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座敷わらしが、アドレスホッパー(address hopper)になったわけ ”飛び出し板(痛っ)ガールの出発”

前回までのあらすじ

座敷わらしのぼくは、小太郎ハウスにきたお客さんに刺激され、アドレスホッパーになって世界中を旅しようと考えた。

ぼくは、旅に出る前に過去を振り返り、ぼくを見た人が、伝説とおりの出世をしていなかったことを知った。

小太郎ハウスで開かれたフリーランスの講座で、ぼくは、自分自身を描いたアイコンを作った。

本編

アイコンを見たぼくは、ぼくじゃないと思いました。ぼくは、悲しくなって、教室を飛び出し、勢いあまって雨戸をぶち破り、外に転げ落ちてしまいました。雨戸には、ぼくの顔が転写されていました。

ぼくは、ぼくの姿をした雨戸の板を抱えて、縁側でぼ~っとしていました。

そこへ、小太郎ハウスに野菜を運んできた区長さんがやってきて、ぼくが写った雨戸の板を貸してほしいと頼みました。ぼくは、区長さんに雨戸の板を貸しました。

区長さんは、帰る途中、副区長さんの家に立ち寄って、

「副区長、いいものを見つけたぞ。うちの集落の真ん中をとおっている道じゃが、国道の抜け道として使うやつがおって、最近めっきり車の量が増えてきた。子どもたちが、細い路地から真ん中道に飛び出すとあぶないじゃろうし、この板を真ん中道の辻々に立てたらどうじゃろう。」

といって、ぼくの板を副区長さんに見せました。

「なんじゃこりゃ。ビックリしとるな。それに、痛そうな顔じゃわい。」

板に写った顔は、ぼくが雨戸にぶつかったときの顔なので、ビックリしたような、痛そうな顔をしています。それに、板の形は、ぼくが、雨戸をぶち破った時の形なので、ちょうど関西のある地方から流行りだした飛び出し坊やの姿に似ています。

ふたりは、真ん中道に出る路地の一番あぶなそうなの角にぼくの板を取り付けました。

「これで大丈夫、みんな減速して走るじゃろう。」

キーッ。車の急ブレーキの音を後にして、ふたりは帰って行きました。

数日たって、

ぼくが、いちこ先生にブログの作り方を習っていると、りょうすけ先生が、小太郎ハウスに駆け込んできました。

「大変だ。ユキちゃんの看板が、真ん中道に立ってる。車はみんなユキちゃんの看板の前で減速してる。そりゃ、あの顔みたら・・・、あっ、ごめん、気にしないで。」

ぼくは、じゅうぶん傷つきました。

そこに、区長さんと副区長さんが、10枚ほどの板と米や野菜をリヤカーに載せてやってきました。

「ユキちゃん、頼みごとをきいてくれんかね。前みたいに、この板に、お前さんの顔を描いてほしいんじゃ。この前借りた板、真ん中道に立てたら、みんな板の前をゆっくり走るようになったんじゃ。うちの集落の交通安全に一役かってくれんか。」

といって、ふたりは、ぼくの姿をした板を縁側に置きました。

ぼくは、

その板は、ぼくが描いたんじゃ・・・

というが早いか、りょうすけ先生が板を手にしたところに、いちこ先生、なおみ先生、まりこ先生が、ぼくの体をつかんで投げつけました。

バーン、

痛ッ

「一枚目。」

バーン、

痛ッ

「二枚目。」

10枚が出来上がり、りょうすけ先生が区長さんに手渡しました。かわりに、米と野菜が縁側に置かれました。

また数日がたち、

区長さんと副区長さんが20枚ほどの板と、今度は肉と卵をリヤカーに載せてやってきました。

ヤバッ

逃げようとしてもダメでした。また、りょうすけ先生が板を手にして、いちこ先生、なおみ先生、まりこ先生が、ぼくを投げつけました。

バーン、

痛ッ

「一枚目。」

20枚が出来上がり、りょうすけ先生が区長さんに手渡しました。かわりに、肉と卵が縁側に置かれました。

区長さんは、

「ユキちゃん、すまんね。あんたの板が評判になってね。それを道の駅の店長が聞きつけて、道の駅にも置いてみようということになったんじゃよ。」

翌日、

区長さんと副区長さんが、今度は軽トラで、白のT シャツや、手すき和紙、炭で焼いた板などを載せてやってきました。

ヤメロッ

遅かったです。

ぼくを転写したいろんなグッズができあがりました。

りょうすけ先生がtwitterで拡散しようとぼくにいいました。

ぼくは、うれしかったです。自分が作った記事をtwitterで発信できるなんて。アイコンはこの前作ったアイコンで、アカウントは、まあ、適当で。

ぼくは、ぼくが飛び出し坊やになったこと、ぼくの飛び出し坊やのおかげで車がゆっくり走るようになったこと、ぼくのグッズが道の駅で売られていることなどをツイートしました。

いちこ先生、なおみ先生、まり子先生、りょうすけ先生は、ぼくの記事をリツイートしました。

あっという間に、100いいね、250、500・・・いいねが付きました。

いちこ先生が、ぼくに

「そうだ。ユキちゃんに名前をつけなきゃ。なにがいいかな。」

というと、りょうすけ先生がすかさず、

「飛び出し板(痛っ)ガールにしよう。」

と、勝手に決めてしまいました。

で、ぼくは、飛び出し板(痛っ)ガールになりました。

ぼくは、男の子のつもりなんですが、まあいいか。

そして翌日、

区長さんと副区長さんが、今度は道の駅の店長さんといっしょに、大型トラックに乗ってやってきました。

「ユキ様、きのう作っていただいた作品は、すべて完売しました。店にある在庫で思いつくものを全部持ってきました。ここにある物を使って作品を作っていただけませんか。」

と、言い終わるが早いか、ぼくはつかまれて・・・。

それから、道の駅には、ぼくが写ったグッズが並び、すぐに完売する日が続きました。

しかし、この方法には限界がありました。どうしても一品生産になってしまうのです。

いろいろ試しましたが、ぼくが写ったグッズをコピーしても、ぼくは写りません。ぼくが直接、素材にぶつからないとぼくを転写できないのです

もちろん、ぼくのアイコンをコピーしてもいいんですが、ぼくのアイコンは、あのビックリしたような、痛そうな顔をしていないので面白くありません。

道の駅は、ここでしか買えないグッズが買える店として繁盛し、ついに、ぼくが写ったグッズをネット通販でも売り始めました。

飛び出し板(痛っ)ガールは、交通安全のために使うものなのに、ぼくの人気のせいで、かなり高く売られていました。この金額では、お金のない町では、とても買えません。

それなら、ぼくが、直接お金のない町に飛んでいって、ただで、飛び出し板(痛っ)ガールを作ればいいんだ。

飛び出し板(痛っ)ガールで、全国の子供たちを守るんだ。

翌朝、ぼくは、教室のiPadを借りて、全国の子供たちを守る旅に出かけました。

つづく

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