きみが二歳になったから今までのログをまとめておこう(生後二〜三ヶ月、保育園にあずけるまで)

おもにtwitterとぽえむのまとめ。tweetが多すぎてtogetterでやれという感じになってきたので積極的にぽえむ(雑文含む)をさし挟んでいく。

語りかけ:まだ赤子はあんまり人間に似ていなかった。言葉を解さないものに言葉を語りかけることは不思議で、初めのころはぎこちなく、なれて馴染んでなんとも思わなくなったころに、ふと、ボールがやわらかい壁に当たったようにわずかに反応が返るようになった。でもそれはこの日々からはまだ遠い先の話。


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古い約束(2017/01/09 07:01:17 pplogより)

あなたはたくさんのものに似ている
ふかしたてのおまんじゅう
草むらの子猫
飛ぶ、いま飛ぼうとするの鳥の雛
いのちの火をたえまなく煽るふいご
首を伸ばす亀
サイレン
真夜中の、小さな熾火

わたしは暖かく湿った安全な小部屋で
常夜灯をたよりに
あなたを、熾火を抱いている
あなたのための易しいことばを繰り返す
おいしい
きれい
あたたかい
きもちいい
ふと口をつく、大人の言葉は、自分だけがきいている
"雨音がきこえる?
あなたはまだ、雨のことも知らないねぇ..."
あなたはミルクをのみ
体にしみこませる
降りそそぐ言葉もまた、雫がたまるように
あなたにしみこんでゆく
(ミルクよりずっと少しずつ、ずっとゆっくり)

あなたはなんにでも似ている
まだやわらかい、ぐにゃぐにゃのかたち
あなたが、似ているすべてから少しずつ遠ざかり
なによりも先にあなたのかたちになるように
ミルクはあなたに降る
言葉はあなたに降る
この夜と
何百の夜に

それはわたしとあなたの間に交わされた
古いひとつの約束である


緊張の連続:一人目の子育て、すべて初めての状況・判断のため、うっすらとした緊張感が持続していて(かつ選んだ行動の正誤がいまいちハッキリしない)、ストレス値は結構高いように思う。二歳を迎えたいまだに正解は分からないし判断の連続ではあるのだが、連続であるということにやや慣れてきたように思う。

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ホラーじゃないこわい夢(pplog 2017/01/18 11:00:52眠っていてうっすらと意識が覚醒する
でもとてもとても眠くて、体が鉛のように重くてうごけない
ふと、感じる
隣に寝ている赤子が、わたしの左腕の下に入ってしまっている
このままでは呼吸を圧迫して子どもがあぶない
今すぐに起きて子どもをどかさな2017/01/18 11:00:52ければ
でも眠い、眠くて眠くてどうしても体が動かない
子どもの命がかかっているのに
眠くてうごけない、なんてことで取り返しのつかないことが起こるのか
こわい、動きたい、どうしても体が動かない
こわい

...てゆう夢を見たんですよ、睡眠不足こわいわー
起きて左横みたら赤子、30cmぐらい向こうでスヤスヤしてた。

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最初の密室:生まれてから一ヶ月、二ヶ月はあまり外に出ない。こどもと部屋に引きこもって、真冬だったので暖房と加湿器をたいて、しっとりとした暖かい部屋であまり時間の感覚もなく過ごしていた。昼も夜もなく、こどもが寝たら寝て、起きたら起きてを数時間ごとにくりかえす。子供が寝て自分が起きているときはやたらと勉強したり、インターネットでかろうじて外の世界と繋がったりしていた。陸からとおく離れた船の一室で、子供といっしょに波に揺られているイメージが強かった。

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航海(2017/01/25 23:29:31 pplog)


夕闇が部屋の中までひたひたと滿ちてくる
ちいさなあなたのちいさな寝息が聞こえる
この部屋は、海にぽつんと浮かぶ小舟のようだ
あなた

わたし
ふたつの熱のあるの暗がり
舳先の常夜灯がわずかに海面を照らす
あなたとつながっていた管は切れた
けれど空腹のために
日になんどか、あなたはわたしにつながり、
こくこくと喉を鳴らす
わたしは今日も外に出なかった
泣くあなたを抱き上げてゆらし
あなたが眠れば眠り
あなたが起きればまた抱き上げる
ここは
外をいつも通り行き交う人びとの岸から
ずいぶん遠くに流された小舟だ

あなた

わたし、がいて
数をかぞえると、ひとり、と言いそうになる

幸福とは、こんなに孤独なものだったか
孤独とは、こんなに幸福なものだったか

ときおり携帯の表面が光り、SNSの通知を知らせる
(モールス信号のように)
わたしは誰あてにでもない言葉を
瓶につめて海に流す

いつか、陸地がみえるだろう
それはあなたの島、あなたの大地
あなたはまず手をのばし
ひざをついて四つ足で前へすすみ
やがてその足うらで、濡れて硬い砂地をふみしめる
その一歩の先のまぶしさ

わたしは夜にも櫂を漕ぐ
夜の海に、ぎぃ、ぎぃと音がなる
湿った風が頬に一粒の雨をあてる
舳先の常夜灯が
眠るあなたのほほえみを照らす
(くちびるに落ちる影が、濃い)

あなたの島にあなたを届ける
ひとりがふたりになる瞬間の
そのまぶしさを、待ちわびて
(光は、痛いだろうか)
この夜
櫂を漕ぐ
2017/01/25 23:29:31

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かわいいという狂気:そしてそれはそれとして、こどもがかわいいのである。だんだんと「つまりかわいい」しか言わなくなってゆく。それはそれとして、なんだか脳がのっとられているような、すこうし(今までの自分のあり方からすると)おかしいような気持ちもしていて、うっすらとした不安が多幸感になし崩しになっていくようで、いい夢なのだか悪い夢なのだかわからないまま、夢は今でも続いている。

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(2017/03/07 08:57:19 pplog)

(ばんざいして寝ているぱんださんを見て)
わたし「なんというピースフル...しかもラブリー。はっ、これが "Love & Peace "? これこそが?」
ささださん「ほんとだ〜」

わたしもたいがいだけど「ほんとだ〜」って相づちも相当だと思う。

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社会とこども:三ヶ月もすぎると徐々に外へ散歩に出かけたりするのだが、こどもを介して関わる社会、別の形をしている。こどもを持った自分がみる世界も別の形をしている。


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君はまだ気づいていないけれど(2017/03/28 11:17:40 pplog)


木の枝の影を、鳥の影が揺らす
君の目にはまだはっきりとは映らないだろう、だけど
小川の流れがひかる(絶え間なく動きながら)
魚が跳ねる、水紋でそれが分かる
朽ちながら花がにおう
まだすこし冷たい空気が、揺れて、花を散らす
晴れの日には、静かに立っていると
どこからか歌が聞こえてくる
誰のものでもない、ききとることのできない美しい歌が

君はまだ気づいていないけれど
いずれその中に踏み入るものとして
いますでに歌のひとつの調べとして
君はいま、ここで微笑んで眠っている
春のただ中で

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家族とこども:わたしは母の子である。母であるのだが、子をあやしているとふいに自分が子である時のことがつよく蘇ったりする。実家に帰ると、父の祖母と母と父がいる。わたしは母の子になり、子は母の孫になり、母は母と祖母になり、祖母は祖母と曽祖母になる。



保育園にあずける:12月から次の年の3月まで、ほとんど離れることのなかったこどもを数時間手放す、ということの心理的動揺はおもったより大きかった。ささださんと一緒に預けにいって、帰り道泣いてしまった。はじめは慣らし保育で数時間だけしか預けないので、近くのタリーズでコーヒー飲んでホットドッグ食べて待っていて、その時間の貴重さに目のくらむ思いがした。

長くなったのでいったんこの辺で。すごいまだ生後四ヶ月だ(いまは二歳だ)。このまとめは終わるのか分からないけれど、二歳の先にも日々は続いていくから、アキレスと亀みたいにまとめはずうっと先へのびていくのだろう、のびていくといい、わたしの足がどんどん遅くなっていつか追いつかなくなって、あなたが遠くとおくへいってしまっても、あなたの歩く道が光っているのをわたしはずっとぼんやり見ているだろうから

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