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そうだ、ヒッチハイク、しよう⑳ 秋田編


ガソリンの揺れ方

ヒッチハイク生活32日目。
昨日はシャワーを浴びる気力も無いまま疲れ果てて眠ってしまっていたので、朝から近くの温泉へ行ってさっぱり。人の少ない時間帯にゆっくり湯船に浸かったりサウナを堪能したりしていると、贅沢な時間を過ごしているなあと実感する。
丁寧に髪を乾かして喫煙所でタバコを吸いながらスマホを確認したら一通のメールが入っていた。そう言えば昨日の夜に秋田での仕事を募集したのだが、メールが全然来なかった為にそのまま放置して忘れてしまっていた。
うーん、どうしようかな。
日中の仕事は正直いってあまり気が進まない。しかし北海道で全然仕事をしなかったのもあって財布が少し心許なくなって来た為に、一念発起しておよそ一週間ぶりに働くことに。
とは言え、秋田観光を疎かにもしたく無いので、これから観光に行く予定の千秋公園を待ち合わせ場所に指定。これこそ私がここまでに培って来た、観光と仕事とを両立させる為の旅のスキルだ。

秋田市指定名勝、千秋公園

秋田駅のすぐ傍にある千秋公園は、ここ秋田にあった久保田城跡に作られた公園でその景観の良さはこの写真からもお分かり頂けるだろう。
待ち合わせの時間をわざわざ一時間後にして貰ったので、それまで公園をゆっくり散策して過ごす。

千秋公園内にある彌高神社

これから会う予定の相手から、自分は見た目に自信がないから、もし会って見て無理そうだったらしなくて大丈夫、とメールが来て頭の中が?でいっぱいになる。
いや、お金を貰う側の私がそれを言うならまだしも、払う側の人からそんな気を遣われたのは初めてのことで、お金と言う前提条件があっても自分の見た目に負い目を感じるなんてよっぽど醜男なのかしら。実は相手がキモければキモい程に性的には興奮してしまう性質なのでちょっと期待してしまう。
ところがどっこい、現れたのはそんな期待を裏切る全然普通の男性。ただ卑屈なだけかよ!
掲示板で本当に会えるもんなんだなあ、としきりに感動しているその男性(きっと今まで色々騙されて来たのでしょう)の車に乗ってホテルへ向かうことに。

男性は見た目も本人が気にしている程悪くは無いし会話も普通に上手な人で、よくよく話を聞いてみると、男性は秋田の人間ではなく仙台から出張で来ているらしい。
しかもちょうど明後日に仙台へ帰るらしいので、これはチャンスだと思った私は彼に対して、秋田から仙台へ真っ直ぐ帰るのではなく、私を乗せて盛岡を経由して仙台に帰るルートを提案。
一人で寂しく車を運転して帰るよりも、私を乗せて行った方が楽しい話が出来るので退屈させないし、さらに道中で秋扇湖や田沢湖と言った綺麗な湖を観光も出来るので非常にお得であると言うことを熱心にプレゼンテーションしていると、キミ、面白いねと言われて交渉成立。
人は、面白いと思われればそれでもう勝ちなのである。


3104丁目のDANCE HALLに足を向けろ

と言う訳で、明後日には盛岡へ移動することが決定。
しかも秋田の外れにあって車無しではなかなか観光に行くのが難しい秋扇湖にも行けるとなると、我ながら完璧な秋田旅行プランが出来たなと満足していた。

快活にチェックインだけ済ませて荷物を置いて、夜は秋田の街をブラブラ。
しかし気温の低い東北のお国柄だろうか、夜の街はあまり活気がなく、お店も早めに閉まってしまう。
そんな中でどうにか秋田の食べ物を頂く為、灯の少ない道を歩き続けようやく見つけた郷土料理店。
そこには秋田名物を取り揃えた郷土料理セットという、まるで私の為に用意されたかのような観光客にうってつけのメニューがあった。

秋田郷土料理満喫セット

まず秋田と言えばコレ、きりたんぽ。潰してお餅のようにしたうるち米を棒に巻きつけて焼いたもので、鍋に入れてきりたんぽ鍋にすることもあるが今回はこうして味噌をつけて頂く。美味しい!
続いてはハタハタの天ぷら。秋田では欠かせない魚として有名らしいのだが、東北とは真逆に位置する九州民にはなかなか縁のないハタハタ。魚の好き嫌いが結構激しい私は恐る恐る口に運んだのだが、、、美味しい!!ハタハタ美味しい!!!

日本三大うどんの一つ、稲庭うどんは秋田が発祥

稲庭うどんはまあ普通でした。

ヒッチハイク生活33日目。
正直、秋田で観光したいところはあんまり見当たらなくて、千秋公園も見たし食べ物の目的も果たしてしまったので本来ならもう次に移動してもいいかな、という気分だったのだが、昨日の男性がきっと盛岡まで乗せてくれるはずなので今日一日をどうにか潰さなければならない。

という訳で駅前で偶々見かけて面白そうだと思った乙女デザイン展を観に秋田県美へ。
大正乙女デザインと言えば竹久夢二くらいしか知らない私でも普通に楽しめたが、全体の展示数がちょっと少ないなと感じた。青森で大ボリュームの庵野展に行った後だったから余計にそう感じたのかもしれない。
乙女展の展示よりもこの秋田県美に常設してある藤田嗣治の巨大な絵画が圧巻で一番印象に残っている。そう、鑑定団でよく見るレオナール藤田だ。

秋田城跡
秋田県護国神社

美術館で思ったよりも時間が潰せなかったので、そのまま秋田城跡や護国神社を見に行くことに。
秋田城は今までの戦国時代のお城とは違って奈良時代に建設されたもので、確かに復元された城門などもこれまでのお城とは趣が異なることが感じられる。
確かに観光地としては少し地味で観光客の姿もほとんどなかったのだが、歩いて往復したせいもあって結構時間を潰すことが出来た。

因みにこのあたりから、大きなリュックを背負って歩き回ることに限界を感じ始めており、ネカフェをチェックアウトした後はパチンコ屋のロッカーに荷物を預けてから観光に出かけるというテクニックを編み出している。
客が大勢いる大型店なんかはあまり気にせずに荷物だけぶち込んで出かけられるのだが、客のいない寂れた店舗なんかに寄った場合は、ロッカーだけ借りるのが何だか申し訳ないので、ほんの気持ち程度でしかないが低価のスロットを少しだけ回してから出かけたりもする。
駅前にある高い時間制ロッカーに預けるよりも遥かに安く済むのでこの先も重宝するテクニックなのだが、結局パチ屋の熱気に飲み込まれてついつい長時間打ってしまい、駅前のロッカーに預ける以上の出費をしてしまったりするのであまりお勧めはできない。私のように、パチンコ屋に入っても打たずに出るという強い自制心を持った人間にだけ許された高度なテクニックなのである。

とまあこんな感じで観光も済ませた帰りのパチ屋でシンフォギアのスロと戯れて3時間ほど経過した時、昨日の男性からメールが。
事故を起こしてしまったので明日は一緒に行けなくなってしまったのだと言う。
私はこのような言を素直に信じるほどピュアでもなかったのだが、だからと言ってそれを詰める程野暮でもないので、体よく断られてしまったなあと落胆。この為に今日一日滞在したと言うのに!
他にも仕事や秋田在住の女装さんと会う話なんかのメールもちょいちょいあったのだが、なんだかんだで全部ダメになった。

青森から秋田まで乗せてくれた人は沖縄の夫婦だし、唯一ちゃんと会えた仕事の男性も仙台の人間だし、秋田の人にはここまでまだ一度もお世話になっていない。
因みにこれは次回のネタバレなのだが、秋田から岩手に向かう為のヒッチハイクで乗せてくれた人も秋田人ではない。
あれ?私もしかして秋田の人間と相性悪いのかも。

次回はこの旅の中でも最も心温まった県と言っても過言ではない岩手県へと突入。

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