多分こうするつもりだったんだと思うタイムパラドクスゴーストライター
週刊少年ジャンプで(以下TPGW)が最終回を迎えた。
ぶっちゃけあまり面白い話ではなかった。
終盤の数話なんかもう予想を一切外れない展開が続くばかりだった。
……そう、終盤の数話は予想が完璧についてしまったのだ。
なぜ予想がついたかと言うと、この漫画、エンタメとしての面白さほぼ全てと引き換えに異常なまでに布石伏線の張り方が丁寧なのだ。
やるべきことを殆ど全部事前に口にしている。怖い。
殆ど自己言及だけで構成されていると言ってもいい。
毎話のクリフハンガーと辻褄が合っていくと言う部分の面白さだけでやっていこうとでもしてんのかってぐらいだった(まあ結局やっていけなかった訳だし打ち切りは残当である)。
正直連載中めちゃくちゃ怖かった。
何が怖かったかって、振り返ると次々と辻褄が合いまくっていくのに、それが全然解ってないのか整合性に文句言う感想をかなりの量見かけたことだ。
いやこれはアンチは目が曇ってるわーと言う話ではない。
むしろ目を曇らせるような描き方してるのはこの漫画の方なのでこの漫画の表現力が稚拙なのが悪い。無駄に発生してるミスリードの山に初見で惑わされずに読めるほうが絶対少数派だから安心していい。
とにかく、異常に高い(そして悲しいことに面白さにあんま寄与していない)構成力を持った作品だった訳だ、TPGWは。
なのでもうちょい尺があったなら多分こう言う展開にしてたんじゃないかな〜〜みたいな電波が降ってきてしまった。
正直こんなもん受け取っても困る。お前がもうちょっと上手くやってれば電波の形じゃなくて実物で手に取れたんだぞ解っているのか(ブチのギーレェ)。
別に説明すれば面白さが解ってもらえる、と言う話ではない。
あらすじだけ話せば今の段階でもなんか面白そうに聞こえてしまうと思ってるし、実物がそうならなかったってことは問題はそれ以外のとこにあるんだから構造の面白さの話をしたところで評価を改めるほどのパワーは持たん。
別にこうすれば面白くなった、と言う話でもない。
受信した電波を吐き出さないと気持ち悪いと言うだけなので別に面白いと思って吐き出している訳でもない。
別に私は作者の理解者である、という顔をする気もない。
むしろなまじやりたいことがなんとなく解るだけにもっと上手くやれこの野郎と言う気持ちに連載中苛まれ続けたので、三ヶ月間確実に俺のメンタルにダメージ与えてたんだぞ責任取れと言いたいぐらいだ。
なのでちょっと布石伏線の抑えを見ていこうと思う。
1話
この話がよくわからなくなった理由のほぼ全てはここで導線失敗したことにあるのでここをちょっと抑え直しておかないといけないんだが正直読み返したくねえなだって菊瀬編集のこと苦手だもんあからさまに悪役として書かれているので。
とりあえず冒頭モノローグ。
この辺からこの話は「夢を追うこと」がテーマの話だとわかりますね(→アイノイツキの死因)。
そしてそこから続く子供の風船をとってあげる優しい佐々木。
ここで佐々木が親切な人で困ってる人を見たら助けてしまうタイプだとわかりますね。
わかるか。
ハイ、この振り返りにはこの「わかるか。」が無数に出てきます。最後に何回言ったかカウントしてください。俺はやりません。
さてそして速攻この作品最大の戦犯である菊瀬編集のお説教です。
そもそもこれが諸悪の根源です。こいつの言ってることを真に受けると全ての認識が狂います。ダメなのここだけではないんですが、とりあえずここが最大です。
というわけで菊瀬編集のやらかしてしまったことを整理である。
・佐々木の実力を過度に下に思わせたこと
菊瀬編集のいうことは非常に単純だ。
「佐々木君の漫画って普通すぎるんだよね」
「個性がないっていうか……」
とにかくコレ。2度目の打ち合わせでもこれとほぼ同じ意味のことしか言っていない。
なのでこの時点で佐々木が明確に問題視されている部分は「個性の無さ」だけになる。
なので他の画力だとか構成力だとかその他諸々、個性以外の部分に対して問題があるとは言われていない。よって逆説佐々木は「描きたいもの」さえ見つけられれば十分プロ作家としてやって行けるだけの地力があった。
わかるか。
この後の回で画力が褒められてたりしたことをハァこの無能がおかしくねえ?どこで成長したの?という感想がちょいちょい見えてたが、そもそも成長せずともその辺は元々持っていたと考える方が自然である。
佐々木に地力はあった、そうでないと編集長の「佐々木君の受賞作好きだったしね」という言葉は出てこない。
才能のない奴を本当に書くならそもそも賞を取ってることすらおかしいはずだ。賞を取ってる時点で地力はあると判断してもらえると思ったのだろうか。
わかるか。
過剰に自分は才能がないとかそんなこと言ってるから「才能がない」=「全面的にダメ」みたいな誤解を受けるんだぞわかってるのか。
・佐々木の人物像を勘違いさせた
「好きなモン描いて評価されたいんだったら、地元帰って身内とか少ないファン囲ってチヤホヤされてれば?」
目立つコマで言われたコレ、実は完全に見当違いの言葉なのである。
前提として、佐々木は一種の狂人であると考えた方がいい。
直前のページで言っていたセリフがこれだ。
「僕はただ…沢山の人を楽しませれば……それで……」
「僕が描きたいのはみんなが楽しめるような漫画なんです……!」
突然ですが問題です。
この言葉の意味をセンター国語やる気で以下の三択から選びなさい。
1:佐々木には描きたいものがあるが、それが言語化できないことを示している。
2:佐々木は作家業に憧れているだけで創作意欲がないことを示している。
3:佐々木は「みんなが楽しめるような漫画」という理想上の存在を追い求めていることを示している。
常識からすると1番、佐々木の好感度が低いなら2番を選びそうなのだが、
描写からすると恐ろしいことにこれはおそらく3番だ。
これが佐々木哲平の行動原理(=呪いとか執着・落すべき憑き物の類)だと判断すると、大半の行動の筋が通ってしまうのだ。
この時点での佐々木哲平にとって漫画を描くとは「みんなを楽しませる」ために行うべき行為なのだ。
マイナー路線を目指せという話に反発したのは、その「みんな」の範囲を狭めることをすべきではないと考えていたからと解釈すると自然である(裏付けとして単行本ではそこがもうちょっとわかりやすく改訂されている)。
わかるか。
「みんなって誰だよ」「みんなを楽しませられるものってなんだよ」状態のまま「みんなを楽しませたい」と思っている。
正義の味方とはなんなのかの答えを得ないままに正義の味方目指してる衛宮士郎じゃねえんだぞテメエは。
(困ったことにこの漫画の読み解きにFate/UBWを挟むと非常に筋が通ってしまうのでこの比喩はあとで何度か出てくる。ひどいな)
おそらくタイトルの「ゴーストライター」とはこの「本来作家が持っているべきである、内から湧き出る作家性が存在していない空っぽの作者」というニュアンスを込めたワードであると見ている。
俺は電波を受け取っただけだ(ぐるぐる)。
そもそも「好きなもの描きたいなら」と「好きなもの」が具体的に無い奴に対して言い放っているので、菊瀬編集の言ってることは完全に見当違いなのだ。
その勘違いを如何にもこれが正しいですよみたいに目立つコマで言ったので、佐々木は無能で好きなもん描いてちやほやされたいのにそれを認めない輩だと変な誘導をする事故が起きている。
自分の好きなものを描きたいわけでもないし、
ちやほやされたいわけでもないし、
身内とか少ないファンだけを相手にするべきではないと思っている。
「みんな」とは文字通りの「みんな」であり、漫画を以って衆生を退屈から救いあげるのだという欲に取り憑かれている。
多分この時点の佐々木はそういう漫画狂人なのである。
わかるか。
2話
盗作紛いやらかした自覚をして引き返そうとしたがやっぱり継続することを決めてしまって好感度が地に落ちたところ。
「この世界でアイノイツキが「ホワイトナイト」を発表する未来は俺が奪ってしまった……」
「この傑作を読者に届けるにはもう俺が描くしかないんだ……」
ここも多分佐々木は文字通りのことを本気で言っている。
何故ならこの時点での佐々木にとって漫画とは「みんなを楽しませるためにある」ものだからであり、それが出来る神漫画を世界から消してしまうことは佐々木の漫画道に背くことであるので教義的に出来ない。
未来のジャンプ読者から神漫画を奪った罪は現在のジャンプ読者に返さねばならない。
自分一人の問題であったなら筆など折れたが、実際に待っている読者という「みんな」の反応を見せられてしまってはそれを裏切ることなど出来ない。
そんな狂気めいた信念から発せられた言葉であることがありありと
わかるか。
しかしここは布石としてはどうでもいい。
この回において大事なのは、宗岡編集の言葉だ。
「物語ってのはね…キャラクターってのはね…! 全部デタラメの嘘っぱちじゃあないんだよっ!」
「彼らは生きてるんだ……! 画面の中で生きてるんだ!(中略)そして僕ら読者の心の中に息づいているんだ!!!」
ここがおそらくこの話が書けなかった部分のコアだ。
自分にとっては一番重要な話なので、ここの解説は後にする。
3話/10話
アイノイツキ先生がよくわかんない理屈で佐々木の盗作紛いをなんか納得してしまった回。
この先の10話で判明しますが、アイノイツキ先生は「透明な漫画」という概念に取り憑かれていました。
「作風に個性が出るほどきっと読んでて合う人・合わない人が出てくるはずだ」
「──もし、全人類が楽しめる究極の漫画を作れるのだとしたら、「無個性」でかつ「世界で一番面白い」──そんな漫画だと私は思う」
めんどくさい人たちがよくいうじゃないですか、私に検閲させてくれれば正しくない表現を削り取ってもっと正しく人々に受け入れられるお話を書けるんで利権をくださいって。
それを真に受けたような理論でありお前ちょっと今のジャンプの掲載作品一覧見てみろよワンピースなんて倫理観案外やべえぞでバッサリ切れそうな話ですが、これは「そういうものがあったとしたら」というイデアを追いかけてるってことなのでまずは飲み込まないと話にならない。
ここでもまた型月を引き合いに出すとすごく解りやすい例えが出る。
アイノイツキ先生は、漫画で根源を目指している狂人だ。
面白さのイデアというものが存在しており、世に出てくる作品はそれに作家性という嫌われる要素が混ざったものである。
なので作家性という嫌われる要素を排除すれば面白さのイデアに到達し、全人類を楽しませることができるに違いない(とアイノイツキ先生は考えている)(あくまでアイノイツキ先生の狂気であり作中真実とは限らない)。
そして作家性を廃したものは究極の一に近づいていくに違いないので、自分と同類の人間であれば同じホワイトナイトのアイデアに収束してもおかしくないと思い、ホワイトナイトを描いた佐々木が同類であると確信したことで自分の理論の正しさに自信が持てたので、佐々木とかどうでもよくなって自分の漫画道を邁進することを決意したので帰って行った。
わかるか。
そして勿論漫画で根源目指すようなことは人間の力では出来る訳がなく、それを追い求めるために自分を殺し続けていると作家性の源泉=何故自分が漫画を描いているのかという答えを失ってあたまがおかしくなってしぬ。
わかるか。
ついでに藍野伊月の過去回想に出てくる謎の漫画ジジイ、あれは衛宮切嗣(概念)です。
私も本当は…全人類が楽しめるような…そんな漫画を描きたかったのですが…ついに叶いませんでした…
理想を抱いて、現実を知って、それでも現実に適応してそれなりに幸せに生きていたが何の気なしに子供に理想を漏らしたらそれが呪いになってしまった人、あまりにも完全すぎる……
どうか伊月ちゃんも自由に自由に…楽しんで描いて下さいね
アイノイツキ、直後のここをちゃんと覚えておけば話は楽だったんだぞ。
そもそもなんで藍野伊月がそんな夢を持ってしまったかというと、虐められてて自分の居場所がなくて自己肯定感がなかったところに漫画仙人から「みんなを楽しませる」という夢をインストールされてしまったせいで「みんなを楽しませる」ことと「自分という嫌われれているものを人に見せないこと」をイコールにしてしまっているからで……
なんでこの漫画衛宮士郎が二人もいるんだよ……片方は英霊エミヤにしておけよ……UBWしてお前は歪んでいると突きつける役になれよ……!
ちなみにこの回で佐々木の過去回想もありますが、拙い漫画でも褒めてもらえたことがあるのが佐々木と藍野伊月との差という話ですね。解りやすいですね。
その後丹念にボコスカされてオリジナリティ概念の呪いを食らってるのも解る……かなあ……どうなんだろうな……。自信ねえな……。
あとこの時点での佐々木は「藍野伊月」を「未来の天才漫画家アイノイツキ先生」という目で見ていることが各種モノローグから見えてきますね。超怖い。
4話
読み返したが伏線布石面では話すことがないわ。
こんな悠長なことやってるから打ち切られるんだぞ。
5話
ホワイトナイトはもうアイノイツキのものではないので、佐々木なりのホワイトナイトを描こう、という回。
盗作云々の話はもうこの話では関係ないし佐々木の偽物コンプレックスの話もここで終了……という話なんだろうけども納得しづらいわーっ。
布石のようなもの、多分ある気はするんだけども上手くわからないのでここはこれで投げます。
6話
ここで大事なのはアシさんの五十嵐くん(メガネ)の話ですね。
入賞はしたもののそこで何が面白いのかわからないスランプに陥ったが、佐々木版ホワイトナイトを読んで漫画を面白いと思う感覚を取り戻してスランプを脱出できた。
佐々木自身もホワイトナイトを読むことによってスランプを脱出出来ていることのリフレインですねここは。
漫画とは読んだ人を救うものである、というテーゼが一貫してますね。
本当か?
布石っぽい部分はまたあんま無い回なんですが、藍野伊月はアシさん生活をエンジョイしてるっぽいのは多分この先重要になるはずだったんでしょう。
なんでそこを1ページで済ますかな!?
7話
話は急展開ですがここも話すことがさっぱりありません。だから(ry
8話
ハイここが分岐点かつここで話の構造がやっと(そう、やっとだぞ2ヶ月かかってるんだぞ)判明した回です。
アイノイツキ先生に漫画で勝たないと彼女が死ぬので勝ってくれという漫画連載デスレースの話がスタート。
未来人(仮)からメッセージが届きましたが、このメッセージを送っているのが未来人だとするなら時間改変の影響を受けていないのがおかしい為、こいつは実は未来人ではなく上位次元人とかの時間軸の外にいることが解ります。
わかるか。
そしておそらくここが描かれなかった部分の鍵だと自分は電波を受けてしまいました。だがとりあえずそれは後にしておきます。
そして佐々木の発言、
金なんかどうでもいいんだよ!
俺はただ…あの物語をこの世界から消したく無かっただけなんだ!!
こんな非現実的な状態で動転している状態で取り繕いなど出来る訳がないから、これが正真正銘の本音だと考えて流石にいいでしょう。
ここで功名心や金目当てのクズとかではなく純粋に傑作がこの世から消えることが許せなかった漫画狂人であることが明確化された訳ですね。
おせえよ。
しかし「漫画で勝つ」ってなんでしょうね。わかりません。
√144の意味もわかりません。
まさか12の二乗=自由にしようのダジャレじゃあるまいな。
ただ、最後のニコチャンマークはなんとなく布石っぽいのがあります。
気づきにくいんですが、アイノイツキ先生のヘアピンのマークなんですねニコチャンマーク。
そしてこの先の10話で行われた過去回想、ジャンプ全冊おじいちゃんに花を持って行った行間で唐突にヘアピンがなんの装飾もないものからニコチャンマークに変わっているので、おそらくは花と交換で漫画仙人から貰ったものということに、
わかるか。
なんでそんな凄く細かいところだけしっかりやってるんだよ!!!
9話
佐々木が自力で考えたホワイトナイトに対する宗岡編集のコメント。
「予想を大きく超えてくる面白さがないってカンジなのかなあ……」
1話で佐々木が言われていた罵倒が「どこかで見たようなもの」であり、何故そうなっているかというと作家性のようなものが無いからという理屈。
つまり逆説、普段のホワイトナイト=アイノイツキ先生の作品には斬新性が存在していたことになり、即ち作家性を殺すことを望んで書いているアイノイツキの中にも作家性というものはまだ強く残っているんだよ!という話だと思われます。
わかるか。
あと佐々木の作画技術は結構しっかりしているという話が出てきましたが、これは佐々木は別に能力が足りない訳ではないという話ですね。師匠の元でアシスタントしてた時に教わったということなのでここしばらくで上達したとかではなく、元からそんな能力を持ってたということが解ります。
………コイツ、ホワイトナイト連載開始の時に絵のことめちゃくちゃ気にしてたよな。
そういやあれはトレースが出来てないという悩みであって上手い下手の話では無かったな。
わかるか。
佐々木お前自己評価が低すぎて完全に信頼できない語り手じゃねーかバーカ!!!
あんだけ心を熱心に折られ続けてきたならそうもなろうというのは解るが、解るだけであり読者に伝わるように出さないといけないんだぞ。
そして佐々木の師匠、『ビタミンマン』の七篠先生の話。
破天荒でギャグ書いてるって濃い人だが、これが多分佐々木の凡人コンプレックスを加速させたんだろうなという嫌な質感がある。
Lみたいな顔つきになった佐々木が佐々木オルタとの自己対話してる時。
「でもこの世界から『ホワイトナイト』を失わせるなんて出来なかったし…」
「アイノさんが死ぬ未来なんて間違ってる…その未来を変える為ならなんだってするよ…」
流石に自分との対話で本音以外をいう訳なかろうが、
目にハイライトが無い状態なのと、吹き出しが二つに別れているのが非常に怖いですね。
おそらくまだこの時点では「未来の神漫画家アイノイツキ先生」として見ているっぽいですね。怖いですね。
10話は上で整理し、11話は編集さんには責任ないよという話に終始して語ることはありません。
12話/こういう話なんですよTPGW
本来の話では、12話でフューチャーくんの世界に突入し中の人が動機とか全部口で語ってくれる訳ですが、それを簡単に整理しましょう。
まず重要な話として、TPGWはタイムパラドックスの話でもゴーストライターの話でもありません。
「藍野伊月」という、作者でも制御不可能になってしまったキャラクターを救うためのメタフィクションストーリーです。
フューチャーくんの中の人(長いので以下F野郎と省略)は、TPGW世界の作者とでも言うべき存在であり、時間を戻したり止めたり自由自在ですが、既に確定させてしまった部分を変更することは作者の権限でも無理な訳です。これは既に印刷した原稿を書き換えられないようなものなので解りやすいですね。重版時の修正とか野暮なことは言わない。
そしてF野郎は藍野伊月というキャラクターとそのオリジンを思いついてしまい、それを確定させてしまいました。
本来の藍野伊月の物語、彼女が究極の漫画という夢を追いかける話を仮に「メタフィクションクリスタルライター」とでも名付けておきましょう。長いので略してMFCW。
MFCWはどうプロットを練ってもバッドエンドに向かう話でした。
藍野伊月に設定してしまったキャラクターの理屈強度が高すぎて、どんな展開にしようとどっかで必ず死ぬ結果を迎えてしまうのを食い止める方法が浮かびませんでした。
「本物の夢を追っている人間の情熱の炎は何ものにも消せはしないのだ」
作者は全知全能万能じゃねーのかよ、と思うかもしれませんが、「キャラクターが勝手に動く」みたいな言葉があります。あれはかなり本当で、設定土台がしっかりしていたキャラクターはそれに従って勝手に動いてしまうものなのです。
なので不都合な方向に向かうのを止めるにはその土台の設定をなんとかする必要があるのだけれども、確定させてしまった設定は弄れません。
なのでF野郎は一旦MFCWを書くのをやめて、同じ世界を使った新しい話を書くことにしました。
藍野伊月がデビューするきっかけになった読み切りを書いた人、という設定のキャラクターだった佐々木哲平を再利用し、彼に漫画家アイノイツキの筆を折らさせる物語を。それがTPGWだったわけです。
デビュー作を奪ったりするその程度で藍野伊月に筆を折らせられるわけがないだろF野郎見積もり甘すぎか?としか言いようがないのだけれども、上手くいかないのが続くと人間おかしくなるから仕方ないね。ボツ食らいまくってた佐々木もおかしくなってたし。
とりま、二巻で終了しなかった場合のTPGWは、
フィクションのキャラクターの制御困難性を語るメタフィクション
と
漫画とは万民を救えるものではないが、それでも誰かを救えるものだ
という話をやるはずだったんだと自分は解釈した。
ハイ。タイトル部の回収はここで終了し、以下は幻覚入ります。
多分これに影響受けたんだろうなTPGW
開始前にはシュタインズ・ゲートとの類似が言われていたが、実際のところ電子レンジ以外あんまり似てなかったお話だった。
なのでこれの影響元を考えるなら、時間SFよりも創作メタ作品の方を追いかけるのが多分近いに違いないと思う。
創作メタ作品というのは色々あるのだが、俺は一つの隠れた傑作の名前をあげたい。
ゼクレアトル。
裏サンデーの初期連載作の一つで、当時有名だったWeb漫画作者を拾ってきた漫画だ。
壮大かつ伏線布石のしっかりしたメタフィクション・SFとしてかなりの完成度を誇り、サイト内アンケも結構いい結果を出していたのだが、肝心の作中作の部分がちょっと話早すぎて読者置いてけぼりにしかけた上でなんかどうもあんまり売れずその上色々あったのか後半でごたごたが起きて完結こそしたものの単行本が最後まで出されなかったという非常に惜しい話だ。
TPGWがこの作品に影響を受けていると断言する一切の根拠はない。
ただ原作の市真先生が裏サンデーで連載していたことがある、それ一点だけをもって彼はこの作品を読んで影響を受けたんだろうと邪推する。
そしてそれに対する再挑戦であることを出し切れなかったんだろうなと邪推する。
邪推の果てに電波を受け取った自分は妄想する。
さて、ここから幻覚のお時間です。
届いた電波がわだかまっているのが気持ち悪いから吐き出しているだけでありこれが面白いとかそうすればよかったんだとかそういうのを主張する気は一切ない。そんなのでよければはいスタート。
長編版TPGWの幻覚
藍野伊月・オリジンである10話は恐らく掲載されず、
11話でアイノイツキ先生過労死の報告を聞いてF野郎を罵っていたら冷蔵庫の向こうから反応があるところからスタート。
けれど佐々木が冷蔵庫の向こうの上位次元に行くのではなく、F野郎の方がTPGW世界にアバターを形成してやってくる形で。
多分この辺でテコ入れ入れるタイミングなので見た目は美少女とかになってますね間違いない。私は正気だ(ガンギマった目で)。
作中世界に降り立ったF野郎は困惑する佐々木を見下ろしながらやはり無理だったかなどなど勝手な事を言い放つはずですね。
多分この段階では作者だとか云々は告げないと思うんですよね。
代わりにこの世界の運命を決めるものだとかそんな尊大なことを言いながら、藍野伊月が死ぬのならこの世界はもう終わりにしようとかそんなことを独り言で呟いたりするんですよ。
勿論佐々木は大困惑でありよく解らないままに文句を言ってその中で時間を戻せでもしない限りーっみたいなことを言ってしまい、目の前の相手がなんか未来からジャンプを転送してきた奴だってことに気づいて時間を戻せないか交渉しちゃう訳です。
F野郎も藍野伊月を救いたいのでダメモトでそれを聞いてやって佐々木は数ヶ月分のホワイトナイトのネームと共に過去にリターンバック!
戻った先はアイノイツキ先生デビューの少し前、アイノイツキ先生が連載を決めてアシさんやめた直後あたりなんですよね。
実体化したF野郎は佐々木の家に居座るけれどぐうたらしてる時のドラえもんぐらいに役に立たない程度の奴ですが佐々木のモノローグだけで話を進める状態から解放されたため読者からの好感度はいい感じになるはずだ。
戻ったし週刊連載の激務から解放されて時間を得たけれども佐々木はノープランノーアイデアなので過労死を止めろって言われても解らない訳ですよ、なのでまずは今度こそ物理行使で止めようとしちゃうと思うんですが、この時点での佐々木は藍野伊月を未来の神漫画家アイノイツキ先生だと思っているのでその未来を断ち世界中のジャンプ読者から神漫画ANIMAを奪うという大罪を犯すことなど出来なくて未遂で終わるに違いないんですよ。
そして公園とかぶらぶらしているところで遭遇するのが師匠の七篠先生なんですよねきっと。
語られてる破天荒さから多分これは女性ですね。きっと実年齢は50近いんだけどもまだ20代に見えるぐらい若々しくて合気道の達人とかそんな感じの奴なんだという電波を受信しました。
その若々しい姿と彼女が連載しているマンガのタイトル『ビタミンマン』から佐々木は当たり前のことに気づけると思うんですよね。
そう、過労死しないためにはちゃんと栄養をとって自分の体を大事にする健康な生活を送るべきだということに────!!!
多分この辺で読者に早よ気づけやと怒られるのが目に見えるんですがそれはそれというかこの漫画についてはもう今更すぎる事なので放置。
それで師匠に対して健康管理のコツを聞くんですがそこでそうかーお前もやっと健康が大事と気づいたかーみたいなことを言われて、自分がアイノイツキ先生相手にそんなお説教できるような生活してないことを自覚する訳ですよきっと。
そして家に帰ってあああああってなってるところをF野郎に見つかり、相談したところじゃあ今からやれよ金はあるだろとマジレス喰らう訳ですよ。
佐々木はチキンなので色々言うけれどもアイノイツキ先生はANIMAで自分で稼げるしこの原稿の山を書いてきたのはお前自身だろうしそもそも私が許すんだから問題など何もないで押し切られちゃう訳ですきっと。
ついでだからと宝くじを受け取らなかった事も含めて藍野伊月もそうだがお前もなにぶん自分を大事にしない奴だなそんなとこまで同類だったとは私も流石に予想外だとかお説教されるはずなんですよね。
あと借金は勝手に返されて解約されていたりすると思うんですよね今後の憂い断つために。
んで最後にこの近所に師匠の通っていた健康ランドが「あったことにした」から師匠に紹介された体裁でデートに行けデートと追いやられる訳ですよおそらく。
そして師匠連れで強引健康ランドデート編開始なんですよきっと。
こんなところにスポーツジムとかあったっけかな……となる佐々木でこの世界が作中作でありかなりあやふやなものであると言う布石が打たれる訳ですね多分。
読者からはこの辺であれ?これSF漫画だと思ってたら漫画家漫画になりスポーツ漫画になったな?とか言われるのが見える……
あとスポブラつけてるアイノイツキ先生を見たくないですか貴様ら。俺は見たいぞ。
デートの中身はなんかほんとベタベタにデートだと思うんですが作者がそこまでベタベタなデートが書けるかについての信頼がないのが悲しいとこですねなんとか頑張ったことにしておこう。とりあえず「楽しんでデートした」
そのデートの中で佐々木は藍野伊月の野望である究極の漫画=透明な傑作の話を聞くんだと思うんですよね。それによって3話の不可解な藍野伊月の言動と自分がホワイトナイトに感動した理由、そしてアイノイツキ先生に追いつけずともなんとか代筆を続けられた理由を悟ると思うんですが、けど自分が感動したホワイトナイトがその程度のものなのかと疑問ぐらいは抱いて欲しいんですよね。絶対に口にせずモノローグで終わらせると思うんですが。
そしてデートの終盤なんか危なっかしいことをやらかして(多分プールで溺れるとかそんなんだろ)アイノイツキ先生は佐々木共々師匠から健康の大切さと作者が健康でなければ読者に不義理、楽しませたければ心配されずとも済むようになれというお説教を食らいデート編が終了すると思うんですよ。
2周目の世界はもうちょっと続いて、佐々木がちょくちょくアイノイツキ先生に飯の差し入れしてるところとか描かれると思うんですよね。心配性なのでちゃんと自分の手で栄養を摂らせないと安心できないと思うんで。
そしてそんな中で他の元アシさんから相談を受けることになるはずなんですよね。相談の内容はキャラクターがうまく動いてくれない、無理に動かそうとすると自分で納得できない展開になると。
こう言う話をしておかないと「作者でも納得いく形でキャラクターを動かせなくて困ることがあり、そしてアイノイツキ自体が作者の手に余ったキャラクターである」と言うことを納得してもらえないので、これは間違いなくあります(お目目グルグル
TPGWは自己言及の漫画なので多分ここで最終盤の答えをストレートに言うと思うんですよ。だからここの解決策はそのキャラのことを好きになってくれる新キャラを投入してその相互作用でキャラクター自体を緩やかに変えていくみたいな形になると見ますねええ。
そして前回の周回でアイノイツキ先生が過労死したところを通り過ぎてF野郎は安堵して佐々木ハウスを去って行き、佐々木は藍野のとこに通ってた時にした雑談で思いつけたアイデアで更にブラッシュアップされたホワイトナイトの執筆を再開する訳ですがきっとここからなんか雲行きがおかしくなってくるはずなんですよね。
ANIMAの人気が「人気がある」と言う言葉では表現出来ないぐらいにどんどんヤバくなっていくんですよきっと。
読んだ人が何かに目覚めたり脳が揺れたり真実を悟ったみたいなことを言い出したり発狂したりと人間の枠を越え始めていくんですね、根源目指して究極の面白さを掘り当て具現化させた漫画ならこのぐらいやらなきゃ嘘だと思うんですよ!!!!
何かがおかしいと思ってアイノイツキ先生に電話をかけても出ないので直接仕事場へ向かった佐々木が見たものは自我すら失ってひたすら透明な漫画を吐き出し続けるマシーンと化したアイノイツキ先生────!
市真先生の前作「試作神話」がハルヒめいた話だったので本気でメタフィクションやる気ならそのぐらい行って当然に違いないんですよね俺にはわかる!!!!(狂気と幻覚に囚われた目
そしてそこでF野郎がめちゃくちゃ焦った状態で飛び出してくるはずなんですよ、こんなことは私は設定していないぞ世界観が狂い始めているのか!?とかそんな叫びとともにきっと。
ここで世界観がメタフィクション構造であり、このTPGW世界はF野郎が書いている作品の中だと言うことが判明する訳ですね多分。
それを追い求めていては自分の体が持たないという問題を解決して透明な漫画というイデア的存在を具現化する力を得てしまったアイノイツキ先生が存在できるような世界は常識的な世界などではあり得なく故にリアリティなどもはや紙屑、世界観はここに崩壊する!!!
窓の外では怪獣とヒーローが戦っていて魔法少女が妖怪相手にビームを撃つ、そんな悪夢のような光景が発生したりとかしてそうだと思うんですよ。
そして室外からの狙撃──急に湧いてきた世界を守る闇の秘密結社の黒服とかそんなんが射ったんでしょ──によって世界の混乱を引き起こしているアイノイツキ先生は死亡!でもその程度で壊れてしまった世界観が直るわけがないんですよね!
F野郎が力を発揮するためには多分フューチャーくん本体の側まで行かないといけないとかで謎の組織とか怪獣とかそういったものから逃げ延びて佐々木の家に帰り着くためのデスレースがここで始まることになるはずですね。そして帰り着くことで時間を戻して壊れてしまった世界観は一旦元に戻るんですよ。そうに違いない。
そして彼らは本来の問題を認識するわけなんですよ。
どうにかするべきだったのは藍野伊月が死んでしまうことではなく、アイノイツキが透明な傑作というイデアを追いかけることそのものだったのだと。
F野郎も藍野伊月を救うのはもう無理だと諦め、佐々木に決断をぶん投げると思うんですよね。
藍野伊月が夢を追い求めた結果死ぬ世界に戻すかどうか。
本来の12話でF野郎が危惧してたように、夢を追って死ぬのもそれはそれで正しい生き様なんじゃないかと佐々木は絶対葛藤すると思うんですよね。
でもここまで色々積んできてたら流石に佐々木もエゴとして生きていて欲しいと思ってしまうようになってると思うんですよね。
そして佐々木は藍野とデートするんですよきっと。
エロゲーだったらCG回収するシーンですよ。マジでこの話打ち切りとか無いかつ最初から最後まで一気にやれるかつデザインいい女の子のエッチな姿とか見れるエロゲーでやってりゃよかったのにな……!
そこで先生はなんで漫画を描き始めたんですか?と聞かれたりして自分のオリジンに気づき直せたりすると思うんですよ。
漫画を描くのは楽しかった、藍野といるのも楽しかった、楽しかったから頑張れたんだと言うことにここで本来は到達するはずだったと思うんですよね。
そして本編でも言われていた「漫画は人を救うもの」に戻ってきて、ここで藍野伊月ただ一人を救う漫画を描くと言う結論に到達して実行するんですよ!!!そのぐらいの回り道が圧縮されていた俺には見えてる!!!(幻覚
多分このルートだと実際の最終話よりももっとこっぱずかしい告白とかそう言う感じになると思うんですよね。それこそ愛の告白だと誤解されるレベルに。その結果最終コマに映ってた指輪が一個増えてたかどうかはわからないですが、とりあえずそんな感じでハッピーエンドになったと思うんですよねぜえぜえはあはあ。
………何書いてるんだろうな、俺。(急に正気に帰る。
とりあえず、これがおそらく原作者と同じ系列の作品が好きだったであろう「同類」である自分がこの作品から受け取った電波だ。
これを俺が受信したことによって、作者がいやそこまで考えてなかったよとバカ笑いして無念を晴らしてくれれば幸いだがぶっちゃけ恥ずかしいので届いて欲しくないな……
市真・伊達両先生の次回作に期待しております。
けれど市真先生には次は出来れば連載漫画ではなく小説やノベルゲームなどの出し切り媒体でこの構築力を発揮して欲しいですね!
追記:単行本2巻加筆エピローグを受けて
ウワァァァァァ七篠先生の幻覚が実体化してるぅぅぅぅ!?
あ、あまりにも想像通りで驚いている……前作「ぼくらのQ」にも気が強くて目つきの鋭いネーチャン出てきているけどひょっとして市真先生の性癖だったりするんです?
こっちは完結してる上で市真先生の光る構成力がちゃんと発揮されているので素直にオススメです。
異能バトルを通して得た考えがちゃんと上位存在との対話の答えの説得力として働いている部分は非常に高いカタルシス。
話をTPGWに戻して、キャラクターの成長と大丈夫だよこれからも頑張っていけるからというのが描かれていて安心の出来たいいエピローグでした。
あの楽しくなさそうに無個性な漫画描いてた佐々木が、変なもの描いてコアなファンがつくようなようになったの、成長ですよ。
あと言ってることは結果的に間違いじゃなくても、やってることはDV同然だった菊瀬編集のことをデリカシー死んでる奴と言えるようになったの、心の余裕が出来たことの現れですね。1話の時点での佐々木はなんとかして菊瀬編集から見捨てられないように必死で縋り付いていて痛々しかったので。
解決された?謎としては、F野郎を生み出してアイノイツキ先生を救おうとしていた主体があのジャンプ仙人だということがわかりましたね。
いやジャンプ仙人が本当に仙人だったからってそれは謎が増えただけなのでは……?
ジャンプ仙人の正体、個人的にはアイノイツキ先生死後にもその遺志を継いで透明に近い漫画を描きつづけ、最終的には漫画で根源に辿り着いて上位存在になってしまった元佐々木だと思っているのですが、この話はファンタジー要素強くないうちに終わってしまったので漫画のイデアに辿り着いたからって上位存在になれるという根拠はミクロも存在していないぞ。まだ幻覚を見ているのか私。目を覚ませ。
佐々木と藍野伊月がくっつかないのも、読み切り部ではかなり強めに補完されていましたね。
憑き物が落ちた後のアイノイツキ先生はかつて「同類」とすら呼んでいた佐々木の「描きたいもの」を『あんな漫画』呼ばわりまでしています。
二人が「同類」だったのは「漫画を書いてる自分を否定されて、自分自身を否定する方向に走って、それでもなお否定した奴すら含めた”みんな”を楽しませられるような漫画を描きたい」と思っていたところであり、その憑き物が落ちたあとは当然それぞれ別の道に進むと言うことですね。
しかし二人がくっつかなかったの、アイノイツキ先生は「主人公のエゴによって救われるべきヒロイン」として書かれていたので、一番強いエゴ=恋愛感情が抜かれてる以上、これ連載続いてた場合どうなってたんだろうなー……わっかんねえなー……
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