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11月19日(2000)美しい放物線

2000年11月19日。サガン鳥栖戦。
苦しく長いJ2シーズンの最後の40試合目。開幕8連勝したが、夏に失速。この年1度も勝てなかった札幌に先にJ1昇格を決められてしまった。残り1つの座を争う2位浦和と3位大分の勝ち点差は2。
よく晴れた日曜の駒場スタジアム。西側のバッグスタンド2階から祈るような気持ちで、試合を見つめた。
前半終了間際アジエルのゴールで先制するも、後半早々に西野努と西部洋平が交錯してしまい追いつかれる。63分ペナルティエリアに抜け出した鳥栖の選手を室井市衛が必死のタックルで倒し一発退場。その瞬間絶叫しながら、来年もJ2で戦う姿が浮かび気を失いそうになった。
薄れゆく意識の中で、PKがポストに当たりそのこぼれ球のシュートが外れた。
周りの人が助け起こしてくれて、息を吹き返した。
そこからは1人少ないことも関係なく、絶対勝てると信じ、再び声を枯らし続けた。延長戦に入る前、岡野雅行がメインスタンドからバックスタンドに向かって猛ダッシュのアップを始め、スタジアム中がひとつになる。
そして5分後阿部敏之が蹴ったFKの跳ね返ったところに土橋正樹。
そこからのシーンはずっとスローモーションの記憶。
土橋の左足から放たれた美しい放物線の軌道が、自分の方に向かって来た。
そのボールがゴールネットを揺らした瞬間、歓喜と感涙で胸がいっぱいなった。
誰彼となく抱き合い喜びをわかちあったあの日の感情は忘れられない。

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