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2022年3月のハモネプをアカペラサークル出身者の目線で語る

2022/3/19の夜、フジテレビでハモネプ大学日本一決定戦2022春が放送されました。私は昔からこのハモネプが大好きで、最初に見ていた頃は小学生くらいで、復活してから見ていたのが高校生くらいで、私も大学生になったらアカペラをやりたいなぁと思っていたので、大学ではアカペラサークルに入り、4年間サークルのライブに出たり、色々なライブハウスで他のアカペラバンドと対バンしてライブしたりと、楽しくアカペラ生活を送っていました。2022年3月のハモネプが本当にレベルが高くて感動したので、アカペラサークル出身者の目線で、今回のハモネプで特に印象に残ったバンドについてお話ししたいと思います。

ハモネプ出場バンドの音楽的な完成度の高まり

まず今回のハモネプを見て全体的に感じたのが、曲のアレンジのレベルがすごく上がっていて、音楽の理解とか、お客さんへの聴かせ方、お客さんの引き込み方とか、そういう音楽的なアプローチのレベルがすごく高いバンドがいくつもあったな、ということでした。今までのハモネプを見ていると、学生のアカペラとして良くできているな、という感想を持つことが多くて、それも決して悪い意味ではないし、良いことだったんですけど、今回のハモネプは、そこから一段上がって、音楽として完成度が高いなという印象を持ちました。特にそう感じたのが3つのバンドで、横浜国立大学の「夜にワルツ」、国際キリスト教大学の「エイトロー」、あと東京大学の「リメリック」でした。それぞれのバンドについて詳しくお話ししていきます。

印象に残ったバンド①「夜にワルツ」

横浜国立大学の「夜にワルツ」は、バンド名の通り色々な楽曲をワルツアレンジで歌うバンドで、アレンジ力が半端ないです。今回は星野源さんの『恋』や、宇多田ヒカルさんの『Automatic」をワルツアレンジで歌っていましたが、ただのワルツではなく、ワルツ、3拍子を基本とした曲の中に5拍子や2拍子も混ぜる変拍子の曲を予選でも決勝でも披露していました。
かつ使っている和音もジャズで使うような、ぶつかる音が入っていてハモるのが難しい和音を沢山使っていて、楽譜としてかなり難しいアレンジを披露していたんですけど、難しいだけでなく曲としてとっても美しくて人を惹きつける力があり、圧巻でした。
「夜にワルツ」は今回のハモネプ優勝バンドでした。本当にレベルの高い争いだったのですが、私自身このバンドが優勝してすごく嬉しかったです。というのも、このバンドが一番ハモっていたと感じたからです。
アカペラの醍醐味はやはりなんと言っても人の声だけでハモることと、その美しさだと思うんですが、ハモると一言で言ってもとても難しく、メンバーそれぞれの出す音の音程があっていることは勿論、ヘルツレベルの細かいピッチまであっていて、かつ声の明るさ、暗さ、みたいな音色も合っていて、かつ音の響かせ方、口の中とか体のどの部分で音を響かせるか、など、そういう一音一音の作り方が全てのメンバーでマッチしてようやく綺麗にハモることができるんですよね。それがアカペラの難しさであり楽しさでもあります。
「夜にワルツ」は各メンバーが難しい和音の連続でもそれを正確にできて、アカペラ力が本当に高かったので、それぞれ個性のあるバンドが熾烈な争いをする中でこのバンドが優勝したのが、順当にアカペラの力が評価されている感じがして、アカペラサークル出身者としてすごく嬉しかったです。


印象に残ったバンド②「エイトロー」

続いて国際基督教大学の「エイトロー」は、Pentatonixというアメリカのアカペラバンドを彷彿とさせるような、今っぽいDTMのような、力強くて電子音っぽい音も再現できるベース、ボイスパーカッションに、ICUっぽい国際色豊かなメンバーによる格好良くてインパクトのあるパフォーマンスに、ジェットコースターのような曲の展開が乗っている、すごく今っぽいアカペラグループで、パフォーマンス力はNo.1だったと思いました。
エイトローはまさにDTM時代の今時アカペラバンドという感じなんですけど、それを支えているのが何と言ってもボイスパーカッションメンバーであるジェイさんの高度なパーカッションだと思っています。アカペラだとボイスパーカッションと言うことが多いんですけど、ジェイさんがやっているのはヒューマンビートボックス という方が正しいのかなとも思います。
ジェイさんはヒューマンビートボックス のアジア大会に日本代表として出場したこともあるみたいなんですけど、ヒューマンビートボックス というのは、アカペラとは違って一人でパーカッションの音はじめ色んな音を出して表現するジャンルです。なのでジェイさん自身、普通のアカペラのボイスパーカッションを越えて、ベース音や、電子音のような多彩な音を一人で出すことができるんですよね。それがエイトローのやっているような、格好いい洋楽中心の曲をDTMっぽいアレンジや世界観で表現できる大きな要因となっていると思います。
DTMっぽいアレンジでインパクトのある表現をするのにぴったりのメンバーが集まっていて、個性が光っていてすごく良いバンドだと思いました。


印象に残ったバンド③「リメリック」

「リメリック」はなんと言うか、このバンドだけ音楽がすごく玄人っぽいと思いました。他のバンドは学生ならではの青春感みたいなものがあるんですけど、このバンドは最初にハモネプに出場した2021年の時から玄人感があると思っていました。最初にハモネプに出場した2021年の大会のあとにスカウトされ、今ユニバーサルミュージックからメジャーデビューしているんですけど、それも納得するくらいプロっぽいアレンジと歌い方の表現ができる、音楽インテリバンド、という印象があります。選曲も洋楽が中心で、プロっぽいお洒落なバンドとして強い個性のあるバンドだと思っています。
誰が曲のアレンジしているのかはちょっと調べてみただけでは分からなかったのですが、アカペラは勿論音楽自体にかなり詳しいというか、色んな音楽を聴いてセンスを養ってきたメンバーがアレンジしているのではないかなと感じています。
今回のハモネプだと、決勝で披露していたエドシーランの『Shape of you』、アレンジが海外のプロアカペラグループのアレンジかと思うくらいでした。ぜひ沢山の方に聴いていただきたいです。

歌い回しや声質も玄人っぽいんですけど、特にリードボーカルをすることが多い女性メンバーのモナさんとさかりなさんのお二人の声や歌い方が印象的です。
モナさんは軽くて心地の良い声質で、歌い回しにかなり小技が効いていて、こなれた感じが格好いいです。さかりなさんは軽い声質のモナさんとは対照的で、かなり深い響きのある歌声で、すごく大人っぽく、シックな雰囲気があって素敵です。こんなに声のタイプが対照的なお二人なのに、ハモる時はしっかり一体感があるのもアカペラとしての技術が高くて流石だなと思いました。
リメリックのYouTubeチャンネルで演奏動画をいくつか見ていたら、The Real Groupというスウェーデンの大御所ジャズアカペラグループの『Words』という曲のカバーが上がっていて、ああ、この曲が好きな人が集まっているからこそのリメリックのアレンジやパフォーマンスなんだなと思って納得でした。

アカペラやっていない方は「リアルグループって何?Wordsって何?」と思うと思うのですが、アカペラサークルにいる人なら絶対に誰もが知っている、「この曲が歌えたら一人前」みたいな、特にジャズを歌うグループが目標にするようなグループと、その代表曲なんです。
私自身、アカペラサークルに入ったばかりの頃はアカペラというとハモネプしか知らなかったので、海外のプロアカペラグループは全然知らなかったのですが、サークルに入ってすぐに先輩から「アカペラやるならこの曲聴いとけプレイリスト」みたいなのをもらって、その中にこのリアルグループの『Words』も入っていて、何度も聞きました。難しい和音の連続で、お洒落で格好いい独特の雰囲気のある曲なんです。
リメリックがハモネプで披露した『Shep of you』冒頭の字ハモ、同じ歌詞をメンバー全員でハモるところなんかはリアルグループに通ずるものがあるなぁとすごく思いました。ハモネプでアカペラに興味を持った方は、ぜひリアルグループの『Words』も聴いてみてください!

毎年ハモネプ を見ていると、出場グループのレベルもどんどん上がっていますし、アカペラサークルの人数も昔に比べて増えているように感じるので、日本の中でアカペラ市場が少しずつ成長してきているな、というのを感じます。今後のハモネプでもどんなアカペラバンドの曲が聴けるのか、楽しみにしています!

この記事について、Radiotalkでお話ししている回はこちら
https://radiotalk.jp/talk/770883

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