(加筆)「恋は雨上がりのように」の感想(ネタバレあり)

先日の記事でちょっとだけ感想を書いてみましたが、どうにも満足できない(文章能力の不足)ので、改めて今度は「恋は雨上がりのように」に絞って書いてみようと思います。ネタバレを含みますのでご注意ください。

え?漫画版の最終回は炎上してた?

なんとなくネットで「恋は雨上がりのように」を検索してみたら、何やら原作の最終回が炎上し、作者がブログを閉鎖するに至ったという情報をみつけました。個人的にこれは大変な名作だと思いますので残念です。炎上について考察しているサイトを拝見しましたが、そこで挙げられている理由(ネット上の意見のまとめ)は、私の感想とは方向性が全然違うものでした。私はこの物語を恋愛ものだとはとらえていないのです。おじさんが女子高生と恋仲になって「ひゃっほー!」って話ではないと解釈してます。

以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

そもそもテーマは何だ?

前回の「文学とは?」の記事で書いたように、私は作品についてそれぞれが持った感想に正否をつける国語のテストが大嫌いでした。この炎上問題はこの最終回の結末を「否」とする意見が、まるで正解のようになっているのが国語のテストのようで不快であるのと同時に、どのように解釈するか?作者の心情はどのようなものであったか?という問いの重要性も感じるのです。そう考えると国語のテストの意義に少し歩み寄れます。では、私が思うこの作品のテーマは?というと、「中年から見た若さの眩しさ」でしょうか。この物語の主人公は店長で、店長の心情の表現の手段として女子高生の橘さんが登場した。そのように解釈してます。

45歳、夢も希望も何もない。僕は空っぽの中年だ。

おそらくはこのセリフが最も重要で、夢も希望も何もなかった空っぽの中年が、夢や希望を思い出しちょっとだけ勇気をもてる(橘さんの羅生門の下人の解答に繋がるのかな?)お話。橘さんが17歳なのも重要で、作者はこのころが一番輝いていると感じているのでしょう。中年になり一度失った輝きを思い出す。店長の同級生で夢を実現し成功している作家も17歳の作家と出会い、触れ合うなかでいつの間にかできていた心の穴に気づき埋めていく。若さとか純粋さとか・・・眩しいんですよ。実際。恋愛とかそういう事じゃなくて失った自分なんですよ。最終話では散々引っ張った挙句、結ばれないのか!?部活に戻って終わり!?って感じで炎上したようですが、店長も橘さんも空っぽだった今までに中身が入った状態で次に進んだという状況であろうと思います。

伏線の回収がされていない?

炎上の原因のひとつとして、伏線が回収されずに投げっぱなしというのが挙げてありました。しかし、この物語は店長と橘さんだけで良い話で、他の登場人物についてはさほど重要ではないと思います。現実の生活のように周囲の人の動向は見えているけどその結末まで全部見届けることはないので、「なんかあっちでもあるみたいだね。」程度でよいでしょう。これは「中年と若者」の物語であり、恋愛はオマケ。若者同士の恋愛はただのBGM。

店長は大人

みな、年齢を重ねるといつの間にか自分の限界を知り、夢も希望も忘れてしまいます。そんな中、店長は17歳の橘さんと出会いました。ただ出会っただけであれば何事もなく終わる話ですので、17歳の女子高生に惚れられることに意味があるのです。店長は大人なので、だんだん気づいていたのでしょう。橘さんは陸上を諦めてできてしまった心の隙間を自分で埋めていたのだと。それをそのまま進んでしまってはいけないと。それであのラスト。橘さんが「また、ガーデン(バイト先のファミレス)で会いましょう」といったことへの店長の返事は何か言っている描写はあるもののセリフは書かれていません。その後、橘さんは店長への思いを吹っ切り陸上を再開するのですが、店長はなんといったのでしょうか・・・・。傷つけずにスッキリと吹っ切れる。そんな言葉を選べるなんてすばらしい・・・。

最終回後のふたり。

作者は「おっさんの事なんて忘れるよ」と言って、それがまた炎上の原因になったようですが、それでよいと思うのです。お互いに必要な時期に必要な出会いであった。それだけです。「橘さんは忘れて良いんだよ。」と、店長は言いました。そして自分は「きっとこの日を忘れない」と言いました。未来ある若者を自分への思いで縛りたくない。大切な存在であればあるほどそう思うでしょう。その後はそれぞれに自分の人生を歩んでいくのでしょうが、大切な思いとしてずっと心に残るのです。と、言うわけで恋愛の成就は問題ではなく、それぞれが自分の道を歩き出すというラストであることに私は心打たれたのでした。最高のラストだと思うんだけどなぁ。

(加筆分)勝手にテーマソング

アニメ版の主題歌は橘さん目線でそれはそれですごく良い曲でした。しかし、私は店長目線で見てましたので店長サイドの曲を探してみました。まぁ、絵柄とか物語とはしっくりこないのですが、店長の側で見ていると涙を禁じ得ない感じです。

1曲目ムーヴ:「君はステキ」   もう二度と感じることはできないと思っていたことを鮮明に思い出すことができたのではないでしょうか。

2曲目MIO(MIQ):「みえるだろうバイストンウェル」   若き日の思い、宝石箱は流れていった・・・。




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