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【ロコズ・エイプリルフール】

※クロスオーバー※エイプリルフール企画※ニンジャ要素はありません※ゆるして※

4月1日、午前11時を回った頃。世間が故意に混乱の渦を生み出すなか、ロコはキャンパスに向かっていた。この日だからこそ、素晴らしいアートを生み出せる予感がしたのだ。しかし依然真っ白。どうもアイデアが浮かばない。「う〜」ロコは唸る。その時!

「お困りのようだな、我が友」「えっ!?」頭上からの声に、ロコは驚く。現れたのは一羽の鳩だ。ロコの友であり、撮影の際は頭に乗せたこともあるほど仲が良いが、会話が成立したことは一度もない。驚愕で固まる彼女に対し、お構いなしに鳩は語る。「恩返しだ。行ってこい」突如部屋を満たす光。

画材もキャンパスも光に飲み込まれ、自分の輪郭すらぼやけ始めるなか、ロコは必死に呼びかけた。「何ですか!?ウェイトです!」「グッドラック!」「は、話を聞いて……!」鳩は光に飲みこまれた。「へ、ヘルプです〜!」ロコも例外なく!

【ロコズ・エイプリルフール】


そして沈黙が訪れ、すぐに去った。蒼が頭上を満たす。地平は草原。立ち尽くすロコは、背後を振り返り驚愕した。浮いている。地面が、空に。恐怖は好奇心に飲み込まれた。四つん這いになり、下を覗く。近くの小石を落としてみた。音もなく見えなくなる。「これは……!」「ねえ、あんた!」

「うわ!?」突然呼びかけられた事に驚き、バランスを崩す。ロコの腕を、その何倍も大きな手が掴んだ。一見手には見えない、無骨な鎧で包まれたそれは、見かけと違い随分丁寧にロコを拾い上げた。「さ、サンクスです……」瞳を瞬かせるロコの前には、人影が二つ。

赤い鎧の女性は、心配そうにロコを見た。「バザラガ、怖がらせちゃってない?」「お前が急に声をかけたからだろう、ゼタ」「はあ!?じゃなくて!大丈夫?」「はい!ロコはノープロブレムです!」異様な格好の二人は、視線を交わす。そして思案。「ねえ、そこの村の子?」聞いたのはゼタ。

「いえ、ロコは……そう!このワールド、見たことがないです!ファンタジーをリアライゼーションしたような、それにそのウェポンとアーマー!クオリティがインビジブルです!」「バザラガ、わかる?」「すまない」「素直に諦めるのね」ロコの興奮は止まらない。このままでは永遠に話し続けそうだ。

途方に暮れつつも話を聞いてあげる二人は、彼女の足元に隠れるようにして、何か落ちていることに気がついた。拾う。「これ、あれ?スケッチブックってやつ」「あっ、それはロコのです!でもなんでここに?」ゼタから受け取り、しばし思案してから、ロコは手のひらをぽんとついた。

「ロコアートのヘルプに来てくれたんですね♪任せてくださいっ!ゼタ、バザラガ!ちょっとモデルになってください」ポケットから画材を取り出し、ロコは有無を言わさず描き出した。「え、モデル!?悪い気はしないけど……あはは」「凄まじいな」色とりどりの鉛筆が、ロコの世界を創り出す。

「できました!」スケッチブックを二人に向ける。そこには、果てなく広がる青い空と、赤紫のふたり。青々とした草原が、きらきらと光を反射している。「インスパイアをサンクスでした、これはプレゼントです!」「いいの!?」「……タダでは受け取れん」「さっきのお礼でもありますから」

結局、ゼタは非常に嬉しそうな顔で。バザラガは複雑そうではあるが、感謝した雰囲気で。それを受け取った。満足したロコは、さてこれからどうするかと首を傾げる。その瞬間。

また、白い光が辺りを満たす。「ちょっと何!?」「大丈夫か、ゼタに少女!」「ノープロブレ……あっ!」消えるのだ、と察したロコは、ぶんぶんと手を振った。二人がその手を掴む前に、光は彼女を呑み込んでしまう。「……幻覚、じゃないわよね」「ロコアート、とやらがある」絵は手元に。

「少なくとも、霊には見えなかった」「それは同意。変なこともあるものね。にしても、あったかい絵〜!バザラガ、もっとこの絵みたいに怖い雰囲気取れないの?」「柔らかい俺が想像できるか?」「まあ……ね?」軽口を叩き合いながら、二人は刹那の非日常から、波乱の日常へと戻っていった。


ロコが次に降り立ったのは、鋼鉄製の道。上から下まで頑丈に作られた道には、いくつも扉がついている。それに加え、太い管が壁を走る。「うーん?ここはどこでしょう」何かの資料で見たことがある気がして、ロコは頭を悩ませた。そんなとき、目の前の扉が開く。「わ!?」

「お、女の子!?誰、いつ入ってきたんだ!?」「なんだよペンギ……はァ!?かわいい〜♡じゃねェ!何者だ!?」「ロコは……」ロコはしばし思案して、スケッチブックをかざした。「スペースタイムトラベラーです!」「「すぺ……?」」男たち二人は、呆然と顔を見合わせた。

急に騒がしくなったからか、扉から次々と人が出てきた。どうやら食事の時間だったようで、手にはまだパンや珈琲を持っている者もいる。共通していたのは、皆つなぎを着ていること。大男も、シロクマも!ロコはあっという間に囲まれた。「船長呼んでくるか」ペンギン帽の男が言う。

「船長?」「ねーオマエ、名前は?」「わ!?ポーラーベアが喋りました!」彼女が囲まれているにも関わらず、警戒心の欠片もないことから。敵襲の可能性はないだろう、とつなぎの集団はぞろぞろと戻っていった。残ったのはシロクマ、キャスケット帽。それと、ペンギン帽が連れてきた、長刀を持った男。

その男だけがつなぎではなかった。多くの入れ墨が威圧感を漂わせる。「何が目的だ」静かに聞いてきた男に、ロコは少し恐れながら答える。「アートのアイデアを探す旅をしてるんです!ここはどこですか?」「……どうやってここに来た」「気がついたらいました」沈黙。

「ここは潜水艦で、今は潜水中だ。沈む前に船内は確認済み……悪魔の実でもねェ限り、入ってはこられねェ。能力者か」「悪魔の実……?どこかで……うーん」男はため息をついた。「船長、どうします?」「おれの部屋に来い」「え!?いいなー!」キャスケット帽が羨ましがる。

ペンギン帽が彼を咎めるが、シロクマまで行きたがり始めたので、なんとその流れに便乗しだした。船長と呼ばれた男はそれを無視し、ロコに来るよう促す。唯一騒ぎに乗らなかった大男は、連れていけと騒ぐ船員たちを止める役に買って出ていた。

船長の名は、ローというらしい。「アイデアとやらを得たら帰れ。丸腰でこの海は無謀にも程がある」彼は椅子に座る。「それが、帰れるタイミングがわからないんです」「……おれは海賊だ。お人好しじゃねェ」「違いますよね?」ロコはスケッチブックを開いた。

「うーん、ロー……どこかで聞いたような?」「えーっ、船長しらねェの!?」ガードから逃れたらしいシロクマが、驚きつつ入ってきた。「トラファルガー・ローだよ!おれたちはハートの海賊団!」「ハートの……あっ!思い出しました!スバル……ロコズフレンドが言ってました!」

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昴からそんな話を聞いていたロコは、しっかり思い出すことができた。「よかったー、知ってたんだ!」シロクマが胸をなでおろす。ローはロコの手元を覗いた。「ここの絵か」「はい!ポーラータングの内部は初めて見ます」背景を描き終えて、人物に手をかける。シロクマは興味津々だ。

「おれのこと格好良く描いて!で、キャプテンはもっと格好良く描いてね」「任せてください!」ロコは手早く仕上げていく。しかし、その途中でふと手が止まった。先程でもそうだったが、鳩に飛ばされる前はてんで描けなかった絵が、流れるように描けるようになっていることに気がついたからだ。

(そういえば最近は、ちょっとインドアすぎました)ロコアートの手助け、インスパイア、アイデアと共に。彼女の友人は、新鮮な体験も必要だと考えたのだろう。実際そのとおり、アーティスティックな感覚が戻ってきた。(流石、ロコアートをアンダースタンドしているひとりですね♪)

「できました!」ロコはページを切り取り、ローに渡した。ベポは待ちきれない様子で、彼の頭上から絵を見下ろす。「あ、おれ!」「……」少し思案したあと、彼はロコに礼を言った。「ユアウェルカム、です♪」「キャプテン嬉しそう!」「さァな」

誤魔化すような態度とは裏腹に、彼は絵を丁寧にしまった。そしてロコに改めて向き直ろうとし、刮目する。ロコにとってはお馴染みになった白い光が、また彼女を覆い始めていた。「ロコアートを生むことが、帰ることの条件みたいです」「えー、帰っちゃうの?」シロクマはロコに愛着が湧いていた。

ローは微妙な表情をしていた。改めて、「海賊らしくない」時間だったと思ったのだ。やはり誰かに感化されてしまったのかもしれない、どうも態度が柔らかくなっている自分に、喝を入れ直そうと密かに誓う。「さよなら〜!」そんなこんなのうちに、彼女はあっという間に消えてしまった。

「ベポ、少し外に出てろ」「?アイアイキャプテン!」疑問には思ったものの、あっさり出ていったベポ。再び静かになった自室で、ローは電伝虫の受話器をとり、ダイヤルを回す。連絡先は某海賊団。「……何やってんだおれは」しかし、やめた。そして部屋を出る。浮上の命令のためだ。

(お人好しをうつされた……おれの管轄外だ。トニー屋は確実に治し方を知らねェ。どうするか……)実に奇妙な悩みだと、ローはため息をついた。死の外科医の名は草葉の陰で泣いていた。


「なーロコ、ロコ?」「ん……?あれ、スバル?」次の世界はどこだろう、と思っていたロコは、遠くから近づいてきた声に覚醒した。そして、自分がキャンパスの前でうたた寝していたことに気がつく。「え……えー!?ドリームですか!?」「わ!?急にどうしたんだよ!」昴は、突如叫んだロコにひっくり返った。

謝罪して、ロコは昴に事情を説明する。「うう、そんなあ……」「いいなー!ローに会ったんだろ?話したかったなー!」「何の話……してるの……?」「アンナ」騒ぎを聞きつけてか、眠そうな杏奈も顔を出した。同じく話すと、杏奈も驚愕したように見える。「ゼタラガ……やっぱり……サプろう……」

「でもさー、ロコの友達?の鳩が急に喋ったとか、驚きだよなー!」「そうなんですよ!スケッチブックだって、普段使ってるのがそのまま……あれ?」近くに鎮座していたスケッチブックをパラパラとめくったロコは、その手を止めた。

先程まではまっさらだった二枚のページ。そこに、絵がある。それも、プレゼントしたはずの二枚が!「ええ!?」「嘘……みたいだね……」「もしかして、今までの夢の話は嘘で、このロコアート見せるためだったのか!?なあロコ!?」「ち、違います!ロコはほんとに〜!」

わけのわからない状況に混乱する一同。その部屋の窓の向こうで、鳩が笑うように鳴いていた。今日はエイプリルフール。何が嘘で何が本当かは、わからなくたって良いのだ。そう言うように。


【ロコズ・エイプリルフール】終わり

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