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【君生き感想】え?わけんからん?それはそうよ

君たちはどういきるか、観てきました。
観終わったあとの1番の感想は
「ああ…商業も人の目もなく作品を作りたかったのだろうな」と思いました。

理由は自分が学生の頃にアートアニメーションを
制作したことがあり、
そのアートアニメーションの表現に非常に近しい部分が大変多かったからです。

商業アニメーションにはかわいい女の子、イケメン、グッズ化しやすい素敵なキャラクターが必要です。
だって商業なので。

宮崎駿クラスの人でさえ…いや、だからこそ。
お金にどうなるのか?
から離れることはできません。
観た人がどう思うか?新しく観たい人を作れるか?
観た人がグッズや円盤を買ってくれるか?
を考えずに企画を立ち上げ、脚本を書く…
といったことはありません。

むしろ宮崎駿のお得意かもしれません。
イケメンなハウル、かわいいトトロ。
プロデュースチームともずっといろんな議論をしてきたことでしょう。

一方で、アートアニメーションというものは
大半がグロテスクで観た人は訳が分からず、訴えたいことも非常に私的なことが多いです。
お母さんとのあのやりとりが好き、嫌いだった。
子供の頃旅行したあの場所が恋しい…などでいいんです。それこそが個性であり、アートなのです。

もちろん見る人は感性が合えば感動しますが、
感性が合わなかったり、アート作品に触れ慣れていない人には私的な内面表現をどう読み解けばいいかわかりません。

今回の君生きの評価で
ストーリーがわからない…ぐちゃぐちゃ。
キャラクターが地味、パッとしない。
テンポが…
等の感想を見かけたのですが。

それは当たり前なんです。

だってこれ、宮崎駿が死ぬ前に一度やりたくてやりたくてしかたなかった
「商業じゃない作品」「俺のための作品」…
ついでに君たちも見るといいよ、だから。

おめーのために素敵なわかりやすい話も、
子供向けやキャラグッズ買うような人のための
かわいいー!キャラなんて作ってやるもんか!

この気持ち、少しわかってしまう。
私も仕事でクリエイターをしていると、
自分の本当に表現したいことなんてちっとも含まれなくて。いろんな人の意見で修正に手直しが入って…
まるで違うものになって…なんてことがよくあります。私はただの会社員なので、やりたいことは趣味でやる、と割り切っていますが。

有名クリエイターは自分のおかげでこの会社が
成り立ってるのに…
という気持ちにもなるでしょう
まあ…大半のゲームやアニメの
有名クリエイターが独立して
会社を作ったりスタジオを作るのはそういうのが
あるだろうなと思います。

なので、これから君生きを見る人は
これはアートアニメーションであって
宮崎駿が死ぬ前に彼の心をそのままに見せてくれているのだ、そして並のクリエイターではそんなことはできなくて、彼の功績があったからこそなのだと讃えてあげてください。

商業的な伏線やわかりやすい起承転結、素敵なキャラクターはなくていいんです。

だって人の心に、人の人生にわかりやすい起承転結なんてないのですから。

そして、自分の中のぐちゃぐちゃの空想や人生を愛してあげてください。

君生きに伏線も考察もいらないのかもしれません。
必要なのは巨匠の人生を見守るぞ、という気持ちだけです。

そしてそれは幸福なことなのです。


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