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『大人は判ってくれない』 by トリュフォーにみる批評からの映画製作

好きな映画は? と聞かれたら、
「フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』です。」
と答えてきたけど……かれこれ何年も見てないわ!

見直しました。Blue-rayです。所有してるのに初めて見ました(コレクターあるある)。最高かよ、でした。

「大人は判ってくれない」 

(1959年仏/監督:フランソワ・トリュフォー) ▷Filmarks映画情報
原題:Les Quatre Cents Coups(400突き)/英題:The 400 Blows 

トレーラーだけで郷愁をそそる! 60年前のパリの空気は知る由もないのですが、私が大学の卒論でトリュフォーという題材を選んだから、という背景があります。私にとっては、その時代(90年代後半)を思い出すのだろうと思います。
そして、こないだ実家から持ち帰った卒論、改めて読んでみました。だいぶこっ恥ずかしかったんだけど、当時の私、けっこう頑張っていました。

「トリュフォーにみる批評からの映画製作」

目次だけをここに。

「トリュフォーにみる批評からの映画製作」
序論
第1章 トリュフォー登場の必然性
[1]ヌーヴェル・ヴァーグ以前のフランス映画
[2]トリュフォーに影響を与えた映画人たち
 ①アレクサンドル・アストリュック
 ②アンドレ・バザン
 ③ジャン・ルノワール
 ④アルフレッド・ヒッチコック
第2章 批評家トリュフォー
[1]「フランス映画のある種の傾向」
[2]作家主義について
第3章 演出家トリュフォー
 『大人は判ってくれない』
結論

ワープロで頑張って、ビデオプリンターをコマで止めて出力した写真が何枚も貼ってありました。涙ぐましい……。でも時間がなかったのでしょうか、作品はこの長編第一作しか扱っていません……。とても優しい教授で、テーマもなんでも良かったなんて、なんてお気楽な学生だったのか。

稚拙すぎる短い卒論だけど、今後一部テキストを起こして、noteに残しておこうと思いました。今忘れられかけた監督にしておくのはあまりにももったいないし、自分も含め誰かの、なにかのきっかけになるかもしれないし。

なので持論はたいしたことなく、この大型本(当時で9,700円!!)にかなり助けられていた様子。

フランソワ・トリュフォー監督は1984年に52歳という若さで亡くなっていて、25本の長編映画が残されているのですが、本人自身の文章と発言、ドキュメントだけで構成されている素晴らしい本。
後追いの、大学生の私もすごく尊敬して、納得して、共感して、追いかけていたのだと思います。当時は名画座でわりと頻繁に上映していたように思うし、名画座のパンフなんかも出てきて、これは誰と見に行ったな、っていうのも少し思い出したりして。

トリュフォーも年代を追って作風も変わっていったり、チャレンジングな試みをしたり、この映画の主人公アントワーヌ・ドワネル少年を演じた役者(ジャン=ピエール・レオ)でシリーズ化してたり、と様々な顔を見せていたので、演出論の続きは、この本があれば十分な気がします。

改めて見直してみて

卒論では、批評家から映画監督になったトリュフォーは「自分が撮るなら、という前提で批評する癖がついていた」ために、では何をどう生かしたか、が考察されていました。

「すべてのものが子供の眼で見られなければならない」という、主観的な映画論。細かい演出の効果の話から、3つのカメラ・ポジション、<現実の感覚>と<真実のディテイル>、モノの重要性。キーワードを抑えて見ると、やっぱり深まるんですね、映画体験が。とても新鮮でした。

アントワーヌが初めて家出した冬の朝、牛乳を盗んで飲み干し、牛乳瓶を下水道に投げ捨て「ガチャン」とガラスの割れる音がする(Blue-rayのジャケット写真にもなっている場面)。この牛乳瓶が割れる音が、少年の満足感に変わっているということが、このもの寂しいシーンを通じて私たちに伝えられていた、って書いていました。そんな風に、音に最も気を配りこだわっていたのって、当たり前だけど見る側が忘れがちな、映画的醍醐味だな、と学んだのを憶えています。

当時のパリの街並みを見るのにも、うってつけ。早朝、氷の張った噴水の水で顔を洗うシーンなど、トリュフォーの即興演出も手伝って、時を経ても街の空気と存在感が際立つのですね。

今回も胸を打たれたのが、後半、少年が感化院で聞き取りに対して答える場面。机に向かう彼を正面から捉えた長回しのカット(トレーラーにも使用されています)、なんて自然な台詞回し、今でこそどこかで目にしことがあるようなこのドキュメンタリー的な演出がここで用いられ、観客を掴んで離さないことは、憶えておきたいのです。

ラストは3つのショットで構成された異常に長い(約3分半)のシーン、そして象徴的なストップ・モーション……ぜひ見て確かめて欲しいです。

音楽も大好きだったのを思い出し、ライブラリに追加しました。

気分的にはやっぱり、晴れた日の午前中から聞きたい音楽です。

映画のサウンドトラック、これも再び注目していきたいテーマだなぁ、とか改めて気づきと発見が多くありました。
そんな訳で、あたなたの好きな映画は、なんですか?
って改めて、背景や理由や時代も含めて、聞いてみたいのです。


他に好きな映画は? と聞かれたら次に『ゴッドファーザー』が出てきます。見直すの時間かかるけど、サントラもあったな、探してみよう。

最期まで読んでいただけただけでも嬉しいです。スキをいただいたり、サポートいただけたら、すこしでもお役に立てたり、いいこと書けたんだな、と思って、もっと書くモチベーションにつながります。 いつかお仕事であなた様や社会にご恩返しできるように、日々精進いたします。