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【キッチンカー物語⑥】'23年振り返り~業界分析編~

 先日『マツコせんぱいの知らない世界』で『キッチンカーの世界』が放送されていた。

https://tver.jp/episodes/epqxxgt181?fbclid=IwAR0ffMEAKMbnkjoCLjrufjzSvYbHARSLLg3NiIov8IYdvpFASzZyshOm0-M

 もちろんテレビだし、出演していたマツコさんお気に入り童顔社長はキッチンカー製作会社の社長だし、「わ~すてき~私もやろうかしら♡」(byマツコせんぱい)とポジティブキラキラ発信。


 だけれど、現実そんなに、甘くない。

「始めりゃ注目される・儲かる」と思われた時代はすでに終わり。業界として”ひと山”は越えた気が。これからが本当の戦国時代。

 以下、僕自身がキッチンカー事業者として2年目を終え、3年目に突入しようとしている今とらえている業界分析や実感値、戦略などについて残しておきたい。



【1】業界分析


①夢から覚めようとしている

キッチンカーへ抱く幻想。「楽しそう!」「儲かりそう!」「映画『シェフ』みたい!」「寝泊りできそう!」…

果たしてそうか?

▶毎日なん十キロもの食材や調理道具・発電機などを積み下ろし。加えて買い出しや朝晩の仕込み。「クロネコヤマト×飲食店」のような動きに体は日々消耗。
▶はりきって作った料理は大雨でほぼ廃棄。原価割れ。赤字。更に支払う高い出店料。
▶営業許可は各都道府県で必要。夢の全国横断するには47都道府県×申請手数料(約17,000円/回)=約80万円が必要。
▶当たり前だがキッチンでグッスリ眠れるワケがない。(いまだにキャンピングカーと勘違いしている人も多いからびっくり)


コロナ禍という追い風を受け”新星”としてもてはやされてきたが、コロナが明けたと同時に夢から覚めようとしているのが今じゃないだろうか


②泡のように消えていくのは誰?


番組内では「キッチンカー事業者は増加傾向(東京都)」とされていたが、冷静に考えてみたい。

▶既に廃業(休業)しているところも?

コロナ禍、既存の飲食店が営業停止状態になり、補助金も出るしと”サブ的”な位置づけで始めたキッチンカーも少なくない。そしてアフターコロナの幕開け
→飲食店に客足が戻る→”サブ”の重要度は下がる→キッチンカーは休眠状態もしくは既に売却済?

実際、僕がフォローしていた他店キッチンカーさんのインスタアカウントがいつの間にか消えていたりする。どうしているんだろう。数値には表れない業界自体のシュリンクはもう始まっているかもしれない。

▶タピオ”カー”になっていないか

『流行』と『時流』は違う。

流行に飛びつく人…ガッと投資し、ザっと回収し、サッと去る人。わずか1~2年の出来事。その才能と行動力も素晴らしい。
しかしそういう人たちにとっては"流行"が終わってしまえば、そのプロダクトに愛着も執着もない。タピオカ屋がいつのまにか台湾からあげ屋に変わるように。オーナーは一緒。

『時流に乗る』というのは、社会の変化を読み解き、その中で自分の居場所から自分の技術を発揮し、社会と関わっていくこと。5~10年くらいのスパンで変わりゆく世界。2020年に、2025年や2030年をイメージできているかどうか。
私ならば『和』というのが自分の居場所。そこから日々変化する世界やライフスタイル、飲食シーンの多様化を読み取り、キッチンカーというツールを使ってどんな『wow!』をお客さんに提供できるか。そしてそれをどう社会に定着させていくか(社会の中で自分がどう振舞うか)を想像し、動く。

『流行組』は事業者増による競争激化や、消費者嗜好の変化によって、場合によってはさっさとオサラバ。
だが『時流組』は、世の中のリモートワーク化、換気の良い場を好む人々の志向、都市部のオフィス空室率、地方創生、インバウンドなど様々な情報をキャッチし、その中で自分が果たせる役割を探し出そうと奔走する。僕もそうでありたい。

もちろん全てのキッチンカー業者が2024年に一気にゼロになることはないが、ある一定の数は、既に泡のように消え始めているように思う。


③出店募集サイト(代理店)の役割とリスク


 家を探す際に「物件サイト」、仕事を探す際に「就職サイト」があるように、キッチンカーが出店場所を探す際には「出店募集サイト」がある
(例)株式会社Mellow

こうした企業が日々、イベント主催者やビルオーナー、大学などと場所確保の交渉をし、条件の取りまとめ等を行ってくれているおかげで、事業者は出店場所の開拓をする手間を省けている。キッチンカー事業者のほぼ9割はこうした企業を多かれ少なかれ使っていると思う。


逆に「キッチンカーに来てほしい」ホスト側からしても、こうした企業に相談することでキッチンカー誘致が容易になる。
※情報として主に「出店場所」「営業時間」「出店料」「設備(電源の有無等)」「顧客属性(ファミリーが多い場所のか、子供が多いイベントなのか、ワーキングパーソンのランチ需要なのか等々)」が載っている。

しかし何事にも一長一短がある。代理店を使う”リスク”もある。
イニシアチブを取ることが難しくなるのだ。


『人気物件』には募集が集中…例えば、以下3つの出店場所が掲載されていたとしよう。

出店場所A(需要も高く、キッチンカー文化も根付いており、どんなお店が行ってもだいたい売れる人気物件
▶出店場所B(そこそこの物件)
▶出店場所C(不人気物件)


▶▶▶結果、Aに応募が集中する。

しかしAが『出店枠2店舗』だとしたら、10店舗の応募があっても、8つは落選する。
落選した事業者は次は『B』に応募する。そこでも落ちたら「しゃーなし『C』に行くか…」となるが、やっぱり売れない。交通費と手間だけかかって赤字。骨折り損。


ここで言う『イニシアチブ』というのは主に『出店料』のこと。


現在『出店場所A』の出店料が『売上に対して10%』だったととしよう(例:一日の売上が50,000円→出店料5,000円を代理店に払う)
しかし代理店も、その先の”土地オーナー”も、もっと儲けたいとなれば「フィーを15%に上げようか」と強気になれる。
キッチンカー事業者としては「ひぇ~」となるが、それでも『A』に行けば売上が立つわけで、しかも他の出店場所も案件の総数が急に増えるわけでもないならば、結局は同じ応募行動をする。(Aに応募→ダメならB,C…)
別に難しい分析ではない。不動産だって人気のところは高くても売れる。経済の当たり前の原理。仮にオーナーが儲け重視でなくても、代理店は民間企業。取れるものは、高く取る。そこは否定しない。

ただ、代理店を通すということは、料金などを含めた条件の交渉権をほぼ丸投げするようなもの。利益を吸い取られても何も言えない。事業者はイニシアチブ(主導権)が取れない仕組みの中にいることを、頭に入れておかなければならない。


 今年私はこうした代理店を手広く何社か使ってみたが、中には”残念な代理店”もあった。つまり創造的な仕事をしない集団。そういうところは切った。取引停止。仕事が円滑に回らない。利益の確保も難しい。何より信頼ができない。
例えば…出店場所の顧客属性や過去の実績値(どれくらい売れたのか)等について全く把握していない。おそらく詳しいヒアリングなどもなく「とりあえず空いてる場所にキッチンカーでも呼びます?適当にお金取って」程度なんだろう。これでは事業者として売上予測や仕入れ量の調整など準備もままならない。バクチ状態。
更には(もう”品質管理”どころの話ではないが…)「出店マニュアル」が別の場所のものだったりしたこともあった。誤送信。問い合わせても返事ナシ。仕事人としてありえない。

ビジネスの場において、こちらが優位に立ちたいというわけではない。私は常に対等でいたい。『三方よし』とは何かを常に考え行動していきたい


【2】2023年のテーマは『共創』

いいビジネスパートナー(代理店/直取引)を選ぶ。それを受け身でなく、自らの意志で。


 ヘタをするとキッチンカー事業者とは完全な『受け身姿勢』になりかねない。”代理店頼み”でいると、その代理店がふっかけてきたり、ヘタな仕事をされたり、はたまた会社が潰れたとなっても、キッチンカー事業者は泣き寝入り、最悪共倒れとなる。業界自体が泡と消えかねない。(私が一番悔しいのは10年後に「あぁ、キッチンカーってコロナのときに流行ったよね」と一過性のものとして処理されること。)

 もちろん代理店ともお付き合いをする。さきほどのMellow社は仕事が丁寧で信頼できるパートナー。担当者さんから「こちらの出店場所とか合いそうですがどうですか?」と私の見落としていた案件を紹介してくれる。理想的関係。代理店が業界団体のようになっているなら、共に成長し、業界を良くしていける想いのある団体と付き合っていきたい。

 と同時に、この業界の現状の仕組み自体に懸念をし、今年は代理店を通さない『直取引』を増やした。おかけで京都の有名観光地、大手の旅行代理店(イベント幹事)やハウスメーカー、そしてイベント主催者と直接電話やメールができる。

 出店料含めた様々な条件交渉を自ら行う。ときには出店時間の調整もする。
 この『売り切れたら帰っていいかどうか問題』だが、実はココ、キッチンカー事業者にとってかなり重要だと思っている。車内でできることには限界がある。買い出しや仕込みなど、キッチンカーは”営業時間”だけが仕事ではない。作って、売って、片付けて…やることは山ほどあるのだ。
 代理店案件の多くでは早退が”ご法度”(=最後までいなさい)となっているが、無意味なことも多い。
 だがオーナーに聞くと意外と「ドーゾドーゾ。最後にコレだけ事務所に来て返して頂ければ…」とそんな程度。(※もちろん大型イベントなどで搬入搬出時間が厳格な現場では、そんな勝手に帰ったりはしないが笑)
 早めに閉店ガラガラしたら、銭湯に行ったって、ビールを飲んだっていい。せっかく事業主になったんだから、ワークライフバランスは自分で調整すればいい。


そしてキッチンカーにとっての天敵。それは雨!
だったらオーナー側と「雨天時は出店料を半額にできませんか」とか「せめて原価分として売上保証(売れても売れなくても逆に”出張料”として支払われる額)をこれだけ戴けませんか」など交渉の余地はいくらでもある。実際にそういう案件もある。


遠慮なんていらない。ワガママでなく、対話を。重要なことは「共にいい場を創りましょう」という『共創』の精神。


 私は20代の頃「リクルート」「博報堂」という代理店で営業を経験してきた。異業界異業種であれ、これまで培ってきた経験やスキルを使って、なんとか新境地を切り開いていきたいと思うのは、仕事人として当たり前のこと。
 大企業を去り、一個人という”弱い立場”になった。どんな相手であっても「信頼できるパートナー」として選ばれるためには、常に自分が厳しい目で見られていると自戒すると共に、私も「信頼できるパートナー」を求め続けたい。



【3】2024年に向けて


まずは
🔳前年のお付き合いを発展させる
これはやりたい。

慣れた現場に行き、「今年もお世話になります」と言えるのは安心するし、前年の実績を活かしてよりよい場を提供できる気も十分している。


自分の可能性を拡げるとしたら…
今回は触れませんでしたが自身のキッチンカーの運営体制をもう少し大きくしたいなと。繁忙期だけのテンポラリー的にでも。


『飲食業』というのは『設備産業』であり『労働集約型産業』でもあるわけで、例えば湯葉コロッケが人気でいつも売り切れるくらいなのですが、だからといって一日70個作っていたものが、急に一日で200個・300個・1000個も作れるようにはならない。
・原材料の仕入れ(調達)
・生産設備の増強(冷蔵冷凍設備、調理器具の買い増し等)
・作り手の確保(労働)
これらを同時に行いながら、クオリティコントロールもしなければならない。もちろん原価管理や数十万円の設備投資回収のメドも。


仮に他から資本が注入されても、料理とはある種の”アート”なので、ピカソの絵が人気だからといって”ピカソの絵を量産するぞ”というのはちょっと都合が良すぎる。弟子を育て、模倣(コピー)するのにも時間と技術がいる。(※レシピのコピーがあってもその味が”再現”できる人は極僅か)。だからこそ『唯一無二』や『マスターピース』と呼ばれるわけで。


とはいえ、僕もできる限りのご要望にはお応えしたい。
と同時に、無理なものは無理とハッキリ申し上げる勇気も持ち合わせたい。
自分の限界を知らず無理をすると、結果、期待に応えきれないことも今年何度か学んだ。

アートと産業の融合をどう図っていくのか。

個人的小さな挑戦は続く。

🚚京のおばんざい たいたん
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