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実際にあった“図書館強盗”の映画「アメリカン・アニマルズ」を見た

図書館にある古い本、プレミアがついて12億円で売れると知って強盗する男たちの物語。それが『アメリカン・アニマルズ』。

実話ベースじゃなくて、実話。ガチの強盗事件を描いた作品。映画というか、むしろ再現VTR。作中には強盗した本人たちも登場し、当時と現在の心境を含めて生の声を聞かせてくれる。

事実は小説より奇なりというけれど、本作を見ると「奇なり」どころじゃない、リアルすぎて下手なホラーなんかよりよっぽど怖い。

大学生となり、図書館の見学中に知ったプレミア本のことを悪友に話すところから物語は動き始める。12億円もの価値のある本が、言葉は悪いが「ゆるゆるの警備」で管理されている。

「これ、本気だしたらイケんじゃね?」

と思ってしまう気持ちは少しわかる。実際に盗むかどうかは別として、盗られてもおかしくない、と感じるほどの警備なのだから。(もちろん強盗はクソだけど)

日々つまらない(何も起きない、変わらない)生活を送っている主人公たちが、各々に葛藤などはあったにせよ、結局は刺激とお金を求めて流されていく。

「断固たる決意をもって盗む」と選択したわけではなく、「なんとなく盗めそう」から入ったからこその軸のブレがつぶさに感じ取れ、その程度の思いで進めてしまったからこそ出てくる気持ちの揺らぎっぷりが変な共感を起こさせる。

まるで自分が当事者になったような、強盗の一味として巻き込まれたような錯覚に陥るのだ。

「やめろ!」と思っていたはずが、いつの間にか助けてあげたい気持ちになり、「もっとこうしろ」と思う自分が出てくる。

冷静になって考えると、頭の悪い計画、行動、後始末しかないのだが、「あああ、こいつらにはこいつらの事情があって…情状酌量を…」などと願ってしまうから不思議である。

作中、本人たち、そしてその家族、関係者が聞かせてくれる生の声がリアルのスパイスになり、予想はつくものの、物語の結末を自分なりに祈ることだろう。

嬉々として話す者、泣きながら話す者、冷静に分析する者、そしてその誰もが最後に見せる後悔の表情。映画は二時間で終わるけれど、人生は終わらないし、どう続けて、続いているかも描かれている。

実話ベースのエンタメ作品ではなく、実話だけど着地していないパターンでもない。とある "図書館強盗" を描いた、新しい映画がそこにあった。

『アメリカン・アニマルズ』
5/17(金)公開
配給:ファントム・フィルム
公式サイト
(C)AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal Pictures Limited 2018

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