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[文字起こし]いんよう!第53回【研究予算の話】

8月も終わろうとしておりますが、今年のアタマに目標を立てていた「バリアフリー字幕つき映画上映の発信の工夫」が全然できてなかったのを改善すべく色々調べていたり、自分ちと複数の他人様の携帯キャリア・プランの変更などに何日か付き合っていたりその他もろもろで、しばらく文字起こしにまとまった時間が取れませんでした……。久しぶりの更新です。

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★聞こえが不自由な方向けに、「日本語音声・日本語字幕」の映画があります。ただ日本映画でこのような上映をしているものは少なく、あっても1タイトルあたり数日のみ。しかもいつ・どこでやっているのかの情報が探しにくい状況です。そこで、県別に検索できるようなページを考えました。まだ試行錯誤ですが、よろしければ拡散いただけると幸いです。

さて、この回では研究予算の話から始まって研究室裏話が色々あり、素人にも楽しめるネタがたくさん。「一番クソだったのは……」「言っちゃうんだ!?」に大爆笑しました。あと後半の「チップ詰めが研究室のリッチ指標」というお話に「なるほど~」とニヤニヤ。では、どうぞ。

(♪)
よう/研究予算のさ……。まあ、色々レイヤーがあると思うんだけど。
いん/研究予算ね。ほう。
よう/まあ一番おっきいところでいくとさ、NASAがだいたい1兆5000億円くらいみたいなんだよね。ちょっと、数字の取り方が色々違うかもしれないけど。
いん/ああ、「研究予算」って、本当に……生命科学だけじゃなくて、そういう宇宙とかのやつも全部含めての、NASAのね。なるほど。
よう/うん。あの辺とか、あと宇宙関連とか、加速器作ったりとか……素粒子関係の仕事とかさ。あとなんか、天文学関係……? 天文学でも、ハッブル……あれはもう宇宙か。
いん/ああ、宇宙物理学って感じですね。やっていることが。
よう/そういうところが、装置作るのに一番、お金がかかるからさ。
いん/確かに。
よう/1つのプロジェクトも大きいけどね。関わる人数も多いし。
いん/下手するとロケット飛ばしたりしなきゃいけないですもんね。うんうん。


よう/そうそう。で、日本の科研費……科学研究補助金、かな?
いん/はあはあ。
よう/ええとまあ、基礎研究に与えられる、全分野の研究費の総称だけど。一番一般的なやつね。
いん/はいはい。科研費ね。

よう/それが1兆円ちょっとくらいみたいんだけど。
いん/総額で?
よう/うん。「そのうち生命科学関係がどれぐらい、医学関係がどれくらい」って俺はあんまり、把握してなくってさ。把握してないのは、それはそれで問題だなと思うんだけど(苦笑)
いん/なははは(笑)いや僕も全く知りませんけど(笑)
よう/で、そういうトータルの予算を(各研究室とかに)配分していってさ。
いん/はいはい。
よう/1つの研究室とか1人の研究者、1人の大学院生が使える金額が決まっていくと思うんだけどさ……。
いん/そうですね。
よう/だいたい、生命科学関係って、1つの研究室とか教室で、数百万円から数億円だと思うんだよね、経験的に……というか話を聞く限りでは。
(02分08秒)

いん/ん~と、ん~と、大前提をいくつも僕、良く知らないんですけど。
よう/うん。
いん/それは、年間で与えられるお金?
よう/うん、そう。今の話は全部、NASAも含めてぜんぶ年間予算。
いん/ふむ。で、1年間でピンキリで……数百万から何億っていうお金は、「どこが、なぜ」くれるんですか?
よう/ええっと……まあ、いちばんベースになるのは、昔「公費」って呼んでたのかな。まあ「大学からおりてくるお金」だよね。
いん/「大学からおりてくる」?
よう/そうそう。いわゆる「競争的(資金)」とかではなく、ベースとしておりてくるもの。ただ、年々減っているらしいので……
いん/ふむふむ。
よう/「ほぼ、ない」っていう感じのところもあるみたいだし、ちょっと……
いん/(ややかぶせて)「大学からもらえるお金」が、ほぼない、と。
よう/そうそう。だから基本的には、科研費をとったり、そのほかの……。ええと、科研費は文部科学省とかその関連団体が出しているので……
いん/「文科省とその関連団体」が、お金出すんですか。ほぉ~ん。
よう/そうそう。「予算を申請して、通ったら出る」っていうね。「競争的資金」とかだけどね。
いん/「競争的資金」。その「競争的」っていうのは、「ラボ同士が競争する」……?
よう/そうそう。採択率が、2割とか3割とかだけどね。
いん/ああ、そういう……だから「科研費の申請、科研費の申請」ってやるんだ。はぁぁ~。
よう/うん。だいたい毎年10月くらいに書類を書くんだけど。だから時期が近づいてくると「今年も書かなきゃな」っていう話にはなるよね。
いん/うん、そうですよね。それは、よく見ます(笑)

よう/うん。まあそれ以外にも色々……経産省が出しているやつもあるし……
いん/経済産業省ね。ふむ。
よう/うん。医学関係だと、厚労省が出してるものとかもあるしね。
いん/……おおぅ? 何も知らない(笑)ああ、そうなんだ、なるほどなるほど(笑)
よう/うん。名称は時代にあわせて変わっていってるけどね。昔だったら「ガントク」?……なんか、がん研究のグループ研究(が対象)みたいな……
いん/はっはあ。グループ研究。
よう/うん。それは研究者がグループを作って……異なる研究室の教授とか、要は「研究室の主宰者」が集まって、1つの大きなテーマをやるので、まとめて予算を下さいっていうやつね。
いん/ふむ。
よう/で、その研究グループの中で予算を分けるっていう。そういうやつもあるし……
いん/はあはあ。


よう/まあ、そういう複数の予算を取らないと、普通はやっていけないよね。科研費も取るし、グループ研究助成金みたいなやつも取るし。
いん/はあぁ~、なるほどぉ!
よう/あとは、民間の財団みたいなところが、そういうのをやってるので……だいたい数十万~数百万のところ。それらに一生懸命(申請を)出して、なんとか予算を確保して、回すと。
いん/はぁ~。それは結局、普通の会社とか企業みたいなところだったら「商品を売って、その儲けで何かを広げて」ってするのが、研究だとできないから? 「研究した内容が、直接お金にはならないから、先にお金(資金)を取りにいく」ってこと?
よう/そうだね。だから、研究費をもらって(研究して)、そのアウトプットは論文だったり、場合によっては特許だったり。……まあ特許はお金を生む可能性があるけど。
いん/ああ、そうか。それだけは(研究が)生み出したものがお金に変わる可能性がある、と。
よう/そうだね。だけど一番スタンダードなのは、論文とか学会発表が「成果物」だよね。
いん/「成果物」ね、なるほど。
よう/で、それを元にして「こういう成果を生み出してきた、これをもとに次はああいうことをやりたいから、また金をくれ」っていう……
いん/ああ、なるほどな。
よう/それが一番、スタンダードかな。で……
いん/はい。
(05分59秒)

よう/まあその……研究費がなくなると、研究ができなくなるっていうね(笑)
いん/あははは(笑)すごい……
よう/ダイレクトにね(笑)まあそのために、色々な方法があると思うんだけど……まあとりあえず、(研究費って)数百万~数億円あるわけだよ。
いん/ものすごい幅ですけどね(笑)
よう/まあめちゃくちゃね、すごい……100倍違うけどね(笑)
いん/違いますよね(笑)


よう/いわゆる「ビッグラボ」って呼ばれている、すごく有名な教授で有名な大学にいて、すごい予算をたくさん取ってくるような研究室だと、まあ数億円あるので……。
いん/おおお。
よう/まあそこから人件費を払って研究員を雇うこともできるし……
いん/……あ、人件費!そうか、人件費込みか、なるほど。
よう/そうだね。人件費もさ……あの、大学のポストってあるじゃん。まあ教授とか准教授とか、助教まで。
いん/はいはい。
よう/そういう、大学の研究室ごとに「雇える枠」があって。「この研究室はいくつ」って。
いん/ふむふむ。
よう/でも、それ以外に人を雇おうと思ったら、そういう研究費をとってきて、そこから払うっていうね。まあ「人件費を払えるタイプの大型研究費を取ってくる」ってことだけど。
いん/なるほど……!全然、人件費のこと考えてませんでした。
よう/けっこう大きいよね、人件費って。人ひとり雇うとさ、数百万円単位で飛んでいくからさ。
いん/そうですよね。しかも年間ですもんね、あれ。
よう/そうそう。いてもらう限りは当然、ずっと払い続けなければいけないから。機械とは違うよね、「1回買ったら終わり」ってわけじゃないからね。
いん/ほんとですね。
よう/うん。


いん/まず人件費に払う、と。あとは……僕、その先のイメージがもう「機械」と「試薬」くらいしかないんですけど(笑)
よう/ああ、基本的にはそういうことだよ。機械を買うか、……まあ、料理に例えると「オーブンを買う」とか、「カウンターキッチンを作る」みたいな、ベースになる部分もあるだろうし(笑)
いん/ああ、なるほど(笑)
よう/まあちょっとね、そういう、「高い設備を整える」っていうのが、「機械関係」のお金になるね。
いん/なるほど。
よう/で、「試薬」っていうのは(料理に例えると)「小麦粉や砂糖を買います」ってことだよね(笑)
いん/うん、食材としてそういうのを買うわけですね。
よう/そうだね、食材だね。それを「試薬類」って言ったりするけど……あと、その中間の「安い道具類」っていうのがあってさ。
いん/「安い道具類」……?
よう/あの、「泡立て器」とかさ(笑)
いん/あはははは、なるほど(笑)
よう/「食材じゃないけどやや値段の高いもの」と、「食材に相当する試薬類」をまとめて「消耗品類」って言ったりするけどね。
いん/な~るほど、なるほど。
よう/なんか「10万円以下のもの」とか「5万円以下のもの」とか、いろいろ基準があるんだけど、それより安いものは設備として登録しなくていいんだよね。
いん/ほう!!……あ、その予算を取ったところとかに何か、登録をしなきゃいけないんですか?
よう/ああ、大学の持ち物になるからね。全部、シールを貼るんだよね。
いん/ああ~! 分かった、それ僕も貼ったことある!(笑)
よう/うん(笑)「この予算で、**年に買った」みたいなシールを、事務の人が貼りに来るんだよね。
いん/なるほど。
よう/で、そのシールを貼ったやつは、大学がちゃんと管理をするから、勝手に捨てちゃダメで。……だけど、それより安いものは、「どうせ消耗品だから、勝手に使って減っていくでしょ」っていうカテゴリに入るので、壊れたらそのまま捨てても大丈夫だし……。
いん/なんか、それは一般病院でも……例えば僕も「顕微鏡は高いからシールを貼ってて、ペンとかには貼らなくていい」っていうイメージがありますよ。なんか少額予算がどうとかって。
よう/そうそう、そういう感じ。
いん/ああ、そういうことなのか~。


よう/うん。だからさ、まあ消耗品というか「食材」を買えるお金っていうのはさ、……なんていうのかな、限度があるわけだよね。
いん/んふふふ(笑)
よう/機械類とどう配分するか、っていうのは、研究室のボスの権限……というか、皆で考えながらやるんだけどさ。
いん/はいはいはいはい。
よう/なんだろね、だから……本当に大きいラボだと、年間に1人で1000万円くらい、消耗品を使ったりするわけだけどさ。
いん/……え、そ……研究って、そんなに「消耗品」を使うんですか?
よう/そうだね……まあ、いろんなのがあるけど。例えば「マウスを飼います」っていったら、そのエサ代とかも含まれるわけだけどさ。
いん/ああっ、そうか! 生き物を飼う金だったりするんだ!ああ~……。
よう/そうだね。あとはまあ……消耗品じゃないんだけど、マウスを大量に飼う場合は、世話をするのが大変なので、アシスタントの人を雇って、その人に世話をしてもらったりとか……
いん/ああ、確かにそれも「1人の研究員あたりの予算」になりますよね。
よう/まあそうだね。ラボ全体で管理してもらったりもするんだけど……
いん/おお~。


よう/で、あとは……(リッチだと)「高い試薬をバンバン使える」っていうので……
いん/あはははは(笑)おお?
よう/あははは(笑)例えば……あのさ、前に「次世代シーケンサー」の話をしたじゃん。
いん/ああ、しましたしました! さっきちょっと、それをちらっと思い出したんですけど。
よう/うん。昔は10万塩基くらいが1回で読めたんだけど、今はなんか、100億塩基、下手すりゃ1000億塩基が1度に読める、みたいな。
いん/はいはいはい。
よう/それで、爆発的にDNA配列を決定することができるようになったんだけどさ。
いん/うんうん。
よう/あれがだいたい……ええと1回回すと、100万円単位でお金がかかるので。
いん/1回で100万円、はぁあ~。
よう/そうそう。ただ1回で複数の試料を入れるから、まあ1つの試料あたりの単価はもっと安くなるんだけどさ。
いん/ああ、そうかそうか。(100万円単位というのは)1回機械を回すときの、ということで。


よう/そうそう。だからそれ……例えば中国とかは、本当にいま、すごくたくさん予算を投入しているみたいで。
いん/ははあ~。
よう/まずその、何億円もする次世代シーケンサーの機械が、もう10台単位で並んでいたりとか……
いん/あっははははは(笑)
よう/そのうえ、それをフルで回してるから。多分、年間で「億」単位でそのシーケンサーにお金を使ってると思うね。
いん/へえぇ……それがまわるんだ、さすがだな、国の規模がすごいな。
よう/そうそう。だから中国でもトップの、そういうシーケンサーを使って研究している人の発表とか見ると、もう、ババーッてデータが出てくるんだけど。
いん/うん。
よう/誰かがその発表を聞いたあとに、「あの発表、1スライドあたりいくら掛かってるんだろう?」って言ってたんだよね(笑)
いん/パワーポイントの1スライドあたり、ね(笑)
よう/そうそう(笑)「1スライド、数千万円掛かってない?」みたいな話をしてて。
いん/はああ、なるほどなぁ……。
よう/とてもじゃないけど、日本で出来るところは、ほぼないね。……まあ、「何ヶ所かある」くらいかなあ。
いん/はあ~、上には上があるんだ……。
(12分45秒)

よう/で、もっとちっちゃい話をするとさ。これは、いっちーも関係あると思うけど……
いん/はいはい。
よう/生命科学とか医学の研究で、一番汎用に使われているのは「抗体」だと思うんだけど。
いん/抗体ですね、はいはい。
よう/抗体っていうのは「特定のタンパク質だけに結合する、免疫グロブリン」のことだけどさ。
いん/はい。
よう/まあ抗体ってね、病気……感染症になった時に「抗体ができる」とか「できない」とか言うけどさ。
いん/言いますね。
よう/うん、その「抗体」のことだよね。例えば「インフルエンザ抗体」っていうと、「インフルエンザウィルスの粒子に結合する抗体」のことだよね。
いん/そうですね。
よう/で、別に病原体だけじゃなくて、あらゆるタンパク質、ほとんどのタンパク質に対して「このタンパク質だけに当たる(結合する)抗体」を人工的に作ることが出来る。
いん/うんうん。
よう/だから、それを利用して、タンパク質とか遺伝子の研究をするときには必須だよね。
いん/ほんとですね。


よう/うん。で、今はかなりの種類のたんぱく質に対する抗体が、市販されているよね。
いん/されてますね。
よう/だから自分で作るんじゃなくて、それを買う、と。作ると大変だし、お金もかかるからね。
いん/うんうん。
よう/で、だいたいさ……あの、1.5ミリチューブ、あるいは 2ミリリットルチューブって呼ぶけど……なんだろ、小指の第2関節くらいまでの長さの、「チューブ」があるんだよね。
いん/んふふふふ、本当にそう!今ちょっと自分の指見ましたけど、「小指の第2関節くらいまで」ですね、まさにそれくらい。
よう/うん。で、キャップをぽこっと開けて、中に液体を入れることが出来るんだけど。
いん/はいはいはいはい。

よう/ええっと……だいたい抗体ってさ、100マイクロリットル(μℓ)、つまり 0.1ccだよね。
いん/……んっ!? マイクロリットル? 0.1cc……ええと、1ccが1ミリリットル(mℓ)だから、0.1ccか。ああ、そうだ。なるほど。
よう/(抗体って)0.1cc入って、だいたい数万円だよね。
いん/そうか……100マイクロリットル入って、だいたい数万円……。あれって、僕が免疫染色とかでよく見てる抗体とまったく一緒なんですかね?どの抗体も。
よう/一緒だと思うよ。一緒だと思うけど、「研究用」と「診断用」でちょっと、グレードが違うかもしれないけどね。
いん/ああ、そうですね。あれ、だいたい数万円……3~7万円くらいのことが多いですからね。
よう/そうそう。
いん/うん、うん……考えてみるとバカみたいな値段ですね(笑)
よう/うん(笑)
いん/「アホか!」っていう値段(笑)
よう/あれだよね、目薬2滴分くらいだよね。
いん/……目薬1滴分って、何ccくらいなんですかね?
よう/多分、数十マイクロリットルくらいだと思うよ。
いん/数十マイクロリットルかあ……。「目薬2滴」……ああ、いいセンじゃないですかね。
よう/目薬2~3滴分くらいだと思うんだよね。
いん/だって、あのチューブの中って目視したらそれくらいですよね。それをマイクロピペットで、1マイクロリットルとか取って使う、みたいな。
よう/そうだね、そうなんだよ。
いん/それを更に希釈したり、しなかったりするんですけど……。


よう/それをさ、買って……使えない抗体だったときの悲しさね(笑)
いん/んふふふふ(笑)あははははは(笑)
よう/まあ病理検査で使うものなら、使えないってことはないと思うんだけどさ。診断用(の検査)に通ってるわけだから。
いん/いや……(言いかけてずっと笑っている)
よう/(やや食い気味に)でも研究用だとね、ほんとに……「当たります!」って言ってるのに、買って使ってみたら使えないってことが、よくあるんだよね。
いん/実感わくなあ……(笑)いやあ、でも意外と診断でもあるんですよね。
よう/あ、ありますか。
いん/ありますねえ(笑)「この抗体、すごく良いですよ、モノクローナルで」みたいなこと言って、(テンションが上がってくる)なんか、「ラビットモノクロで、特異度も高くて」みたいな……「バック(ノイズ?)も全然出なくて」みたいなことを言うから……
よう/(笑)どんどんマニアックに……はいはい。
いん/買ってみたら全然染まらねえし、「どういうこと?」と思ってメーカーに問い合わせたら「賦活化の条件が、その免染装置だと試されていません」とかって。「先に言えや!」みたいな、そういう話、ありますね。あるある。


よう/うん……今の話、「ラビット」「モノクローナル」「賦活化」っていう……(笑)
いん/諦めて全部、専門用語で(笑)
よう/うん(笑)ちなみに、keiさんに言っとくけど、この「ふかつか」っていうのは、「不活性」のほうじゃないやつだよね。
いん/あははは(笑)keiさん、泣くやつだ(笑)
よう/「染色 ふかつか」って入れると漢字が出てくるけど……どっちかっていうと、アクチベートするほうの「ふかつか」なんだけど。
いん/こうやってちょっと遊ぶと、keiさんが死んでしまうのか(笑)かわいそうなことをしたなあ……
よう/うん、でもkeiさんね、もともと生命科学系の人みたいだから……
いん/あ、そうなんですか。
よう/うん。割と……割とっていうか、完全に正確に起こしてくれるけどね。
いん/そうなんだ。いや確かに、文字起こしに何の間違いもないって感じですけど。
よう/ないです、はい。
いん/いやあ、悪いことしたな。
(17分18秒)

いん/……でも確かに、そう考えると暴力的な値段のものを使ってるんですね。
よう/まあそうだね。あれほとんど、人件費だからね。
いん/あの……(笑)これ、具体名出さなくていいんですけど。
よう/うん。
いん/僕、研究していた12~13年前って、抗体販売メーカーによって「ここのメーカーはクソ」みたいな話が、あった……と思うんですけど。
よう/あった!えっとね、一番クソなのは、Santa Cruz(サンタ・クルーズ)社だね。
いん/言っちゃうんだ!!(笑)あはははは、今言わないようにしたのに……(笑)
よう/あははは(笑)

いん/やっぱり今でも、Santa Cruz はクソなんだ(笑)
よう/いや、Santa Cruz はクソっていうか……安いんだよ。
いん/ああ、安いのか。
よう/その代わり、ハズレが多いっていう……だからまあ、スジは通ってる。
いん/スジが……あははははは(爆笑)
よう/あっはっは(笑)
(18分)

いん/いっぱいメーカーがあったのが、今……「免疫染色用(の抗体)で、なんか最近、別のラボでうまくいったっていうから取り寄せようとしたら、会社が吸収されて名前が変わってる」とか、なんかそういうのが多くて。
よう/……試薬メーカーの合併と吸収の話、する?
いん/(変遷が)すごくないです? 昔の会社が全然分からないんですけど。今「Santa Cruz、まだあるんだ」って思いましたよ、僕。
よう/Santa Cruz は、まだあるね。あるんだけど、ちょっと問題を起こして……。
いん/問題を起こした?
よう/動物飼育に関して、基準を守ってないってことで……
いん/……んはっ、はははっ(笑)
よう/かなり……ええとね、モノクローナル抗体以外は販売禁止になったはず。
いん/マジっすか!?あっはっはっは(爆笑)
よう/うん。ポリクローナルは、もう売ってない。
いん/本当に、Santa Cruz はクソだったんだ……。そうかあ……。
よう/うん。それはかなり問題で……「使える・使えない」以前の問題なので。
いん/そうですねえ。
よう/違うレイヤーの……「ちゃんと管理していない」っていうね。
いん/知らんかった、そうだったんだ……。
(19分)

(参考)米国在住のがん研究者の方のブログ
http://akirainoue52.hatenablog.com/entry/2016/05/28/073755

よう/一番信用しているのは、CSTっていう会社で……「セルシグナリング・テクノロジー社」だったかな?
いん/そこって元々は何なんですか?
よう/セルシグナリング社だと思うよ。
いん/ああ、セルシグナリングからCSTになったのか……。
よう/略称みたいな感じで、CSTって呼ばれてるけど。
いん/CST……そうか。最近ようやく目に入るようになった、って感じで。僕、多分実験のときって全然使ってなかったんでしょうね。だから「へえ、こんなとこもあるんだ……」って感じで。

https://www.cellsignal.jp

よう/セルシグナリング社は、あったよ。うちらが大学院生のときも。
いん/ふ~ん……じゃあ、たまたま僕が使ってなかったんだ。
よう/ええと、特にね……いっちーもやってたと思うんだけど、エピジェネティクス関係の抗体に強くて……
いん/あの~、ヒストンメチル化のマーカーとか、そういうやつですかね?
よう/そうそう。
いん/そうかあ。
よう/でね、さっき、いっちーが言葉としては出してたけど、「ラビットモノクローナル」のをたくさん作ってて。
いん/はいはいはい。
よう/それが、すごく質のいいものを作ってくれててさ。
いん/ふむふむ。
よう/えっと、さらにグレードで「XP」っていうのを付けてるんだよね。
いん/え~っ、Windowsっぽい(笑)
よう/そうだね(笑)で、XPっていうグレードのやつは、バリデーションっていうか、確認しまくってて。
いん/へえぇ~!!
よう/XPってついてて、例えば「免疫染色に使えます」「免疫沈降に使えます」とか書いてあったら、まず間違いなく(強調)使えるんだよ
いん/……あら、いい会社じゃないですか。
よう/うん。すごいと思うね。
いん/へえ~……。

いん/……っていうか(笑)あらゆる商品がそうであってほしいのに、そうじゃないっていうのが面白いですよね(笑)
よう/あっはははは、いやあ、そうなんだよね(笑)
いん/実験の世界ってそういうところがあるから、面白い……。
よう/なんだろうね……毎回、「抗体を買いたい」って言った時に、上の人から言われるのはね……
いん/はいはい。
よう/「使ってる論文ある?」って訊かれるんだよ、必ず。
いん/ああ~、それは分かる。
よう/まあ俺も言うし。
いん/分かるなあ……。
よう/いくらその会社のホームページに「これに使える」って仕様書があっても、誰も信用してなくて
いん/あっはっはっは(笑)
よう/「使ってる研究者がいるかどうか」だよね。
いん/ああ、そうなんだ。やっぱりそうなんだなあ……。
よう/うん。でもそんな中、CSTだけは、ホームページに書いてあることが、本当なんだよ。
いん/ほう……それは、知らんかった。
よう/うん。
(21分14秒)

いん/なんか……昔、ドイツかなんかの会社の抗体で、「脂肪を染める」みたいなマーカーが出たんですよ、2種類。
よう/はいはい。
いん/免疫染色の抗体で、アディポフィリンとアディポネクチンっていうんですけど。
で、「脂肪を染めるって!? 脂肪ってタンパクじゃないじゃん」と思って……それがまず、すごく怪しいと思って。
よう/うん。
いん/で、次に「脂肪細胞の何かを染めるっていう意味なんだな」って分かったんですけど……なんか、染まっている写真を見ても、なんか「おかしいな、不思議だ不思議だ」と思って。国内の何人かの病理医が染めているのを見て、「なんか、ウソくせえな~」と思って、僕は導入を待ったんですよ。買うのをやめて。
よう/うんうん。
いん/そしたらなんか、いつのまにか、皮膚の世界から消化管の世界へ、ぶぉーっと広がって。その抗体で染めた結果からいくつか、新しい所見とか出て来て……。僕、なんかちょっと、免染を丁寧にやろうと思って波に乗り遅れて、腹が立ってるっていうのがあってですね(笑)


よう/……さっき(この回の冒頭)の説明で、俺が間違ってたのは、別に抗体じゃなくても……じゃなかった、「タンパク質じゃなくて、他の物質でも抗体はできる」よね。

(残り約19分くらい)


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