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エピソード94 野槌(のづち)

94野槌(のづち)

野槌(のづち)は、日本に伝わる妖怪。

外見は蛇のようだが、胴は太く、頭部に口がある以外
は目も鼻もなく、ちょうど柄のない槌(つち)のよう
な形をしている。

深山に棲み子ウサギやリスを食べる。
時には人を喰うとされた。
近畿・中部・北陸・四国地方を中心に伝承されている
もので、シカを一飲みにする、転がってくる野槌に当
たると死ぬ、
野槌に見つけられただけでも病気を患ったり、高熱を
発して死ぬともいう。
昭和中期から未確認生物として知名度をたかめた
ツチノコは、野槌に用いられていた呼称のひとつ
(槌の子・土の子)だったが、昭和40年代以降はマス
メディアなどで多用された結果、野槌もツチノコの
別名として定着していった。


94野槌(のづち) オリジナルストーリー

時は江戸時代、江戸のはずれのさびれた酒場で二人の
男が酒を飲んでいた。

八平:
おい熊五郎聞いたか?将軍様より「のづち」って
生き物を捕まえた者には100両出すって言ってる
らしいぞ。

熊五郎:
おぉ、聞いた聞いた!なんでも蘭学者の話じゃのづち
を干して粉にして飲むと不老不死になるって話らしい
でもさ、今まで誰も捕まえたことがねえと言う話しな
のにどうして不老不死ってわかるんだ?
おかしくねえか?

八平:
そんなことはどうでもいいんだ。
捕まえれば100両手に入るんだぞ!100両だぞ!
そこで俺は考えたんだ、聞いた話ではのづちは酒が好
きらしい。
そこでだ、ここの親父に酒を酒樽ごと借りて、渋谷あ
たりの田舎に行けばきっといるはずだから酔わしてと
っ捕まえようて寸法よ。
どうだ一緒にやろうぜ。

こうして二人は酒場の主人に後で倍の代金にして返す
からと言って酒樽を借り、棒にぶら下げ二人でおっち
らえっちらこの時代、江戸の外れの渋谷の森に来てい
た。

熊五郎:
それにしても酒の匂いがたまらねえな~。
なあ八平少しぐらいなら飲んでもいいよな?

八平:
だめだ、だめだ!ここで二人で飲んじまったら落語の
話しにもならねえ。
それに飲んじまったら見張り出来ずに眠っちまうだろ
う。

こうして二人は森の中にいい感じの小屋を見つけ、
見える所に酒樽を置き小屋の中でのづちが匂いにつら
れて出てくるのを待った。
そして、日も暮れ暗くなると何かがやって来た。

八平:
どうした、何か出てきたのか!なんだのづちか?

熊五郎:
鹿でした。

その後ものづちは姿をあらわさず。真夜中になった。

八平:
も~、何も出てこね~じゃねえか!やめだ、やめだ。

熊五郎:
じゃじゃじゃ、あの酒飲んでもいいか?

こうして二人は樽の酒を飲み小屋で寝てしまった。

時は丑の刻、飲み過ぎて小便に起きた熊五郎が外に出
ると、酒樽の辺りからいびきが聞こえる、何だろうと
酒樽をのぞくと。
1尺ほどの長さのくせに太さは人のふくらはぎほども
ある蛇のようなモノがいびきをかいて寝ていた。

熊五郎はびっくりして横にあった蓋で樽を閉じた、
しかしそのまま寝てしまった。

八平:
おい、熊。おい、熊五郎!
外で寝ていると風邪ひくぞ。
しかも酒樽背にして本当にのん兵衛だな。

朝になり小屋にいた八平は外の熊五郎を起こした。
飛び起きた熊五郎は昨晩の事を八平に話して、もう
一度二人でそっと酒樽を覗き込んだ。

八平:
やったぞ、熊五郎!これで俺達は大金持ちだ!

こうして二人は渋谷の森から自分たちの町まで縄で
ぐるぐる巻きにした酒樽を持ち帰えった。

次の日、のづちを捕まえたとお奉行様の所に持参しよ
うと、八平は熊五郎の家に置いた酒樽を見に行った。

すると。

八平:
な、なんてこった!酒樽が開いてのづちいなくなって
るじゃねえか!どうなってるんだ?

すると奥の部屋から熊五郎の弟・亥之助が申し訳なさ
そうに出てきた。

亥之助:
八平さん、すいません。
この酒樽にのづちが入っていると思わなかったから、
昨晩匂いにつられて蓋開けて飲んでその場で寝ちまっ
たんです。
本当すいません。

八平:
なんだと~...。
しょうがねえな、元はと言えば酒好きの熊五郎のおか
げで捕まえたんだ。今回はあきらめよう。
それにしても本当に酒好きの兄弟だな、ハハハ。

この後、八平と熊五郎は何度かこの酒樽作戦をやって
みたが、二度とのづちは捕まえられなかった。 

今日も江戸の空は澄み切った青空だった。

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