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[文字起こし]いんよう!第49回【『フラジャイル』の感想】

最新回(2019年7月23日リリース)です。だって『フラジャイル』ですよ、奥さん!そして、私は残念ながら仕事で間に合わなかったのですが、同日、『フラジャイル』作画の恵三朗先生が衝撃の「22時から実況ツイします」という告知をされまして……!!あああ、同時再生で楽しみたかったああああ(涙)……というわけで、なるべく早く聞こえないファンにも恵先生の実況ツイが楽しめるように(きっとそちらは早々に、どなたかがtogetterとかにまとめてくださるだろうから)こちらも文字起こしを開始しました。

追記:私が「誰かがつぶやきをとうげったーにまとめてくれると信じてる」とつぶやいたところ、なんと今尾さんがその晩のうちにまとめてくださいました!圧倒的感謝……!!!(;人;)

(♪)
よう/『フラジャイル』を、ようやく読んだっていう話なんだけど。
いん/はいはいはい。
よう/まあ、いっちーは……何なら始まる前から推してたでしょ、全力で。
いん/ええ(笑)そうですね。推しましたよ、ええ。
よう/うん。で、なんか医療系のドラマということで、楽しく読んでたんだけど……
いん/はい。
よう/なんていうか、その……すごく面白いじゃん。ストーリーとかキャラクターも含めてさ。
いん/うんうん。
よう/なんか「このキャラクター、声優あてるとしたら誰かな」とか、そういう邪念で読んでたんだけど(笑)
いん/あははははは(笑)あ~、それ聞きたいですけどね。それはそれで、すごく聞きたい(笑)
よう/まあ、その話は後にしてもいいかと思ってるんだけどさ(笑)
いん/はいはい。
よう/「(声優が)決まらねえな~」とか思いながら読んでたんだけど……
いん/あっはっは(笑)なるほど。
よう/まあ、何ていうかさ、そういう……いわゆる「漫画としての面白さ」っていうこと以上に、いっちーが多分、読みながら色々感じていることが、あると思うんだけど……
いん/あ~、……なるほど。はいはい。
よう/俺は、割と表面的なところで読んでたから……。まあ、やっと俺も(最新巻まで)読んだので、「これは……この本を、いっちーが何を思って読んでんのかな?」っていうのをね、知りたいなと思って。
(1分16秒)

いん/ん~……あ~……。ん~っと、え~っとですね。どの……どの視点で話すかにもよって……(悩)
よう/(かぶせて)どっからでも、いいよ?
いん/もう、鬼のようにあるんですけど……。
よう/うん。
いん/多分、こういう時は何となく……「初心者向け」「中級者向け」「マニア向け」っていう風に(順番に)いくものかもしれないんですが……いきなり「最上級者向け」の話をするとですね。
よう/うん。


いん/あの……フラジャイルの取材をしている、つまり原作者の、草水(くさみず)さん。
よう/うん。
いん/あの人、正体不明なんですけど……あの~、医療業界のことをですね、かなりよく知っている人なんですよね、多分。

よう/……それは、「元から知っている」ということ? それとも「取材をすごく綿密にされる方」っていうこと?
いん/両方だと思うんですけど。
よう/両方なのね、ふ~ん。
いん/両方だと思います。そのココロはですね、「普通の医療関係者よりも、医療業界を広く見ている」気がするんですよ、僕は。
よう/ああ~、なるほどね。
いん/はい。
よう/そうかそうか、ふむ。
いん/で、これ、いきなりマニアックな話なんですけど……僕は、なかなかこの話をする機会がなくて、もう、手ぐすね引いて待ってたんですけど……
よう/ふむ。

いん/あのですね。1回、フラジャイルの最初の方のエピソードで、あの……虐待、というか、「ネグレクトが背景にあった回」が、あったんですよね。
よう/ほう。
いん/「お母さんが子供をほっぽっといて逃げちゃう」っていうストーリー。まぁ、それが本筋(ネタバレ)に関わるかどうかっていったら、ちょっとだけ関わっちゃうんですけど、まあここまでは言っても大丈夫だと思うんで、言うんですけど……。
よう/うん。

いん/その回の「結論」というか、「漫画の落としどころ」を見た時に、医療関係者から結構、クレームが入ったんですよ。
よう/あー、そうなんだ。
いん/「実際の現場では、こういう時はこういう対処をすべきだ」みたいな声が出てきたんですよ。
よう/ああ、「登場人物たちがあまり適切でない対応をしているから、それを作品として世に送り出すのはいかがなものか」と。そういうタイプのクレームが入ったってことね。
いん/はい。まあ、まずは例えばそういう声があったわけです。
よう/ふむふむ。

いん/で、さらに、またちょっと別の回で……。もうこれは、完全に伏せてしまいますが、「ある病気の診断に対して、(漫画の中の)ある医者たちの診断の順序が、あまりよろしくない」と。
よう/はいはい。
いん/「適切な方法で診療をしていない」というか、「これはあり得ない」みたいなクレームが入ったことが、あったんですよ。
よう/うむ。
(3分41秒)

いん/で。あのー、僕はですね、そのクレームを目にした時に、非常に腹が立ちまして。
よう/ほう(笑)
いん/「僕の好きな漫画の設定の、重箱の隅をつつくようなことをやめろ」と思ってですね(笑)
よう/うん、いきなり主観的な話になって……いや、いいと思うよ(笑)
いん/いいですか?あはははは(笑)「このやろう!」「理論武装してなんとか反論できないかな?」と思って、いろいろ調べたんですよ。
よう/うん。
いん/それも結構、仕事をほっぽり出して、かなり調べたんですけど……年単位にわたって。
よう/ほう。
(4分10秒)

いん/そしたらですね、いろいろわかってきたんですけど……。
あの、「不適切な医療者の行動」とか、「普通はこんなことしない」と言われる行動の方がですね、結構ありふれてるっていうことが、分かったんですね(苦笑)
よう/ああ、なるほどね。つまり、クレームを入れている側のほうが、何ていうか……理想を話してるっていうこと?
いん/そうなんです。で、「現実的には、こういうことがあるよね」と。
まあ言ってみれば、そもそも全てがうまく転がっていれば、「事件」にはならないわけですけど……
よう/うん。
いん/何か、(ボタンの)掛け違いがあって、「人間こういうことはたまにするよね」っていう時に、たまに事件になるっていうのは、現実世界でも「あるある」なんですけど……
よう/「ヒヤリハット」みたいな話?
いん/そうです、そうです。あ~、いいこと言いますね。だから、そういうのが顕在化するまでには、いくつかそういう「掛け違い」があるはずなんですね。
よう/うん。

いん/で。それが、医療の世界では、全国あちこちで、今日も起こってるわけですよ。
よう/うん。
いん/ところが、1つや2つの病院とか、せいぜい10コぐらいの関連病院だけの世界で暮らしていると、「普通こうじゃないだろう」と、医療者のほうが言いたくなっちゃうんですね。
よう/あ~、まあね、うん。

いん/でも草水先生はですね、複数の医療機関というか、系列の違うところに取材をしているので……その、医者個人・医療者個人が経験できる「量」を超えて取材をしているんですよ、彼は。
よう/あー、そっか。まあ、ジャーナリズムというか……。その、「専門にその現場に入ってやっている人の経験する範囲と深さ」っていうものと、「俯瞰して外側から見てる人の広さ」っていうのは、また担当が違うというか、ねえ。
いん/そうなんです。で、「僕の好きな創作物をおとしめやがって」と反論材料を探しているうちに、だんだん、ぞぉ~っとしてきてですね。
よう/うん。
いん/「実際はこうじゃない」って言えねえんだ、俺らは……! というところに、気づいてしまって。
よう/ああ、なるほどね。
いん/はははは(笑)もうそれ以来、僕は『フラジャイル』については、「ストーリーに乗っかって ただ感動して、アンチからは目をそらそう」というモードに入ったんで、穴(欠陥)とかは何も見えなくなりました。

よう/……確かに、なんかさ、俺も実験をしててさ……ええと、まあ「実験の手法」とか「考え方」とか、「これは当たり前だろう」と思っていることがさ。結構、ちょっと文化の違う研究室とかに行って、そこの人と話すと、「あ、そこもすり合わせできないんだ」っていうことは、よくあるけどね。
いん/あはははは(笑)
よう/お互い、論文とかを書いて、それを見て「理解してる」と思っているんだけど、現場の細かいこととかになってくると、「全然違うな」っていうことはあるね。「文化が違う」っていう言い方をしたりするけど。

いん/うん、うん。……なんかその、「現場ごとに、やっていることや前提としているものが違う」っていう話をですね……。『フラジャイル』初期は、そこまで匂わせてないんですよ。
よう/うん。

いん/ただ、「人によって立場によって、いろんなエピソードの捉え方がある」っていうのをフィードバックしてですね。だんだん、原作の重厚さが加速していくんですよね。
よう/……「フィードバック」っていうのは、連載初期に作品を出して、反響が来て、それを自分でまた調べて……っていうのを繰り返していく、ということ?
いん/たぶん、こういうところまで……ヒダの裏まで書いておけば、「ああ、こういう世界もあるのか」っていう風に、医療者がおいそれとツッコめなくなってしまう。そういう書き方に、少しずつ、なんか……「色が増えて」いってるんですよね。
よう/……確かに、後半にいくほど、何て言うかその……「違和感」みたいなのが、どんどんなくなっていくね。
いん/そうなんですよ……!
(8分14秒)

よう/うん……。俺もさ、別に全然、現場に詳しいわけじゃないんだけど……。
いん/はい。
よう/「これは事実とは違うけど、物語としてわざと書いている」のか、それとも「すごく調べて、こういうことがあり得るって分かって書いている」のか、分からない部分が、初期の頃にはあって。
いん/うんうん!
よう/まあそれはそれとして……俺は判断できないから、キャラクターを中心に見ていたんだけど。
いん/はいはい。
よう/でも、回を追うごとに、確かに、そういうのがだんだんなくなってきたなあ。
いん/そうなんですよね。
よう/うん。
(8分48秒)

いん/あとは……『フラジャイル』は、『ワンピース』と同じで、初期の方がすっきりしているんですよ。
よう/あー、ストーリーがってこと?
いん/ストーリーも、キャラクターとかもそうなんですけど……やっぱり、流れに乗るまでは、ストーリーをすごくシンプルに組んでいるんですけど……
よう/うん。
いん/あの、一定の支持が得られて、テレビドラマにもなって、「もう支持を失うことはないぜ」っていう感じで全力で描き始めてからはですね、あの……1話の中に入っている情報量が、半端なく多いんですよね(笑)「週刊誌ではできない量が入っている」というか……。
よう/その「すっきりしてる」っていうのは、要するに初期は「わかりやすさ」を重視していたんだけど、だんだん人気も定着してきたから「もうちょっと複雑なことをやってやろう」おそらく作者が本来やりたかったであろう、「もうちょっと複雑な事情」とか「複雑な心理」とかを描くようになってきたっていうこと?
いん/なんか、僕はそんな感じがします。
よう/確かに、そうかもしれないな……。明らかに、……そうだね、作品の「読み応え」という意味では、上がっているかもね。
いん/あがってますね。
よう/割と初期の方は、わざと勧善懲悪にしているような感じもするしね。
いん/うん、それ すっごく感じましたよね。初期は本当に。

よう/うん、まあ。主人公の岸先生は「露悪的な正義の味方」だよね、一言で言うと。
いん/うんうん(笑)
よう/まあ『ブラックジャック』以来、医者としてあり得る造形だけれども。……初期はそれをすごく分かりやすくやってたけど、段々そういう、「表の毒舌」と、「「裏の医療に対してすごく真摯なところ」が……まあいわば、「ツンデレ」と同じ原理だけどさ。
いん/うん……うん(笑)
よう/それが、ずっと「ツン」のところも「デレ」のところも両方見ていくうちに、段々、綯い交ぜになって、一人のオリジナルなキャラクターになっていくよね。
いん/そうなんですよ。なんか、人間の複雑性が増していくというか……
よう/うん、まあ「立体的なキャラクター造形」ってやつだよね。
いん/そうですね。
よう/うん。
(10分49秒)

いん/おまけに、「隠してたエピソードを出す」っていうだけじゃなくて、「作中で進行形で積み重なっていくエピソード」が、「キャラの経験値」として積み上がっていくので……
よう/あー、そうだね。


いん/まあ、わかりやすいところで言うと「宮崎先生がどんどん成長していく」っていう面もあるんですけど……
よう/そうだね。その……え~っと、(宮崎先生というのは)研修医としてきている若手の医師だよね。
いん/あ、そうですね。女医さんですね、宮崎先生という。
よう/「内科から移ってきて病理は1年目」っていう。「もう全然何もできなかったところから、だんだん成長していく」っていうキャラで。長期連載には、絶対必要なキャラクターだよね。
いん/必要ですよね~。ただ、あんなに育っていくとは、僕らは思っていなかったんですよ(笑)
よう/なるほど。「いい脇役」ぐらいな感じだと思ってたの?
いん/ん~……なんか、「狂言回し」というか……。ドラマで武井 咲(たけい えみ)が演じるっていった時に、僕は「まあそういうキャラだよね」としか思っていなかったんですよ。
(11分45秒)

よう/あ~……。今はもう、「裏主人公」的な感じがあるよね。
いん/うん、うん。いやあ……もう、最新エピソードの1つ手前ぐらい……単行本でいうと12巻ぐらいですかね? 「デビュー戦」っていうのがあるんですけど。
よう/あー、はいはい。
いん/いやぁもう、あのあたりは、この作品がちょうど「講談社漫画賞」を取った直後ぐらいだと思うんですけど……「もう押しも押されもしないな」っていうところまで上がってきてる、っていう時なんですね。

よう/そうだね。ちなみに……あのさ、『フラジャイル』の作品の説明って、しておかなくていいのかな? なんか、「読んでる前提」になってるけどさ ( ̄▽ ̄;)
いん/ん?……ああ、これ聞いてる人で、『フラジャイル』読んでない人は、もう置いていっていいです。あははははは(笑)
(12分21秒)

よう/そうですか……。まあ、いっちーと同じ「病理医」という職業の人が主人公、というか……。そこから「医療全体を眺める」っていう話だね。

いん/優しい……(笑)僕も『フラジャイル』をイチから説明する機会って、ないんですよね。
よう/そうだね。で、まあ主人公が、岸 京一郎(きし けいいちろう)っていう……中堅の病理医かな。
いん/はい。40代くらい……ですかねえ、見た感じは……。
よう/うん。で、その病理科の、トップというか科長だよね。責任者っていうか。
いん/そうですね。
よう/で、宮崎さんっていう研修医がいて……。
いん/はい。

よう/まあ、こういう初心者的キャラクターがいると、いろいろ説明できるよね。「その人に向かって説明している」テイで、読者に向かって、いろんな状況を説明できるもんね。
いん/なぁるほどなー。確かにそうですね。

よう/うん、絶対要るんだよ。で、めちゃくちゃデキる技官の……臨床検査技師の人がいるんだよね。
いん/はい、はい。
よう/病理検査室では、いわゆる「病理標本」っていう、プレパラートを作ったりとか……医師の要望に応じて色んな染色をしたりとか、かなり技術が求められるもんね。
いん/はい、そうですね。そういう技師として、この漫画には森井(もりい)君っていう人がひとりいて。

よう/うん。臨床検査技師の中でも、病理の技師さんというのは、またその中でも、かなり専門的な技術が必要なポジションだもんね。
いん/うん、おっしゃる通りです。
いやぁ、そういう基礎的な事項を、本来であれば僕がイチから、とめどなく……じゃなかった、よどみなく説明しなきゃいけないのに(笑)もう皆が『フラジャイル』を知っている前提で喋っているから、すっかり忘れていましたけど……その通りです。
よう/まあね、 Podcast 始まってもう10分以上経ってから、作品の説明をするっていう、このグダグダ具合が……まあ、いいかなと思うんだけど(笑)
いん/ぶっはっはっはっは(笑)
(14分05秒)

よう/まあ、作品の説明はそれぐらいにして。ストーリーがどんどん積み重なっていってるって言うね……まあ長期連載ならではだけどね。
いん/なんかですね、それも……。草水先生がやっていることっていうのは……原作者なんですけどね。原作に草水先生、作画に恵 三朗先生っていうのがいるんですけど。
よう/ああ、そうかそうか。
いん/原作の草水先生は、ドラマというか、漫画原作として、重厚に積み上げていくんですけど……。
よう/うん。
いん/そこに、「戦隊もの大好き」「トリガー系大好き」「他にも色々大好き」な、恵 三朗という人間がですね(笑)あの……アニメとかのニュアンスを込めていくんですよね。
よう/……漫画的表現というか、「漫画的なダイナミズム」みたいなことだよね。
いん/はい。なんかそういうのが、のってくんですけど……
(14分55秒)

よう/恵先生、Twitter も面白いもんね。
いん/うん、あの人、もっと伸びていい。面白い。

よう/確実に、コメディのセンスみたいなものがあるんだろうね。
いん/うん、そうですよね。それか、オタク寄りの。しかも作画が……いやあ、この話を本当は一番最初にするべきだったんでしょうけど。
あの……絵が、上手すぎるんですよね。
よう/あ~……(なるほど)。
いん/めっちゃくちゃに、上手いですね。「医療系漫画」だけじゃなくて、多分、いま現在進行形で連載している あらゆる漫画家の中でも、トップクラスに上手いんじゃないですかね。

よう/それは、どういう方向に?
いん/何ていうんだろう……「絵が綺麗で上手い」のと、「構図が鬼」なのと、あと「ホラー漫画的技巧に非常に長けている」ってのと、あと……例えば「ドラマのパロディみたいな4コマ漫画をさっと描ける」みたいな。
よう/あー……4コマ漫画みたいなのね。
いん/あのですね、あの人、自分で病理漫画『フラジャイル』を描いているくせに、『アンナチュラル』を放送しているとき、ず~っとそのパロディ4コマを描いてましたからね。

よう/ああ、そのドラマをやってる時にってこと?
いん/そうそう。自分が見たドラマのパロディ4コマなんかを、すぐ描くんですよ。戦隊モノのパロディ絵とか……それが、鬼上手くて。自分が連載してる『フラジャイル』の絵より、伸びるんですよ、RTが。
(16分12秒)

よう/この人は……恵先生っていうのは、 自分でストーリーを考えて描くこともある人、なのかな?
いん/ええと、恵先生の、『アフタヌーン』に載った読み切りを読みましたけどね、ご自分でストーリーを書いてるやつ。
よう/うん。
いん/あのですね、すごい、何万冊も売れそうな、同人誌的な……オタクが好きそうな話がどちゃーっ!って入ってる、「面白ぇ!」っていうストーリーを書く人です。

よう/……「オタク的な」っていうのは、どういうことなんだろうな……?
いん/あ~、「オタク的」にも色々あるからなあ……。何ていうのかな? 「妄想の中で膨らませてった時に、『ここはやりすぎかな』っていうところを絶妙に突く」っていう話を描く人なんですよ。もともと。
よう/ふむ。「割と熱血な話を描く」っていう人?
いん/熱血も、描きます。熱血描けます、ホラーも描けます。けれん味も……
よう/「けれん味の付け方が上手い」っていうことなのかな、絵としても、話の表現としても。
いん/あ~……「けれん味の人」だと思います。
よう/「わざと過剰にして、現実とは違うんだけど、過剰な表現によって面白さを出す」っていうことだね。

いん/ですね。……なんか、今まで「漫画史に残る上手い人」って……例えば「デフォルメとメカが超絶うまい」あと「構図と格闘技とかキャラクターの動きとかのカメラワークとかが完璧だ」という神様みたいな人っていうと、鳥山 明が、まず居るじゃないですか。
よう/そうだね。
いん/あとは、「モノクロなんだけど、すごいゾッっとする影をつけられる天才」っていう、藤子不二雄みたいなのがいるわけですよ、「F」の方。まあ、「A」もそうなんですけど。
よう/ああ、はいはい。
いん/あれは、「本来であれば劇画で使う手法」を、「コミカルな小学生向けの漫画」に持ってこれちゃう人なんですよ。ふたりとも。そういう「コロコロ的な超絶上手さ」ってのも、いるじゃないですか。
よう/うんうん。


いん/で、そういう人たちとは、ず~っと離れたところに、例えば「劇画の上手さ」だとか、「『AKIRA』みたいな上手さ」みたいなのも、あると思うんですけど。僕、恵三朗って、いちジャンルとして「最強」の域にいると思うんですよね。
よう/割とその……キャラクターの描き方としてはさ、「リアル」っていうわけじゃないけど、そんなに「デフォルメが効いた絵を描く」っていうわけでもないよね、本来は。
いん/本来は、そうですね。
よう/「それとは違うところで、けれん味を出せる」っていうことなんだろうね。まあ確かに、決めポーズの時とかは、結構デフォルメはしているかもね。アングルとか、ポーズ的にやっているかもしれない。
いん/例えば最近の仮面ライダーとかって、実写に CG が違和感なく取り込まれていて、「3次元でやってるんだけど、ちょっと2次元を取り入れて、2.8次元ぐらいにある」と思うんですよね。戦隊モノとか、仮面ライダーとか、そう。
よう/うん。
いん/で、『フラジャイル』は、「2次元の漫画を現実の方に寄せながらも、表情やデザインとかは漫画のまま残した」っていう、いわば「2.2次元」ぐらいのところにいる絵だと、僕は思っているんです。
よう/うん……。
いん/リアル志向なんだけど、目とか表情とかは、すごい漫画の手法を残しているって言う……。なんか、何て言うのかな。あのような絵の中では、もっとも綺麗で、すごい美しく描ける人だと思っているので……。
(19分55秒)

よう/なるほどね。だから、「病理医が出てくるから云々」という話とはまた別に、そういうのとは関係なく、「漫画家として凄まじく優秀である」と。
いん/だと思います。で、その人が……(と言いかけて重なって止まる)
よう/(かぶせて)「それがたまたま、病理医を扱ってくれている」っていう喜びなわけね、いっちーの中では。
いん/そう! いま僕、それをずっと言いたかったの! そういうことなんです。
よう/(笑)

いん/だからもう、「圧倒的に上手い人が病理の漫画を書いてくれてありがとう!」っていう……本当にもう、そこ。「ありがとう」って。
よう/さらに、「ストーリー」も、一見クレームがくるようなものなんだけど、実はすごく俯瞰した目線から書いているんじゃないかと思わせる……
いん/うん、まあクレームがくる理由も、分からなくはなかったんだけど(笑)でもまあ「もういい、そこはいい」っていう(笑)そういう感じで……。
よう/「そういう意見は当然あるだろうと思うけれども」っていうことね。
いん/うん。そう。
よう/「そういうことを批判しなくても、それ込みでレベルが高い作品だ」という風に思ってるっていうことね。
いん/そうです。もう、だんだん病理漫画である必要を感じなくなるぐらい、好き。
よう/そうか……。じゃあ、「どのキャラクターが好きか」っていう話をしようか。
(21分5秒)

いん/いやー……これ、難しいなあ。僕、連載直前くらいからフォロワーに教えてもらって、ずっと推してて……。
よう/うん。
いん/最初は、皆と一緒で「大天使・宮崎」からスタートしているんですよ。
よう/ああ、そうだね。
いん/そうなんです。まずそこからなんですよ。全員、最初はそこから。
よう/うん。

いん/で、「細木先生は怖いから、好きって言っちゃ駄目」っていうムードがあったんです。数百人のファンの中で。
よう/あっ、そうなんだ。
いん/そう。まずそこからスタートなんです。「あの人は、そういうレベルではない」と(笑)もう、愛でて終わり。
で、そこから火箱(ひばこ)が登場するんですね。

よう/ああ、火箱さんね。ちなみに、さっきの「細木先生」っていうのは、すごく綺麗な外科医なんだけど、若干……そうだな、「残念美人」とまではいかないけど、割と、サバサバした性格だよね。
いん/うん、そうですね(笑)
よう/うん。で、岸先生にとっては「お互い会うと結構、口喧嘩みたいな事もしているけれど、最終的には味方ポジション」みたいな、いいところにいるよね。
いん/そうそう。いいところにいます。
よう/うん。
(22分10秒)

いん/ドラマで小雪が演った時、どうしようと思いましたけどね(笑)
よう/いや、まあそれはな~……。

いん/「そうではないでしょう」と思いましたが……(笑)まぁ、しょうがないかな、みたいな。
よう/しょうがないだろう。
いん/うん、しょうがないかなと思いましたけどね。「他に、いただろう」とも思いましたけど……まあ、それはいい。
それで、火箱が出てきたあたりから、群雄割拠になって。

よう/そうだね。火箱さんは、製薬会社の MR ……営業の人だよね。
いん/そう。MR です。
よう/元気キャラだね。意外に重い過去もあるんだけれども。
いん/うん。(設定が)よくできてますよね。
よう/よくできてるね。

いん/うん。で、6巻で布施美玖(ふせ みく)が出てくるわけですよ。
よう/布施さんね、医学生の。

いん/多分……多分、そこで織田信長が出るんですよね、群雄割拠から。
よう/ん? どういうこと?
いん/布施美玖が、頂点にいるんですよ、ドーンと。
よう/なんの?
いん/ん? キャラクターの。あはははは(笑)
よう/あー、そういうこと?そうなの?(笑)
いん/あはは(笑)そうそう。
よう/布施さんっていう医学生は、何ていうか、「美人で天然の、まっすぐな子」という感じだね。
いん/そうそう。
(23分16秒)

★声優談義

よう/いやぁ、「布施さんに誰の声をあてるか」っていうのを、ずっと考えているんだけどさぁ……。
いん/そう、あなた(の関心は)「声」でしよ。
よう/うん。
いん/その……だいたい、岸先生の声は決まるんですか?
よう/岸先生はね……まあ、俺は男性声優の方ってあまり、わかんないからなー……(悩)
いん/あ、じゃあ宮崎でもいいや。
よう/(かぶせて)岸先生は、遊佐(ゆさ)さんかな?

いん/(笑)
よう/ちょっとトリッキーな感じの演技ができる人がいいからな……。
いん/なるほど~(笑)あははははは(笑)

よう/あのー、臨床検査技師の森居は、 梅原裕一郎さんっていう若手の人がいるんだけど、まあ今だと 十中八九、アニメ化したら梅原さんだと思う。

いん/十中八九(笑)
よう/うん(笑)これは瞬間的に思ったね。じゃなきゃ、えーと、島崎信長さんかな。

いん/あ、その人知ってるかも。
よう/ちなみに、さっき出てきた製薬会社の火箱さんっていうのは、伊藤かな恵さんとかかな。

いん/ああ、僕それちょっと分かるなあ。なるほど。
よう/元気な感じのね。
いん/
なるほど。
よう/きつい感じの……。
いん/細木先生は?
よう/細木先生は、何人か思い浮かぶんだけど……。茅野愛衣さんみたいな、綺麗な大人っぽい声でやるか、沢城みゆきさんっていう選択肢もあるかなあ。セクシーな感じにちょっと揺れて……。

いん/おおお~!だいたいわかる(笑)
よう/なんかやっぱり、「人生わかってます」みたいなキャラクターだから、そういう意味では「沢城みゆき」っていう選択肢が結構強いかもしれないね。
いん/おおお、なるほど(笑)布施美玖は……
よう/布施美玖と宮崎さんは、どっちも、早見沙織さんができると思うんだよ。

いん/ええっ!? そうなんですか? ちょっとイメージが……へえ~……。
よう/俺は、そう思う。どっちにするかなんだけど……
いん/ああ、いや、布施美玖は、わかる、かなー……。なるほど。
よう/うん。宮崎さんはポンコツなんだけどヒロイン感もあるじゃん、真っすぐで。
いん/ある、ある。
よう/打たれ強いというか……。そういう時の、「まっすぐな声」って、早見さん結構強いんだよね。
いん/あ~、なるほどなあ。
よう/だから……宮崎さんを早見沙織がやったとすると、今度は布施さんを誰がやるかっていうので、うーん。
いん/あっはっはっは(笑)
よう/う~ん、雨宮 天さんとか 高橋李依さんとか……。

いん/あっはははははは、ポンポン出てくる(笑)すごい(笑)
よう/(笑)「天然まっすぐで、ちょっとボケキャラで、でも頭が良くてまっすぐ」なキャラクター……うーん。
いん/くっはっはっは(笑)
(26分13秒)

いん/あの~、あと、これ名前わかるかな?……先輩 「間瀬(ませ)」ってわかります? アミノ製薬の、怖いサラリーマン。
よう/(火箱の)怖い上司ね。

いん/そうです。あの人、アミノ製薬を出て、医薬新聞社っていう、なんかしょぼい医療系の出版社に就職をするわけですよ。
よう/うん。
いん/で、そこに出てくる「髪がバサバサでコーヒーをクピクピって飲む女の人」がいるじゃないですか。
よう/……ちょっと待って。いたいた……(PCで検索中)
いん/「逆瀬川(さかせがわ)」だったかな? えーと……

よう/ちなみに、「間瀬さん」ってインテリヤクザみたいな人だよね?
いん/「インテリヤクザみたいな人」(笑)そうそう。
よう/あー! わかったわかった。間瀬さんは、諏訪部順一さんかな? ちょっと怖い感じの声の人でもいいけどな。

いん/ほうほう。もう、ひたすらこわい感じの。大体、恵三朗は、間瀬さんを描くの好きすぎなんですよね。
よう/いやー、このキャラクターいいよね。
いん/んっふふふふふふ(笑)これねえ……(笑)
よう/逆瀬川さんって、「めちゃくちゃ頭がいいんだけど、ぼーっとしているように見える」っていう、三白眼みたいな女の人でしょう。
いん/そうそう。
よう/半分寝ているような ……「糸目」まではいかないけどさ。
いん/そうそう、女の人で。でも、 IQ 高いんですよ、この人。
よう/まあ「自閉症系のキャラ」っていう言い方もできると思うけど。
いん/あはははは(笑)なるほど(笑)

よう/うん。ちょっと考えたんだけど、誰にしたんだっけなあ……。
いん/「誰にしたんだっけなあ」って(笑)あっはっはっは。
よう/逆瀬川さん……俺、相当好きだね、確かに。
いん/うん、そうでしょう。この人いいですよね、このキャラクターね。でもね、僕さっきの質問(どのキャラクターが好きか)って……僕やっぱり、布施美玖が好きなんですね。
よう/布施さんね。じゃあ、早見沙織さんにしようか。
いん/ありがとうございます。……って、そういう話になるの?(笑)
(28分14秒)

いん/いやあのね、フラジャイルのことなら3時間以上喋れるんですけど、あまりにも『いんよう!』で何をしゃべるかが、とっちらかってしまっているので、真っ直ぐなことを言うと……
よう/うん。
いん/やっぱり1巻から、「これも好き、あれも好き」ってずっと積み上げてきて、マジ泣きしたのが、布施美玖が出てきた回なんですよ。
よう/うんうん。
いん/もうこれは、あまりにも好きすぎて、読んでない人がネタバレでかわいそうなことにならないように、僕は何も言えなくなっちゃうんですけど……
よう/うん。
いん/僕はやっぱり、布施美玖が最初に出てきたあの回。アフタヌーン誌で、1話で終わったんですよね。
よう/うん。
いん/1回でちゃんと完結したエピソードっていうのがあって。あれが……もう、あれを読んだ時に、マジで泣いてしまっているので。もう、あそこに出てきたキャラクターは、もうとにかく、僕の中では殿堂入りなんですよ。

よう/それは、自分の立場とかも込みで、泣きそうになったということ?
いん/なんかですね、病理医がどうとかっていう話で……。僕だけじゃなく、先輩の人たちがですね、「『夏の学校』とかで学生を勧誘しても、なかなか入らない」っていうのは、リアルエピソードなんですけど……
よう/そうだね。病理医はとにかく人数が少なくてね、なり手がいなくてね……。
いん/そうそう。「なり手がいない」っていう意味では、研究者とどっこいどっこいっていうか、研究者よりちょっと少ないぐらいかもしれないんですけど……
よう/そうだね、研究者の方が少ないかもしれない。
いん/やっぱりそうか……。いや、それがですね。なんていうか、臨床医からの評判もあまり良くないというか。「給料が安いんでしょ」って言われたり、「患者を診ないで何か楽しいの」って言われたりっていうのが、昔はもっと強かったんですよ。
よう/うん。


いん/そんな中で、例えば「病理医になります」って若い人が言ってくれるシーンがあったとしたらですね。それは、我々がずっと願ってきたものだっていう……もう、先祖代々受け継いでいるんですよ(笑)
よう/わかるわかる。布施美玖っていうのは、少なくとも、いっちーにとっては「妄想を具現化したキャラクター」なんだね(笑)
いん/(笑)身も蓋もないまとめだけど、その通りなんですよ。だから、あの話が僕の中で殿堂入りしちゃったから、他に対して、正しい評価が出ないの。
よう/それは、泣くしかないよね。
(30分23秒)

いん/そう、泣くしかない。そしたらなんか、最新話に近い13巻あたりで、宮崎が病理学会に行く時、布施美玖と語り合っているシーンとかがあるわけですけど……。
よう/うん。
いん/もうあの辺なんて、僕らにしてみたらボーナスステージなんですよね。
よう/妄想の向こう側(先)でしょ?
いん/そう(笑)しかも、「6巻のエピソードを13巻で回収する」みたいなところもあるので……。
よう/長期連載ならではだよね。
いん/ならではですよ。そんなの、ねえ……。いやほんとに(笑)まったりし始めちゃう……あはははは(笑)
よう/いやー、逆瀬川さんも、茅野愛衣さんでいいかもしれないな~。
いん/(笑)
(31分02秒)

よう/……さて。あのー(笑)多分まあ、フラジャイルに関しては、いっちーが喋るたびに、まとまっていくと思うので……
いん/僕、まだ まとまらないもんね(笑)
よう/うん、だから定期的にやってもいいかな~と思うけどね。
いん/ああ、じゃあ話題に困ったら……
よう/「新刊が出るたびにやる」ぐらいのさ。
いん/あ~!それは、お願いしたいですね。「今回の見どころ」みたいな感じで……。

よう/うん。今回は「第1話」っていうか、「序」というか……「前置き」みたいな感じでいいかなと思うんだけど(笑)
いん/おうっす(笑)あはははははは。もう、前のめりすぎて却って何もできなくなるっていうか……。
よう/そうだね、「前のめりすぎて進まないこと」ってあるよね。「出口が詰まっちゃう」みたいなね……。
いん/そう。分かっていただけると、すごくありがたいですね、僕はね。
よう/(笑)
いん/いや~、恵三朗と焼肉食いに行きてえなぁ。いやー、うん、はい。
よう/(笑)今日は「さわり」ということで。
いん/はい。
(31分53秒)

★アニソンコーナー『茜さす』

よう/じゃあ,アニソンにいくとして……
いん/あ、どれを?
よう/そうだな、じゃあ……『茜さす』を。

いん/あ~~~!
よう/Aimer(エメ)さんっていうね。
例えば……この『茜さす』っていう曲は、『夏目友人帳』の第5期のエンディングテーマなんだけど。

いん/うん。
よう/『夏目友人帳』って、原作が少女漫画なんだけどさ。妖(あやかし)が見える少年が主人公で。
いん/ふむふむ。

よう/優しさと正義感と哀しみを背負ってる、みたいな少年が、妖たちと交流していくんだけど、基本的には分かりあえないもの同士、違うもの同士で、一瞬心が触れ合うんだけど、また離ればなれにならなければいけない。住んでいる世界が違う……っていうような。
いん/ほう……。
よう/ある意味、すごく日本的な「別れ」や「情緒」を描くっていう作品で、すげえ人気があるんだよね。今、アニメが6期……7期だったかな……?

いん/『夏目友人帳』は、本当にファンが鬼のようにいますし、僕も聞いたことがあるくらいの……。
よう/うん。主人公(の声)、神谷 浩史さんだしね。

いん/ああ……もう、本当に「The」ですね。
で、この『茜さす』っていう曲。Aimer(エメ)さんって最初、僕読めなくて。
よう/そうだね。フランス語読みか なんかだよね。
いん/ですね。で、「この曲、聞いてごらん」って先輩から投げつけられますよね。
よう/うん。
いん/で、いつものようにデスクトップにこう、並べて……
よう/もう「はいはいはい」って感じで聞くわけでしょ。
いん/そう。「まずこのアニソン……はい、なるほど。次はこれ……はい、打ち込みね。次は『茜さす』……アイマーって読むんだ、へぇ~」と思って、聞き始めるじゃないですか。
よう/うん。
いん/で、「ん??」ってなって……。で、サビ前にもう、「あぁ~っ、違う!」ってなって。サビあたりになると「プロだ!!」っつって、検索し始める……くらいの。

よう/んふふふふふ(笑)まあ、アニソンシンガーっていうか、まあ本職のアーティストの方だよね、声優さんではない……。
いん/ああ、そうなんですね。で、僕最初に検索したのが何かっていうと、この名前で。「Aimer」って書いて、「エメ」って書いてあったから、「ああ、エメって読むんだ」と思うのも、もどかしくて。
よう/うん。
いん/「これは偽名(?)だろうから」と、他のバンドとかユニットとか(=別名義)は、何なんだ!?……つって、探しに行くわけですよ。
よう/ああ、なるほどね。
いん/で、検索をしながら、『きのこ帝国』っていうバンドがあるんですけど……
よう/あるね。
いん/あれのボーカルとも、ちょっと似てるけど、違うし……
よう/ああ~、そうだね。ちょっと息が弱めというか、ハスキーというか
いん/そうそう。いや本当にそうで……この2010年代になって、急に僕の耳元にも届くようになってきたタイプの声質で。Vtuber にも、そういうのがちょっといるんですけど。
よう/ああ、めっちゃ推してるやつね。
いん/そう、花譜(かふ)ちゃん。

よう/よく分かんないんだけど、ブラックミュージック(黒人音楽)と関係しているの? あの歌い方っていうのは。
いん/ソウル……ブラックミュージックとか、星野源もそうだけど、あっちの方の技法も使ってる……のかもしれないんですけど、ちょっとよく分からないんですよね~……。いや、ゴスペルとかも入ってるのかもしれないんですけど、ちょっとよく分からないんですけど。僕がもっと音楽に詳しかったら、もっとしゃべれるんだけど。
とにかく、Aimerさんは「この人だけは別格!」ってなって、「誰!?」ってなったのが、びっくりして……曲の印象とかは、最初は入ってこないっていう……ボーカル力が強い、みたいな。
よう/あのね、『Fate(フェイト)』の劇場版の主題歌とかも歌ってて……。
いん/あ~。

よう/やっぱり、かなり大型プロジェクトの主題歌にも選ばれてるから……。でもね、この人「アニソン専門」という感じではないんだよねぇ。色んなタイアップで出てる……
いん/……と思ったんですけどね~。
よう/俺も、全然詳しいわけじゃないんだ。『夏目友人帳』を見てて、「この ED 歌ってる人、すごいな」って思った……っていうだけで、今いっちーに推してるからさ。
いん/もう僕、「すごいな」って思って、多分もう覚えました。
よう/そうだね。この人は多分、アニメに対する思い入れが云々っていうのとはまた別に、アーティストとして追いかけてる人も、けっこういるだろうね。
いん/いるでしょうね。で、ちょっと今思ったのが、「アニメでこういう人を使いまくると、アニメの雰囲気じゃなくて、その人の曲になる危険性もあるなあ」っていうのが、よく分かりました。
よう/ああ……。

いん/あの~、「新海誠の映画に RADWIMPS を使う」っていうのは、マッチしたから良かったんですけど……
よう/うん。
いん/でも、そこで「RADWIMPS だね」って、聞いてる方もカシャっと切り替わるじゃないですか。
よう/……そうなんだよなあ……。
いん/うん。だから、「アニソンとしてちゃんと当てたほうが良い時」と、「タイアップでどっちも伸びてく時」とがあって、それはニュアンスが違うんだろうなって思いましたね。これを聞いてて。
よう/そうだね……ただこれ、ED だから、劇中でかかるわけじゃないからね。
いん/あ~、なるほど。
よう/だから、ニュアンスがちょっと違うんだけど……。う~ん……
いん/うんうんうん、うんうん。
よう/ん~~~……RADWIMPS ……。そのぉ……どうなんだろうね。確かに、曲と映像がぶつかることは、あるよね。
いん/うん、ありますね。
よう/アーティストとしての個性が立っていればいるほど、その可能性は高いよね。
いん/そうですよね。
よう/でもね、この人、なんかあんまりぶつからないような気がするんだよね、なんとなく。でも、なんでそう思うのかは、説明できないけど。

いん/いや、言いたいことは分かりますよ(笑)本当に分かるなあ。なんか、うん……「これが、本来のアニソンとかの一部の勢力として、向いている人なのかもな~」って思いながら、「おお、すげえ!」っていうのがありましたし……この話をしていると、『フリクリ』と『the pillows』の話をしなきゃいけなくなるっていう(笑)
よう/ああ……あれは「本来ぶつかるはずなんだけど、なぜか合体した」っていう、悪魔合体みたいな作品だよね(笑)
いん/あはははははは(笑)
よう/「すげえ個性あるもの同士をぶつけたら、なんか合体した!」みたいなさ(笑)奇跡だと思ってるよ、あれは(笑)

いん/『夏目友人帳』、見てみよう……そのうち見てぇなあ。でもアニメって見るの大変ですよね。1クール見るのにどんだけかかるんだよ、っていう話もあるし。
よう/そうだね。まあ、アメリカのテレビドラマほどではないけどね。
いん/ぶっはっはっは(笑)
よう/とはいえ、アニメ1クール見ると、映画2本分くらいはあるからね。
いん/(ずっと笑っている)「アメリカのドラマほどじゃない」(笑)、確かに……(笑)
よう/いやだって、めちゃくちゃ長いじゃん(笑)1本も45分とか50分とかあるわけでしょ。
いん/(小声で)先輩、よくそういう例がぽんぽん出てくるよな……。
(気を取り直して)いやまあ、アニソンやったんで、今回のポッドキャスト、もう締めてもいいんですけど……
よう/うん。
いん/毎回……例えばこの『夏目友人帳』にしても、先輩、ダイジェストで説明をするじゃないですか。「これはこういうアニメだよ」って。
よう/うん。
いん/あれ、原稿作ってるんスか?
よう/う~ん……いっちーにさ、(アニソンを送る時に、一緒に)簡単な説明を送るじゃん。
いん/うん。
よう/あれは、見てるけどね。
いん/ああ……。
よう/まあでも、瞬間的に(考えて)しゃべってることの方が、多いけど。
いん/それ、才能ですよね(笑)だって、僕『フラジャイル』そんな風に説明できないもん(笑)
よう/あははは(笑)
いん/そうなんだよな、僕、ダイジェストを言うっていうのが、もう死ぬほど苦手っていうか……先輩すごく上手いと思ったなあ……。いや、取っ散らかり過ぎた。ハイ。

よう/……病理診断でいうと、「診断名から話す」ってことだよね。
いん/ん?(笑)
よう/最初に診断名を言ってから、所見を言えばいい」っていうだけの話だと思うよ。「苦手」とかじゃなくて。
いん/ああ……。関西人の話法と一緒のやつでしょ? 最初に、こう……
よう/ああ、「テーマ発表」っていうか、ね。
いん/そうそう。

よう/所見を言ってから診断名を言うと、長くなる」っていうだけの話だからね。
いん/うん……分かるけど……(唸りつつ)そうなんだよなあ……。診断、僕、短いんだよなあ……うーん。
よう/そこは確実にさ、色々見た情報を瞬間的にまとめてるはずだよ? 仕事として。
いん/ええと、いやそうなんですけどねえ……。僕のあだ名は……
よう/(かぶせて)苦手なはずはないと思うんだけど。

いん/いやその、「診断名は短ければ短いほどいい」みたいな感じなんですよ(笑)僕の診断名って、「読んだ人がどっちを選ぶか一発で決まる」というのがコンセプトなので……
よう/うん。
いん/「良・悪」みたいな感じで、バシッといくわけですよ。その中に、上から順番に脱落していく人がいるだろう」っていう想定で……まあ最初は100人読むとすると、1行目で10人落ちて、2行目で20人落ちて、っていうふうに……
よう/「だんだんマニアックで細かくなっていく」ってことでしょ?
いん/なってますなってます。ん~確かに、診断は……。でもですね、『フラジャイル』でそれをやると、「読め!」とか「好き!」「病理!」とか、そういう感じになるからなあ……(笑)

よう/あははは(笑)「高まってるオタク」みたいだよね。「無理!」って言ってるオタク(笑)
いん/そうそう!(笑)「待ってー!」みたいな(笑)
よう/そうそう、「助けて~!」だよね(笑)
いん/そうそう(ゲラゲラ笑っている)
よう/なんか、Twitter でも、そういうネタツイあったよね。「助けて~」って言ってたのに「また推しが来たのか」と思われて誰も来ませんでした、みたいな(笑)
いん/あははは、サイコー(笑)

よう/面白かった(笑)……あ、ちなみにちょっと訂正しとくと、さっき「声優さんじゃなくて本職のアーティストです」って言ったけど。
いん/うん。
よう/「声優さんの中に、『全然歌をやらない人』から『本職のアーティスト』まで、グラデーションがある」っていう話ね。
いん/んはははは(笑)そこの補足は必要だったんだろうか……。
よう/必要必要(笑)
いん/そうね、大事大事(笑)
よう/はい。では今日は以上です。
いん/ありがとうございました。
よう/ありがとうございます。
(♪)
(42分41秒)

(了)

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