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変わりたければ変われる、そこに意志があれば。

自分の行動に何かしらポジティブな影響を与えてもらっている人たちに話を聞きに行く「プライベートヒーロー」企画。毎月1人ずつでお会いし、自分の心に残ったことばをまとめて文章で伝えてみよう、という取り組みです。1月のプライベートヒーローは、コピーライターの阿部広太郎さんです。

・Twitter : @KotaroA

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阿部さんのコピーや関わる仕事には、ストンと理解できるような短く強いことばがある。そして、じわじわと心に残る。

・東進ハイスクール「いつやるか?今でしょ!
・映画『私たちのハァハァ』「走れば届く気がした。
・フジテレビサッカー日本代表応援コピー「声を枯らす準備はいいか。

阿部さんから発せられることばの裏側には、いつも「応援しているぞ!」という意志を感じます。阿部さんのコピーでもある、僕が働くBAKEのステートメント「お菓子を、進化させる。」もそうです。

この企画を考えたとき、まず思い浮かんだのが阿部さんでした。阿部さんには、自分の中に強い軸のようなものがあるような気がしたからです。

一方、自分には、“これだ!” と胸をはれる軸が思い浮かばなかった。あれこれ手を出してはいるものの、立ち戻れる場所がパッと言えず今年26歳になり、少し焦りを感じはじめていて。自分このままでいいの…?と思うようになりました。

そんな悩みを抱えながらドキドキしてメッセージを送り、阿部さんについて聞きたいことを考えているとき、ふと、ほぼ日の糸井さんが、「今日のダーリン」でこんな一節を書いていたのを思い出しました。

明るさも暗さもある人間が、明るさを選ぶということ。忘れられるはずのない、暗さについては置いといて、明るさのほうを選ぶという意志が、生きることそのものなんじゃないかと思います。

阿部さんには、ふだん投稿している文章にはあまり出てこない、葛藤も感じます。でも、あえて明るさを選んで、自身のコピーや著書を通して「待っていても、はじまらない」と発信しています。僕は今回、阿部さんの軸の真ん中にある根っこの部分を聞いてみたいなと思い、待ち合い場所に向かいました。

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変わりたければ変われる、意志があれば

今回お話した場所は、目黒駅から15分ほど(白金台駅から10分ほど)歩いた場所にある「Jubilee Coffee and Roaster」。

豆の種類がたくさんあるので、スタッフさんと相談しながら、自分の好きなタイプに合わせたコーヒーを提案してくれます。

事前に阿部さんの著書『待っていても、はじまらない。』を読み、『電通報』の阿部さんが書いた記事を読んだ上で、今回お話をしに行きました。

あなたは潔い人ですか? - 電通報

自分の軸…。一言では言い表せないなぁ。でも、自分のルーツは、学生時代のアメフトかな。もともと根暗だった自分が、アメフトをはじめて “変わりたければ変われる” という経験が根っこにあります。時間はかかったけど。だから、誰でも意志があれば変われるはずだって思ってて、そのお手伝いをコピーや企画でしているんです。

同じように、『待っていても、はじまらない。』という本を書いて、“人は変わろうと思ったときに変われる、そこに意志があれば” ということを、ことばを軸足に置きながら、いろんな手段を通して繰り返して伝えているだけなんです。

自分の軸というか大事にしていることは、経験や人脈が自分のフィルターを通して歳を重ねるごとに滲み出していくもの。だから、軸に関しては、まだ焦らなくてもいい年齢だとは思うけどね。

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会う人が、自分のことを教えてくれる

(↑)阿部さんに撮ってもらった写真

今、自分自身のことが分からないのは当然です。ただ、自分でうんうん唸っていれば自分の軸は見つかるかというと、そんなの分かんないですよ。だから、たくさんの人と会ってみる方がいいんじゃないかな。会う人が、自分のことを教えてくれるんです。

ただ、強く影響を受ける人は、待っているのではなく自分から会いに行かないといけないし、一緒に仕事をした方がいいと思うんです。それが僕の場合は、松居大悟監督だったり、クリープハイプだったり。

今歩いているときは分からなくて、『これが軸だったんだ』ってわかるのは後で振り返ったとき。先のことなんて正直分かんないけど、正解にするしかないじゃないかな? こういうやり方で正しかったんだ、と言えるようにするしかないんです。

もし先々のことで迷ったときは、僕の場合だったら糸井重里さんや小山薫堂さんなど、北極星のように目印になる人が何人かいれば、進む方向は間違わないと思いますよ。

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日々、問いをたくさん持っておくこと

何が好きなのかわからないんだったら、とにかくたくさんのものを見たりやってみたりする方が良いと思っていて。その過程で “これってどういうことなんだろう?” っていう問いが浮かんでくるはずです。その思考の往復が、軸をみつける助けになるはずです。
例えばここの珈琲屋さんだったら、どうしてこの電球を選んだのか?みたいな。問いがないと情報にはならないから、日々問いをたくさん持っていることが大事。いつもアンテナを張っておくことが、いずれ自分を形づくり基礎になるような気がします。

ちなみに僕は、問いを持ち続けたことで、“人間ドラマ” が好きなんだと分かったんです。曲における人間ドラマもそうだし、映画もそう。イベントも企画も転職もそうです。

僕が主催している『企画でメシを食っていく(以下、企画メシ)』というプロジェクトで、東京ガールズコレクションのプロデューサー村上範義さんが来てくれて、村上さんに感銘を受けて、ホントに転職した人がいるんです。そういう転機が好きだし、そういう転機をつくる仕事をしたいって思ったのは、問いを持ち続けたからこそです。

そうしてスポンジのようにいろんなものを吸収した後は、仕事でも何でも、絞り出さないといけないです。吸い込みすぎると、スポンジは役目を果たさないまま使えないものになってしまうから。

で、絞り続けていくと、 “あの人のフィルターを通すとこうなるんだ” っていうのが、だんだん誰かに理解されるようになっていく。それがその人らしさにつながっていくんです。

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企画とは、幸福に向かう意志である

「ところで平野くん、企画って何だと思いますか?」

と、ふいに聞かれたので、僕は、うーん…と悩んでいると、阿部さんは次のように話してくれました。

『企画メシ』で、そもそもの “企画 ” について考えている中で、もしかして企画って “幸福に向かう意志” なんじゃないかと思ったんです。

(↑)阿部さんが自費で作成した「企画メシ」卒業証書の冒頭文

『幸福』ということばって、英語にするとHappyになっちゃうんだけど、僕がイメージしているのは、矢印で言うと “️↗ ” (斜め上)みたいな意味合いで。今より良い状態に向かって進んでいくという意志を持って取り組むことが企画なんじゃないかと思うんです。

まずは、自分はこれが面白いぞ、っていう意志を発信していくこと。それか、集めたい人を巻き込んでいくこと。そうすれば、意志を中心に人が集まってくるはず。そして、賛同する人がたくさん集まれば、企画がビジネスとして回り、それが幸福に向かっていくのだと思います。

…かつて自分が、『dotFes』というイベントで印象に残ったことをまとめたブログでも書いたように、自分を “ブランド化” させていくためにも、好きなこと、やっていることを意志として発信し続けていくことが大事なのだと改めて実感しました。たとえ、恥ずかしくても。

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阿部さんの「パーソナルヒーロー」

最後に、阿部さんのこれまでの人生の中で、印象に残っていることばを聞いてみました。

小山薫堂さんの「勝手にテコ入れする」ということばと、箭内道彦さんの「広告することは応援すること」ということば。その2つとも『そういう考え方があるんだ…!』と、衝撃を受けた経験があります。そういう言葉を生み出す人たちがどういうことを考えているのかをそっちの方に気持ちが動いた、心の師匠的な存在です。

本でいうと、どんな本が自分を形づくっていると思いますか?

パッと出てくるのは…。

・谷川俊太郎さん『夜のミッキーマウス
・中村航さん『僕の好きな人がよく眠れますように
・小山薫堂さん『恋する日本語
・戌井昭人さん『ただいまおかえりなさい
・穂村弘さん『もしもし運命の人ですか

この5冊は、20代にコピーライターになって全然書けなかったときに読んでいた自分のルーツのような本です。当時、自分がいいと思うものってなんなんだろう?ってあらゆるジャンルの本を読み漁っていた時期で。そのときに、僕もこういう表現したかったんだ…、と思えたのがその5冊でした。読後感として優しさとか人を信じているなって思える。そういうことばを書きたいと思えた本。

コピーライターをしていると、言葉を仕入れる感覚があるんだけど、その人たちはそういう感覚を吹っ飛ばして、こういう表現がしたかったんだ、って心底思えます。

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最後に、阿部さんが撮りためているというFUJIFILMのNATURAで現像していただいた写真を貼って、おしまいにしたいと思います。

その瞬間を思い出す装置として、写真ってすごいいいなと思っていて。会った人とか、人ばっかり撮っています。誰かに送って喜んでもらえるのがうれしいから。

最後まで丁寧な阿部さん。焦りはいい意味で持ちながらも、いろんなことに挑戦してみようと思えました。またお話、聞きたいなと思います。

その日、おすすめしていただいた本『恋する日本語』をさっそく買って、寝る前に読みました。僕は、「偶さか」「揺蕩う」ということばが好きです。

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こんな感じで、次月も更新していきたいと思います。来月2月は、同じくコピーライターの長谷川哲士さん。どんな話になったかは、お楽しみに!

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