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「サンタさんはいる」と信じていたクリスマスの思い出

せっかくのクリスマスなので、僕がまだ、小さかった頃の話。サンタさんはいると信じていたときのこと。

・・・

12月24日の夜のこと。「早く寝なさいよ、サンタさんが来れなくなっちゃうでしょう」と、母さんが言う。

ぼくは寝付きがめちゃくちゃよく(今もだけど)、いつもは布団に転がったらすぐに朝になっている。だけど、24日の夜から25日の朝にかけては違う。サンタさんが来るからだ。

21時ぐらいには、部屋の電気を消して、2段ベッド(弟が下で、自分が上)に寝転がって部屋の天井をぼーっと眺めていた。

今年サンタさんに頼んでいたのは、ゲームボーイアドバンスSPの青。ソフトは、ポケットモンスターの「ルビー」をお願いしていた。

リビングには、サンタさんに宛てて書いた手紙と、昼に母さんとつくったクッキーを添えて置いた。

ほどなくして、リビングからTVの音が消えた。トイレに行ったのか、ジャーっと水を流す音が聞こえる。そして、リビングの電気が消えて、寝室の方に向かっていった。

部屋ではちいさい豆電球だけつけておいたので、あたりはほの暗いけど少しだけ見えていた。「今年こそ起きていよう」そう決めて、とろんとしてくる目をパチパチと叩きながら、1時間ぐらいごろごろしていた。

じぶんちのリビングは、12時になると「ゴーン」と1回だけ鐘の音がなる。

「そろそろかもしれない…!」と、高鳴る鼓動を悟られないように、目をぎゅっとつぶってサンタさんが来るのを待っていた。

ギーッ…。

部屋のドアが開く。「ぎゅっとつぶっていた目」を「あたかも寝ているような目」に戻して、どんな小さな音も聞き漏らすまいと、全神経を耳に集中させていた。

と、その瞬間。ベッドの枕あたりに、何かが置かれた音がした。

でも、そのころの自分は、目を開けたらサンタさんが消えてしまうかもしれないと思っていたので、まだうっすら目を開けようとするかしないか迷っていた。

そうこうしている間に、ドアの方に向かう音が聞こえる。「少しくらいなら目を開けてもいいんじゃない?」そう自分に言い聞かせて、うっすらと目を開けてみた。

“たしか” 赤いパンツに、黒い靴下を履いていた。

あいにく足元しか見えなかったけど、その夜親は、チェックのパジャマを着ていたと思う。「あれ?誰だろう……」そんなふうに思いながら、気づいたら朝になっていた。

枕の横にプレゼントがあることを再度確認して、一番乗りでリビングに向かった。ビリビリと紙袋をやぶいて、中身を確認する。

「あっ、ゲームボーイアドバンスだ…!」

リビングのテーブルに置いてあったクッキーもなくなっていて、お手紙には「Thank you」と返事が書かれていた —— 。

・・・

もうこの歳になると、「サンタ役をやってきた」っていう親たちの投稿を目にするようになりました。もちろん自分も、今ではサンタさんなんて実在しないし、親が子どもの欲しいものをリサーチしてあらかじめ買っておくんだとわかっています。

でも、あのときの深夜のワクワク感。朝一番に起きて包み紙をやぶって、お願いしてたものが手に入るうれしさ。あれは、このクリスマスでしか味わえないんだろうなぁと思うんです。

もし自分が親になったら、きちんと本気でクリスマスを楽しんでやろうと思っています。いつか本当のことが分かってしまう、そのときまで。

でも、最後に見たサンタさんは “たしか” 赤いパンツを履いていたような気がするんです。もしかしたら、とこの時期になるとふと思い出します。

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