ちょっと変わった男子に見られたかった
高校生のころ、すごくモテたかった。かっこいいと思われたかったし、他の男子とは一味違うと思われたくて必死だった。
石川県の田舎高校生だった僕は、どうすれば一味違った男子として女子に認識してもらえるのかを考えた結果、新発売の商品をいち早く導入することに着地したのである。
とは言えアルバイトが禁止されている学校で、お小遣いにも限りがあるので、テレビCMされたばかりのお菓子やジュース買うことしかできなかったが。
しかし、これが意外と効果的だった。朝一コンビニに寄ってから登校し、発売されたばかりのジュースを飲んでいると自然と女子が気にしてくれるものである。
ここでめちゃくちゃ気をつけたいことは、「僕はいま、新発売のジュースを飲んでいますよ〜」感や、「新発売のジュースを飲んでいることを悟られないようにしています」感を出さないこと。ようするに、購買で売っているいつもの紙パックジュースを飲んでいる自然体をかもし出すことである。
実際には思いっきりドヤ顔で、イキってる感も出ていたと思うけれど、あの時それを出したらダメだと気がついていただけでも自分で自分を褒めてあげたい。
その甲斐あったのかなかったのかは分からないが、夏の暑い日なんかには、登校してきたばかりの女子から「ひとくちちょうだい」なんてミラクルも起きたりしたりして。い、いま俺、かかか、間接キッスしてる〜感をどうにか鼻を膨らませる程度のバレでおさえていたのだ。
ここまでだけ読むと「なんだ、ただの自慢か」と思われるかもしれないが、こんなことをしていると当然ながら目をつけられるものである。
そう、ヤンキーに。
どんな学校にも1人はいるヤンキー。授業や先生の話にはまったく耳を傾けないし、1ミリも理解を示さないにもかかわらず、クラスのワーキャーしている男女のことにはものすごく敏感だからタチが悪い。
新発売ドリンクで間接キッスしながら青春を思っきり謳歌している俺たち。心のモヤモヤをどこにぶつけていいかわからずに、夜の校舎窓ガラス壊してまわるヤンキー。実は大きな違いはなくて、ワーキャーかオラァの違いだけにもかかわらず、暴力表現の対象を俺にしてしまうのはどうかと思う、本当に。
というわけで、下校中にヤンキーに呼び出されて説教(とヤンキーは思ってる)をくらい、時には体罰(とヤンキーは都合よく解釈してる)をくらうことになるのだ。
ヤンキーの中だけにある超えてはいけないラインを見極めつつ、だけれど青春は謳歌したい。そんなジレンマで終わった高校生活だったけれど、もしも戻れるものなら喜んで戻りたい。記憶はそのままで。
そして、あの子の前だけでは新発売ジュースを飲むなよと伝えるのだ。
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