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東郷清丸が手にした新しい自由

東郷清丸が新しいフェーズに突入しようとしている。ソロデビュー以降、自由奔放なソングライティングとDIYな活動形態。APPLE VINEGAR Award 特別賞を受賞するなど、正しく次世代のアーティストという言葉がぴったりと当てはまる、彼の音楽がここにきて大きな変換期を迎えている様に見える。
それを感じたのは、今年に入ってからYou tubeにアップされた”To Go To Sing”だ。これは一発撮りのライブ動画で、ソウルフルなバンドサウンドや軽やかなエレキギターの音色が飛び跳ねるわけではなく、伴奏はアコースティックギターのみでしっかりと歌い上げるという、これまでの彼の音楽とは正反対のアプローチである。しかし、それによりこれまで以上に生々しいライブ感(=実演感)がある。2020年は彼自身も多くのライブが中止になった事だろう。それと同様に多くのリスナーもライブシーンと距離を置かざるをえなかったからこそ、生の歌をこの様な形で届けたのではないかと感じる。
昭和のフォークソングや歌謡曲を中心に選曲されており、軽やかな東郷清丸のボーカルが心地よい。そして何より当時の音楽の持つ普遍的な力強さを再認識させられる。特に岡林信康の『今日をこえては』はコロナ渦の昨今の社会情勢を俯瞰しているかのようだ。

『To Go To Sing』


東郷清丸『キ・た・い』(配信中)


今年に入って発表された新曲『キ・た・い』は今まで以上に自由な浮遊感が漂う一曲。ポロポロとこぼれ落ちる様なギターの掴み所のないメロディー。そして、歌を唄うアプローチを変化させることで正しく変幻自在の”気体”の様な新しい自由を手に入れた東郷清丸の歌はどこまで浮き上がるのか。東郷清丸の次の一手から目が離せない。

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