マガジンのカバー画像

短歌

21
短歌の連作をまとめています。
運営しているクリエイター

記事一覧

ネットプリント配信開始『Angeldust Memories』

短歌と詩のネットプリントが完成しました🍧 「Angeldust Memories」 白黒印刷×3枚×B4×60円 番号:5WD6M7YZ3L(FamilyMart / LAWSON) 期限:8/22, 21時頃 精神外傷ちゃん、夜空、虚綴少女、二枚貝、早乙女まぶたの5名の饗宴です❕ 僕は短歌「ギアチェンジ」を掲載しております。 夏の奇跡を浴びにいきましょう🍨🍨

短歌「観客不在のサイエンス」

借銭を数えて帰る道すがらどぶ川に棄てた憧れを見る 忌まわしき絶望こそがぼくの名だ出席番号三十七番 気にするな!外には出るな!永久に!きみにはきみのブランコがある 全人類詩人化計画下のきみよ 好きな娘に渡す花は持ったか 幼な児の転ぶすがたのうつくしさ空に行き交う神を信じる 注射器を欲した真昼に裸か身でかべに凭れるきみの歌声 いきりたつ真っ赤なこころの泡立ちはことばの波よりずっときれいだ 恐竜の背骨をきみの柔肌のくぼみに見るとき歴史は拓く ウオツカのしとどに煙る朝

短歌「臨界点」

おひさまに干したふかふかお布団に父より先に飛び込む仔猫 臨界点突破してますこれ以上自己分析をさせないでくれ 愛しあう芝居くらいがちょうどいい薔薇は棘なしでも美しい みずからを表現したい気持ちゆゑ絡まつてゐる延長コード 徹夜明け退学届を握りしめもう二度とない朝を感じる ソロキャンプの大詰めに焼くマシュマロがこの世の答えであればよかった あきらめず残つた私のまま行かう空の青さはきつと正しい

短歌「かたくり記念日」

春ひさぎ諭吉の顔が増えるたびわたしの中の神さまが減る 「なんの本?」訊けないままで秋になり裸のうなぢにひかりゆれをり きみの着た色褪せたシャツが揺れていてなんだか眠くなってくる午後 伏字の父と伏字の母を親に持ち伏字のいまを愛しています 課金したことも忘れて寝過ごした大学生活すらも忘れて 期待され死んでしまったN君の墓前に秋の風心地よく キッチンに片栗粉降るわれわれの記念日にふさわしく笑った

短歌「上履きと宇宙」

南瓜には南瓜の世間があるという南瓜族の幼な児に会いに行く ラッキーと呼ばれる犬が新聞をビリビリにしている日曜日 失くなった上履き探す放課後に 笑われている 笑われている この世界すこしでも好きになりたくて醤油を垂らす卵かけごはん 狂ってたあの子の描く絵が好きだったペンローズの階段を踏み抜く 瀬戸内のレモンを摘みにゆく旅の終点 朽ちた流木に蟹 風邪ひいて寝込んだ翌朝見る空は宇宙の壁のようにつめたい

短歌「Good-bye (Summer) Holidays」

日めくりの麦茶に沈む夏休み あぼーんと鳴くギター片手に 屑鉄を拾い集めるおじさんがたまにささやく不吉な予言 音楽は心の阿片と笑いあうシーシャで夜に伸ばす手のひら そっけなく「おはよう」と言う姉ちゃんの秘密ノートに書かれた名前 ファズ踏んで入道雲が見る海を伝えるそれが僕の宿題 冷房を浴びる喫茶で海になる日記のきみはまだ笑ってて 即興のブレイクビーツの爆ぜる音エモい花火のエモい消え方

短歌「東京2021」

目白から乗った女がアイライン引いて始まる一日のこと 天国はね、蓮が浮かんでるんだって 消えたあの子と歩く美術館 愛なんて言わないでいてTOKYOの音楽に朝はまだ来ないから 若者が一心不乱に笑ってる池袋にある裏の入口 穴の空いた羽根をどうにか引き摺ってきみに会いにいく東京駅

短歌「天気雨」

不思議ちゃんだけが知ってるオンライン防空壕からはじまった旅 恋に憧れていた春すぎていく傷ともいえない小雨に濡れる アナクロなロマンチストがザリガニを釣る少年と盛り上がる午後 はつなつの果実どろりと溶けている 夏至・本・ひかり・声・海・温度 やけに静まった体温たぐり寄せ夏になろうよ砂のお城で 雨上がり飛び込めそうな別世界こちらをのぞく逆光 おはよう 当然のふたりになろう天気雨ふられて笑う生きているまま

短歌「僕のリンカーネーション」

スピードを落としてホームに滑り込む出会いと別れを繰り返すごと 昔見たドラクエ世界の仲間から魔力を抜いた連中がいる 正体はなんだっていい堂々とマスクのなかで愛をつぶやく たまねぎを切った海だよドアノブを手にかけた陽が夜を切り裂く とおくからシャワーの音が聞こえててわたしはわたしの抜け殻を見る 階段を転げて落ちたメロディは五線譜のない波をさまよう 異世界のリンカーネーションの輪のなかで終わることない僕の戦争

短歌「罰と花」(7首)

アクセルを踏んだら見える舞い上がる枯葉のなかで踊る天使を ねむったら天に行けると信じてるカレンダーに大きくバツマーク 春風を閉ざした窓に陽が射して無人の声をまだらに染める 青春は躁鬱病と仮定して黒い歴史につける花マル クソエモい下校が窓から本を読む服役中のおれに射し込む ごった煮の宿題を紙ヒコーキにした未来など知らないままで 未来図に載らないひとに手を振って階段を踏むどんな光であれ

短歌「さよならグッドモーニング」(18首)

g 00 d M oRn I N g 斜陽シテ目がまわり超高速度で落下し定点 オーディオの音を抜き取り味見して噎せた入道雲の終わりに 路の傍に落ちてる花を噛み千切り匂いを嗅いだ探索犬B 朝靄の雑踏の隙間駆け抜ける閃光一筋フラッシュバック 蜘蛛の巣が地球をさらいに来るらしい試験は忘れていい雰囲気だ 貪欲にあの子の窓を這う蔦は血管らしく取り払えない ざらざらと小川に流るる太陽をつまむと白く溶け落ちていく 足元のレールの終わりが見えなくて線路と呼ぶのをやめ

短歌「救済論的滑り台」(29首)

「髪切って、侵略するの、仕方なく。」仕方ないことだ、春なんだから。 足りないと繰り返すだけの機械でも浄土を待ってるノイズ文学 「席に着け、これから描いてもらうのはどちらからでも消費できる絵」 オフィスでは郵便の人もドランカー「宛先ばっかり書いてあるのよ」 紙束をマッハで数える銀行員、真実はひとつセカイ☆征服 「宇宙には何でもあるよ」「amazonも?」「飛田新地も東京タワーも」 教会の壁の張り紙「気をつけよ、隣人の都市はそっとされたし」 揺れ出した電車の中吊り広

短歌「コンサマトリー・グラジュエイション」(30首)

*こちらは『POP & END』に収録された一篇です。『POP & END』のご購入は https://yoruiroyozora.booth.pm/items/665168 から 「コンサマトリー・グラジュエイション」 ミサイルが国境越えて落下するもうすぐ夏休みがはじまる ばらばらと千手観音が降っている きもちがいいあさだねと泣いている

有料
100

短歌「四季」

「春START」綻ぶの子は滅ぶのか春に問う 風のいらへはすべて「善し」なり 存在をジャグリングするクラス替え 光の粒子は机に騒ぐ 氷解を求め流離う自己愛が分娩される始業式の日 川べりの卑猥な本が楽しげに新生活を語りはじめる 朝起きて手首に名無しの草が萌え、花が笑って夢をばらまく 「無重力Summer」汗が服を湿らせたあの学び舎が軌道を描いて僕にぶつかる 全人類詩人化計画進行しスペクトルしか見えなくなった シエスタのプールに飛び込むようにして沈む夕陽も夏のいいなり