔だったと思うのだ。チーム全体を見て、いろんなことを考えている選手だ。

「一投決めた!イェーイ!」と藤澤選手にタッチする鈴木知那美選手。結果この試合には敗れたものの、こんなに心を揺さぶられるような素晴らしいシーンには、この先もなかなかお目にかかれないだろう。

小柄ながらも力強いスイープで「クレイジースイーパーズ」と称される吉田夕梨花選手と鈴木夕湖選手の活躍も見事だった。藤澤選手と鈴木知那美選手が大声で「ヤーップ!」「ヤーップ!」と叫び、必死に2人がスイープする。そしてミラクルショットが決まったときは心底気持ちがいい。

4年前は「そだねー」の声かけで話題になっていたが、今回は「ナイスー」の声かけが圧倒的に多かった。あまりうまく決まらなかったときでも「ナイスー」とポジティブな声かけをしあって、試合の流れを引き寄せていった。

前回のソチオリンピックでの銅メダルも感動したが、あれから彼女たちはさらにたくましくなって五輪の舞台に戻ってきた。それは素人目にも感じた。アメリカ戦では、終盤に4点差を追いつかれてからも気持ちが崩れず、冷静さを保って勝ち切ったのが素晴らしかった。他の試合でも、ギリギリの場面で負けなかった。準決勝のスイス戦はロコ・ソラーレの良さが随所に出て、前回大会の3位決定戦とともに、歴史に残る一戦になったと思う。スイスは本当に強かったが、藤澤選手のショットは冴え渡っていた。実に嬉しい勝利だった。

ぼくはいつか北見市常呂町へ行き、ロコ・ソラーレの本拠地でカーリング体験をするのが夢になった。彼女たちの活躍と笑顔、明るさには胸を打たれたし、ぼくも頑張ろうと思える力があった。

日本には他にも強いチームがあるし、今後チームメンバーの入れ替わりが起きないとも限らない。今回のメンバーでオリンピックを戦う姿を観るのは、もしかしたら今日で最後になるかもしれない。そう思うと切ないが、ロコ・ソラーレの選手たちが次の世代に大きな刺激を与えたことは間違いない。いつの日か、日本のチームが金メダルを獲ってほしい。

おめでとうロコ・ソラーレ。
そして、ありがとうロコ・ソラーレ。
幸せな2週間でした。


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