仕事、やめました

1月いっぱいで仕事をやめてきました。

「やめた理由はひとつじゃないの。つもり積もったものがあって」
なんて言うと長年連れ添った恋人と別れた時の定番の台詞っぽくて野暮ったいのですが、おおむねそんな感じです。

高校生の時からなんとなく、ものを伝えることとか話芸とかが好きでした。
そんな中で自分のできそうな、お金の貰える仕事って教職かなぁと考えて、
ハタチそこそこのときから塾講バイトではあったけど実際に教える仕事に就きました。途中ライター業と平行しながら、勤め先や店舗を変えつつ、気づいたら15年近く続けていた。ここらで少し、教えることから離れてみようかと感じたことがきっかけかもしれません。

ここ数年は、中学受験に特化した塾で自分の店舗を持たせてもらって、経営と教える仕事と両方をやっていました。
湾岸地区のタワーマンションに住む人の生活を面白おかしく描いた、いわゆる「タワマン文学」でよく舞台としてやり玉に挙げられる塾です。

そんな最前線の場所で働いていて、感じたこと、やめるに至った経緯をつらつらと書きます。最後まで読んでくれたらうれしいな。

●激化する中学入試に、これでいいのかと感じるようになった。
15年近くやっていたのですが、やり始めと最近とで同じ中学校の入試問題でも全然違うように感じています。明らかに、最近の方が難しくなってる。
受験する母数が増えていることが大きな原因なのでしょうが、一方で
「中学入試は課金ゲー」「父親の財力と母親の狂気が必要」と言われるように、
金銭的な面でも、家庭への負担が増しています。
受験の方法自体も多様化してきている、とは言いますが、主戦場は時間とお金、両方を溶かしてやっと成立するような現状です。
余談になりますが、例えば僕がこれから再婚して子供ができて、その子供が中学受験したいと言ったときに、とてもじゃないけど会社から貰っていたお金では、自分の勤めていた塾に通わせてあげることはできませんでした。
行き過ぎた競争の激化と、格差の増大を促す手伝いをしているようで、どうなのかなぁと。

●キャパ以上の仕事を任され、苦痛に感じるようになった。
特に経営面でしょうか。マルチタスク系の事務作業が苦手でワーってなっちゃいます。今年一年が特にキツかった。会社的には期待の意図があったようなのですが、中~大規模の店舗に配属され、毎日ワーってなってました。

●新しいことに対応できなくなっていった。
まだ若いやん、と言っていただけるのですが。それはとてもありがたいのですが。
軽く老眼が始まり、問題の文字を読むのに苦労することがちらほら。
20代の頃はパッと解けていた問題に考えこむようになったり。
できるだけ相手と目線を合わせることが重要、という自分の考えに対して、
経験で話すようになったり、「大人」の物言いをするようになったり。
そういう関係性の変化をうまく楽しめればよかったのですが、
迷ったまま答えをうまく出せずに、変化に対応することができなくなってしまいました。

●「やれること」よりも「好きなこと」を仕事にしないと続かないと思った
続けてこれたのはなんとなく「水が合った」というような感覚なのですが、
「やれること」だからだけで続けていくと、ふとした瞬間にモチベがぐっと落ちたり、新しいことへの対応ができなくなっていく実感がありました。
塾の先生しかできない、みたいなものへの恐れもあったので、そろそろ好きな事を仕事にしてみようかなぁという気持ちになりました。

今の入試制度、というか入試に関連するシステムにはどちらかというと否定的な考えです。低学年のうちから勉強を始め、そこで知の喜びみたいなものを見つけられればいいのですが、実際は偏差値やテストの点数でがんじがらめになり、
引くに引けなくなって補助的なサービスに課金を重ねる…。何かに似ていると思っていたのですが、友達に話したときに「キャバクラやホストにハマるのと同じ心理だね」と言われて、さもありなんと。
そんな中で自分の提供できるものとしては、「受験というライフイベントをエンタメ化する」ということかなぁと考えて、お仕事をしてきました。
合否一発勝負だけをよりどころにするには、あまりにも溶かすものが大きすぎるので、過程に意味を見出さないとという考えです。
キャバクラもホストも、あるいはスマホゲーも後に何も残らない、と言ってしまうと寂しいのですが、お店にいる瞬間は、ゲームしている瞬間はスゲー楽しいのと同じように、
受験を通じて家族の関係みたいなものを見直すきっかけになったり、ものごとに打ち込む姿勢が身に付いたり、人間的な成長を遂げたり、そういうことを経験していることに気付いてもらえると、
自分のやっていることが少し肯定的に考えられるな、と思っていました。ここについては今も変わっていません。
シャンパン入れてもらえるならその卓は最高に盛り上げようというマインドです。

ですので、キツい現状ではあったのですが「こんなんやってられるかーーーーーい!!!!!」という気分でやめるというよりは、自分にできることが少なくなってきたので、そっと離れるという感じです。
これから先のこともまだ方向性しか決まっていないし、それでもおなかは減るしごはんは食べなきゃいけないので、勉強関連のことでお困りの方がいれば、何らかの方法でご相談いただければ提供できるものがあるかもしれません。
「受験ビジネスともう関わりたくない」というよりは、頑張りたい気持ちの人は応援したいかな、と考えています。
(元)同業の方ともお話がしたいな。

とりあえず1か月ちょいは、有給消化でじっくり休みます。
そのあとは好きな写真をお仕事にしたいので、撮影のお仕事とかください。


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