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見えない相手へのラブレター

はじめまして。山下PMCの木下です。

山下PMCのプロジェクトマネジャー、木下雅幸です。このたび、noteに場所を移し、1年ほど休眠していたコラムを再スタートすることにしました。若干めんどうくさがりの部分もある私ですが、ムリ・ムダな努力なしで実践でき、でも確実に経験値を積み上げて、成長につながっていく情報をビジネスパーソンの皆さんにお届けするため、これからはさぼらず更新していきます。

最初に私たちの会社紹介を少しだけ。山下PMCは、施設建築のPM(プロジェクトマネジメント)/CM(コンストラクションマネジメント)の会社です。多種多様なお客さまの施設建築・運営プロジェクトを担当しており、私自身は、北海道日本ハムファイターズ新球場「北海道ボールパーク」、JFA(日本サッカー協会)ナショナルフットボールセンター、エイベックス本社ビル、横浜市新市庁舎等々、皆さんもどこかで聞いたことがある施設建築のプロジェクトを手掛けています。

こう見えて、私のプレゼンテーションでの勝率は9割超え。「私、失敗しないので。」人気ドラマの医師さながら、競合に打ち勝ち、大型プロジェクトを担当してきました。

私が担当するプロジェクトの一部

PM/CMという言葉はまだまだ馴染みが薄いので、「建設コンサルタント」と言ったほうがピンとくるかもしれません。でも、私たちはコンサルという呼び名をあえて積極的には使っていません。それはコンサルに対して、「テンプレートを押し付けて終わり」、「プレゼン資料は立派だけど、結局何もしてくれなかった」、「高いフィーをとられる」等など、ネガティブなイメージをもつ方がゼロではないからです。

そこでnoteでは、私が最も大切にしている、お客さまとの対話の仕方。さまざまなタイプのクライアントやパートナーと信頼関係を築くためのちょっとした工夫。経験を確実に経験値として積み重ねていくための意識。お客さまをわくわくさせ、なおかつ自分自身が楽しむためのコツ。そういった「木下流仕事術」を少しずつご紹介していきながら、皆さんが抱くコンサル像をアップデートしていきたいと考えています。

現在、建築業界で働いている方に限らず、これから社会に出ていく多くの学生の方々にも役に立つ実践的な内容を分かりやすく展開することで、イノベーティブな輪を広げ、結果としてPM/CMの仕事に興味をもっていただくことができるとうれしいです。

さて、初回は部下からの相談を通じて、プレゼンでのちょっとした落とし穴について3分で解説します。

プレゼンは熱意だけでは乗り切れない

「営業と恋愛は似ている」「プレゼンは顧客への告白タイム」「マーケティングは恋愛にたとえるとうまくいく」…こんなフレーズをよく耳にしませんか?
私も両者の共通点は多いと思いますし、その考え方自体は決して否定しません。実際に、私自身もクライアントに対する熱意やプロジェクトに愛をもって取り組みことが大事だと常々実感しています。
でも多くの人が、重大な「非共通点」を見落しがちです。それは、恋愛の場合(通常)は、対象が目の前の一人の相手に限定されますが、ビジネスでは、「見えない相手」が必ず存在するということです。

タイヨウ君: 先週のプレゼン、絶対に成功したと思っていたのに、お断りの連絡を受けました…こちらの想いが伝わるように、提案書作成も事前のシミュレーションも念入りにやったのになぁ。
キノシタ: 何がよくなかったのかな。当日の様子を教えてよ。

タイヨウ君の話をまとめると
● クライアント側は、施設管理部門の担当者、課長、部長等、複数名が出席した
●時間配分を考え、タイヨウ君は単刀直入に結論から切り出した
●タイヨウ君はかなりの熱量をもってプレゼンに挑んだ。結果、多くの質問が飛び交う等、プレゼンの場はとても盛り上がった

キノシタ: どうやらタイヨウ君の熱意だけが先走っちゃった感じがするなぁ。オフェンスにばかり気をとられて、ディフェンスが弱かったのでは?
タイヨウ君:そういえば、想定外の質問も多くて、上手く切り返せない質問もありました。
キノシタ: プレゼンの出だしも、いきなり「結論」から入ってしまったでしょう?でも、大切なプレゼンのときほど、「当たり前と思えるような情報」から整理することが大切なんだよ。まずは、否定されないように、クライアントの目線に立って、そもそもの提案の目的を伝えて、考え方のレベルを揃えてあげるといい。

「独り歩き」する提案書

キノシタ: 提案書はどんな感じだったの?ちょっと見せてよ。
タイヨウ君: 日頃からキノシタさんから「提案書をラブレターに変換しろ」と言われているので、プレゼンの相手の反応を意識しながら、練り上げました!
キノシタ: でも、その場にはいない「見えない相手」のことは考えた?タイヨウ君の書いたラブレターは、直接手渡した相手だけではなく、そのあと、いろんな部門・役職・立場の人の間を「独り歩き」するんだよ。
タイヨウ君: ……。

キノシタ: 残念だけど、タイヨウ君のプレゼンの場での口頭説明は、最終的な意思決定者まで伝達されなかった可能性が高い。それはよくあること。だからこそ、提案書はクライアントが「知りたいこと」をわかりやすく、文字や図表でまとめて、だれでも理解できる状態にしておくことが大切なんだよ。たとえば、クライアントの立場に立って、「Aの工程でチェックすべきポイントはここですよ」、「Bの工程では、最近このような問題が頻発しています」といったように、一般的な提案書では省略されていることをあえて書いておく。私が言う「提案書のラブレター化」というのとは、そういうことなんだ。
タイヨウ君: たしかに、ラブレターと違って、行間まで読み取ってくれないですし、そんな期待してはいけないんですよね。次は、「見えない相手」をもっと意識して、絶対結果出しますね!

まとめ
✔ オフィシャルなプレゼンでは攻撃より防御を重視。まずは、相手に「否定されない」態勢を整える
✔ 熱意だけでプレゼンは乗り切れない。不用意なミスを減らす努力をし、どんな質問にも答えられるように相手目線で準備する
✔ 提案書はさまざまな関係者の間を「独り歩き」することを意識して作る

このように、直接一対一で向き合える相手と、個別に対応することは難しい大人数、見えない関係者を相手にする場合とでは戦い方が違います。一発勝負のプレゼンでは、ついつい攻撃の質を高めることばかり考えてしまいますが、パッションだけで押し切れないケースがほとんどです。だからこそ、さまざまな立場からの検証に耐える、ディフェンス力を重視すると勝率が上がるのです。

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