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そうだ、ヒッチハイク、しよう㉑ 岩手編 前編


すばらしくてNICE CHOICE

道の駅でいざヒッチハイク開始

ヒッチハイク生活34日目。
朝から電車・バスを乗り継いで道の駅 協和 四季の森へ。
単純に秋田の中心地から交通機関を使って簡単に行けそうな道の駅ということでヒッチハイク地点に選んだのだが、到着して見てびっくり。この道の駅にはなんとグラウンドゴルフ場が併設されており、大会なのか練習なのかは知らないが、今日はそのグラウンドゴルフ場を目的にここに来ていると思しきスポーティなご老人方が大勢いた。

これはひょっとしたら早々に岩手からゴルフしに来ている老夫婦なんかに拾ってもらえるかもしれないな、なんて楽観視しながらホワイトボードに「盛岡」と書いて待つ事一時間。
いつもならたった一時間ぐらい待ったところで全然平気なのであるが、何がしんどいって、この協和という道の駅が完全禁煙なのである。
SAでも道の駅でも、今まで通って来た休憩所のほとんどは、それぞれの事情で車内で吸えない喫煙者の為に喫煙所が設けられていたものであるが、こういう場所で敷地内完全禁煙というのは中々珍しい。
車が見つからないことよりも煙草が吸えないことにイライラしながら待っていると、結局グラウンドゴルフとは一ミリも関係のないご夫婦が拾って下さった。

これから岩手に帰るところだったというご夫婦。奥さんの方が旅好きで元々バックパッカーだったということもあり、道中はお互いの海外旅行話で盛り上がる。
私が小さなリュック一つで東南アジアの安宿を巡りながら旅した話を心底楽しそうに聞いてくれた奥さんは、海外旅行大好き!といった感じで外向的なエネルギーに満ちた女性で、さっきホワイトボードを掲げてボーッとしてた私に「乗って行きますか〜?」声を掛けてくれたのも奥さんの方。
旦那さんは奥さんとは対照的に大人しい優しいタイプの男性で、口数は少ないけれど奥さんの意見は全肯定、といった感じで運転しているのは旦那さんだけれど、私を乗せて行くことを決めたのはきっと奥さんだろうなというのが察せられる。

因みにこちらのご夫婦、これまでにもヒッチハイカーを拾ったことが何度かあるらしく、最近拾った二人のヒッチハイカーのうち一人は無事に日本一周を達成して、もう一人は途中で挫折して帰ったらしい。
「でもこうやって貴方の話を聞いてると、貴方は多分”達成する側”っぽいよね。性格的に向いてる、っていうのも勿論あるだろうけど。旅をルールでガチガチに縛ってないのもいいよね。挫折しちゃった子は最初から結構いろんなルールで自分を縛りすぎちゃったし、野宿する為の準備をしっかりしてる癖に結局ホテルにばっかり泊まっちゃうような子だったから」
と私を評す奥様。
「そういえばこの二人はどっちもYoutubeで旅の様子を残してたけれど、貴方はYoutubeはやってないの?日本一周とかする子はみんなやってるものだと思ってたわ。こういう出会いは一期一会だけど、別れた後もYoutubeでその後を追いかけるのが楽しみなのよ。無事に日本一周できたかなって」
ヒッチハイクしていると色んな人たちに言われる、Youtubeやってないの?勿体ない!というお言葉。確かに今思えば勿体なかったかもしれない。映像で残せばこうやって文章で振り返るより遥かに楽だった気もする。

そんなこんなで車内で色んな話をした結果、信用してもらえたのだろう。このまま自宅に泊まって行って良いとまで言って下さった。
「え!良いんですか?ありがとうございます!お言葉に甘えさせて頂きます!」
という訳で盛岡駅まで送ってもらう予定を変更し、盛岡の隣町にあるご夫婦の自宅まで向かうことに。中二になる娘さんがいるとのことだったが、難しい年頃だろうにこんな知らない男が急に泊まりに来て本当に平気なのだろうか。


感謝(驚)

道中で寄り道して買い物をしたりしながら車はご夫婦の自宅へ到着。オートロック完備の綺麗なマンションで、家に入る段階になって「そういえば名前まだ聞いてなかったわね」と言われ、今更ながら怪しいものではないことを証明する為にも身分証など見せながら名乗る。
秋田で拾ってくれた沖縄の夫婦もそうだが、出会ったばかりの名前も知らないような間柄の人間に対してお小遣いをくれたり家に泊めてくれたりといった親切をしてくれる人たちを見ると、信用は単に時間だけで築くものではないんだな、と思う。

学校が終わる時間になったので、いよいよ娘さんとご対面。帰ってきたらそのまま水泳の習い事の為にプールに送っていくというので、そのタイミングで顔合わせしておいて、とのことだった。
微妙なお年頃の女の子に挨拶ということで正直かなり緊張していたのだが、いざ会ってみると全然向こうは気にしてなくて、ヒッチハイクの人が泊まったり、外国人のホストファミリーしたりして家に知らない人が泊まることには慣れてるんで〜と言って笑った中二の女の子。彼女は将来は大物になるな、と思った。

娘ちゃんは水泳の習い事、旦那さんはそれが終わるのを待つ間に散髪に行ってくるとのことで、自宅で奥さんと二人きりで少し話をする時間ができた。
私の母親が離婚して家から出て行って数年、今度はその父親がいきなり再婚して実家には知らない女が一緒に住んでいる状態なんだという話は車内でしていたのだが、奥さんも両親にはあまり恵まれなかったらしい
彼女の母親は一回り以上歳下の旦那と結婚したものの、旦那の母親に反対されて離婚。子供である奥さんを連れて一人になり、まだ小学生である彼女を一人置いて数日家に帰らなかったりと、中々問題の多い家庭だったのだという。
「生きてるうちは仲良くできなかったから、せめてあの世では仲良くしたいと思ってね。私が死んだ時に一緒の墓に入れるようにって思ってるの」
そう言って寂しそうに母親の遺影の横に置いてある遺骨の箱にそっと触れるのを見て、少し涙が出そうになった。
「お互い、親には苦労させられてるもの同士、そして旅が好きなもの同士、こうして巡り逢えたのも何かの縁よねぇ。本当にウチを第二の家だと思ってゆっくりくつろいで行ってね」

こんなん泣いちゃうほど嬉しいに決まってる

誰かと食卓を囲むのなんて何年ぶりだろうか。実家にいても一人で食事をしてばかりの私がこんな風に家族の団欒に溶け込んでいるなんて。
しかも遠くから来た私の為にわざわざ郷土料理や珍しい食べ物でおもてなししてくれる歓迎っぷり。写真には写っていないが、こっちの郷土料理であるせんべい汁も作ってもらった。最も興味を惹かれたのは東北名物のホヤ。熊本では中々お目にかかれない代物である。食べてみると口の中いっぱいに癖のある苦味が広がる。
うーーーん。。。お世辞にも美味しい、とは言えないけれど、不味いと一刀両断にすることもできない不思議な深みがある。どうやらビールのつまみにすれば最強に美味しいらしいのだが、私の舌はまだそこまで大人にはなりきっていなかったようである。

因みに岩手名物の食事といえば、わんこそば、盛岡冷麺、盛岡じゃじゃ麺の三大麺であるのだが、大食いでもないし辛いのも好きではない私は結局三大麺を華麗にスルー。
盛岡の家庭で出して貰った郷土料理に勝る名物なんて無いのである。
面白かったのが盛岡冷麺の話で、ここ盛岡では焼肉屋には必ず冷麺がセットになっており、看板にも焼肉・冷麺と並んで書いてある店がほとんどだ。そして盛岡市民は焼肉屋に冷麺を食べに行く。焼肉屋に行って焼肉を食べないこともあるのだそう。他県民には信じられない話である。

食事も終えて初めて娘ちゃんとゆっくり話す機会も貰えた。何でも彼女はディズニー狂らしく、どこか海外に行きたい母親、ディズニーがあるなら良いよと言う娘、黙ってついて来る父親、というのがこの家庭の旅行の構図。
将来はディズニーランドで働く事を夢見ている娘ちゃん。その尽きない愛とこの刺激だらけの環境があれば絶対その夢は叶うと思う。頑張って!

普段はみんなで一つの部屋で川の字になって寝ていると言っていたので、まさか私もそこに混ざるのかと思いきや、物置を個室として使わせて貰えた。さすがにね。
寝る前に「明日は盛岡まで足を伸ばして観光をする日にしようと思います」と伝えたら「帰りは何時頃になりそう?晩ご飯には何が食べたい?」と聞かれ、もう一泊するのが確定。なんて優しい家族なんだろう。熊本の実家に加えて、遠い岩手にもう一つの帰る家ができたような気がして、とても暖かい気持ちになりながら就寝。



おまけ ここまでの移動まとめ

  • 秋田市-道の駅 協和 バス電車

  • 協和-盛岡(岩手) ヒッチハイク(14台目)


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