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[文字起こし]いんよう!第88回【特別編①】

『いんよう!』初のゲスト回です。これは起こさねばならんでしょう!!(笑)というわけで、頑張ってみました!! もう、冒頭からおふたり、隠しきれないワクワク感あふれる半笑い状態で始まっています(笑)次週もこれの続きのようですので、その前に起こせてよかったです。なお、文字起こし人、スポーツ知識は本当にからっきしなので(プロ野球の球団名さえ覚束ない)途中、バスケットボールの話題が出てきたところは苦戦しました。(でも後から全部、よう先輩がチェック入れてくださいました。ありがとうございます!!)

★なお、googleドキュメントに比べていくつかリンクが増えています。

※第1稿(?)をGoogleドキュメントにあげたのですが、後から、よう先輩からのご指摘部分を赤字にて修正してあります。noteは色がつかないので、初期にお読みになった方、こちらをご確認ください。(※40ページ近くありますので、うっかり印刷すると大変なことになります。ご注意 (;^ω^))

(♪)

よう/いっちー、あの、今日はね。
まああの、色々大変な時だということで……
いん/へへっ(笑)
よう/俺らも何かちょっと、違うことを出来ればいいかなと思って……
いん/うん、なるほど。
よう/今日はなんと、ゲストに来ていただいています。
いん/んふふっ、初めてですね(笑)
よう/はい、どうぞ(笑)

タツオ/あ、どうも。あの、サンキュータツオと申します。

よう/はい、サンキュータツオさんです。ありがとうございます。
いん/おおお(笑)すごいな……すごいな(笑)
タツオ/ありがとうございます。普段は、米粒写経(こめつぶしゃきょう)という漫才師をやってるんですけれども……
よう/ええ。
タツオ/まあ、色々 Podcast もやったり、ラジオでもしゃべったりとかしていて。で、僕もこの……あの……、すみませんね、『いんよう!』愛好リスナーには ちょっと申し訳ないんですけど、僕がゲストで出てね、ちょっと番組を汚(よご)してしまうっていうのも、かなり心苦しいんですけれども。
いん/(笑)(※このあとしばらく笑っている)
よう/(笑)まあ、個人的には結構……僕にとっては、その、「ゴール」ですよね(笑)あの、ほんとに(笑)
いん/あっははは(笑)

タツオ/……っていうか、でも僕、もはや準レギュラーくらいには名前、出ちゃってますよね。
よう/
ああ、そうですよね。僕が、た び た び(強調)名前、出すんで。
タツオ/相当、出てますよね。
よう/ええ、ええ、出てます。
タツオ/まあ、だから「いいかな」っていう……
よう/ええ。あの、この Podcast 始めた時に、最終目標として「タツオさんにゲストで来てもらおう」って、冗談で言ってたんですよ。
タツオ/え、じゃあもう終わるんですか!?
いん/あっはははははは(笑)
よう/え、いや特にそういう予定はないんですけど(笑)
タツオ/ああそう?
よう/「意外に早く叶ったな」っていう感触はあるんですけど。
いん/本当だな~、すごいな~……(感嘆)。
タツオ/簡っ単に手ぇ届いちゃいますよ、僕なんか。
(2人/笑)安いもんですよ、ほんとに。
よう/そうですかねえ(笑)
タツオ/はい(真顔)。
いん/上位互換が……(笑)

よう/(気を取り直して)これあの~、紹介……したほうがいいですか? 簡単にというか。
タツオ/まあ、僕のこと知ってる人がほとんどいないと思うんで、ちょっと改めてお願いしますよ。
いん/(紹介しなくて)いいんじゃないかな?この番組(笑)(※かなりくぐもっている)
よう/(構わず)はい。じゃあ、特に原稿とか用意してないんですけれども、「米粒写経」というコンビで、漫才師をされていると。それが本業ですよね。
タツオ/はい。

よう/で、えーと、日本語学の専門で、「笑いの文体論」について研究されていると。
タツオ/はい。
よう/で、早稲田大学で、博士課程……を、「単位取得退学」でいいんですかね?
タツオ/そうです。あの~、博士号をもらえなかったっていう……
よう/あ、そうですね。その話も おいおい、お聞きしたいんですけど……
いん/(笑)

タツオ/あの~、「指導教授の定年が1年早まってもらえなかった」っていう事件がありまして。
いん/はあぁぁああ~!!
よう/これは何か、政治的な争いに巻き込まれてもらえなかったっていう……
タツオ/はい。
よう/まあでも、「博士号の重みの違い」っていうのは、分野とか……理系・文系でも、ある気がして。
タツオ/まあ、かなりね……。あ、あと「大学によってもぜんぜん違う」っていうのも、意外と知られていないんじゃないかなと思うんですけれども。
いん・よう/おおお~。
タツオ/あと、年代ですね。
よう/はあぁ~。……僕らは「学部の差」が一番大きい……かもしれませんね。
いん/ああ、ああ。(強くうなずく感じ)

タツオ/ええと、早稲田の文学部は、おそらく'80年生まれ以降の人は、ええと……「全国査読付き1本あれば」とか「紀要3回」とかで、多分、博士号もらえるはずですね。
いん/ふぅ~ん……
よう/……それは、「かなりハードルが下がった」っていう理解でいいんですか?
タツオ/……だいぶ下がりましたね。多分。今まで100いかなきゃいけなかったのが、20くらいで取れるっていう感じですかね。
いん/はっはぁ~。
よう/(重ねて)はあ~。またその「全国査読付き」っていう言葉も、僕らにとってはかなり耳慣れない言葉なんですよね。
いん/うん、うん(笑)
タツオ/ああ~、なるほど! そっかあ。いやまあ、だから「トップジャーナル」ってことですよね。
よう/ええ、ええ。「査読付き」っていうのはもちろんあるんですけど、その「全国」っていうのが……
タツオ/ああ(なるほど)。まあ、学内誌とかもあるんで……。
よう/ああ、はあはあ(なるほど)。
タツオ/ただ、意外と学内に強敵……というか、指導教授が、国内で一番、自分の研究に詳しい人なんですよ。
いん/なるほど~!
よう/そうですね。
タツオ/だから、「全国誌よりも学内誌通すほうが難しい」みたいな、逆転現象が起こったりとかするんですよ。
いん・よう/ああ~(なるほど)!
タツオ/だけど、学内誌通っても、1ポイントにもならん……0.3ポイントくらいにしかならない、みたいな……そんな感じですよね。
いん/あははは(笑)
よう/……ちょっと僕らの業界では「学内誌のほうが厳しい」っていう話は聞いたことがないですね。
いん/んふふふっ(笑)
タツオ/まあでも、あの……「同じような研究をしてる人が国内に5人しかいない」みたいなジャンルで、指導教授がゴリゴリの人だと、「こんなの出せるか!」みたいな話になるんですよ。
いん/ああ~、なるほど~!!
よう/ああ~、そうですか。やっぱり、「博士号に対する意識」がだいぶ違うなと思いますけど……。
いん/ああ。

よう/その……僕ら、基本的に指導教官は、出す方向で動いて……くれるよね?
いん/うん、そうですね(笑)
タツオ/……それは、「いい指導教官」ってことじゃないんですかね(笑)
いん/ああ~……この話は、闇が開くから……(笑)
タツオ/あはははは(笑)
よう/まあ確かに、すごい厳しい先生だと、「トップの国際雑誌に載せないと学位はあげたくない」っていうような人はいますけど……
タツオ/ああ。あとはまあ、「力」ですよね。学部内での
いん・よう/ああ~(なるほど)。

タツオ/で、僕の指導教授って、軒並み、学内会議とかに参加してこなかった人なんですよね。
よう/その……いわゆる学内政治みたいなのに興味がなかった人なんですね。
タツオ/はい。で、それも結構、いろいろあったんですよ。なんか、「早稲田大学に芸術学部作ろう」とか、そういう運動があったときに、ちょっと反主流派についてしまって。結局、後任ポストも用意できない、みたいな状態で、終わったんですよ。
いん/ああ~……(なるほど)。
よう/うんうん。その……あれですよね、「文学部をどうするか」みたいな問題の時に……結構、派閥が……
タツオ/ああ、そうですそうです。「第一文学部と第二文学部」じゃなくて、「文学部と芸術学部を作ろう」っていうのとがあったんですよね。

よう/その……あれですよね、「文学部不要論」みたいな、なんかそういう大きな流れの中で、派閥争いになってしまったっていう……。
タツオ/そうなんですよね。
よう/そうだなあ……(独り言:何か言いかける)
タツオ/いまだにあるんですよ、「医学部作ろう・作らない」「芸術学部作ろう・作らない」みたいな……
いん/「医学部作ろう」があるんだ……。
よう/まあ、早稲田に医学部があっても、もちろん、いいとは思うんですけどね。
いん/うん……。
タツオ/いや、「作る」というよりは「吸収する」っていう考え方ですよね。
いん/はあ~!
よう/ああ。つまり、それによって今まであった学部・学問が、存在が無くなるっていうのが問題だっていう……。
タツオ/そうですね~。
<--(6分32秒)

タツオ/まあでも、そういう感じだったんで、(自分は)学位を持っていないんですよね。修士号までなんですよね。
よう/ええと、その……。そうですね、我々は、理系……というか生命科学だと、普通にちゃんとやってて、博士号もらえないってことが、ほぼないので……。
いん/ふふっ(笑)
よう/なんか、いろんな理由で途中でドロップアウトしていく人は、もちろんいるんですけれども。

タツオ/あの、おふたりは……ごめんなさい、超・基本的なことなんですけれども。
よう/はい。
タツオ/ええと……全然違う職業じゃないですか。そういうふうに見えるんですけれども。
いん/ああ~。
よう/あ~、そうですね。えっと、「先輩」「後輩」といっているのは、医学部の病理学講座で先輩後輩だったんですね。
タツオ/あ~。ゼミではない?
よう/ええと、僕らは「ゼミ」って呼ばれるものはないんです。
タツオ/ほう!!
いん/……「ラボ」?(笑)
よう/ああ、「ラボ」ですね、呼ぶとしたら。
タツオ/ええっ!? じゃあ、学位をどうやってとるんですか?
よう/学位は、「講座に所属して、大学院生として実験や研究をして取る」っていうのは、まあ同じだと思うんですけど……。
タツオ/「論文」っていうのは、まあ前もちょっと出てましたけど……ええと、何人かで出すわけですよね。
よう/そうですね。だから、ファーストオーサー……を持ってる、ってことですかね。それは大学や学部とかによって、基準が違うんですけれども。もっとも一般的なのは、「ファーストオーサーを1本、英文で書く」っていう……。
タツオ/ああ、「英文ファースト」を、1本?
よう/そうですね。それがスタンダードで。まあ2本っていうところもありますし……
タツオ/ああ。
よう/必ずしも英文じゃなくても、例えば「学内誌で通って、かつ、学内の先生方で選考して、基準を満たしていれば単位をあげる」っていうのもあるんで。
タツオ/基本は「落とさない」ですよね。「とらせる」っていう考え方で。
よう/そうですね、基本的には(学位を)とらせる方向ですね。

タツオ/へええ~。で、「ゼミ」がないとなると……えっと、僕からすると(ふたりは)これだけ密な先輩後輩関係に見えるんですけれども……
いん/へへへ(笑)ほぉ~ん。
よう/ええとですね、「ゼミ」って何なんですかね、結局のところ。よく聞くんですけど、あんまりよく分かってないんですよね(笑)
いん/たしかに(笑)
タツオ/えっと……いや、そうなんですよ。僕も、いろいろよく分んなかったんですけど……「師弟関係」に近いですね、文字通り。
いん・よう/はっはぁ~。
タツオ/だから、「芸人に弟子入りする若手」と一緒だと思います。
いん/ほぉ~。
タツオ/で、「年に1人しか受け入れてもらえない弟子」ってことですね。
よう/ああ~……。え、ゼミってひとりで成り立ってるんですか?
タツオ/えっと、「学年に1人」で、いても MAXで6人。ドクター(博士課程)6年までなんで。
よう/はぁ~。
いん/ああ、へえ~~!
タツオ/で、基本的にみんな、6年までいます。
いん/へええ~。
タツオ/それでも、えっと……僕の、ゼミではなく「専攻」全体の歴史の中で、課程博士とったのは、1人もいないんじゃないかな。
いん/ほお~!
よう/ええ~!! ……ってことは、論文博士ってことですよね?

タツオ/日本人の論博(ろんぱく)が、2人だと思います。
よう/ふたり……。それはもう、だいぶ年がいった……というか、例えば教授とかになってから、博士をとるって感じですか?
タツオ/いや、論博は……結局、課程博(かていはく)が間に合わなかった人が、40すぎくらいに取るって感じですね。
いん/ふ~ん……。
タツオ/それも、査読できる先生が学内にいる場合。
よう/それは逆にいうと、博士号を持ってなくても、スタッフというか大学教員として、ずっと研究できるっていうことですよね。
タツオ/う~んと……そうではなくなってきたので、「博士号を出そう」という動きが、僕の下の学年から始まったんですよね。
よう/ああ(なるほど)。
タツオ/それまでは、すごく有名な先生が定年退職後にとるのが、博士号……だったんですよ。
いん/へえぇ~!(笑)
よう/いやもう、だからその辺が根本的に違いますよね。
いん/まるで違う(笑)
タツオ/だから、いま80くらいの文系の先生方っていうのは、大学院生時代が少なかった時代の研究者なので……
いん/ははぁ~。
タツオ/あの……とても優秀な人は、博士号とる前に、就職しているんですよね。
いん/はっはぁ~。
よう/大学に残らない……?
タツオ/なので、博士号を持ってないんですよ。
よう/はいはい……えっと、大学に残る場合は? 大学に就職する場合でも、博士課程を終わる前にスタッフになっちゃうってことですよね。
タツオ/はい。

よう/確かに、理系でも、マスター(修士課程)を出た後に、すぐ「助教」……昔なら「助手」のポストになって、その後に博士号をとるっていうパターンはあるんですけど……。
いん/あ、そうなんだ。
よう/うん。でも、どんどん減っていってるとは思いますね。昔は結構多かったみたいですけど……。
いん/はあ~。
よう/で、そもそも、……まあ学部はあれですけど、特に研究所の方では、「代々続く教室」っていう概念がもうなくなってて。えっと、「研究所全体でポストがいくつあって」で、誰かがやめるとあくので、そこに、(前任に)全然関係なく、「その時に研究所全体で採りたい人を採る」みたいな感じなんで……。
いん/ほぉ~。
よう/まあ要は「アメリカ型」だと思うんですけど。
タツオ/学閥も存在しないってこと?
よう/学閥も……そうですね、あんまり存在しないですね。個人的に、上の……研究所の中で偉い先生が「こいつを引っ張りたい」みたいな、そういう個人のコネクションは、もちろんあるんですけど。
タツオ/ふむふむ。
よう/その……まあだから、研究所だからかもしれないんですけど、学閥みたいなのは、あまりないですね。
タツオ/今、どこも、割とそういう感じですよね。
よう/うん、そうみたいですね。
<--(12分10秒)

タツオ/ただ、公募して採るにも、やっぱ「3年の任期付き」とか、「5年任期付き」とかの形でしか、就職がないですよね。
よう/……そうですね。パーマネント(無期限雇用)は、基本的に存在しないことになってるみたいですけどね。
タツオ/ああ……じゃあ、そこは同じなんですね。
いん/ふぅ~ん……。
よう/そうですね。文系・理系っていうよりは、「文部科学省がどう考えているか」ってことですよね(苦笑)。

タツオ/で、生命科学の「ラボ」って、何人くらいいたんですか。
よう/えっと、うちは結構多かったんで……技術職員の方とかも全部あわせると、30人くらい。
いん/そうですね。
よう/30人~40人の間くらいですかね。
タツオ/「技術職員」ってなんですか?
よう/ええと、うちはですね……要は、病理学の基礎的な……いわゆる「生物系の研究」をするとともに、「病理診断」も請け負っていたので……。例えば今、いっちーがやっているような、手術をした検体とかを顕微鏡で見るなり、いろいろな方法で「診断する」っていう……これは完全に「医療」ですよね。だから、医療業務と基礎研究っていう、柱が2つあったので……
タツオ/うん。
よう/で、「病理診断」の方では、臨床検査技師の方が、そういう……検査のためのいろいろな……検査を、いろいろ、やってくれると。う~ん、これは多分、いっちーが説明した方がうまくいくと思う(笑)
いん/んふふ(笑)……要は、同じ講座・ラボの中でも、「診断業務」っていうと、単純に「医療業界での技術を担当する職員」っていうのが、直参(じきさん)として、いるんですね。そういうのも「ラボのメンバー」と呼ばれるので、「大学院生として学位をとる」とかとは関係なく、「お給料をもらって標本を作る」「診断の手伝いをする」という人も含めての「ラボメンバー」だったので、かなり規模が大きかったですね。
タツオ/ああ、じゃあ「同じ領域を共有している、立場の違う人たちがいる」っていうこと?
いん・よう/そうですね。

よう/大学院生は、だいたい10人くらい?
いん/大学院生……そうだな、博士で10人くらいか。
タツオ/ええっ!? あとの20人は何なんですか?
よう/スタッフが……5~6人? 7~8人?
いん/スタッフは5~6人、あと……いや、大学院生もだから……もうちょっといるのか……(ぶつぶつ)。なんかこう、場合によって、出入りしている人がゴロゴロ変わって、いつの時代で数えていいか、よく分かんないですけど。
タツオ/ええ~!?
よう/ああ、そうか。「常時ラボにいる大学院生」が10人くらいで、他の科から来てる……例えば「内科の先生とかで、うちで研究してる」っていう人は仕事が終わってから色々来たりするので、そういう人が数人、いつも入れ替わりで出入りしている、って感じですかね。
いん/そうですね、そうですね。
タツオ/ほおぉ~。いやあ、全然想像がつかないな。そういう感じなんだ。
よう/そうなんですよ。
いん/共同研究だったり、あとは……僕らが大学院に行った時は、結構デカイ予算が動いてたので、デカイ機械をアテにして、ほかからやって来てる人も、結構いましたよ。
タツオ/ふ~~む。

よう/割と、文化として……例えば、内科系とか外科系の大学院生で、基礎的な研究をやりたいっていったときに、臨床の方ではあまりそういう研究をしてなかったとしても、「内科の講座の大学院生なんだけど、うちみたいな、病理でちょっと基礎的な研究をしている講座に来て研究してる」っていうパターンが、けっこうあるんですよね。
いん/うん、うん。

タツオ/……よう さんは、病理をやってたの?
よう/病理やってました、大学院生のときは。で、僕は学位をとったあとに、「基礎研究に行くか、診断病理に行くか」で、研究の方にいったんです。
タツオ/へえ~!!
よう/で、いっちーは診断病理の方にいったっていうんで、道が分かれてるんですけど。
いん/そうそう。
タツオ/へえええ~!!
<--(16分05秒)

タツオ/え、でも最初は病理じゃなかったんですか? いん さん……ヤンデル先生は。
いん/えーとですね、僕、大学院時代は「両方やろう」と思ってたんですよ、最初。
タツオ/へえ~! そんなのもできるんだ。
いん/当然、ものすごい数の人に怒られましたよ、「どっちかにせえ」って(笑)「そんなんできるわけない」って。
よう/(笑)でも、バランスとしては皆、一応、両方やることになってたよね。
いん/一応、なってましたよ。ただ、ちょっと夢を遠くに置いたときに、本当に「両方やったまま」って最初は言ってたんですけどね。結局、どっちつかずだったな~……。
タツオ/それで、(よう先輩が)悩みとかを相談する「先輩」だったんですね?
いん/相談……してないですよ、多分、あんまり……。あははは(笑)
タツオ/(笑)
よう/あのね、こういう時、かたくなに認めないんですよ(笑)「ただ、一緒に呑みに行ってただけです」(笑)
タツオ/あ、でも一緒に呑みにに行くくらいは仲良かったってことですね?
よう/はい、はい。
いん/そうですね、よく行ってましたよね……(ぼそっと)

タツオ/そういう文化はあるんですか? 先輩と後輩が呑みに行くっていう文化は。
よう/ありますあります。それは、どっちかっていうと多分、医学部の文化だと思うんですけど……。
いん/ああ……。
よう/「呑みに連れていく」みたいな。
いん/確かに(笑)
タツオ/先輩が?
よう/そうですね、上の先生なり、先輩が連れていくっていう。
いん/ああ、うん。
タツオ/芸人みたいですね。
よう/そうですね。全部おごるんですよ。
タツオ/やっぱりそうなんだ(笑)
よう/はい(笑)まあ、うちはそんなに体育会系じゃなかったんですけど、外科系に行ったヤツに聞くと、外科系って体育会系なんで、「上の先生の前で財布出すと怒られる」って言ってましたね。「俺の前で財布出すんじゃねえ」っつって(笑)
いん/うん(笑)
よう/まあ、そういう文化はある……ていうか、結構あったみたいですけどね。
タツオ/ああ……落語協会の真打、みたいなことですね、だから。
よう/そうなんですかね(笑)
タツオ/(笑)
よう/それはその、あれですか。お笑いっていうか漫才師関係と、落語家さんは、また違うんですか?
タツオ/いやあ、違いますよね。
いん/なるほど……。

タツオ/……ああ、ようやく理解しました。そういう感じで、おふたりは今、全然違う仕事をしているけれども、根が一緒だったということなんですね。
よう/そうです。だから、お互い何をやっているか、話を聞けば、うっすらだけど分かるっていう……。
いん/そうか……大学院の話を掘ると、我々の関係を第三者からツッコまれるってことになるんだなあ。面白いな(笑)
タツオ/だって職業違いすぎません?
いん/ああ……。
タツオ/あ、でも……法律分野で言ったら、「弁護士になってる人」と「法学を研究してる人」みたいなことなんですかね?
いん/おおお……(笑)
よう/ああ、まあそうですね。えっと……「そんなにめちゃくちゃ離れてはいない」っていう認識なんですよね、僕らの中だと。
タツオ/ああ……。
よう/まあ、例えば僕が「今、いっちーの仕事をしろ」って言われたら、確実に無理なんですけどね。それはもう、専門職なんで。それは、お互いにそうなんですけど……
いん/そうですね!
よう/でも、そんなに、すごい離れているわけじゃないですね……。
タツオ/いやだから、時々、ふたりが僕らを置いてけぼりにしてくれる瞬間があるんですよ。
いん/あっはっはっは(笑)
よう/はい、あの……気を使っていただいて、ありがとうございます(苦笑)

タツオ/あの……(笑)あれなんですよ、僕……「カーグラフィックTV」見てる時もそうなんですけど……。
いん/あはははは(爆笑)
タツオ/あの~、松任谷さんと田辺さんが、僕らを置いてけぼりにする瞬間があるんですよ。

よう/えっと、マニアックすぎて、何を言っているか分からないけど……(笑)
タツオ/そうそうそう(笑)
よう/とりあえず、一所懸命話しているさまを見てるっていうか。
タツオ/そう。だからなんかね、俺、一番好きなフレーズがね、「巨核球がトラップする」みたいな話を2人でしてるんですけど……何の説明もないんですよ。
よう/ああ~!「肺の静脈に、巨核球がトラップしてるだけなんじゃない?」っていう話ですよね。(※声が重なって聞き取れない)
タツオ/そうそうそうそう。それに一切、注釈がなかったのが、すげー気持ちよかったんですよね。
いん/あははははは(笑)
よう/(笑)あの一応、素人ながらに「置いていかないようにしよう」とは思ってるんですけど……
タツオ/あ、そうなんだ。
よう/ええ。
タツオ/「巨核球ってなんだよ」「トラップってなんだよ」っていう感じでしたけどね。
よう/ええ……なんかやっぱり、無理な瞬間があるんですよね。
タツオ/あはははは(笑)
よう/でも僕が好きなのは、いっちーが「もう置いていってもいい」って開き直ってる瞬間があるんですよ、たまに。
タツオ/ああ~、なるほど。
いん/あはははは(笑)
よう/たまにですけど。
いん/たまにっていうか……基本的にあまり「ついてこい」をやった覚えがないですよね……あんまり……。
タツオ/あはははは(笑)
<--(19分50秒)

よう/んで、あの……これ、タツオさんの自己紹介の途中なんですけど、タツオさん、NBAも得意じゃないですか。
タツオ/ああ、バスケット(ボール)ね。
よう/はい、バスケット。で、『ぷらすと』っていう、最初はWOWOW(ワウワウ)のネット番組として始まった、「いろんな文化を話す」っていう番組がありますよね。

タツオ/はい。
よう/そこで、『NBA井戸端会議』っていうのもされてるじゃないですか。
タツオ/やってる。
よう/僕は、NBA ほとんど見ない……まあ、今そんなに見ないんですけど……
タツオ/え、でも「バスケットやってた」って言ってましたよね。
よう/あ、そうですね。高校生の時はやってたんですけど。で、その時は、ジョーダンとか、ブルズとか……マローンとストックトンとか、ああいう時代はちょっとだけやってたんですけど。
いん/ユタ・ジャズとかね(笑)
よう/それ以降、ずっと見てなかったんですけど、『NBA井戸端会議』は、いまだにずっと見てるんですよ。
タツオ/いやだから、取り残された人たちですよね?……(笑)
いん/あははははは(笑)
よう/そうそう(笑)で、今その……在宅勤務で、若干精神的に……不安定じゃないんですけど、落ち込むことがあるんですけど。
タツオ/はい。
よう/そういう時は、必ず『NBA井戸端会議』聞いてますね。
タツオ/面白いもんね、アレ。面白いもん。
いん/あはははは(笑)
よう/そうそう(笑)なんか、「そこまでめちゃくちゃ自分が好きじゃないものを、ひとが一生懸命話しているのを聞く」って言うのが、一番、なんか心地いい瞬間があるなあと思って。
いん/な る ほ ど~。
タツオ/まったく一般の人に対して「開いてない」コンテンツですもんね、あれ。
よう/そうですね(笑)でもあの、何回も同じ選手の名前が出てくるので、だんだん覚えてきましたけど。
タツオ/ああ。「ザイオン・ウィリアムソン、やばい」みたいな話しかしてない(笑)
いん/あははは(笑)
よう/そうそう、なんか「2mないのに、すごい」みたいな(笑)
タツオ/「歴代3位の体重があって、あの高さってなんだ」みたいなね(笑)
よう/「シャックとそんなに変わんないだろ」みたいな話ですね(笑)
タツオ/そうそう。あ~、そうなんだ。ありがとうございます。そんな、ニッチなところまで。
いん/すごいな、本当にファンなんだな……(小声で)

<--(21分30秒)

よう/で、えっと……今は、早稲田とか一ツ橋大学とか、あと成城ですか、そのあたりで非常勤講師をされている、ということですね。
タツオ/まあ、4月はないですけどね。
いん/ああ……。
よう/
ええ。今期はやっぱり、ないんですか。
タツオ/えっとだから、今は、Zoomを使った授業の研修ばっかりやってます。
いん/はは~あ。
よう/
「研修ばっかり」かあ……。
タツオ/だから、「パワーポイントをどう展開するか」とか。
いん/ああ~……!
タツオ/「添削をどうやるのか」とか……
よう/ああ、添削……!まあ、そっか。PDFかなんか、送ってもらえばいいのか。Wordとか。
いん/大変だ……。
よう/大変だなあ。
タツオ/はい。なんか、大学のシステムにまずアップしてもらって、添削したやつを、再アップロードするやり方で……
いん/げぇ~っ!!
よう/ああ……。
タツオ/なんか、何十人かいるクラスの中の、一人ずつに個別学習をやってもらう、みたいな、そういう使い方とかですよね。
いん/うおぉぉ……。

よう/……なんか今、大学のサーバー、ずーっと混んでますね。いつ行っても。時々、入れないし。
いん/あはは(笑)
タツオ/やっぱ、「ネット後進国なんだな」っていうのを、実感しますよね。
いん/ああ……。
よう/まあ、学校教育でもなかなか移行しづらいっていうの、あるみたいですよね。
タツオ/うん……。
いん/僕も、2つ3つ講義があるんですけど、全然、進まないです。そこまでいってないですね。もう混乱しちゃってて。
タツオ/うん、うん。
いん/固定の講師が1クール持っているような講義じゃなくて、講師が入れ替わり立ちかわり……っていうので、たまに僕が入ってくるようなタイプのやつだと、もう全然、講義自体が「いまだにどうしていいか分からない」っていうんで、完全にペンディング(保留)ですね。
タツオ/ああ、なるほど。いやだから、ええと……13回の授業を……あ、14回ある授業を、まず「10回に縮めてくれ」っていうので、まず「シラバスを書き換えてくれ」と。
いん/ああ~、なるほど。
タツオ/それを、日本語版と英語版でまた書かなきゃいけなかったりとかっていう……。
いん/ああ、「英語版」。へ~。
タツオ/留学生にね、日本語教えてるんで。
いん/ああ~、なるほど。そうか、すごいな……。
よう/いや僕、いま立場的に授業はほとんど持ってないんで……
タツオ/うん。
よう/でもその、なんか……うちにいる大学生も、Zoomとか使って、授業を受けてる……。ちょっと、アレですよね。まあ、いつもながらですけど、教員と、うける生徒の負担に全部かかってる感じはしますけどね。
いん/うん、うん。
タツオ/でもまあ極端な話、学生はログインさえしちゃえば、あとは寝てても構わないんじゃないかな、と思いますけど(笑)
いん/(笑)
よう/まあ、そうかもしれませんね(笑)
タツオ/出席とる側が、大変なだけで……。
いん/うん……。
よう/確かに。

タツオ/まあでも、1~2年これが続く想定で、研修してますよ。
いん/へえ~。
よう/ああ……うん、まあ、でも、そのほうが正しいかもしれませんね。すぐ終わるかどうか、分かんないですからね。
タツオ/あと、日本に来られない学生とかが、母国で授業を受けたりとか……。
いん/げぇ~っ、すごい!そこまでちゃんと考慮してあるんですね。
よう/ああ……。
タツオ/「それって留学っていえるのか」っていう……(笑)
いん/確かに(笑)
よう/(笑)逆パターンで、ヨーロッパに留学しようと思っていたけどいけないから、向こうのラボミーティングに、日本から参加しているっていう人は知ってますけどね。
タツオ/ああ~、なるほどなるほど。
いん/へええ~。それ、もうそれだけで良いのでは?(笑)……っていう話はないんですかね。(笑)
<--(25分00秒)

よう/ええと、あと……その……タツオさん、紹介しづらいですよね。その……ええと、専門というか、それがたくさんあるじゃないですか。
タツオ/はい。
よう/あとは、ええと……落語が。
タツオ/ああ、そうですね。
よう/早稲田の「落語研究会」に、入っていて……で、ずっと落語ファンで、今は『渋谷らくご』の番組構成をされていると。

タツオ/……「落語ファン」なのかなあ。それもちょっと、よく分かんないね。
いん/あはははは(笑)
よう/タツオさんは、アニメもずっとお好きで見ていると思うんですけど、アニメは「アニメファン」っていえるんですか?
タツオ/アニメはね、「アニメファン」ですね。
いん/(笑)
よう/ああ。(なるほど)でも、落語は「もっとこじれてるから、落語ファンかどうかも分からない」ってことですか。
タツオ/ああ、「憎い」までいってるからね。
いん/あっはははは(笑)
よう/(笑)……今でも、その気持ちはあるんですか。
タツオ/ある。俺の中の何人かの俺は、やっぱりその……「もう落語家も落語ファンも、みんな、やめちまえばいいのに」って思ってる。
いん/「何人かの俺」……
よう/それは、何人中の何人……何票がそう思ってるんですか? その、保守的な……(笑)
タツオ/保守的?(笑) ……まあ、10議席あるとしたら、常に3議席はいますよね。
よう/ほう。じゃあ、割とマイノリティでもないんですね(笑)
タツオ/そうですね、発言権持ってますよね。
よう/じゃあ、リベラルで……例えば『渋谷らくご』って、初心者向けっていうか、「初心者の人にも来てもらいやすい落語会」っていう面があるじゃないですか。
タツオ/うん……まあそこは、「人文知(じんぶんち)コミュニケーション」じゃないですけど……
いん/ほう、ほう!(身を乗り出す感じで)

タツオ/「落語」という、割と「一般の人からするとなかなかよく分からないんじゃないかと思えるもの」が、「そうでもないよ」っていう、コミュニケーション……コミュニケーター的な立場ですよね、僕は。
よう/ふむ。それは10議席中、何議席くらい持ってるんですか?
いん/んふっ(笑)
タツオ/ええと、そこは……経済が動いているので(笑)
(いん・よう/(笑))
あの~、5議席を下回ることはないです。過半数はいますけどね(笑)
いん/面白いな~(笑)
よう/あはははは(笑)……じゃあ、一応、「リベラル6:保守4」くらいの、安定した政権なんですね、今のところは。
タツオ/今のところは、そうですね。でも本当に、あの、「過半数割れ起こすか?」っていう、ギリギリのところまでいくこともありますけどね。
よう/それはあれですか、精神状態によるってことですか。
タツオ/そう……ですね。まあ、あとはモチベーションとか、そういうことですかね(笑)
いん/はえ~、すごいな。

よう/タツオさん、「渋谷らくご」でしばらく番組構成をされて、会の前に挨拶をされたりとか、現場にいらっしゃるじゃないですか。で、時々おっしゃってますけど、あれ「金銭的に、割には合ってない」と……
タツオ/合ってない、と思うね……。
よう/それで、モチベーションが下がってくると、色々負担が増える……精神的な負担も増えるっていう……
タツオ/うん。
いん/(笑)「理解」、みたいな(笑)
タツオ/最初の1年は、とにかくしんどかったっすねえ……(しみじみ)
よう/そうですか。いろいろ……「会が認知されて、軌道に乗るまで」ってことですか。
タツオ/ん~。まあその、お客さんに認知される前に、演者さんに認知してもらうまでが、ものすごい大変でしたね。
いん/へええ~、なるほど! そうか、そうなんだ!
よう/ん~……まあ僕は、たまに見に行くくらいなんで、その……「新しい落語会ができて、いいじゃん」くらいにしか思……わなかったんですけど。
タツオ/ありがとうございます。
よう/いえいえ。やっぱり、その……業界ごとに、習慣とか、文脈みたいなのがあるのかな?って、話を聞いてて思ってたんですけど。
タツオ/あの~、だから「文脈だらけ」なんだよね。
いん/ほう、ほう!
タツオ/なので、例えば1人、ものすごい人気がある演者さんがいて、「その人に出てもらおう」となると、今、ずっとその人を出している落語会とかが、面白くないわけですよ。
いん/ほう……へええ(笑)
タツオ/……とか、ええと……もう60代を超えてきて、もう、「この船出てます」っていう感じの……「あとはこの船に乗った人たちだけで、この船の旅行を楽しみましょう」みたいなキャリアに差し掛かっている演者さんもいるわけですよ。
いん/へえええ~~!!
よう/それは、「もう新規(客)は要りません」みたいなことですか?
タツオ/はい。もう新規なしで成り立つし、ええと「分かってる人だけで高めあっていく落語をやるべきだ」っていう、考え方の人もいるわけですよね。
よう/それは、アニメでいうと『Fate』みたいなことですかね。
タツオ/ま、そういうことですね。
いん/(ツッコミ気味で)ちょっと待ってください!?
タツオ・よう/あはははは(笑)

<--(29分41秒)

いん/えっと、何? 今の……(笑)
よう/『Fate』、入れないんですよ……はい。すみません(笑)
いん/今の会話に入るのに苦労したけど(笑)そうか、なるほど?(笑)
タツオ/まあ、だから「なんで、わざわざ初めて来るような人がいるところに出なきゃいけないんだ」って、お客さんから演者さんが文句言われたりとか、主催者から文句言われたりとか。
いん/はっは~ぁ。
よう/う~ん。
タツオ/で、色々そういうことがあって、「ああ、ここを叩くと、こういうところが文句言ってくるんだ」っていうのが、いくつか分かるんですよね。
よう/なるほどなるほど。
タツオ/な~んか、よく分からないけど俺、菓子折りもって謝りにとか、行ったよ。
いん/菓子折り……(笑)
よう/(笑)……そうなんですね。いやあ、やっぱり……研究業界でそういうの、あるかなあ? まあ、より「文脈を大事にする人たちが多い」ってことですよね。職業柄。

タツオ/そうですね、うん。……ただ、ずっとそこでやっていた人たちからすると……
よう/うん。
タツオ/なんか、別の世界からいきなり第3勢力みたいなのが来て、今まで自分が築き上げてきたものをぶっ壊すか、持ってくか、するんじゃないかっていう恐怖心は、常にあると思うんですよ。
いん/ははぁ~。
よう/ああ、そっか……。
タツオ/まあだから、その……例えば、プロ野球って12球団しかないけど、「全くよく分からないIT会社が1つ球団買った」ってことになると、皆、ビビるじゃないですか。
いん/ぶふっ(笑)
よう/なんか、あの時めちゃくちゃ抵抗ありましたよね。外から見ててもなんか「こんなに抵抗されるんだ」って思いましたもん。
タツオ/もうライブドアの時とか、そうでした。
よう/そうですそうです。
タツオ/ああいう感じです。
よう/はぁあ~(なるほど)。え、それって、タツオさん、日本語学の界隈でもありますか? 研究で……。

タツオ/日本語学の界隈で、似たようなこと……どうなんだろうなあ?(考えている)
よう/「新規でバーっと参入してきて」みたいなときに、すごい抵抗がある、みたいな。
タツオ/ええと、新規かどうか分かんないんですけど……
よう/はい。
タツオ/例えば早稲田大学でいうと、「日本語教育研究科」っていう大学院を作る時に、結構モメましたね。
いん/ほぉおおお~(笑)

よう/ははあ。で、それは出来たんですか?
タツオ/はい。あの、日本語教師だけを育成する研究機関で。
よう/ははあ、なるほど(独り言的に)。
タツオ/日本語学とかの「基礎的な知識」というものを問わずに、まずは研修をさせるっていう。
よう/それは、留学生とかってことですか?
タツオ/そうですね。あの、ひたすら授業をさせて、日本語教師の資格を取るための……
よう/ああ~、日本語教師。
タツオ/「限りなく専門学校に近い」というと言葉は悪いんですが、職業訓練というかたちで……もう本当に「日本語教師になるための大学院」っていう。
よう/はあはあ。(うなずく感じ)
タツオ/で、他の学部とか研究者とかも、横断的な対話があんまりないっていう。


よう/はあぁ、そうですか。……なんか、その……「研究の対話」っていうことでいうと、まあ学際的な研究というか、「異分野で交流すべきだ」っていうことが、ずっと言われるじゃないですか。
いん/うんうん。
よう/それって、でも……活発だったことってあるのかな? というのが、聞いてて思うんですよね。
タツオ/えっとね、だから……僕はちょっと、ほかの大学はよく分かんないんですけど、早稲田に関しては……
よう/うん。
タツオ/えっと、例えば「日本語をやろう」「日本語学をやろう」っていう場合は、まず、「文学部に入って、現代日本語をやる」っていう選択肢があったんですよね。
いん/ふむふむ。
タツオ/あともう1つは、「教育学部に入って、国語をやる」っていう選択肢があったんです。
いん/ほほ~ぉ。
よう/(考えつつ)それは、その……「教師になるための職業訓練」的なことではなく、「研究」として、あるってこと? 「教育学の研究の中に国語がある」ってことですか。
タツオ/まあ、国語の教員になることを基本的には目指してるんですけど、教育的な……まあ、「国語学」ですよね、それやるのは。
よう/それは、「日本語学」と「国語学」は違うってことですか?

<--(33分55秒)

タツオ/ああ、ええと……。厳密にいうと……マニアックな説明になっちゃうんですけど。
よう/はい。
タツオ/「ツウジ的な研究が国語学」で、「キョウジ的な研究が日本語学」なんですよ。
いん・よう/(ほぼ同時に)「ツウジ」と「キョウジ」……。
よう/あの、すみません。もうちょっと説明してください。

タツオ/「通時(つうじ)」は「時を通る」と書きます。つまり、「縦軸」ですよね。昔から現在まで。
よう/ははあ。それが、「国語学」。
タツオ/はい。で、「共時的」というのは、「時を共にする」。
いん/なるほど。
タツオ/現代日本語……まあ戦後とか……どこからを「現代」とするかは議論の余地があるんですけど、「現代日本語」を横断的に、つまり「横」をとにかくやる、っていうのが「日本語学」ですかね。
よう/……で、ええと? 教育学部でやるのが「通時的」なんですか?
タツオ/通時的ですね。
よう/はぁ~。
タツオ/教育学部には、国文学科ってとこしかなかったんで。
よう/それはその、例えば……「国語の教師になる時に、通時的な日本語を勉強してなければダメだ」ってことなんですか?
タツオ/まあ、古文が教えられないですからね。
いん/なるほど!
よう/そういうことか。


タツオ/で、もう1つ、「日本語センター」ってとこがあって。そこは共時的な研究に特化したところだったんですよね。

よう/ははあ。今の日本語、現代の日本語ですね。
タツオ/はい。で、その3つが、うまく役割分担ができていたところに、「日本語教育研究科」を作って、それを、まったくアイソレートした形で運営するので、「どうなんだ」っていうのが……まあ、言ってたのは、僕の……「負けた」人たちの論理なんですけど……あはははは(笑)
よう/(笑)……まあ、確かに、アカデミアのトレンドでいうと、そういう、社会的価値と直結するものをやらざるを得ない、みたいな……。それをうまくやりつつ、基礎研究できる場所も確保する、みたいな、まあそういう感じですよね。
タツオ/まあでも……「日本語教育」というのは「日本語学」の、いちジャンルなんですよ。
いん・よう/うん。

タツオ/まあ例えば……「まず」という言葉を考えたときに、日本語学の人たちは「まず」の「意味」を記述していったり、考えたりするわけですよね。でも、日本語教育でいうと、「まず」を「最初に(という意味だ)」と外国人に教えたとすると、じゃあ「だいたい」という意味はいつ教えればいいんだ?……ってことになってくるわけですよね。
いん/「だいたい」……。
よう/「まず大丈夫だ」みたいなことですか。
タツオ/「この商品はだいたい1000円くらいだろう」っていうときに、「まず1000円は下らないだろう」みたいなこと言うじゃないですか。
いん/おぉ……。
よう/はいはい、ええ。
タツオ/じゃあ、「まず」は「最初に」と「だいたい」だ、と外国人に教えるわけですよ。
よう/うん。
タツオ/で、そうすると……えっと、「この本だいたいいくらですか?」って言ったときに「この本まずいくらですか?」っていう疑問文を作っちゃうんですよね、外国の人は。
いん・よう/はっはあ……。
タツオ/で、日本語教育の人たちは、そういう「誤用文(ごようぶん)」を集めて……あ、間違った文を「誤用文」というんですけど。
いん/うんうん。
タツオ/誤用文を集めて、日本語学に還元していくんですよ。
よう/なるほど。
タツオ/だけど、そこを日本語学とコミュニケーションとらないと、「これはこう教えればいい」っていう、機械的な作業にしかならないんですよね。
いん/うう~む。
よう/それって、医学でいうと、「基礎医学と臨床が分離してる」っていうような感じですかね?
タツオ/あ、そういう感じだと思います。
よう/実際現場で日本語を教えている人たちと、基礎の人たちの交流が……ていうか、「現場からもデータは出てくる」ってことですよね。

タツオ/そうそう。スポーツだったら絶対、こんなのありえないじゃないですか。
よう/そうですね。
タツオ/現場の選手たちと、その……チームをオーガナイズしているフロント陣というのは、絶対にコミュニケーションをとらなきゃいけない。
よう/「戦術を考える側」と、「戦略を考える側」とってことですよね。
タツオ/そうですね。
いん/ふむふむ。
タツオ/まあでも、そこのコミュニケーションが破綻すると、チームがただ負けていくっていうのが、「結果」としてあらわれちゃうから。
いん/ああ。
タツオ/まあでも、理念的・観念的って思われちゃうんですかね、こういう話をすると。……まあ、うん……そうなんですよ。
いん/「理念的・観念的って思われちゃう」?……いやむしろ、この話もっと聞いていたいな~って感じですね、どっちかっていうと。こういう話、大好き。

<--(38分08秒)

よう/例えば、いっちーは「ケースレポート書かなきゃ」っていって、できるだけ書くようにしているわけでしょ?
いん/そうですね。
よう/で、それって「現場からあがってくるデータの一種」だよね。
いん/そうですね、そうですそうです。
よう/で、それを、ひたすらまず蓄積していって、その中から何か新しいものが生まれるんじゃないかっていう、ことだよね。
いん/え~っとですね、おっしゃる通りです。それが1つ。あと1つは、そういう困難にぶち当たった人が、ケースレポート(症例報告)……「こういう症例を経験しました」って書きたくなったメンタルまでを、なぞるっていう意味がありますかね。
よう/ふむ……。
いん/「こういう困難にぶち当たった時、人間はこの順番に考える」っていうのをシミュレーションとして残しておくと、後からその思考をなぞって同じ目に遭わない人が出る、という。ちょっと教育的な……それこそ、「誤用の教育」みたいな感じ……が、ある。ただ、誤用の教育だけで終わらせてしまうと、その症例報告が浮いてくるので、「科学の中で、ある症例がどういうポジションにいるのか」っていうのを定める人も、やっぱり必要で。
タツオ/うむ……。
いん/まあ、両方見てないといけない。「通時的と共時的」っていう話・言葉は初めて聞きましたけど、「分類思考でいくか、時間軸に沿った系統樹の思考でいくか」みたいな、そこを両方やれっていうのが、症例報告ですね。
タツオ/まあ、普通に考えたら両方……ですよね。
いん/はい、普通に考えたら両方だと思います。で、そこに哲学が要ると。
タツオ/そうなんだよな。だから医学だと、そこを怠ると人の命とかにかかわるから、両輪動かさないといけないっていうのが、たぶん肌で分かるんですよね。
いん/いや、その代わりちょっと難しいと思うんですよね。いまの「哲学」を、ちゃんと考えてないと、どんどんどんどん脱輪していくことは間違いないんですよ。ハマっちゃうんですよね、やること自体が楽しいので(笑)
タツオ/ああ、そうか(笑)なるほど。
よう/(笑)
いん/先輩、なんか研究をやっている中で、「共時的・通時的」という言葉って……僕も、臨床の側でも全然考えたことなかったんですけど……。

よう/生物研究でいうと、多分、通時的な研究・時間軸の研究っていうのは、もうロマンだと思うんだけど……
いん/「ロマン」!(笑)
よう/ええと、やるのがすごく難しいから、やっている人自体の数は少ないと思う。
いん/あ、そうなんですか。
よう/それはつまり「進化学をやる」ってことになるので……
いん/ああ、そうだ、そうだ。
よう/じゃあ「恐竜の研究します」って言っても、生物学的に研究することはすごく難しいから、まあ考古学の一種になると思うけど……。やっぱり、解析手段が「今生きている生物を研究する手段」に比べて、めちゃくちゃ限られている。
いん/そうですね。
よう/その代わり、なんかロマンあるよね。
いん/ロマンありますね(笑)
タツオ/ああ~(なるほど)。
いん/……っていう、そういう「哲学」を日頃から鍛えてないと、この話、たぶん出来ないんですよね。
タツオ/そうかあ……。
よう/だから、やっぱり9割くらいの人は「今の生物」の研究をしてると思いますけどね。
いん/ああ……。そうか、なるほどな……。でも、面白いな。

<--(41分10秒)

よう/それは例えば、日本語の研究だとしても、昔の日本語を研究する方が、難しいわけですよね。
タツオ/まあでも、資料があれば、まずはそれをきっかけに……ってことですよね。
よう/資料の数が、昔にいくほど、どんどん少なくなっていくってことですよね?
タツオ/ただ、たま~に発見されたりするんですよ(笑)
いん/あははははは(笑)
タツオ/それが、「ロマン」なんだよ(笑)
よう/ああ……それは(笑)まあ、ロマンだと思うんですけど。なんか最近、4万年くらい前の「ひも」が見つかったって話が、ジオグラフィックか何かに……。えっと、それは「ネアンデルタール人が、ひもを作れたんじゃないか」っていう話で。
タツオ/おお……ああ、もう結(ゆ)えたんだ。
よう/はい。
いん/あはははは(笑)

よう/まあ、4万年前で、その地域がネアンデルタール人が住んでたってだけなんで、昔の(現生)人類が作った可能性は否定はできないけど、……でも、その……「ひもを結える」ってことは、なんかその、「数の概念がある」ってことらしいんですよね。「2」とか「3」とか。
タツオ/ああ。アツい……。
よう/で、空間的な……要は「認識能力が現生人類よりも低い」って思われていたけど、そんなことはないんじゃないかってことで。
いん/へぇえ~!
よう/ここ最近続いている、「ネアンデルタール人を見直す」みたいなモードの1コかなと思うんですけど……
いん/「モード」?(笑)
よう/うん。そういう、1コ発見があるたびに、今までの通説が覆ったりとかする楽しさは、ありますよね。
いん/ああ~。……(何か言いかけて、サンキュータツオさんと重なる)
タツオ/いやなんかその……(言いかけて重なる)あ、すみません。
いん/いえいえ、どうぞどうぞ。

タツオ/日本語学でも、あの……「日葡辞書(にっぽじしょ)」っていう、ロマンあふれる本があって。
いん/「にっぽじしょ」……?
よう/それ、ポルトガル語のやつですか?
タツオ/そうです。
いん/よく分かるな(笑)
タツオ/そうです、「日本-ポルトガル語」の対訳辞典があるんですけど。
日本にキリスト教を布教しに来た宣教師が、現地の言葉を聞いて……「布教するためには現地の言葉を覚えなきゃいけない」っていうので、辞書を作ったんですよ、江戸時代に
よう/うんうん。

タツオ/で、その時初めて、「どうやって発音するか」っていう情報が、記述されたんですよね。
いん/おお!?
タツオ/なので、日葡辞書を読んで初めて、その時代の発音を、(現代)日本人が知ったんですよ。
いん/はぁあ~~!!
よう/日本語表記だと、分からないですもんね、今の発音しか。
タツオ/そう、分からない。だから、ハ行が「ふぁふぃふふぇふぉ」だった、とか。
いん/ああ!
よう/ええ、それは聞いたことあります。
タツオ/「ぱぴぷぺぽ」だったんじゃないか、とか……。そういうのも、全部その史料から分かるんですよね。
いん/なるほどぉ~!
よう/あの~、「上代(じょうだい)日本語」ってあるじゃないですか。
タツオ/はい。
よう/昔……ですよね。あの時の発音が(今とは)全然違う、っていうのは、YouTubeとかにも、「その時(時代)の発音で日本語を読んでみる」みたいな動画があるので見たことがあるんですけど……
タツオ/あるんだ(笑)
いん/なんで見たことあるの……(笑)
よう/何か、「藤原不比等(ふじわらのふひと)」って、……なんでしたっけね?なんか……
タツオ/「ふじふぁらの」じゃないですっけ?
よう/「フジファラノ プピントゥ」みたいな感じですよね。
タツオ/うんうん。多分そういう感じだと思います。

よう/あれって、ああいう発音って、何をもとに予想されてるんですかね? その頃って、別にアルファベットがあるわけじゃないですよねぇ。
タツオ/ええと……万葉仮名(まんようがな)の表記とかから、なんか法則性を見つける人とかが、いるんですよね。
いん/おおぉ~(笑)
よう/ああ~……えっとその「万葉仮名」っていうのは、漢字ですか?
タツオ/漢字……の、当て字ですね。

よう/ああ、そうかそうか。で、例えばその当時の中国の読み方がわかれば、それに近いんじゃないか、と。
タツオ/そうそう。
いん/なるほど……!思考が、思考が追いつくまでにだいぶかかる、なるほどな(笑)
タツオ/で、現存する日葡辞書ってのが、3冊しかなかったんですけど……数年前に、ブラジルで1冊見つかったんですよ。
よう/おぉ~!!
いん/おお~(笑)

https://www.nikkeyshimbun.jp/2018/181010-71colonia.html

タツオ/それは、ポルトガル人宣教師が、ブラジルに行った時に残ってたやつなんですよね。
よう/へええ~。ちなみに、その(従来)残ってた3冊ってのは、完全版で残ってたんですか?
タツオ/完全版です。
よう/あ~、そうなんですね。
タツオ/稀覯本(きこうぼん)で。
よう/いやでも、それもすごいなあ……。

タツオ/でもなんか、去年、源氏物語の『若紫』が見つかったりしたじゃないですか。
いん/ああ、はあはあ。

※文字起こし人より:新聞社の記事も一応貼っておきます(が、古くなると消えたりするので……)

よう/ああ、はい。そのニュースは読んだ記憶があります。意味あいはちょっと、よく分かんなかったんですけど……。
タツオ/だから毎年、なんか、そういうビッグロマンがあるんですよね(笑)
よう/ビッグロマン(笑)
いん/あははははは(笑)

よう/で、今の日本語だと、めちゃくちゃデータがあるから、大規模データベースみたいなの作れるじゃないですか。コーパスというか……。
タツオ/僕、作ってましたよ。
よう/
あ、そうなんですか。
タツオ/国立国語研究所っていうところで。
いん/ええ~……!
よう/あれって例えば、生物学でも患者さんのデータを、ものすごく大量に……何万人か何千人か、集めるっていう。で、そこから色々やるっていうことが可能です。
そういうことが楽しいか、……もしくは、年に何回見つかるか分からない「ロマン」を追うか。それか、例えば生物学だと「生命の起源」みたいなのをずっとやってる人がいて、「なんとか無生物から生物ができた仕組みを理解したい」みたいな、そういうのをやってる人がいるんですけど。
いん/うんうん。
よう/それは、まあ実験はやろうと思えばできるんですけど、まだ分からないことが多すぎて……
タツオ/まあ、日本語だと……これはよく色々なところで言うんですけど。例えば、「ら抜き言葉」は結構、怒られたりしますけど、江戸時代の日本語を通時的に研究している人だと、ええと、「書く(=英語の“write”)」という動詞も、(可能の意味で)「書けられる」って言ってたらしいんですよね。
いん/「書けられる」……おおお(笑)
タツオ/それが、「書ける」になったんですよ。だから、「『ら』っていうのは自然に落ちていく」っていうのが、通時的に見れば、実証されてるんですよ。
いん/なるほどぉ!
タツオ/で、「食べられる」が、受け身・自発・尊敬という、重複して3~4つの意味を持つよりは、「ら」が1コ抜けて「食べれる」で「可能」に特定されたほうが、言語の経済効率がいいんで、確実にこっちのほうが残るっていう「結論」まで見えてるんですよ。
いん/なるほど、「食べれる」は受動態にならないのかぁ!
タツオ/そうなんですよ。
いん/考えたこともなかったですよ、そんなの。
タツオ/で、これは、「通時的にやっていて、現代語に応用できるパターン」ですよね。
いん/げ~っ、なるほどなぁ……。
タツオ/だから、「ら抜き言葉を怒らないでください、これは自然な現象ですし、絶対に50年後はこっちがメインになっています。8割の人が使います」ということも言えるわけですよ。
いん/はぁ~!


よう/あの……「る・らる」って、英語の「can」に近いな~、って、なんとなく思ってるんですけど……。もともとの中心的なニュアンスっていうのがあるんですかね?
タツオ/中心的なニュアンス?
よう/はい。自発とか尊敬とか可能とかの「使い分け」っていうよりは……例えば「中心義」みたいな言葉があったりするじゃないですか。
タツオ/いやぁ、難しいなあ、それ。う~ん……でも、「ニュートラルな表現」じゃないから、「何か意図があるっていうことを示すためのマーク」ってことは言えますよね。

いん/ああ、「マーク」……記号なんだ。
よう/で、その……例えば「日本語教育をするときに、たくさん意味があるような単語でも、中心義をおさえていれば、その言葉の全体が把握できる」みたいなことを話されていた気がするんですけど……。
タツオ/ああ、森田先生の「基礎日本語辞典」の話……って、これ、超・マニアックな話ですね!(笑)

いん/あっはははは(笑)
よう/ええ(笑)でも僕、英語でも、それぞれの前置詞には「中心義」っていうか、「イメージ」があるから、それをおさえておけば日本語訳ができる・意味が理解できる……っていう本は、見たことあるんですよね。
いん/ああ~(なるほど)。
タツオ/ああ。on とか、 at とかね。
よう/そうです。あと、over と on の違いとか。
いん/ああ、ああ(うなずく感じ)
よう/で、動詞でも基本的な動詞、have とか get とか take とかっていうのは、中心的なニュアンスがあるから、幅広く使う動詞に関しても、そういうのをおさえておけばいい、と。言語を超えて、「人間が ことば を使う時に、ニュアンスをつかんだうえで色々な場面で使う」みたいなのがあるのかなと。
タツオ/まあでも、助詞や助動詞に関してはニュアンスっていうのは……そもそも、「ニュアンスでしかない」ので。
よう/ニュアンスでしかない……そうですね(笑)
いん/うん、うん、うん。
タツオ/「中心義」とかではないんですよね、たぶん……。
よう/ああ……じゃあやっぱり「イメージ」とかのほうが、近いんですかね。
タツオ/そうだね、うん……。
いん/なるほど。

<--(49分31秒)

タツオ/……こんな長くしゃべっちゃって、大丈夫なんですか。
よう/そうですね、そろそろ……あの、1回切って……(笑)
タツオ/あははは(笑)
よう/まあ、こういう適当な感じでやってるんですけど(笑)
いん/だいたいこうですよね(笑)
よう/じゃあまた、続きは来週でよろしいでしょうか。
いん/はい。
タツオ/はい。
よう/それでは、今日は以上です。ありがとうございます。
いん/ありがとうございました。
タツオ/ありがとうございます。

(♪)

※文字起こしのインデックスは、こちらです。


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