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ガーデンテクニカルシリーズ論考①(飛石・敷石作法編)

用水を研究している者として用水以外にも用水に関係のありそうなことを勉強した方が良いのでは?という思いが芽生えてきたので、ここに記していこうと思います。(個人の感想なので論考としての良し悪しはあしからず。)

用水周辺には用水を引き込んだお庭がたくさんあるということで
第一弾目は・・・


ガーデンテクニカルシリーズ①「飛石・敷石作法」!! 龍居庭園研究所=編

昨今、庭づくりの業界に「ガーデニング」という言葉が流行だし、「庭づくり」という言葉が影を薄めている。また、時代と共に庭自体も徐々に面積を減らされ、もはや玄関に行くまでの通路しか残らない状況であると著者は嘆いている。

一般の人には格式の高い日本庭園から「ガーデニング」という言葉により、一般家庭でも植物を育て、玄関を緑に彩る傾向自体、私は良い傾向だとは思うが、反対に日本のお庭文化が失われていくような気がする。玄関に主婦が緑を彩る間隔で日本庭園が再考されていくと次の日本のお庭文化として面白そうな気がする。例えば、玄関に大きな岩があってその上に子供の自転車が置いてあるとか・・・。苔まみれのドアとか・・・というか、庭が小さくなるなら日本庭園に屋根をかぶせれば・・・。

そろそろふざけていないで本書の論考(自分の感じた事)にいきます。

ガーデンテクニカルシリーズ①飛石・敷石作法 p.12より

本書は初め、日本各地の日本庭園の写真が載っています。その中でも
石川県にある「亅丶庵(ぼうてんあん)」が気に入りました。写真の建築近くでは方形の切石を用いて、離れるにしたがって自然の飛石へと移行する露地の眺め。場所、雰囲気に合わせて石を変化させている事が分かる。センスがいいなと個人的に思う部分は石を直列に配置するのではなく、斜めに配置している事である。庭を進む人は石の上を体を斜めに向けて歩くことになる。そうすると、お庭に植えている樹木を見る角度が変わるのである。石を歩かないという人以外は上記のような風情ある体験をするのである。また、なぜ、石が置いてあると人は石の上を通りたくなるのか。はたまた、石の上を通ってしまうのか。石の上を通らずに庭を探索すればいいのに。やはり、石を通る。それだけ敷石・飛石は不思議な魅力を持っている。

桂離宮

ガーデンテクニカルシリーズ①飛石・敷石作法 p.34より

次に本書は桂離宮の敷石について言及している。桂離宮の御幸門と御殿を結ぶ御幸道の敷石は「霰こぼし」と呼ばれ、濃い青色のチャート系の小石を丹念に敷き詰めたディティールをしており、御幸道の中央部分を降水の水はけを考えて、少し高くしている。また、小石の隙間には苔が生えており、濃い青色の小石と合わさり、綺麗な敷石を演出している。

この桂離宮の庭園を設計したのが江戸時代を代表する作庭家・小堀遠州に師事した僧・玉淵坊と言われているため、遠州好みのディティールが様々な所で見られる。
例えば、飛石の目地の間隔を奥に行くにつれ徐々に空けていたり、「くの字」のような飛石を使うのが遠州流である。

様々な石

石と言ってもそれぞれの石にも名前があり、地方により使われている石が異なる。
例えば、北海道では飛石に使われるような平石は種類不足だが、庭石の種類は豊富です。

https://ainu-niwaishi.com/?page_id=63

北海道日高市で採れる「日高石」。赤みがかかったきれいな石です。

https://www.masuki-gardenart.com/SHOP/m-kur1707-008.html

反対に同じ産地から採れる「日高青石」は青色のきれいな石です。私はこの石を気に入りました。「日高石・日高青石」共にアイヌの神々が宿るとされ、災厄や霊的などのマイナス要素から守護してくれると言われています。

https://senseki.org/about/

調べていくと広島県に各地の名産の石を集めた庭園「仙石庭園」があると分かりました。近々行ってみたいですね。

また、地方により庭園の流派があり、滋賀県では文化7年に滋賀県長浜市勝町に生まれた勝元宗益により「鈍穴流」が主流となっている。


https://oniwa.garden/tag/鈍穴流/

鈍穴流の特徴としては立ち止まって周囲を見る場所の石の大きさは大きく、立ち止まることなく歩いていく場所の石は小さい。同じ石、同じ色の石を連続して使うことがないのが特徴である。

後は気になった石の名前を記録のために記しておきます。

https://rakusai-garden.com/blog/44174

丹波鞍馬石のヘギ石

http://blog.livedoor.jp/sugitasekizai/archives/83645064.html

六方石


http://www.theisiya.com/sub2.html

羊蹄山石 北海道産(沓脱石)


https://www.nakanishienzai.com/product/31/9275

臼石


https://suisekij.jpn.org/maguro.php

真黒石

敷き方

敷石を敷く方法もたくさんの名称があり、布石敷き、綱代敷き、乱尺敷き、亀甲敷き、八角形敷き、氷裂敷き、岩石敷き・・・etc.

様々な敷き方があり、無限大であるが、石は一つとして同じ形がない。そのため、敷石は唯一無二といって過言ではない。つまり、敷石を作る際に「考えなければいけない」この石とこの石ならここの横に合わせられるなど。敷石、もっと言うと庭園には絶対的なルールがあるわけではなく、作者の感性に委ねられる部分が大きいと思う。例えば、「これなんかいいよね」「これおいしいよね」とか私たちも日常的に言葉にならない感性によって大部分を理解していることが多い。

この現象を説明するのは難しいが、世間では「センスが良い」という言葉で片付けられる。では、センスの意味は何だろうか。人それぞれの内面にある感覚的なもので、感じ方、理解の仕方、あるいは表現の仕方に現われ出るもの。(コトバンクより)と記されている。なるほど。上記で書いたことと大体同じことが出てくる。
では、作者が独りよがりな作品を作れば「センスが良いね」と褒められるわけではなく、他者が自分の感性を通し、その作品をみた時に共感できた場合に「センスが良い」と褒められるわけで、何か他者の記憶の奥底に眠る感動した出来事を呼び起こすことが大事な気がする。かと言って、誰にでも理解の出来るいわゆる「普通」のものを作った所で「センスが良い」と言われることはなく、「普通だね」と言われてしまう。難しい・・・。

道具

上記にて、石は唯一無二と言ったが、ある程度、道具を使うことで同じ加工にできる。

ガーデンテクニカルシリーズ①飛石・敷石作法 p.134より

本書では、様々な道具が紹介されているが、「コヤスケ」に絞って紹介する。
コヤスケの使い方は石に印をつけた場所にコヤスケを付けて、コヤスケの後ろから石筒で叩いて石を割ります。

石は道具を使えば「削る」のではなく、「割る」ことができる。これは、一見、野蛮的である。削って石を加工して、きれいな彫刻を作ることもできるが、それは時間がかかるような気がする。割る行為は短期間で加工ができる。さらには「割った方の石」と「割られた方の石」もとは一つの石から二つの石が獲得できる。では、この一つから生まれた二つの石の片方は敷石に使われるが、もう片方はどこに使われるのか。はたまた、捨てられるのか。

それとも半分にちょうどなるように「割る」のが良いのかもしれない。


このように今まで文章を書いてきましたが、他にも様々な用水に関連しそうな事を
発信していきたいと思いますので、ぜひ読んでください。

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