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エピソード88 天狗

88天狗

天狗(てんぐ)は、日本の伝承に登場する神や妖怪と
もいわれる伝説上の生き物。
一般的に山伏の服装で赤ら顔で鼻が高く、翼があり空

中を飛翔するとされる。
元々天狗という言葉は中国において凶事を知らせる流
星を意味するものだった。
大気圏に突入し、地表近くまで落下した火球はしばし
ば空中で爆発し、大音響を発する。
この天体現象を、咆哮して天を駆け降りる犬の姿に見
立てている。
日本では、奈良時代から役小角より行われていた山岳
信仰と合わさって山伏が死後に転生し、魔界の一種と
して天狗道が定着した。
一方、民間では、山地を異界として、そこで起きる怪
異な現象を天狗の仕業と呼び、天狗を山の神と見なす
傾向が生まれた。

88天狗 オリジナルストーリー

高尾山の辺りに流れ星のようなものが落ちた、山の麓
の村の子、丑雄(うしお)は夜空を明るく照らし、き
らめきながら落ちていったモノに魅了された。

翌朝、丑雄はにぎりめしを二つにぎると、両親には何
も告げず山に向かった。
あの流れ星が落ちた高尾山に。

丑雄:
それにしても昨夜の流れ星は凄かったな~。
あんなの村の長老でさえ見たことないって言ってたな
~。
あんなに大きなモノだったんだ何か残ってるかもしれ
ないオイラが見つけ出してやるぞ!

丑雄は山道をどんどん上って行った。お日様が真上に
上ったころ、昨日の流れ星が落ちたと思われる場所に
たどり着いた。

かなり熱いモノが凄い勢いで落ちたようで、山の斜面
に大きなくぼみが出来ておりまわりの木々は焼け焦げ
ていた。

丑雄:
やったー、流れ星のあとを見つけたぞ!
ん~でも落ちた時にぜんぶもえてしまったのか、なん
にも残って無いな~。
しょうがないおにぎり食べたら帰ろう。
ん、まてよ...。ど、どうしよう、まったく帰りの道
が分からなくなってしまったぞ。

丑雄はこの山に一人で入ったことが無かったため迷子
になってしまっていた。丑雄は冷や汗をかきながら一
生懸命来た道を探した、でもわからない。

丑雄は石の上に座り込みうなだれた。

爺:
どうした坊主、腹でも痛いのか?

白い長い髭の小柄なお爺さんが声をかけてきた。
丑雄は迷子になったことを話した。

爺:
そうか、そうか、こんな山の中で迷子では、そりゃ~
心細いじゃろう。
ど~れ、それじゃワシが麓の村が見えるところまでお
前を連れて行ってやろう。ホホホホ。

こうしてお爺さんに道案内され丑雄は自分の村が見え
る所まで下りてきた。

丑雄:
ありがとうお爺さん!これで村に帰れるよ。
お礼というほどのものじゃないけど、さっき食べ損ね
てたおにぎり1個たべない?ねえ、一緒に食べよう。

こうして二人は村の見える丘でおにぎりを食べた。
丑雄は村でもこのお爺さんを見かけたことがなく、山
の中なのにかなり軽装なお爺さんの格好が気になった
が、それは聞かなかった。

爺:
ワシもちょうど腹が減っておったところじゃった、
ありがとう。坊主村まで気を付けて下りるんじゃぞ。

そう言ってお爺さんは来た道を帰って行った。

丑雄はお爺さんを見送った後、麓の村に向けて元気に
歩き出した。
しばらく行くと道の近くの木々が揺れた、そして大き
な松の木をなぎ倒しソレは出てきた。

丑雄が今まで一度も見たこともないモノ、
ソレは大蛇の体に足が4本生え頭が二つありそのうち
の一つには角が生え、もう一つには大きな牙が生えて
いた。

化物:
やっと少しは賢くなれそうな生き物に出会えたわ。
よしお前を食ってやるからそのまま震えていろよ。

丑雄は蛇に睨まれた蛙のように立ちすくみ動けないで
いた。
化物は目前に迫った。

その時、丑雄が来た道をすごい速さで下りてきたもの
があった。
それはあのお爺さんだった。

爺:
大丈夫か坊主!後ろでじっとしていろ。
ほう、お前はこの山に落ちてから手あたり次第回りの
生き物を取り込んだんだな。醜い姿になっておるぞ。

化物:
お前こそまだ生きていたのか!
前回来た時より800年、まだお前がここにいるとは
思わなかったよ。
かつてオレの一部だったお前がな。
さあ、本当の姿現せ!

化物はお爺さんを噛みつこうとした。しかしお爺さん
はそれをかわし空に舞い上がった。
宙に浮いたその姿は翼が生え赤い顔に長い鼻、体は
2mはある天狗になっていた。

天狗:
お前こそ前回、ワシに手痛く懲らしめられもう二度と
ここには来ないと思っておったが、それも忘れてしま
ったようだな。
どれ今度こそコテンパンにしてやるぞ!

こうして天狗と化物の戦いが始まった。
化物がその巨体と牙で天狗を攻めれば、天狗は突風と
雷で反撃した。
夕刻決着がついた天狗の雷が化物に直撃し黒焦げとな
った。

化物:
くそ~、またお前に邪魔されたか。
しかし覚えていろよ、次に来た時にはこの様にはいか
んぞ!!

そう言うと化物の体は真ん中から割け、火の玉のよう
なモノが飛び出し、空のかなたに飛んで行った。

丑雄:
天狗様、ありがとう!オイラだけじゃなく村も守って
くれたんだね。
本当にありがとうございます。

天狗:
いや礼にはおよばない、あいつは元はワシの一部なん
じゃ。
まあだから殺すこともままならんがな。
坊主、また会おうぞ。
そう、おにぎりうまかったぞ。

天狗も夕焼けの空に消えて行った。

それから30年、丑雄はこの村の村長になり近くの
神社に天狗の像を納めて代々大切に守っていった。

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