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そうだ、ヒッチハイク、しよう ⑫ 兵庫編


前回までのあらすじ
急な思いつきからヒッチハイクで全都道府県を回ることにした夕方由美子。
熊本を出発し、山口、岡山を制覇。四国では家出さんという頼もしい相棒と共に二人旅を繰り広げ、徳島までたどり着く。徳島の鳴門競艇場にてこれから淡路島に向かうという男性のヒッチハイクに成功し、いよいよ四国を脱出し本土へ戻る時がきていた。

大鳴門橋を渡り淡路島へ

車内からの景色を撮影できるのは助手席者の特権

「普段住んでるのは徳島なんだけどね。仕事の度に淡路島へ渡ってるんだ」
彼の仕事は特定の時間に淡路島へ行き、淡路島の数カ所に存在する機械のスイッチを切り替えることなのだという。
「まだ仕事の時間までは余裕があるし、淡路でどこか行きたいところはないかい?連れてってあげるよ」
と言われても急遽決まった淡路行き。何ならまだ何日かは徳島にいるだろうと思って予習を怠っていた為に、特に行きたいところも思いつかない。
「あー、そしたら昨日はネカフェ宿泊でシャワーしか浴びれなかったんで、ちょっとゆっくりお風呂に浸かったり、久しぶりにサウナで汗かいたりしたいですかね」
「OK、じゃあ俺もまだ行った事ないとこだけど、近くに温泉があるからそこに行こうか」

普通に二人で温泉を満喫し、男性は次のヒッチハイクを拾いやすそうな場所に私を降ろして、そのまま仕事に向かうらしい。
途中、淡路名産の玉ねぎにちなんだオニオンロードという大きな農道を通ったりしたが、うっかり写真を撮るのを忘れてしまったので、実は淡路島の写真が一枚もない。
「ここなら道も大きいし、車も見つかりやすいんじゃないかな」
そう言って降ろしてもらったのは高速の入り口に程近い道路。熊本を出発した日のことを思い出す。
「もし見つからなくっても、仕事の帰りにもう一度ここを通るから、もしまだここにいたら俺が拾ってあげるよ。笑」
「なるべくそうならないように頑張ります!ありがとうございました!」

およそ二週間ぶりに出番となるホワイトボード

去っていく車を見送った後、思い出したかのように実家に電話を入れる。
実は出発の日、「これから友達に会いに四国まで行ってくる。1〜2週間で帰るよ」とだけ言って家を出てきているので、そろそろ帰ってくる頃だと思われているのだ。(ヒッチハイクで行くとも言ってない)
「うん、四国には着いてるんだよ。でもちょっと都合で友達には会えなくって。そんで今は淡路島にいます。帰るのはもう少し先になりそうだけど、元気だから心配しないで」
それだけ言って電話を切り、少し深呼吸。緊張はしている。何せ初日以来、久しぶりのガチのヒッチハイクだ。
初日に2台の車をホワイトボードで拾った後は、3台目はミクちゃんに仕事のついでに乗せてもらい、4台目は大トラさんという元々の知り合いのトラックに乗せてもらい、5台目は家出さんと四国をぐるりと回った。6台目が先程私をここまで乗せてくれた車。
そして今、二日目からずっと出番のなかった(しかしずっと小脇に抱えて移動してきた)ホワイトボードでのガチヒッチハイクを求められているのである。

まあ今回は拾われなくても、さっきの男性が帰りに拾ってくれるという保険のおかげで少し気は楽である。せっかく淡路島まで来たことだし、淡路島の観光スポットなんかをスマホで調べながらゆっくり車を探して、拾われる前に淡路島で行きたい場所が見つかったら男性に連れてってもらうか、一旦徳島に戻って出直すでもいいかな、とそんな気持ちで神戸の文字を掲げたその瞬間
目の前で信号待ちの為に停車した車から、女性の声で「乗っていいよ!」のお声がかかった。待ち時間にしてほぼ1秒。ヒッチハイク最短記録である。


【ヒッチハイク7台目】 淡路島から神戸まで

「いや〜、完全に女の子やと思って乗せたわぁ。目ぇ合ってしもたしなぁ、これは乗せなアカン!って」
今回乗せてくれたのは女性二人組。高校生の息子の部活の試合を応援しに行った帰りだというママさん達だ。
「ほんで、声聞いたら男の子でしょ? え!?ってなったけど、もう乗せてもうたし、まあええか〜てな」
関西ノリ全開のお二人は奈良へと帰る途中だというのに、わざわざ一度高速を降りて神戸へ寄ってくれるという。
恐らく部活用の送迎バスで先に帰っているのだと思われる息子達に、渋滞と寄り道の為に帰りが遅れるという連絡を入れているのを見て、お腹を空かせて待っている子供達を想像し、私のせいですみませんと言うと「ええってええって。帰った後に子供にヒッチハイクの人乗せたんやで!って自慢するのが楽しみやわ」
なんていい人たちだろう

神戸市中央区の商店街

道中ひたすら明るく楽しい車内だった為、降りたあとの寂しさもひとしお。
「神戸は味噌だれで食べる餃子が美味しいで!お店も有名なとこがあったんやけど、場所忘れてもうた。ほな、この先も頑張ってな!」
お姉さん達の助言に従って餃子を求めて街を彷徨い歩くも、今まで一緒にいた家出さんがいないこともあって急激に一人旅が心細くなり、逃げるように快活に駆け込んだ。家出さんロスがやばい。
とりあえず誰かに会いたくなって仕事を募集するのだが、神戸が都会なせいかあまり上手くいかない。結局この晩はそのまま一人で眠ることとなった。


尼崎へ もちろん競艇のため

お天気はちょっとイマイチ
街の中心部にありながら豊かな緑と厳かな雰囲気を持つ生田神社

18日目。朝から生田神社に参拝。
なんでもこの生田神社は縁結びで有名らしいので、ここまでの良縁に感謝すると共に今後のヒッチハイクでのご縁を祈願することに。
他に神戸で行ってみたいような場所も見当たらなかったので、電車に乗って尼崎へと向かう。競艇場が私を待っている

尼崎競艇場
一人旅でははめ込み写真が撮れない

天気が悪く風が強いのもあって、4月ももう終わろうとしているのに結構な寒さ。
競艇場にさえ入ってしまえばこの寂しさも紛らわすことが出来るかと思ったのだが、舟券はかすりもしないし、観戦にも熱が入らずどうも集中できていない。
そんな状態でやっても楽しくないので競艇は早々に切り上げ、快活へと歩く道中で見かけたご飯屋にふらっと入ってそばめしを頼む。

神戸発祥のB級グルメ そばめし

店内にお客さんが私だけだったこともあり、店主のおじさんはデカいリュックを背負った私に興味を持ってくれてヒッチハイクの話やら雑談が盛り上がった。
店に入って来た時は最初女の子かと思ったよ、という会話の糸口も含めて私の望むパーフェクトコミュニケーション。
今日はこんな面白いお客さんが来たんだってネタにさせてもらうよ、と言われたのも嬉しかった。おかげでモヤモヤしていた気持ちが少し晴れた。

さらに道中、神田温泉という昔ながらの銭湯を見かけたのでこちらもぶらり立ち寄る。サウナもあってしっかり夜まで時間を潰せたのだが、こういう古い入浴施設は入場料は安いけれどドライヤーが課金式であることが多い。髪が長い私なんかは一回の課金じゃ到底乾かし切れずに二回、三回と課金していくうちに結局スーパー銭湯なんかと料金が変わらなくなってしまったりする。
因みに、記事を執筆しているまさに今気付いたのだが、この写真に写っている女の子三人組のうちの一人が制服としてスカートではなくズボンを選択している。いや、もしかしたら実は男の子なのかもしれないが、いずれにしても自己選択の出来るいい時代になったもんだな、と思う。

お風呂にも入ってさっぱりして、気分も少し前向きに。
夜は張り切って仕事をしようと意気込むが、なかなか見つからず。
夜中になってようやく一件決まって快活をチェックアウトしたのだが、これがなんとガセ。つまりはイタズラで、この界隈ではわりとよくある出来事で慣れているはずなのに、この旅に出てから初めて曝される人の悪意という奴にせっかく前向きになっていた心はポキリと音を立てて折れた。
快活に戻る気もしなかったので、半ばヤケクソになって尼崎から大阪に向かって真夜中の道を歩き出した。
時刻は深夜1時を回っていた。



今回の移動まとめと各県雑感

  • 鳴門(徳島)-淡路島(兵庫) ヒッチハイク 6台目

  • 淡路島-神戸(兵庫) ヒッチハイク 7台目

  • 神戸-尼崎(兵庫) 電車

兵庫県 (県庁所在地 神戸市)
四国を抜けて辿り着いた先は神戸。家出さんロスで結構メンタルがやられていてあまり観光する気持ちになれなかった。しかし兵庫は今回だけでなく、復路で再度リベンジを果たしているのでそちらにご期待ください。淡路を全然見て回ってないのは今でも正直ちょっと勿体ないと思う。
堪能した名物 生田神社、尼崎競艇、そばめし

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