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【チョコ編】グミチョコ読んでた青春を今すぐ肯定してくれ

『グミ・チョコレート・パイン』という本はご存知だろうか。
この本は大槻ケンヂによる
青春!自意識爆発小説である。

これは長編3部作である。
グミ・チョコレート・パインに分かれているため、順に追っていこうと思う。

最初のグミ編を前の記事で書いているので、そこから見てもらえればと思う。


次に、チョコ編について。

【あらすじ】
大橋賢三は黒所高校二年生。周囲のものたちを見返すために、友人のカワボン、タクオ、山之上らとノイズ・バンドを結成する。一方、胸も大きく黒所高校一の美人と評判の山口美甘子もまた、学校では「くだらない人たち」に合わせてふるまっているが、心の中では、自分には人とは違う何かがあるはずだと思っていた。賢三は名画座での偶然の出会いから秘かに想いをよせていたが、美甘子は映画監督の大林森にスカウトされ女優になることを決意し、学校を去ってしまう…。―賢三、カワボン、タクオ、山之上、そして美甘子。いまそれぞれが立つ、夢と希望と愛と青春の交差点!大槻ケンヂが熱く挑む、自伝的大河小説、感涙の第2弾。


***

「生きることってグミ・チョコレート・パインだと思うの」

(大槻,2000,p.9)

そう言った美甘子に敵わないと思いながらも、いつか美甘子に追いついてみせると心で思う賢三。
そして、いまはバンドすることで美甘子に少しでも追いつこうとする。
そんな矢先、美甘子のフルヌードが雑誌で発売される。
また、女優として映画にも出演することが決まる。
高校中で有名になり、先生にもバレてしまい、美甘子は高校を辞めることになる。
またしても賢三は美甘子に遅れをとることになってしまったのである。

美甘子がおどけて教室を去った後を賢三は追いかける。
美甘子と話すうちに、抱きしめたいという感情が湧いてきたが、そんな資格もないし、勇気もなかった。
結局一番伝えたかった言葉も言えず、別れることとなる。

それから賢三はバンド活動に力を入れていく。
美甘子に追いつく為にも急がなくてはならない。


***

中央線に乗って高円寺に集ったロックにいちゃんねえちゃん、劇団野郎にアングラ娘、自称天才、自称狂人……その他モロモロの、「自分には人と違った何かがあるのじゃないか」という曖昧模糊とした想いだけを存在証明の手段としている連中。彼らの多く……というよりそのほとんどが、結局のところ「自分には何もなかったのだ」という身もフタもない事実にやがて気づき、また中央線に乗って高円寺を去って行くのだ。

(大槻,2000,p.151-152)


曖昧模糊だっていいじゃないか。
根拠のない自信持ったっていいじゃないか。
認めてくれなくたっていいから、生きてたってことだけでもさ。
結局何もなかったなんて思いたくないな。
思いたくないよ。
これを読んでるアンタだって。
ばーか。


***

バンドが進むにつれて、バンド名が決まり、役割を決めることとなる。
タクオはオケ、カワボンはギター、山之上は詩と、着々と決まっていくなか、賢三は…

『オレは、一体何ができるのだろう?』
〔中略〕
『人と違った何か……それは必ず……絶対にオレの中にある。その発露の手始めとして、オレは同志たちとバンドを組んだ。そうだ。UFOを追いかけて太陽の彼方まで飛んでいった男の名を冠した「キャプテン・マンテル・ノーリターン」は、間違いなくオレの初めて手に入れた表現の場なのだ。山口美甘子に追いつくため、追いこすため、ぶっちぎって差をつけるための場を得たのだ……でも』
カワボンが言った。
「賢三は、何ができる?」
「うん、オレは……」
ーでは、オレは一体その場所で何ができるというのだ⁉︎

(大槻,2000,p.218-219)


やっとやることが決まったのに、自分は何ができるのか。
絶対に何かあると思っていたのに。


わかるぞ、賢三…
人とは違った何かがってなんなんだよ!
なんなんだよ!
ここが美甘子と賢三の違いなんだろうな。
美甘子への勝算なんてあるのだろうか。
また自己嫌悪マントに襲われそうだ。


***

賢三たちのバンドはライブハウスで演奏できることとなる。

来週の火曜、「人と違った何か」が本当に彼の中にあるのかどうか、試されるのだ。
賢三が「言うだけ番長」なのか。それとも本当に人と違う何かを持っているのか、そして、山口美甘子を追い抜く力があるのかどうか、ついに試される時が来たのだ。

(大槻,2000,p.220)


試されるとかできるだけ避けたいよね〜。
そういうとこよね。
やってみないと成功も失敗もないしね。
究極、やらないことが失敗だし、やること自体成功なのかもしれないね。


***

『通俗なバカ女、あくまでつまらない日常の延長に生きようとしているクソバカ女。オレは違う。オレはお前らとは違うんだ。俗世界から逃れるために、オレは試みているんだ。お前らの知らないことをオレは知っているんだ』
賢三は自分に言い聞かせるように、心の中で呟き続けた。
『お前ら知らないだろうブラッドベリを?知ってるか町田町蔵を?わからないだろう「狂い咲きサンダーロード」なんて?読んだことあるか「ドグラマグラ」を?オレは知ってる、オレは知ってるんだ、お前らパーマの知らないことをオレは知ってるんだ、オレは、オレは……』
しかしそれが何になる?
〔中略〕
結局、オレも認められたいだけなのだ。自分を人々にわかってもらいたいのだ。
〔中略〕
つまり、虚栄心を満たしたいのだ。
〔中略〕
人とは違った何かなんて大層なものじゃない。誰しもが思う「目立ちたい」という通俗な願いに、オレもすがりつきたいだけなのだ。

(大槻,2000,p.284-285)


〔中略〕には同級生のどうでもいい会話が投げかけられている。
そんなことも無視して賢三は己のことを考えているのである。


賢三が何もできない自分に気づいてしまった瞬間である。
自分のことなんて分析しちゃ駄目でしょ。
でも、他人を見下すのもあまりよろしくはない。

人間なんて承認欲求の塊でしょ。
マズローの欲求5段階説の上から2番目に、自己実現の欲求の前に満たさなきゃいけない欲求として、承認欲求があるのよ?
そりゃねぇ。
まあ、そこまでの欲求までを満たせたってことも認められていいことじゃない?
環境とかが大きいと思うけど、基本的な欲求まで満たせたこと、親とかに感謝しときな。

賢三はもしかしたら贅沢な悩みを抱えているのか?
ゆえに、自分も。

賢三は、自分の心にあったものがただの通俗な奴らとなんら変わりないと気づく。
絶望してしまう。
絶望させないでくれ。
ただでさえ世界に絶望してるんだ。
自分にまで絶望したら、何を頼りに生きるっていうんだ?
自我同一拡散してしまう。
どっかに飛んでっちゃった自我を全部集めるのは相当大変だろうなぁ。
誰かに手伝ってもらったって、それが本当に自分の落し物かどうかなんてわかんないでしょ。名前が書いてあれば別だけど。
せめてドラゴンボールみたいに何個集まったらとかあればいいのに。
条件、仮定が細かければ細かいほど、見つけるの早そうだなぁ。
あと、定義があれば一瞬だよなぁ。
収束しなさそうな思考だ。


***

賢三は全てに絶望し、あんなに頑なに守っていた美甘子でオナニーをしてしまいそうになる。
賢三はこのまま通俗な野郎のダメ人間で終わってしまうのか否か。

***


パイン編へ続く。


気になった方は是非に。↓

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【引用文献】
大槻ケンヂ(2000)「グミ・チョコレート・パイン チョコ編」(角川文庫)角川書店

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