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「顧客が欲するもの」ではなく、「顧客の為になるもの」を売らないといけない

近江商人の「商売の心得十訓」というものには、こういう言葉があるそうです。

「無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ」

この言葉は松下幸之助さんも使われていたそうですが、特にCodeCampのような教育業界では強くそう感じる部分があります。

「客の好むものも売るな」とは?

教育サービスにおいて顧客は基本的に初心者の方です(法人研修を除く)。
初心者の方は当然ですが、これから習得しようとしているスキルやそのスキルを活かして就職される業界に対して、必ずしも正しい知識を持ち合わせていません。

例えば、プログラミング教育に関して言えば、「年収の高いプログラミング言語」「プログラミング言語 人気ランキング」などの影響で習得される言語を決定される方が多くいらっしゃいます。

「Pythonが人気らしいから、Pythonをやりたい!」とか「JavaやPHPよりもRubyの方が年収が高いらしいから、Rubyだ!」とか、これ自体は決して間違いではないんですが、その人の目的と状況によっては必ずしも最適解ではない可能性があります

顧客の為に「正しい情報」を伝える

IT業界にいらっしゃる方であればご存知の事だとは思いますが、Pythonは確かに人気です。流行りのデータサイエンス、AI開発からWeb開発まで用途は多様ですし、入門用の言語としても良い選択肢の一つです。

しかし、初心者がPythonで開発できる会社が日本にどれくらいあるかと言えば、Java、PHP、Rubyなどに比べ現時点でPythonを使っている会社は少ないと思います。もちろん入社後に別の言語を学べば良いのですが、スクールで学んだ言語でそのまま開発したいなら、就職先の選択肢は他の言語よりも少なくなります。(もちろんPythonを使う会社・領域に行きたいならPythonをやるべきです。)

年収ランキングも「言語としての利用者数が少ない」「使っている企業・領域が限定的」な言語の方が高くなる傾向があります。

例えば、Rubyという言語は弊社も含めスタートアップ企業や創業10年程度のWebサービス企業で多く利用されています。例外はありますが、上記のような企業は資金調達をしていたり、短期間で上場していたりする企業が多く、受託開発系の企業よりも年収が高いです。

逆にJavaやPHPなどの言語はもちろん上場企業でも多く利用されていますが、小規模な開発会社などでも利用されていますので、言語利用者全体の平均年収で考えるとRubyよりも下がります。

これだけ見れば、「じゃあ年収高いWebサービス企業に行くためにJavaよりもRuby学んだ方が良いんだね!」という結論にもなりそうなのですが、しかし、Webサービス企業の求人数とSierなどの受託開発企業の求人数を比べると、受託開発系企業の求人数の方が数倍以上に多いです。

なので、平均年収は高いけど狭き門にチャレンジしたいのか、比較的間口が広いところを狙いたいのかで選ぶプログラミング言語も変わってきます。
(もちろんこれはあくまで平均ですので高年収なJavaエンジニアもたくさんいますし、そこまで年収の高くないRubyエンジニアもいると思います。)

「客の為になるものを売れ」とは?

「売る」ということだけを考えれば、Pythonをやりたい人はPythonを売り、Rubyをやりたい人にはRubyを売り、Javaをやりたい人にはJavaを売った方が売りやすいです。それぞれをオススメする理由もいくらでも考えることができます。

しかし、教育業界において、顧客は初心者の方です。
初心者が自ら取得した情報で考えたことは間違っていることもありますし、その人が「本当に実現したいこと」から考えると、もっと適切な方法があるかもしれません。

極端に言えば、プログラミング言語を一から学ぶのではなく外注して開発する方法を選んだ方が良さそうな人もいますし、開発したいもの次第ではWixペライチなどのプログラミング無しで開発できるサービスを使えば充分な人もいます。

教育業界は特に提供者側の「良心」が問われる業界だと思います。相手は初心者だから上手い事を言って売るというのがいくらでも出来ます。

プログラミングに限らず英語でもMBAでも、それを学んだから「人生、楽勝」なんてあり得ないですし、むしろ学んでからが「本当のスタート」とも言えます。(楽して稼げる的な事を言うべきではない。)

だからこそ、顧客が欲するものが仮に顧客の(将来の)為にならないものであれば、あえて別の提案をしていく必要があると思います。

分かっているつもりでも時として忘れてしまうこともあるかもしれませんので、肝に命じておきたいと考え、今回の記事を書いてみました。



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