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去年のドイツ旅行記

Frankfurt the first day

 昼過ぎに空港に着き、ホテルに到着するともう暗かったため、夕食と周辺の散歩だけした。ドイツ料理でこれからたくさん肉が食べられると思ったので、魚料理の店に。グラスワインを多めについでもらえて嬉しかった。

 旧市街はこぢんまりしていて、レーマー広場から翌日行くシルン美術館が顔を覗かせていた。シルン美術館ではリークラズナーの大回顧展をやっていて、それが今回の旅の第1目的だった。彼女は私の最も敬愛するおよそ50年前のアメリカの画家だ。憧れゆえに作品をデジタル画面で見るばかりで、実際にどんなギャップがあるのか早く知りたかった。そしてデジタル画面で掴んだ作品観も、生で見ることで修正したい。翌日が楽しみで仕方なかった。

Frankfurt the second day

 真っ先にリークラズナー展へ。作品の展開、詳細なバイオグラフィーを知ることができ感激した。実際に見たことのない作品ばかりだった。特にコラージュは、自分がデジタル画面から真似て作ったこともあり、大きさや手法をイメージはしていたが、彼女の作品をつくる力を改めて感じた。自分だったら作品として成立させられないレベルの混沌をまとめ上げる力と目が彼女にはある。特に俯瞰する力に長けているのだろう、だからこそ大きな画面で心地良いリズムを作れる。

 彼女の人生と作品の展開もドラマチックだった。大戦中に政府のプロジェクトで、戦闘機のモチーフを使ってコラージュ作品を作っていたのは、ファンの私も全く知らなかった。戦争画のようなものだから、おそらく彼女の作家人生にとってもこれは都合の良いものではないだろう。意外な作品歴だった。彼女自身フェミニズム的な発言はあったし、今でもその文脈で再評価が進んでいるが、政治の思想性は実はよく分からない。そういう時代だったと割り切れるものなのか。

 彼女はいくつもの学校に行き、アカデミックな訓練を積んでいる。ジャクソン・ポロックの妻としての側面があまりに注目されすぎているが、ポロックに出会う前の作家としての一人の模索期間は案外長い。実家が焼けて初期の作品が消えたり、夫の不幸だけでなく、いくつもの困難を人生で乗り越えていて、どのような時も制作とともにある。ポロックの死後2週間で作品を描きあげているし、右腕を壊したら左で大作を描くなど、バイタリティーが凄まじい。
 普通の人間であれば制作さえやめてしまうほどの契機が何度あったことだろう。40超えでの初個展では作品が一枚も売れず意気消沈したが、作品を破り、それらが語りかけるものをインスピレーションにコラージュを思いついたそうだ。ものづくりに対する並ではない前進力の秘密は何なのか。彼女の作品に感じる力強さと明るさは、逆境を乗り越える力と連動しているのだと理解した。改めて生涯心に留めておきたいアーティストだと思った。

 レーマー広場で大きなハンバーガーを食べ、次の現代美術館(MMK)へ。アメリカの美術館かと思うほどアメリカの作家のものが多かった。パンフレットをもとに調べたい作家も見つけられた。

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