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二つの太陽と一つの道

~テーマ~

相手の印象は自分の鏡となる。それぞれの立場で相手はどのように見えるのか?相反する二つの意見に触れ葛藤するルーキー野良犬が進む道は・・・・。

人の子の場合

「あ、またあいつがいる!」僕は思わず声をだした。人間を見ると激しく威嚇する野良犬がいるのだ。きっとこの辺りに住み着いているのだろう。汚いし怖いしで関わりたくないのだが、遭遇してしまったので僕もたまたま持っていた傘で身構える。もしも襲ってくるようなら容赦はしない。決して背を見せないようにジリジリと距離を詰めながら、犬のいない道へと回避する。姿が見えなくなってからも野良犬は吠え続ける。本当にあの犬が大嫌いだ。

なんとか難を逃れて帰宅すると、ちぎれんばかりの勢いで尻尾を振り、僕を出迎える犬がいる。足元にじゃれ付き前足でやさしく触れてくる。僕もこいつの頭をグシャグシャになるほど撫でてやる。犬と人でありながら奇妙な友情すら感じる。こいつがいなくなったらと思うと怖くなる。なんならもしもの時には僕が身代わりになっても良い。それほどに愛おしいのだ。

野良犬の場合

俺はずっと一人で生きてきた。誰も信用できない。警戒を怠らず常に疑ってきた。そのおかげで今日も生きている。さっきは人間がいたので思いっきり吠えてやった。人間は何か棒のようなものを持っている。どうやら俺をそれでぶったたくつもりのようだ。その人間はなんとなく犬のにおいもする。きっと別な犬を痛めつけてきたのだろう。許せねえ。ジリジリ近づいてくる・・・。あと3歩近づいてきたら俺も攻撃しなければならない。あと2歩・・・。1歩・・・・。飛びかかろうと思ったその瞬間に横の道に逃げていった。「2度と俺に近づくんじゃねぇ!」と姿が見えなくなってからもしばらく吠えてやった。人間なんてまったく信用できない。

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